機械部オルタナティブ 第1話
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プロローグ 特殊部隊”破壊工作団”

 

ここは小さな島国”シヒコウ”

ネーミングセンスはアレだけど住民もとても満足。

国土の大きさはバチカンよりかなり大きめ。

季節も四季あり台風もあまり来ない。

そんな島国に一人の少年がいました。

少年の名前は”トカオ”・・・・ん?どこかで聞いたことがある?それは無い無い。もし、居たとしてもそれはただの偶然さ。

そのトカオは島の中心部のあるところに来ていた。

そこは島の重役もめったに入ることが出来ない魔の領域。

トカオは大して権力を持っているわけではないのにその場所に立っていた。

彼の手には一冊の本。そして、左腰には長い湾曲した棒。右腰には黒光りした物がつるされていた。

これが彼のトレードマークなのかどうかはさておき彼は目の前にある巨大で白い建築物を見上げていた。

「ここが特殊部隊の部室か?」

と彼は呟く。

特殊部隊・・・・・。

この国における特殊部隊とは平時では治安維持、戦争時では軍隊とは違う特殊な任務をこなすエリート部隊のことだ

特にこの国では二つの特殊部隊が存在し、互いが補い合い常に成長している。

彼が立っているのはその二つの内の一つであり、最も古くから存在する特殊部隊の本部だ。

・・・・・破壊工作団・・・・・。

それがこの特殊部隊の名前。

一体どのようなところだろうか?と彼は白い建築物に飲まれていった。

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第1話 トカオの場合

 

 

暗闇の世界に刹那の斬撃が美しく舞う。

時間帯はおそらく夜。

街灯も寂れかかった路地裏でそいつは居た。

体長は3m超。両手に鉤爪、頭は2つある

その寂れた路地裏には赤い液体がまるで雨でも降ったかのように水溜りを作っていた。

そいつの風貌は普通の生物ではありえないほど禍々しくまるで妖怪のようだ。

クチャクチャ。

そいつは暗くてよくわからないが薄汚れた肉みたいなものをかじっていた。

クチャクチャ。

それは肉食動物のようだった。

何を食べているのだろうか?

頭ではわかっていても体がわからない。

僕はとりあえずこの場から逃げようと後ずさりをする。

パキッ

緊張のあまり足元の枝を踏んでしまったようだ。

僕はおそるおそるそいつを見る。

そいつはかじるのをやめこちらを見ていた。

その様はライオンかヒョウのようだ。

僕は息を潜め限りなく動かないようにした。

それが今出来る最善の方法。

案の定そいつはまたかじりだした

安心して僕はゆっくりとまた後ずさりをする。

パキッ

今度は先ほどよりも大きな音が鳴った。

そいつはこちらを向く。そして、目が合った。

遠くからでもわかる金色の目がこちらを凝視している。

僕は緊張して動けない(動かない)

しばらくの間その状態が続いた。

そいつはこっちを見つめるし僕は動けない。

背中に汗が浮かび体中の細胞が逃げろと叫んでいる。

じりじりと時間が経つ。

途端にそいつが動いた。

僕は痺れを切らしたかのように逃げ出す。

体中の細胞がフル活動する。

後ろを振り向く間もなく僕は生まれて始めての全力疾走をした。

……

………

どのくらい走っただろうか。

いつの間にか路地裏の向こう側の人気の無い広場まで来ていた

周りを見渡してもそいつはいない。

「ふぅ」

と安堵する

街灯のない暗闇の世界に僕の息だけが響く。

他に音はない。

さすがのそいつも音をたてずに来るのは無理だろう。

僕は壁に背中をつけ座る。

「ふぅ」

再び安堵する。

そして、静寂が流れる。

カツッカツッ

音が聞こえた。

人が歩くような音だ

方向は逃げてきた道。

カツッカツッ

それはゆっくりと近づいてくる。

僕はその方向に目を凝らす。

音は近いのに誰も居ない。

そして、気づく。

反対方向から忍び寄る巨大な生物に。

「うわぁ」

反射的に立ち上がり巨大な生物を見上げる。

金色の目と僕の目が交差する。

明らかに僕は弱い生物。

弱肉強食の世界ではすぐに負けてしまう。

巨大な生物の頭は2つあり、二つともこちらを見つめている。

よく見るとその頭はなにかの生物を象っていた。

一つはライオン、その様は肉食動物のものだ。

もう1つは犬、身近にいる肉食動物だ。

僕はその姿からとある昔話を思い出した。

先日、国語で習った平家物語である。

平家物語で不思議な生物が出てきた。

鵺………その生物は確かそういう名前だった。

詳しい姿はわからないが確か猿だとか虎だとかの体がくっついている。

目の前に居る巨大な生物はその生物に酷似していると思われる。

しかし、伝説は伝説。その生物が実在してしかも目の前に現れるなんてありえない。

その生物は僕を見下すように頭を上げ奇妙な声で鳴いた。

「ヒョーヒョー」

何か悲しげな声が響く。

そして、その生物が笑ったように………見えた。

その生物はゆっくりと鉤爪がついた右手を真上に上げ振り下ろした。

僕の体に重い一撃が……来なかった。

右手は寸前で止められ僕には怪我はなかった。

「な……。」

わけがわからなかった。

右手は目の前で痙攣し、やがて破裂した。

右手から出た青い液体を全身に被り少し憂鬱。

生物は頭を別の方向に向けた。

ズダンッ!!と重い音が響き、生物の頭が一つ吹き飛んだ。

またもや青い液体が全身に降りかかる。

僕はその頃になってようやく事体がわかってきた。

僕は上を見上げる。

建物の屋上に人が居たのだ。

その人は綺麗な月を背景に右手には黒くて重そうでヤバめなもの(拳銃)を持ち、黒いマントのようなもので体を覆っていた。

表情はこれもまた黒い仮面のようなもので読み取ることが出来ない。

かすかに見える左腰には湾曲した棒のようなものがつるされていた。

「ヒョーヒョー」

いけない、まだ生物は生きている。

そう、感じたときには生物は残った頭でこっちをにらみつけていた。

完全にこっちにしか興味は無いようだ。

そのうつろな目には僕を食べて回復するぞー的な野望が秘めていた。

「う、うわぁ」

と僕は情けなく逃げ出す。

その刹那、斬撃が地を穿つ。

たった、今まで居た場所に穴が開いていた。

もう、絶望的なこの状況。

うつろな目はまだ僕をにらんでいる。

動いたら殺される

今出来るのは最低限動かないことだ。

どうしようどうしようどうしよう

答えの出ない疑問で押しつぶされそうだ。

……

………

??

この生物は動いていない?

うつろな目はこちらを向いているが完全に生気を失っている。

「ふぅ」

僕は力なく倒れ落ちた

今までの逃亡で疲れがピークに達したようだ。

カツッカツッカツッ

ビクッ!!

またもやなにかの足音が聞こえる。

今度は一つじゃない3つ4つだ。

もしかしてあの生物の生き残り?

僕はまた緊張する。

汗が額を伝い地面に落下する。

カツッカツッカツッ

「大丈夫ですか〜」

やる気のないへなへなとした声が響く。

「……人か。」

一気に緊張が解け疲れがまたやってきた。

やって来た人は先ほど建物の屋上に立っていた人物とは違うが着ているものは同じ。

黒いマントに黒い仮面。先ほどと違うのは両手に大きな機関銃を持っているだけだ。

『こちら、ブラザー1。民間人を1名確認。至急援護を担架をお願いします。』

『アシュケリョス、了解。ブラザー4を行かせる』

なにやら無線で連絡を取っていたようだ。声からしてここに居るのは女性のようだ。

この人なら何か知っているのではないか。

僕は目の前の惨状について聞いてみた。

「すみません、これって一体……」

「ごめんね、私達は答えられないの」

「じゃあ、あなた方は僕の味方ですか?」

「否定する理由は無いわ。でも、肯定する理由も無い」

「それって……」

聞きたいことがあるのに意識が遠のいていく。

まるで何か睡眠薬でも飲まされたかのようにぐっすりと。

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小さな街にいかにも堅気のものではない人が歩いていました。

実際は堅気の者なんですけど、黒い服を着て右手には何語かよくわからない言葉で書かれた本。

そして、左腰には長い湾曲した棒。右腰には黒光りした物がつるされていた。

持っているものがいかにも危ない男です。

彼の名をトカオと言います。

フルネームで言えば”トカオ オカノ”です

年齢は15〜17あたり腰にあるものと服装をまともなものにすれば地味な印象の少年である。

今は平日の昼間、トカオの年齢からして学校へ通っている時間帯。

でも、トカオは通っていない。

それは学校には行かなくともいい特別な理由があるからです

その特別な理由とは、謎の組織”黒邸”(政府機関です)に所属するためです

”黒邸”は政府が作った特別能力対策本部のことで魔法・魔術・超能力・妖怪・異星人など普通では対応できないものを対策する組織です。

彼は若いながらもいろいろなものに長けその腕を買われたのです。

しかし、彼は銃も剣術もあまり得意ではありません。出来たとしても人並みかちょっと上の辺りです。

当然、その程度では組織に腕を買われはしません。

なら、何故彼は組織に腕を買われたのかというとある特殊な能力のおかげです。

彼は幼い頃から幽霊や妖怪を見ることが出来、特殊能力”予知”を使用することが出来るのです。

それだけではなく占術や魔術の知識を豊富に持ち、組織としては育ててみようと思うのだ。

ちなみに彼の特殊能力”予知”とは文字通り未来予知が出来るもので、すごいです。

と言いたいところだけどそこまですごいものではない。

10分後の的中率10パーセント。

5分後の的中率20パーセント。

1分後の的中率30パーセント。

10秒後の的中率約70パーセント。

5秒後の的中率98パーセント。

微妙です。微妙に微妙です。まぁ、予知と言うものは難しいですからねぇ。

予知と言う能力の実態は、彼には見えるのだ。

人から出てくる無数の道が。

無数の道は人の人生を表すもの。

それが途中で途切れたり色が変わったりする道を選ぶと死んだり人生が変わる特別なことが起きるのだ。

実際、人間がどの道に入るのかなんて彼にはわからない。ただ、予測してどこに行くかが少しわかるだけだ。

時間が経つにつれ的中率が上がるのは選択肢が減るからである。

無数の中からドンドン減っていきやがてほぼ100パーセントになるのである。

と言っても彼の能力にはムラがあり、毎日24時間使えるわけではない。

使える条件は日が落ちるか集中するかである。

夜ならともかく昼間に発動するのはとても難しい。

しかも、この特殊能力は自分を視ることが出来ない。

ぶっちゃけて言うと占いにしか使えない特殊能力なのです(しかも、直前になるまで的中率50パーセント以下)。

おっと、彼に話しかける人間を発見。とても興味深い。

「オカノさん、転勤するんですか?」

彼に話しかけたのは人懐っこそうな少年。

彼の名はダイキ オダ。

謎の組織”黒邸”のメンバーでコードネーム”ブラザー10”を持つ男。

ブラザーナンバーは番号が若いほど強いってことになっている。

1〜10あり、ダイキは最下位。

そのダイキがトカオに話しかける。

「ああ、特殊部隊”破壊工作団”に行くみたいだ。」

「そうですか……これから寂しくなりますね」

そういうダイキの顔には寂しさなど一切感じられない。

「いや、夏火の奴が居るだろう。」

トカオはそんなこと気にせず話を続ける。

ちょっとそれでいいのか?トカオ?

「オカノさんが居ないと任務も厳しくなりますし……」

「そうか……がんばれ」

トカオはやる気の無い声で言うとさっさとその場所から離れた。

「破壊工作団………か。」

トカオは呟くと町の中心部へ向かった。

 

説明
機械部の憂鬱のオルタナティブです。
見てのとおり双恋のネタです。
戦闘シーンが中心になり(ってゆうか別物)あのキャラこのキャラがありえない能力に目覚めてしまいます。
機械部の憂鬱(元ネタ)を知らなくとも普通に読めちゃいます。
暇なら一度、どうぞ
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タグ
機械部の憂鬱 長編 バトル 能力   

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