真・恋姫無双外史〜沈まない太陽〜 第05話
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それから半年ほどたった頃

 

侍女たちがなにやら話をしていた。

 

「最近、何皇后様お元気ないわね」

「そうねぇ、いつも朗らかなあの方らしくないわね」

「そうよねぇ、いつも私たち侍女や女官にも気軽にお声を掛けて下さるのに、最近はご挨拶しても上の空なのよね」

「ご病気かしら?」

「そうねぇ、お食事もあまりお召し上がりにならないし」

「心配ねぇ」

「あ!」

「なになに?何か心当たりがあるの?」

「ん〜、でも違うかもしれないし」

「なによ、気になるじゃない。いいから言ってみなさいよ」

「ん、ひょっとしたらなんだけどね?」

「うんうん」

「弁皇子様のことじゃないかしら?」

「皇子様の?」

「えぇ。ほら、もう弁様が生誕されてから1年半たつわけでしょう?はやい子なら1歳で歩く子もいるじゃない?でも弁様はいまだに…」

「あ〜 そう言われてみれば」

「でしょう?ひょっとしたらそのことで何かお悩みなってらっしゃるんじゃないかなって」

「あ〜 そうか「貴方たち何をしているのですか?」も……  侍従長!」

「「申し訳ありません」」

「全く、仕事をほったらかして何を話していたんですか?」

「はい、その〜…… 何皇后様が最近お元気がないようでしたので… 心配だなと…」

「はい。確かにそうかも知れませんが… 貴方達が仕事をさぼっていい理由にはなりませんね?皇后様の為にも、私たちが出来ることは、自分の役目をしっかりと果たすことではありませんか?」

「「はい。申し訳ありません」」

「はい。もういいですよ、仕事に戻りなさい」

「「はい!失礼します」」

 

二人を見送った後

「ふぅ〜… とはいえ…放置はできません…ね」

自分も役目を果たさねばいけませんね、そう思う侍従長なのであった。

 

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……ハァ〜………

 

……でも…ん〜…

 

……フゥ…………

 

 

皇后様の部屋の前に着くと、溜息が聞こえてきた。

「侍従長です。失礼いたします」

声を掛け、じっと返事を待つ。

「………はぁ……………………どうぞ」

声の主らしからぬ、暗く小さな返答を聞き入室した。

 

 

侍従長にしてみれば、何皇后が最近何かを想い悩んでいたことなど知っていた。

当然だろう。何せ直接お世話する自分が最も接する機会が多いのだから。

(しかし… 自分は臣の身。確かに… 皇后様は自分のことを友人として扱って下さいます。かといって、皇后様から打ち明けて頂けるならともかく、自分からずけずけと踏み込んでいくことなんて出来ません)

そう思っていた。

しかし、最近の後宮内は灯を消したように暗くなってしまった。

以前はいつも何皇后様が侍女たちに「いつも掃除ありがとうね」「お茶が美味しいわ。一緒に飲まない?」などと、労いの言葉を気軽にかけて下さっていた。

皆、それを聞いて更にやる気をだし、また皇后様のお人柄に惹かれていた。

(何皇后様のお元気がないだけで、これだけ空気が変わってしまうとは… やはりこのままにはして置けません。臣としてどうかとは思いますが… 伺ってみましょう)

 

 

「どうしたのです?何か御用ですか?」

「はい。少々お伺いしたいことがございまして」

「………今でなくてはなりませんか?」

「はい、出来ましたら」

(ここで引くわけにもいきませんし)

「………わかりました。どの様な事です?」

「はい。……最近、後宮内の全ての者が皇后様のお元気がないことを案じております。毎夜私の部屋に「皇后様は如何なされたのか?」と多くの者が問いに参ります。もし何か御心配事など御座います様であれば、微力ながらお力添えになれれば…と伺った次第でございます」

「………そうですか。そのような事が…」

「はい。臣下の身で出過ぎた真似を「よいのです」… 皇后様」

「よいのですよ。…そうですね、上に立つ者がこのような態度でいてはいけませんね。教えてくれてありがとう」

「いえ、そのような…もったいないお言葉です」

「でも…そうね 一人で悩むよりも相談した方が答えが出るかもしれないわね♪ 実はね…朝陽のことなんだけど…」

「はい。…やはり、弁皇子様に関することでございますか?」

「ええ。でもやはりって?」

「いえ、その… 侍女たちが噂しておりまして… 皇后様は皇子様のご成長のことを案じておられるのでは、と」

「あら正解。そんなに分かりやすいかしら私?」

「いえ、そのようなことは。ただ、皇后様が皇子様を深く愛されていることは皆知っておりますので」

「ふふふ。 そうよ、とっても愛してるわ」

 

(愛されているだけに… ご心痛も想像を絶するものなのでしょう)

「ご心痛如何ばかりかと…お察しいたします。しかし、子供の成長というものは個人の差が出るのは仕方がないことかと存じます。皇子様の場合は大器故に、大きくご成長される為に、今は休んでいらっしゃるのではないかと存じます」

(このような言葉ではご心痛を和らげることすら出来ないでしょう。踏み込んでおいて何という役立たず…)

侍従長は己の力不足を感じ嘆いていた。

 

 

しかし、返ってきた答は予想外のものだった。

 

「はい?何の話をしてるの?」

「はい。皇子様のご成長のことを…」

「ん〜? 成長ってどのことかしら?」

「ですから、皇子様が未だにご自身でお歩きになられないことを案じられていると…」

「ああ!違う違う。そんなことじゃないわ。歩かないのはあの子が甘えん坊なだけよ かわいいでしょ♪」

 

(な、なんて大きい… 母親とはこうも強いものなのかしら)

 

「ち、違うのですか?では、一体どのような?」

「あのね、他の人には言わないでほしいんだけど」

「勿論です。決して他言は致しません」

「そうね。あなたなら信用出来るわ」

「勿体ないお言葉です」

「実はね… なんとか実現できないかなと色々と考えてることがあるのよ」

「実現…ですか?どのような事でございましょう?」

「あのね………」

 

侍従長は緊張し、ゴクリと唾を飲み込んだ。

 

 

「朝陽とね、なんとか結婚できないかなって♪ きゃ〜 言っちゃった♪」

 

 

………

 

…………

 

(……………は?

この方は今何とおっしゃられた?アサヒトケッコンデキナイカナ?ダレガ?ナンデ?

……っは!いけないいけない。落ち着きましょう私。)

 

「朝陽が可愛くて可愛くて仕方ないの♪これから成長して凛々しく立派になっていく姿を想像するとね?ああ!もう♪」

イヤンイヤンと頬に両手を当てている姿は、実に可愛らしいのだが…

 

(…えっと、つまり溺愛されてるが故に、我が子と結ばれたくなってしまったと。

それで、流石に親子で婚姻を結ぶには障害が多すぎるから悩んでらっしゃったと)

 

「一人で色々考えてたんだけど、なかなかいい手が見つからなくてね? 何かいい方法ないかしら?」

「それは… 流石にその… ご無理ではないでしょうか…」

「えぇ〜!やっぱり無理なのかしら?」

 

(私の決意はなんだったのでしょう……)

 

哀れ侍従長、あなたは泣いていい。

 

 

 

「いっそのこと既成事実さえ作っちゃえばあとはどうにでも…ブツブツ」

 

桃色オーラを醸し出しつつ怪しく目を光らせてブツブツ何か言っている。

 

 

 

 

…駄目だコイツ 早くなんとかしないと。 

 

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そんな母親の思惑を知らず、朝陽は珍しく帝と共にいた。

(これが親父なんだよなぁ… いまいち実感わかないんだけど…)

それも仕方がないだろう。

以前の、要するに北郷一刀の父親は、ごく普通のお腹周りを気にするサラリーマンだったのだ。

それが目の前にいるのは、若干やせ過ぎな感があるが、まだ青年と言えるほど若く、かなりのイケメン男性なわけだ。

感覚的には兄と言われる方がまだ納得できるのだ。

 

(しっかし帝ってだけじゃなくてイケメンって反則じゃないか?そりゃモテるだろうさ)

前世で一度もモテたことがなかった[※実際には結構人気があったが本人が気付かなかった]朝陽は父親に軽い嫉妬心を抱くのであった。

 

朝陽がぼ〜っと考えてる間、当の帝は何をしているかと言えば…

 

「な?酷いと思わないか?朝陽」

「う?」

赤ん坊に対して大いに愚痴っていた。

 

「ちょっと悪戯しただけなのに凄く怒るんだぞ?大人げないと思わないか?」

「あう〜。(あんたの悪戯は性質が悪いんだよ)」

「そうかそうか。やはり朝陽は余の味方か。ん〜良い子だなぁ はっはっは」

「う〜。(味方なんかしてねぇよ!あんたしょっちゅう色々やらかしてるらしいじゃねぇか!)」

 

その通り。

帝は暇さえあれば、あちらこちらで悪戯を仕掛け、皆の驚く顔をみて一人ほくそ笑むのをライフワークとしていた。

まぁ実際、夜以外はずっと暇なわけで。当然被害者も後を絶たないわけで。

 

「だいたいさ、皆余裕が無さすぎると思うぞ?余のちょっとしたお茶目心くらい笑って許さないでどうする。先程だって寝てる奴の顔に墨で落書きしただけだ。それを十常侍に密告するとは何事だ!」

「う〜(お袋達や十常侍の連中くらいしか、あんたを止められないんじゃないか?)」

「そうか朝陽もそう思うか。『この男、女官の○○を懸想中。脈はなし』って事実を書いただけだ。余が責められる筋合いはなかろう」

 

(だから賛同してねぇよ。何をしてるんだこのバカ親父は…)

 

「そもそもだ。余が暇なのは、余に政務をさせない皆が悪いのではないか?」

「あぅ〜」

(確かに政務をさせてもらえない最高権力者ってのもな… 君臨すれども統治せずって奴か?しかしあの日本と漢王朝とでは時代背景が全く別物だからな。空しくもなるのか。十常侍という宦官の奴らが勝手気ままに悪政の限りを尽くしてるんだろう。帝を置物にしておいて。同情の余地はあるよなぁ…)

 

「ちょっと十常侍の選んだ教育係を鬱に追い込んだり、帝になった決意表明として、『余は女性の裸が大好きだ!よって大陸中の女性は基本的に全裸で生活ことを義務としよう!』って言った瞬間から政務から遠ざけるなんて酷いと思うよな?朝陽」

「!!! (な!!! このバッカヤロー!同情の余地なんかねぇよ!返せ!俺の気持ちを返せ!全部自業自得じゃねぇかこのニート!この!この!この!)」

<<ぺちっ ぺちっ ぺちっ>>

渾身の力を込めて帝の頬を引っぱたく朝陽。

 

「はっはっは。何だ朝陽。拍手してくれるのか?良い子だなぁ 愛しておるぞ」

「う!あ!だぁ!(してねぇよ!このバカ!このバカ!)」

<<ぺちっ ぺちっ ぺちっ>>

 

……

 

………

 

…………はぁ。

 

(政務を外されたのは自業自得だし、ひょっとして悪政も行われてないのか?調べないとなぁ…

でもまぁ、そんなことよりも、このバカ親父にはいつか語ってやらねばならないようだな。

大陸中の女性に全裸を義務付けるだと?どこまで馬鹿なんだこの親父は!

全くわかってない。

服の素晴らしさを!

確かに裸も素晴らしいものだけど、服はその魅力をより引き立てることが出来るんだ!

知らないのか? あの絶対領域の感動を!

全裸ではなく、靴下だけ履いた女性の魅惑的な姿を![※一刀は及川ベストコレクションを時々借りてました]

服は邪魔なんかじゃないんだ。

魅力を最大限に引き上げて、芸術に昇華させることができる重要なアイテムなんだ!)

 

「朝陽だけではない。お前の母さんや王美人、董太后。その他余と関係をもった全ての女性も等しく愛しておる」

「あぅ(む。その姿勢は正しいと思うぞ)」

「あ〜そうそう。話はかわるがこんなこともあってな…」

 

 

親子の会話(?)はそれからも暫く続いた。

 

 

 

 

 

この親(現帝)にしてこの子(次期帝候補筆頭)あり

 

……………漢王朝の明日はどっちだ

 

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<あとがき>

 

なんか勝手に両親が壊れていきました。

仕事中しながら妄想してる内容と、書きあがった内容が全く別物なのは何故なんでしょうか?

考えながら書いてるので、こんな少しの文章でも製作時間5時間くらいかかってます。

10ページ以上の文章をさくっと更新してらっしゃる方が神に見えますよ。

速く書くコツとかあるんでしょうかね?

まぁ自分でも先の内容が予想できない今のスタイルは書いてて楽しいので、暫くはこのままのんびり書こうかと思ってます。

たくさんの読んでくれた方や、支援して下さっている方のご期待を裏切らぬ楽しい作品になるといいですねぇ(他人事かおい

説明
北郷一刀が弁皇子に憑依転生する話です

う〜ん。なかなか展開が進みませんね。
赤ん坊の間にやり残したことがないように考えるとなかなかW
完結までに何話書けばよいのでしょうか(汗

進まなくてもイライラしないでねっ 
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コメント
雪蓮の虜様: う〜ん・・・どうしましょうねぇ?(じぺ)
キラ・リョウ様: ある意味だめかもしれませんw(じぺ)
brid様: ん〜どうなんでしょう?(じぺ)
munimuni様: 「駄目だこいつ」なら、神の視点=筆者の言葉ということで。 (じぺ)
悪来様: 帝も加えて三人で?…アリか?(ナイナイ(じぺ)
ブックマン様: ですよねぇ、どうしましょ?(じぺ)
jackry様: 活躍の場がいつになるやらw(じぺ)
@@様: きっとそうなってしまうでしょうw(じぺ)
メル様: まだ決めかねているところです(じぺ)
タンデム様: まだ子供のうちに書きたいことがw 朝陽には泣いてもらいましょう(じぺ)
cheat様: ありがとうございます。その言葉で彼女の苦労も少しは報われることでしょう(じぺ)
伏宮真華様: 侍従長は苦労人の星の下に生まれました(涙(じぺ)
フィル様: 朝陽は逞しく生き延びてほしいと思うのですが(じぺ)
Poussiere様: ありがとうございます 頑張ります(じぺ)
ルーデル様: 魅力ある家族を書きたいので、そう言って頂けると嬉しいです。(じぺ)
nanashi様: やっちゃいましたw(じぺ)
kazuki様: 迷ってるところではあるんですが。(じぺ)
クォーツ様: 大人になるにはまだ暫くかかるかもしれません(汗(じぺ)
トーヤ様: アホ親父伝説は始まったばかり…なのか?(じぺ)
皇后の親バカっぷりがなんともたまんない!!お願いですから、殺さないでください!!(雪蓮の虜)
こんな親の国で一刀は大丈夫なのか・・・(キラ・リョウ)
・・・・大丈夫なのか・・・この国は・・・て、だから一刀が来た訳だwww(brid)
お馬鹿な家族ですねーww時に帝よ・・遊んでないで皇后の異変に早く気付かないと大変な事に・・・w(悪来)
一刀がしっかりしないと国が無くなってしまうぞw(ブックマン)
一刀が早く大人になってすごく強くなるといいな(いずむ)
ああ、是はもうダメだわwwww早く一刀が大人になんなきゃww(タンデム)
2P60行目辺りまでのシリアスさと、その後の壊れっぷりのギャップに感動を覚えたwwwww とりあえず侍従長、貴女は泣いて良い(cheat)
ダメだこいつら何とかしないとwww親がアレで、教育係もアレで……希望は侍従長、貴女だけですww(伏宮真華)
皇后は逆光源氏計画を立案中かwww(フィル)
つか・・・・・これは、これで面白くて良いと思ったのは・・・・・いいのだろうか・・・・w(Poussiere)
この最強一家には消えてほしくないですねwwつか親父何やってるwwwww(ルーデル)
最強の親子現るw(nanashiの人)
もう少し一刀が成長して、実際に色々やっているとこが見たいですね。(kazuki)
早く育って欲しい。朝陽が大きくなって漢王朝の明日を陽に向けないと帝と皇后がこれでは史実どおり崩壊してしまう・・・。 次作期待(クォーツ)
一刀の言う通り弁解の余地は有りません。やりすぎです。霊帝。(トーヤ)
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真・恋姫無双 弁皇子 何皇后 霊帝 北郷一刀 憑依 

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