ふたりのこと |
お父さんとお母さんが出会ったのは
お父さんが高校2年生、
お母さんが1年生の時でした。
ふたりの通う高校は違っていたけれど、お父さんがお母さんに一目ぼれ。
お母さんも、真剣に自分のことを見つめるお父さんに心惹かれ、ふたりはお付き合いするようになりました。
下校時間になると、お父さんはお母さんの学校まで行き、校門前で待ち合わせます。
そしてふたりで帰るのです。
ほんのちょっぴり、「とても仲良しなカップル」として有名になっていました。
ふたりはいつも笑顔で、
とても幸せそうでした。
でも、お母さんには、
お父さんに隠していることがありました。
ふたり初めてのデートの日のことです。
いつものように、いえ、いつも以上に、ふたりはニコニコと頬を赤らめていました。
この満たされた気持ちのまま一日が終えるのだと、幸福と寂しさのある中、さあ帰ろうかと家路を目指した時、
お母さんの体に異変が起きました。
お母さんはもとより病弱で、体は重い病におかされていたのです。
お母さんはその日、家に帰りつくことなく、病院に運ばれたまま入院してしまいました。
お母さんはお父さんに嫌われてしまっただろうと、ひどくひどく悲しみました。
今までがずっとそうだったからです。
だから、お父さんに本当にことを言えなかったのです。
でも、
お父さんは、お母さんが退院するまでの毎日、お母さんの病室にやってきました。
「家に帰るまでがデートだから」
お母さんは嬉しくてうれしくて、
お父さんの顔を見るたびに泣きました。
お父さんはあの日から、お医者様になるのだと一生懸命、猛勉強しました。
一年浪人し、目指した医学部に合格します。
お母さんも同じ年に美術大学に入学しました。
でも、体調が思わしくなく、2年と頑張ったのですが中退せざるを得なくなりました。
それから時は過ぎ、お父さんが晴れてお医者様となった年…
ふたりは結婚しました。
そして、
あなたが生まれたんだよ。
ふたりはいつも笑顔で、
とても幸せそうでした。
でも、お母さんは、あなたが十歳になるころの、満月が綺麗な夜、静かにそっと亡くなってしまいました。
それから少し、離ればなれの間があったけれど、お父さんは男で一人、あなたを育ててきましたね。
笑顔と愛情を絶やすことなくあなたに注いできました。
そんなお父さんは、今でもひとり、泣いていることがあるそうです。
お薬が無いと、夜は眠れないのだそうです。
それだけお母さんのことを愛しているんだね。
あなたは今、幸せですか?
あなたの幸せが、
お父さんとお母さん、ふたりの幸せです。
お父さんとお母さん、ふたりのことは、
ふたりにしかわからないことだけれど、
あなたもいつか、あなただけの
「ふたりのこと」を描いていくのでしょう。
おしまい。
説明 | ||
お父さんとお母さんと、ふたりの子供のお話。 あなたにつたえたい、たいせつなこと。 (※ブログ内にて参加している企画の世界をお借りしています/制服など) |
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