しまのりんち9話
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【乃梨子】

 

 部屋で志摩子さんとくっつきながらテレビを見ていると有名な寺の貴重な仏像の

御開帳の映像が流れて私は食いつくように見ていた。

 

 そういえば最近仏像巡りをしていないことに気付いた。

志摩子さんと付き合ってからとても充実しているからだろうか。

久々に見たその仏像の彫りや年月の経過による味が出ていて美しかった。

 

「乃梨子」

「なに?」

 

「今度行ってみる?」

「? どこに?」

 

「乃梨子の好きな仏像巡りでもしようかな・・・とか」

「え!?」

 

 いいの!?って思わず大きな声が出てしまって私は口を押える。

私は好きだけど志摩子さんはそういうの興味ないから少し躊躇してしまう。

でも、私に向けているそのまぶしい笑顔に私は甘えたくなった。

 

「志摩子さんありがとう、大好き!」

 

 大好きな人に大好きなことをやっていいとなるとテンションも上がるものだ。

つい抱き着いて頬にキスをするくらいは自分の中で盛り上がっていたようだ。

 

「の、乃梨子…」

「あ、ごめん」

 

 本当はキスくらいで照れるような仲ではないのだけど。

志摩子さんはあまり慣れそうになく、いつまでも初々しい反応を見せてくれて

嬉しかった。

 

 それから人ごみや自分の行きたい場所を考慮して二人でノートPCを覗きながら

探していた。その時間がすごく楽しくて、気づいた時に時計を見るといつの間にか

夜になっていたのだった。

 

「志摩子さんとお出かけかぁ、楽しみだな〜」

 

 二人でベッドに入って私はふわふわしてる志摩子さんの髪を触りながら囁くように言った。

 

「本当に乃梨子は仏像のことになると目が生き生きしてるわよね」

「うん、でも一番好きなのは…志摩子さんだよ」

 

「…もう」

 

 照れるように反応をしてくれる彼女が本当に愛おしくてたまらなかった。

 

「もう寝ようか」

「えぇ…おやすみ。乃梨子」

 

 そして軽く唇を重ねた後、私は天井に視線を移しながら明日のことを考えながら

眠りに就いた。

 

**

 

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 翌日、これ以上ないってくらい晴れた空が広がっていて気持ちのいい朝を迎えた。

二人で出かける準備をしてからゆっくり朝食をとって外に出た。

 

 最寄りの駅から電車に乗っていくつか見に行く場所へと赴く。

やっぱり生で見る仏像は格別で私は昔の感覚を取り戻しつつも志摩子さんに

良さをできるだけわかりやすく説明しながら回った。

 

 志摩子さんは興味ないにも関わらず嬉しそうに笑みを浮かべながら

楽しくいろいろな場所へ行って久しぶりに仏像を堪能できた。

写真OKなところもあったけど、そういうので残すより脳裏に焼き付けたほうが

当時の良さが残る気がしたから私は見るだけに専念したのだった。

 

 そして休憩中の喫茶店で私は季節のフルーツを添えたパフェと

志摩子さんは抹茶のわらび餅を注文した。先に注文した紅茶とコーヒーが運ばれ

それを一口啜った後、一息ついて行った場所のことを思い出しながら

志摩子さんとおしゃべりしていた。

 

「そういえば志摩子さん、今日は楽しそうだったよね。興味でてきたり?」

 

 私は一縷の望みにかけたけど志摩子さんはゆっくりと首を横に振った。

 

「ちがうわ。すごく楽しそうにしている乃梨子を見るのがとても良かったの」

「えぇ〜、なにそれ」

 

「人が夢中になって目を輝かせてる姿を見ていると、なんかこう…。愛おしく感じるというか」

 

 少し恥ずかしそうに軽くうつむきながら言う志摩子さん。それが何かすごくかわいく思えた。

 

「じゃあ私が説明してる間、ずっと私のこと見てたってことかぁ」

「ごめんなさいね」

 

「ううん、よかった。理由は何であれ志摩子さんに少しでも楽しんでもらえたなら嬉しい」

「乃梨子…」

 

 そうしている間にも注文したのがテーブルに運ばれてくる。

私は上に乗ってる新鮮で美味しそうな桃をスプーンで取って志摩子さんの前まで運ぶ。

 

「これ美味しそうだよ志摩子さん。はい、あーんして」

「え、それはちょっと」

 

 顔を赤くして抵抗する志摩子さん。でも私は続けていった。

 

「ほら、早くしないと落ちちゃうよ〜。バランス崩しちゃうかも」

「もう…。ん…」

 

 ぱくっ。

 

 小さく可愛らしい口に桃が入っていってゆっくりと咀嚼され飲み込まれた。

その一連の動作がちょっと色っぽく見えるのは私だけだろうか…?

 

「ん…。乃梨子にもお返し」

「え、私はいいよ」

 

「それはずるいわ。私にもさせて?」

「うん」

 

 一度口につけたスプーンで掬って私の口の中にわらび餅が入っていく。

味そのものより志摩子さんが口をつけたものの方が気になって、

もちもちプルプルした触感がまるで志摩子さんの唇みたい。

志摩子さんの味が私の中で広がっていった。美味しいし、とても幸せだ。

 

「どう?」

「うん、美味しい」

 

 私の反応に満足げに笑みを浮かべる志摩子さんを見て私も嬉しくなった。

志摩子さんのような美しい人が彼女になってくれて幸せでさっきまで見ていた

仏像でさえ褪せそうになりそうなほど私を包み込んでくれる。

 

 それからいろんな場所を巡ったけれど、楽しい時間はあっという間ですっかり

日が落ちて辺りが暗くなりそうになっていた。

 

「そろそろ帰ろうか」

「そうね」

 

 人が少なくなって私たちは堂々と手を握って帰路に就く。

まぁ、人がそれなりに多くてもこっそり手をつないだりはしていたけど。

そうしながら歩いているうちにマンションに到着。

 

 部屋に戻ってきたら疲れが溜まっていたのか少しだるさが出てきた。

志摩子さんもちょっと疲れ気味のようだ。

 

「一緒にお風呂入らない?」

 

 私からの誘いに微笑みながら頷く志摩子さん。

私たちは疲れをお湯で流しながら今日のことを話していると

志摩子さんの口から出るのは私のことでいっぱいだった。

 

 それだけ私のことを想ってるのかと考えると何だかこそばゆく感じられる。

あぁ、幸せすぎて罰でも当たりそうだよ。

 

 交互に体を洗いながら狭いながらも一緒に湯船に浸かって見つめ合う。

そして、軽く夕食を摂ってから寝室に移動して二人でいつも以上にくっつきながら

趣味の方でも好きな人のことも両方共これ以上満喫できたことはあまりなかった。

何か理想郷にでもいるような気持ち。癖になりそう…。

たまにはこういうのもいいなぁって思うと。

 

「いいわよ、乃梨子。またいつか行きましょう」

 

 まるで私の心を見透かしたように囁く志摩子さんの声を子守唄のようにして

私は眠りに就いた。今度は…志摩子さんに好きなことをいっぱいさせてあげたいと

強く思うのだった。

 

お終い。

 

説明
乃梨子に合わせてぶらり百合旅。
行き先に興味がなかったとしても好きな人の喜ぶ顔を
ずっと見ていられる志摩子さんでした。
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マリア様がみてる しまのり 藤堂志摩子 二条乃梨子 百合 

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