真・恋姫無双〜魏・外史伝28
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第十三章〜憎悪の螺旋・後編〜

 

 

 

  一刀と華琳が再会を果たした頃・・・。

  ザシュゥゥゥゥゥウウウッッッ!!!!!

  「がはっ・・・!?」

  姜維の一撃は、愛紗の青龍偃月刀の柄を叩き折り、その斬撃はそのまま愛紗に襲いかかった。

 その結果、愛紗は偃月刀が叩き折られた瞬間、とっさに後ろに身を引いたおかげで致命傷は

 避けられたが、それでも姜維によって負った傷から鮮血が大量に流れ出る。

  「ぐぅ・・・、ぁああ・・・!!」

  愛紗は左手で傷口を押さえるが、血が止まるはずも無く・・・、全身から脂汗が流れ、

 意識が朦朧とし、ついに膝を折りその場にしゃがみ込んでしまう。

  「やられる瞬間、後ろに身を引いたか・・・。なら!!」

  姜維は再び、剣を右肩に乗せる形で剣を振り上げ、止めさすべく愛紗に突っ込んで行く。

  「はぁぁああああーーーっ!!!」

  「ぬぅ・・・!?」

  剣は愛紗の脳天に振り落とされた。

  

  ブゥオンッ!!!

  

  ガギィイイインッ!!!

 

  「んなぁっ!?」

  振り落とされたはずの剣が、姜維の頭上まで跳ね上げられていた。

 姜維はたまらず後ろに倒れる。

  「・・・ぐぅ。な、何だ一体!?」 

  姜維は体を起き上げ目の前を見ると、そこには愛紗を庇うように立つ血の様な朱色の

 外套を身に纏い、両眼を布で隠した男が、右手に剣を逆手に構えた状態で立っていた。

  「・・・だ、誰だ!お前も・・・蜀軍の将か!?」

  「・・・・・・。」

  再び立ち上がり、剣を構えた姜維は目の前の男に尋ねる。が、当の男は沈黙を通す。

  「・・・お、おま・・・えは・・・。」 

  一方、彼の後ろでしゃがんでいた愛紗は限界が来たのか、彼の後ろ姿を見た所で意識が

 断たれ、前のめりに倒れるが、そこを彼に支えられる。そして男はそのまま愛紗を抱き抱え

 その場を去って行ってしまった。

  「待て、逃げる気か!!」

  逃亡した男を追いかけようと、姜維は走りだそうとした。

  「待て、姜維!」

  しかし、そこを廖化によって遮られる。

  「どうしてです!ここで逃がしては・・・!?」

  「あの男が逃げた先に罠が仕掛けられている可能性がある・・・。それに、長い追撃で他の皆も

  疲労が溜まっている。これ以上の追撃は避けるべきだ・・・。」

  「だ、だけど・・・!・・・分かりました。」

  姜維は憤りを感じながらも、廖化の指示に従った。

  「怪我をしている者は治療を受けるんだ!一通り済んだら、少し先に開けた地で休むぞ!」

  廖化は他の党員達に指示を出す。党員達はそれに従って、治療を受ける。

  「廖化さん・・・。さっきの男、一体何者なんですか?あんな奴、蜀軍にいましたっけ?」

  「ふぅむ・・・、私もあのような者がいるとは聞いていない。」

  廖化は姜維の問いかけに、顎を撫でながらその答えを探す・・・。

  「血のように真っ赤な外套・・・、両眼を鉢巻で隠す・・・、そして左目に大きな切傷・・・、か。」

  男の姿の特徴を述べながら、廖化は自分の記憶の中の情報と照合していく。

  「・・・まさか。」

  すると、廖化は何か思いついたように声を出す。

  「心当たりがあるんですか?」

  「姜維、お前は呉で目撃されたという白装束の武装集団を知っているか?」

  「え、まぁ・・・一応。確か白装束を身に纏った人物が率いているっていう・・・。

  それがあの男と何の・・・?」

  「その時、一緒に目撃されたのが・・・通称『朱染めの剣士』だ。」

  「朱染めの剣士・・・?え、じゃああいつが・・・そうだって?」

  「特徴からして恐らくそうだろう・・・。しかし、何故そのような男がここに・・・?」

  「朱染めの剣士・・・。」

  姜維はその朱染めの剣士が逃げ去っていった方向を見た・・・。

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  「・・・伏義。あなた一体何をしたのですか?」

  「何って・・・何の事を言っているんだ?」

  「この姜維という少年が見せた力、これは明らかに常人の為せる業ではありませんね。

  ・・・言っておきますが、隠した所で無意味ですよ。あなたが彼女に言って、玉を

  作らせた事はすでに私の耳にも入っていますから。」

  「へッ・・・、底意地の悪い奴だ。そこまで分かってんなら聞くまでも無いだろ?」

  「では、質問を変えましょうか?・・・今。その無双玉は何処にありますか?」

  「・・・ここ。」

  と言って、伏義は自分の胸を親指で指し示した。

  「・・・ではあの姜維が所持しているの玉は、『欠片』ですか?」

  「ああ、そうさ。外史の登場人物にそのまま玉を渡しちまったらどうなるかはお前だって

  知ってるだろ?」

  「玉には大量の情報が詰め込まれています、玉一個に・・・おおよそ外史一つ分の情報が。

  それをうまく制御し、利用できるのは全ての始まりから分裂した北郷一刀・・・、もしくは

  外史の外で生まれた我々や南華老仙といった存在程度・・・。そうでない者が使えば、玉に

  取り込まれ消滅、最悪は玉の暴走が悪化し外史そのものを跡形も無く消滅させかねない。」

  「まぁ、そういうことだ。だが、俺に埋め込んだ玉から欠片と取り出して、それを使わせる

  なら、何ら問題は・・・無い!」

  「勝手な事を・・・。」

  「いいじゃねぇか!情報は使ってなんぼだろうが・・・!?貯め込んでばっかが情報じゃねぇだろう?」

  「そうですね・・・、確かにそれは言えています。」

  「・・・それより、その後出て来た男・・・。」

  「ええ、分かっています。通称『朱染めの剣士』・・・、女渦の報告にあった男。しかし、まさか・・・

  生き残っていたとは。」

  「女渦が単に詰めを誤っただけだろう?・・・それにあいつ一人が生きていたって、俺達からすれば

  何の意味も無いだろ?」

  「しかし、嫌ですねぇ・・・。恐らく彼も玉を所持しているはず・・・。早く何とかしておきたい。」

  「止めとけって。女渦に殺されるぞ?」

  「・・・・・・。」

  「女渦もすっかりあいつに首ったけで困ったもんだ・・・。」

  「おや・・・?」

  「ん?どうした・・・?」

  「どうやら、洛陽のほうに忍ばせておいた駒達が動きだしたようですね。」

  「どれどれ・・・。」

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  洛陽にて一刀達が合流していた頃・・・、白帝城では。

  「そ、そんな・・・まさか!?」

  城内では、麦城から帰還した糜芳、糜竺が桃香に麦城での顛末を報告していた。

 彼女達の報告を聞き終えた桃香の顔はみるみる青ざめ、体が震えているのが周囲にいる者達ですら分かった。

  「じゃあ・・・、じゃあ!愛紗ちゃんは?愛紗ちゃんは一人で食い止めて・・・!?」

  報告の内容を確認するように糜竺の両肩を揺すりながら問い詰める桃香。

  「お、お姉ちゃん!お、落ち着くのだぁ!?」

  「朱里ちゃん!急いで出撃の準備を!愛紗ちゃんを助けに行こう!!」

  「・・・・・・」

  桃香の命令に朱里は困った表情になる。

  「朱里ちゃん!?聞こえているの!早くして!!このままだと愛紗ちゃんが!!」

  「桃香様・・・」

  朱里が自分に怒鳴り散らしてくる桃香に言うべきか否か迷っていたが苦渋の末、彼女に伝えようとした口を

 開こうとした。

  「お言葉ですが桃香様。今から救援に向かっても手遅れかと」

  だが、本陣に入って来た星の発言によって朱里に代わって桃香に告げる。

  「星ちゃん!一体に何言って・・・!?」

  「たった今、麦城に放っていた斥候が戻り・・・、愛紗が討たれたと」

  星の一言は鋭利な刃となって、桃香の胸を刺し貫いた。

  「う、うそ・・・。嘘・・・だよね?」

  桃香は星に真偽を確かめる・・・。が、それは単に受け入れ難い事実から逃げたい一心から出た

 行動でしかない。それに対して、星は桃香から目を逸らすと、こう答えた。

  「嘘偽りであるならば、どれだけ気が楽な事でしょうか・・・」

  星の言葉は満身創痍の桃香の息の根を止めた。

  「・・・っ!?」

  桃香の瞳が見開かれる。そして、上から吊るしていた糸が全て切られた操り人形の様に、桃香はその場に

 足元から崩れた。

  「お姉ちゃん!」

  「桃香様!」

  突然に崩れ去った桃香に駆け寄り、体を支える鈴々と朱里。

  「お姉ちゃん!しっかりするのだ!愛紗は、愛紗は・・・そんな簡単に死んだりしないのだ!」

  「桃香様!まだ愛紗さんが討たれたというだけで、まだ死んだと決まったわけではありません」

  二人の励ましも、今の桃香に届かない・・・。桃香はまるで全てを失い、残るのは絶望だけと言わん、

  虚ろな姿と化していた。

  「どうやら麦城にてたった一人で正和党の攻撃を受け止めていたそうです。そこで姜維という少年に

  正面からバッサリと斬られたとか・・・」

  「きょう・・・い?」

  崩れ去った桃香は姜維という言葉に反応する。聞き覚えのある名前。そうだ、あの時・・・正和党の元を

 訪ねた時、私を恨めしそうに睨みつけてきた・・・あの男の子。あの子も確かそんな名前だった。

 

―――流石は蜀の王様!奇麗事だけは一丁前だな!!

 

  「綺麗・・・ごと、か・・・」

  「桃香様?」

  「私達・・・、私は・・・、間違っていたのかな?」

  「お姉ちゃん?」

  「私が今までして来た事って・・・、本当に正しかったのかな?皆仲良くとか・・・、皆が笑顔とか・・・

  優しい国とか・・・全部、綺麗事だったのかな・・・?」

  「桃香様、今は弱音を吐いている場合ではありませんぞ。今あなたがすべき事は・・・」

  「そうだよね。愛紗ちゃんでも勝てないような相手なんだもん・・・。私達が束になった所で勝てるわけ」

  「いい加減にせぬか!!劉備玄徳!!!」

  星が桃香の態度に対して怒声を放つ。

  「・・・・・・」

  怒声を突き付けられた桃香は途端独り言を止める。星は桃香に何を言おうとした。

  「桃香様ぁあああっ!大変だ!!一大事だ!!」

  そこに翠と蒲公英、雛里が血相を変えて現れる。

  「・・・な、何かあったのか・・・?」

  崩れ倒れる桃香を囲む鈴々と朱里、そして桃香を見下ろし何かを言いかけた星。あの目の前に広がる神妙な

 空気に翠は気まずさからそう言ってしまった。

  「いや、何でもない気にするな。それより何が一大事なのだ?」

  何かを言おうとした星も、翠の思わぬ邪魔によって言う気が失せてしまったようである。

  「お、おう!さっき紫苑の所の兵士がやって来てさ・・・その・・・えっと」

  「・・・・・・?」

  しどろもどろする翠に桃香は流し目で見ている。そんな桃香を見て、気まずさに翠は口をつぐんでしまう。

  「ちょっとお姉様!ここに来てにちゃんと報告の内容が言えないでどうするのよ!?」

  「う、うるさいな・・・!雛里、後は頼む!」

  報告を雛里に押し付ける翠。二人の後ろに隠れる様に立っていた彼女を翠は無理やり前に押し出す。

  「せ・・・西方の国境から、約八万の軍勢で蜀国内に侵攻して来ているとの事です・・・」

  「えぇっ!?」

  雛里の報告に桃香に代わって朱里は驚く。

  「今、正和党と五胡の勢力を白蓮さんと一緒に食い止めているようですが・・・。かなり苦戦している

  ようで、このままでは突破されるのは時間の問題だと・・・」

  「現在、北方の派遣されている白蓮さんと紫苑さんの部隊だけでは二つの勢力を抑える事はできません!」

  「では、誰かが救援に向かわなくてはいかんな・・・誰が行く?」

  「・・・私が行きます」

  「雛里ちゃん・・・、行ってくれるの?」

  朱里の問いに、雛里首を縦に振る事で自分の意思を示した。

  「良し!ならあたしと蒲公英も行くよ!それでいいか、雛里?」

  「はい、よろしくお願いします」

  雛里はぺこりと頭を下げる。

  「よぉし!それじゃ早く救援に行こう!」

  そして三人は北方への救援のために、自分の持ち場へと急いで戻っていった。

  「失礼します!蜀王・劉備玄徳様ですか!?」

  と、今度はそこに見慣れない服装の兵士が本陣に通される。その兵士は一礼すると桃香に体を向ける。

  「呉王・孫策伯符より劉備様へ伝言を承ってきました!」

  「雪蓮さんが・・・?一体何だろう・・・」

  どうやら、呉の兵士で雪蓮の言伝を託されてやって来たようである。桃香は体を起こし、その兵士に

 面を向ける。

  「現在、呉の西方からここ、蜀領へと侵攻する謎の集団を確認した。我々もその集団を追撃しているが

  そちらの協力を求めたい・・・との事です」

  「そ、そんな・・・っ!?」

  兵士の報告の内容に桃香は驚きを隠せない。星はその報告に苦虫を噛んだような顔をする。

  「よりによってこのような時に。その集団について他に情報は無いのか?」

  「まだ不確かではあるのですが、恐らく以前に我が国内にて目撃された白装束の武装集団ではないかと」

  「戦力が未知数の集団か・・・、相分かった!それには自分が行きましょう」

  「星が行くなら、鈴々も行くのだ!」

  「いや、ここは私一人で十分だ」

  「んにゃぁ!どうしてなのだ!?」

  「お前まで来てしまっては、ここの戦力が不足してしまうだろう?」

  「で、でもそれじゃ星が一人いくことになるのだ!」

  「その経路で行けば、途中で恋とその付き人、二人を拾って行ける。何ら問題は無いさ」

  「鈴々ちゃん、ここは星さんの言う通りにするのが良いと思うよ」

  「ん〜・・・、朱里が言うなら、分かったのだ!」

  鈴々は渋々ながらも、朱里の説得に従った。

  「うむ、では頼んだぞ朱里。恐らく敵は・・・外からだけとは限らぬ」

  「はい、分かっています。こちらは・・・お任せ下さい」

  そして、星は雪蓮達と合流するために、遠征に備え自分の持ち場へと戻っていく。朱里はその姿を見届ける。

  「桃香様。ここは一度成都まで撤退するべきだと思います!」

  そして朱里もまた、自分が今為すべき行動を取るのであった・・・。

 

  今、桃香達が置かれている立場は朱里が考えている以上に最悪の状況へとなっていた。

 愛紗が正和党に討たれたという事実は彼女の予想をはるかに超えた速さで軍内に浸透していった。

 関羽雲長という柱を失った蜀軍という天幕は今まさに崩れかけようとしていた・・・。

 

  そして桃香は・・・、また新たに柱を失おうとしていた・・・。

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  「うん、実はさっきね・・・この前逃げ出しちゃった実験体が見つかったの。

  ちょ〜ど、ここより少し先に。だから僕はここで別行動をとるから。後はよろしく。」

  「・・・・・・。」

  「大丈夫、大丈夫♪万が一はそそくさと逃げて来るから。心配してくれてありがとね。」

  「・・・・・・。」

  「あーっはは・・・、相変わらずきつい一言を・・・。」

  「・・・・・・。」

  「え?あぁ〜そう、そろそろ皆が恋しくなっちゃったの?君を見たら、どんな顔するんだろう?

  ぷぷぷッ・・・、その場にいられないのが残念だよ。」

  「・・・・・・。」

  「うん、じゃあ頼んだよ。」

  

説明
 許昌をなんとか守り抜いた一刀君。そしてようやく皆と再会できて、僕も一安心・・・。というわけにもいかなかったりします。魏の彼女達が喜んでいる一方で、蜀の桃香達は・・・。そして愛紗は一体どうなったのか?一難去ってまた一難・・・。
 この章の本編でもある後編・・・。一刀君と華琳さん再会をはたしていた時、蜀の方はどうなっていたのか?
 では、真・恋姫無双〜魏・外史伝〜第十三章〜憎悪の螺旋・後編〜をどうぞ!!
 ※何かとシリアス展開の蜀ルートですが、僕的には・・・
 やったね姜維!桃香と愛紗ざまぁ!ってな感じでです。
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コメント
Poussiereさん悪来さん 毎度の報告感謝致します!(アンドレカンドレ)
オリキャラは何者かきになるね〜(motomaru)
さて・・・・・どうなるのかが愉しみですな^^w(Poussiere)
誤字3p目 途中で恋と音音音  音々音ですね。(Poussiere)
朱染めの剣士がとても気になります!(もっさん)
朱染めの剣士は味方か!?(cielo spada)
誤字 3p え?雛里ちゃん・・・。言ってくれるの 行って では?(悪来)
急展開だだ(水質測量班員)
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