ゆりらいだぁす〜あみvあおい
[全4ページ]
-1ページ-

【葵】

 

 今日は亜美とツーリングで少し遠出をすることにした。

泊まりも予定しており宿泊先の予約も怠らなかった。

行先やコース決めなどは亜美の部屋で二人で穴がないかチェックしながら

予定を埋めていく。

 

 行く先を想像しながら予定を組むのは面白い。

亜美が想像するとまるで今そこへ行っているかのように表情がころころ変わるのだ。

その様子を見ていると和むというか癒されるというか。

 

 そう考えていると雛子さんのからかう姿が脳裏に浮かんできた。

 

『亜美が好きなんだろ?』

 

 とっさに誤魔化そうとしたけど、自分の中で否定はできなかった。

ただ一緒にいると幸せな気持ちになり、ずっと一緒にいたいとか、いつもいい匂いしてるなとか、

悶々と…いったい私は何を考えているんだ!?

 

「どうしたの、葵ちゃん?」

「な、なんでもないぞ!」

 

「え、そう?」

 

 私の言葉を素直に受け取った亜美は笑顔に戻って再度予定表の紙に

視線を戻した。その疑わない反応を見て私はつい「かわいいな」って思った。

私は冷静を装ってはいたが、よく見られたら顔が赤いことに気付かれそうなくらい

顔が熱く感じていた。

 

-2ページ-

 

***

 

 それから少しして、出発の当日。緊張した面持ちでいる亜美の肩を軽く叩いて

私は笑顔を向けていつものように言った。

 

「楽しんでいこう」

「うん!」

 

 亜美はロードバイクに跨って最初は緩やかに、やがて彼女のペースで走り始めたので

私はその速度に合わせて後ろを走った。

 

 自転車用道路は少し狭くて大きなトラックとか横切ると亜美が一瞬身を固くするのが

見えた。少し怖がっているのだろうか、と案じるもすぐに普段の調子に戻っていく。

やがて車通りの少ない道になると二人で少し話をしながら走れる余裕が生まれる。

 

「みんなと走るのも気持ちいいけど、やっぱり葵ちゃんと一緒だと気持ちが楽な分もっと

楽しく感じるよ」

「あぁ、私もだ」

 

 亜美の笑顔を見てると私もつられて笑顔になれる。

途中、休憩できそうな場所を見つけて飲み物を補給したりして辺りの景色を見ながら

他愛のない話をしていた。

 

 亜美が自転車を始めてから最初は続くとは思わないくらいすぐにへばって泣きそうになっていたのが

今では行く先々の大変な場所を難なく乗り越えていくのを間近で見ていたから

驚きもあるが彼女と同じくらい私も達成感を得ていた。

 

 こんなにすぐ自転車の世界に馴染んで急成長する子はいるだろうか。

そうはいないだろう。贔屓目で見ているせいもあるだろうが、それが無くても十分亜美は

すごい成長しているのがわかる。

 

 心配性な私が彼女を心配したり支えたりしなくても立派に前に進んでいっている。

…いつか私が必要なくなるときも来るんじゃないか、とか考えてしまうと寂しく感じてきた。

 

「葵ちゃん?」

「ん、何だ?」

 

「何か悩んでる?」

「何を言っているんだ。そんなわけないだろ」

 

「それならいいけど…」

 

 逆に心配されてどうする私。いつも亜美に言ってる楽しんでいこうという言葉を

私が忘れてしまっていたことに今気づいた。

 

 私の言葉に頷きつつもまだ心配そうに見るから私は笑顔で返すと

亜美も笑顔になって休憩を終わらせ先に進んだ。

 

 今回はイベントでも何でもないし、気楽に自由に動けるのがよかった。

交互に先頭を代わりながら順調に進めている。合間に景色とか食事を楽しみながら

話をしているとあっという間に時間が経過して予約していた宿に辿り着いた。

 

「ふー、お疲れ様。葵ちゃん」

「あぁ、楽しかったな」

 

「うん!」

 

 互いに一言ずつ言葉を交わした後に宿に入ってチェックインをする。

部屋に案内された後、亜美がお茶を淹れてくれて私たちはお茶を啜ると

ようやく一息ついた感じがして少しばかり疲れが表に出てきて

二人で畳の上に転がってのんびり休憩をとった。

 

-3ページ-

 

***

 

 気付いたら寝転がった視線の先にあった空の色が変わっていた。

そのまますっかり寝てしまったようだ。

 

 普段そんなことはありえないのだが、よほど疲れていたのだろう。

おそらく動いたことよりも気持ちの方での問題が強そうに思えた。

 

「あ、葵ちゃん。おはよう」

「あぁ…」

 

「今日は珍しい葵ちゃんばっかり見てる気がする」

 

 レアだよ、レアって嬉しそうに言う亜美に苦笑しながら頷いた。

 

「いや、亜美の成長度合いを見ていて思うところがあってな…」

「え?」

 

「このまま亜美が何でもできるようになったら私は必要なくなってしまうのかな、とか。

思ってしまうんだ…」

 

 少し寂しそうに呟くと、怒ったような顔をして亜美が私に目掛けて飛び込んできて

びっくりした。

 

「亜美!?」

「そんなこと思うわけないじゃん!葵ちゃんがいつも傍で私を支えてくれてるから

挫けずに続けてられたんだよ!

 私にとって、葵ちゃんはずっと居て欲しいし…一生必要なパートナーだよ…!」

 

「あ、亜美。それはどういう意味…」

 

 チュッ

 

 私の布団の中に入ってきた亜美の匂いに包まれながら

唇に柔らかい感触と温もりが伝わってきてドキドキが強くなってきた。

もっと求めるように私の手は亜美の背中に回して強く抱きしめる。

 

 一瞬びっくりする亜美の体。でもその強張りもすぐに解け私とのキスを

より長く、長くしていた。まるで溶け合うように熱くなり一体化するように愛し合う私たち。

そこにはもう性別なんて関係なく、互いに何も考えられないようになって

私の本能が相手のことを強く求め、貪るようにキスを続けた。

 

 そして亜美が潤んだ瞳で私を見て、熱のこもった声で小さく私の耳に囁いてきた。

「これからもずっと一緒だよ…。愛してる、葵ちゃん…」

「亜美…」

 

 こんなこと言われるとは思わなかったからすごく嬉しい。

どれだけ嬉しいか、どんなに言葉を紡いでも言い表せなくて。

もどかしい気持ちでこう答えた。

 

「嬉しい、ありがとう。亜美」

 

 そこには確かに愛おしい存在があった。愛おしい人は私を見て柔らかく微笑んだ。

まるで私にとっての女神のような人だった。

だから私が彼女を離すはずはなかった。

 

彼女が私から離れようとしない限りは私が彼女をずっと支えよう。

前からずっとそう思っていた。

 

「私の亜美のこと、ずっと愛しているよ」

「うん…」

 

 涙が溜まり泣きそうになるのをグッと堪えて私の胸に顔を埋めてくる亜美。

私はそんな亜美の頭を軽く撫でて優しく包み込んだのだった。

 

-4ページ-

 

***

 

 二人で泊まった所は眺めも空気も非常に良くて、二人で想いを伝えて色々と

すっきりして食事を取った後、二人で再び走りだした。

 

 今度は昨日のような疲れは出ず私はどこまでも亜美と走れそうな気がした。

私自身、自転車に対する目標はないけれど亜美が目指そうとするところを

私も一緒に走れたらと思う。

 

 彼女を支えて、時には支えられて。私たちはどこまでもどこへでも行けそうな

気がしていた。

 

 涼しい風と暖かい陽光に包まれながら私たちは前へ進む。

私達の関係もこうして前に進めていけると信じて。

 

お終い

 

説明
時間があるときにちょこっと書いたもの。亜美葵。や葵亜美かな?
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
650 650 0
タグ
ろんぐらいだぁす! 倉田亜美 新垣葵 百合 

初音軍さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com