「……大丈夫っぽい？」（小声）

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マイ「艦これ」「みほ３ん」（第参部）

　EX回:第9話『ＶＳバトルの裏で』

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　演習は白熱している（ように見える）。

私は自分のインカムの送話口を跳ね上げた。そしてこの来賓用観覧席の近くに待機していたブルネイの五月雨を呼んだ。

「ちょっと君……双眼鏡はあるかな？」

「はい。少々お待ち下さい」

軽く会釈をしてから裏手に引っ込んだ彼女。

数分と経たないうちに五月雨は軽いコンパクトな双眼鏡を持ってきた。

「こちらです」

「有り難う」

そう応えながら私は双眼鏡を受け取る。

その時、私は『おや？』と思った。

五月雨は何故か一瞬、私から目を逸らして恥ずかしそうな表情を見せたのだ。それまでの彼女は無表情だったので、よけい気になった。

「失礼します」

五月雨は双眼鏡を渡した後、私の席から少し離れた斜め後方の位置に立ち止まって待機している。

そうか、どうやら彼女が私の『担当』らしい。

この艦娘はマジメそうに見えるけど『素』の性格は案外違うのだろうな。艦娘っていうのは時おり人間臭い反応を見せることがある。それは美保でもブルネイであっても変わらないのだろう……そう思いつつ私は受け取った双眼鏡を確認した。

ざっと基本機能をチェックする。形は今のものと、そう変わらないな。

「えっと……」

良く見れば明らかに何かと同期（リンク）させる端子や撮影機能、そのほか夜間用の増感超高感度機能みたいな表示とか、アイテムてんこ盛りだ。私の時代のシンプルなタイプとは大違いだ。

「良いなあこれ……一つ欲しいな」

そう呟いた次の瞬間、インカムからは激しい衝撃音と叫び声が伝わって来た。

「グッ！」

……という、何かを受け止めるような声。龍田さんか？

『ワー！』

直ぐに場内には大きな歓声が湧き起こる。

「しまった！」

私はハッとして顔を上げた。

「もう決着が付いたのか？」

慌てて双眼鏡を覗く。水しぶきで少し霧がかかり爆発の煙も立ち上っている海上では若干見通しが悪い。

仕方がない。私はさり気なく周りの観客の反応を観察する。どうやらブルネイの夕立がハイキックで美保の龍田さんの頭部付近をヒット、転倒させたらしい。

『……っぽい！』

霧や煙が晴れてきた海上では相手の夕立が得意げに決めのポーズまで繰り出している。

実況席も叫んでいる。

『決まったああぁぁぁ！　夕立のハイキックぅ』

「ハイキック？」

待て待て、相手の夕立は浴衣じゃなかったか？　どうすれば、そんな攻撃が可能なんだ？　

「……いやいや」

私は否定した。これはお祭りだ。今さら野暮な突っ込みは入れまい。

　だが私のインカムには会場に流される艦娘たちの音声の上から現場の生の声が伝わって来ていた。

：夕立（ブルネイ）

「あの……大丈夫っぽい？」

小声だ……その声音（こわね）を聞いた私は直ぐに思い出した。

「そうか……」

そうそう、裏の事情があるんだった。私は安堵した。

　さっき気付いたのだがインカムの送話口を跳ね上げていれば通話は出来ない。だから今の私の呟きは艦娘たちにも聞こえない。

……いや正直、一瞬焦ったけど。双眼鏡やインカム等、未来のハイテク技術に気を取られすぎた。

　さて、艦娘達のＶＳバトルの裏側ではこうなっていた。

まず美保の龍田さんが抑えた声で呟く。

：龍田さん（美保）

「あぁーあ。ワタシ最近、あまり受身取って無いのよねえぇ。ちょっと来たわぁ……でも大丈夫だから。意識はちゃんとしてるし……」

（小声）

　このお祭りの影では真逆のことが進んでいる。バトルの真実を知るのは、美保鎮守府側の戦闘中の特殊無線を傍受できる一部の艦娘と、無線係と、あとは私くらいだろう。

外面だけしか見えない普通のお客さんたちはまったく分からない。知る必要も無いけどね。

　もちろん聴いている、お互いの艦娘たちは、このことは一切、口外はしないだろう。それは「政（まつりごと）」を司る者たちの、まさに不文律。一種のマナーだ。

龍田さんは、続ける。

：龍田さん（美保）

「私、すぐに立つと、バレちゃうから、ちょっとジッとしているねー。だから、慌てないでねー」（小声）

：（艦娘たち）

『はーい』

海上の「現場」から相手の夕立と龍田さんの安堵したような吐息が伝わってきた。

：夕立（ブルネイ）

「会場、すごい歓声っぽい」

：龍田さん（ブルネイ）

「うまくいったようねー。きっと提督も、喜んでくれたわね」

午後の日差しを全身に浴びながら、海上で手を振っているブルネイの夕立と龍田さん。

　私は観覧席で頬杖を付きながら思った。

演武とはいえ、ちゃんと相手を気遣いつつ見せ場も作る。その上で大将の顔も立てている。ブルネイ側の艦娘たちは、量産型にしては要領が良い。中心である大将を想う、賢明で優しい艦娘たちだと感心した。

　やはり日頃の指導が行き届いているのだ。軍隊に必要な秩序が立っている。うん、本当に羨ましいな。

翻って今もなお艦娘たちに翻弄され振り回されている私は、まだまだ未熟者だな。つくづく反省する。

　周りの観客席のオトコども。見ると青葉さん並みの凄いカメラを持っている連中居る。そして「決定的」な瞬間を撮ったのだろう。満足したような鼻の穴を膨らませた連中も何人も居る。

あのブルネイの夕立の浴衣の下が本当にパン○なのかは知らないけど……。

「……」

視線を感じて、ふと見ると……また寛代がこっちを見ていた。お前は私の『妄想監視係』か？

　お祭りの観客席から艦娘たちがバトルしている海上までは距離もある。私は自分の双眼鏡が間に合わなくて良かったと思った。来賓席で司令官が艦娘を見て鼻血なんか出していたら、それこそ恥ずかしいどころの話じゃない。

　歓声の中で客席を見ていると向こうの席に美保の青葉さんと夕張さんが居るのが分かった。

その青葉さんも、でっかいレンズを抱えて満足そうな顔をしている……収穫ありか。仕上がったら見せて貰うか。

　後ろを振り返ると……あれ？　祥高さんは椅子で居眠りをしていた。事務方の艦娘だから、こういうバトル系は興味ないよね、きっと。長旅の疲れが出たのかな？　お疲れ様。

　その他を見回しても、あの怖い技術参謀の姿は見えなかった。まだ医務室で大人しくして……は、居ないだろうけど。

でも、この会場にノコノコ顔を出すヘマはしない。

　しかし、どこで何やってる？　逆にちょっと心配になった。

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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サイトも遅々と整備中〜(^_^;)

http://www13.plala.or.jp/shosen/

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PS:「みほ３ん」とは

「美保鎮守府：第参部」の略称です。