聖刀くんの日常 其の三十二
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聖刀くんの日常  其の三十二

聖刀、祉狼、昴の初めてのお使い

 

 

*北郷((聖刀子修|まさとししゅう)) 真名・((輝琳|きりん))

 父:北郷一刀 母:曹操孟徳 真名・華琳

*((華?伯元|かふはくげん)) 真名・((祉狼|しろう))

 父:華陀元化 真名・((駕医|がい)) 母:北郷((二刃子盾|ふたばしじゅん))]

*((孟興子度|もうこうしど)) 真名・((昴|こう))

 父:((寇封|こうほう))(劉封)((慇照|インテリ)) 母:孟達子敬 真名・((太白|たいはく))

 

 

《聖刀の場合》

 

聖刀(四歳)

 

房都城下

【聖刀turn】

 

「いってきまーーす♪」

 

 ママにおつかいたのまれた♪

 すみれさんのおみせでチョコレートをかってくるんだ!

 がんばるぞーー♪

 

 

【紫一刀turn】

 

 聖刀が元気に手を振って城の正門から出発した。

 長い石階段を街に向かって降りていくのを俺たちも手を振って見送っているのだが……………。

 

「「「愛紗、春蘭、二人は絶対にここから動いたら駄目だからなっ!」」」

 

「どうしてですかっ!ご主人さまっ!」

「何故だっ!一刀っ!!」

 

「「「あのな…………じゃあ訊くが、お使い中の聖刀に男の人が心配そうに声を掛けてきたとしたら?」」」

 

「そう装った間者に違いありません。排除します。」

「問答無用で殺す♪」

 

「「「だからだよっ!!」」」

 

 春蘭!さわやかな笑顔でさらっと言うなつ!愛紗も過保護がホント酷くなりすぎっ!

 俺たちは後ろに居る鈴々、翠、秋蘭、霞、季衣、流琉に目配せをしておく。

 五人が力強く頷いてくれた。

 これに桃香と華琳が加われば大丈夫だろ。

 さて、この初めてのお使いで眞琳達以来恒例となっているモニターでの追跡を見てみる事にしよう。

 街中には思春と明命の隠密部隊が聖刀の護衛で配置されてるから心配は無いんだけどな。

 

「「「お!早速声をかけられてるな…」」」

 

 聖刀を背後から追い掛けているカメラの映像に十六、七くらいの女の子が三人、聖刀へ声を掛けている。

 

『ボク、どうしたの???と媽媽は?』

 

 房都見物に来た遠くの邑の子達だな。

 都の人なら聖刀の顔を大抵知ってるし、これが恒例の初めてのお使いだと判っている。

 実際、カメラに映る街の人達は成り行きを見守っていて、こっそり笑っているおばちゃんとかまで居たりするのだ。

 

『はじめまして♪ぼく、おつかいなんだ♪』

『へえ、そうなんだ♪何をお買い物するのかな?』

 

 どうやら手伝おうってパターンだな。

 今まで六十回以上やってきたから声を掛けてくる相手のパターンはほぼ把握している。

 手伝うのが一番多く、次は警備隊の兵に声を掛ける人だ。

 

『おかしをかいにいくんだ♪とってもおいしいおかしのおみせなんだよ♪おねえちゃんたちをあんないしてあげる♪』

『あはは♪ありがとう♪』

 

 優しい子達だな♪

 全く嫌な顔をせず、聖刀のお使いを見守ってくれるつもりだ。

 

『こっちだよ♪』

 

 聖刀が声を掛けてきた女の子の手を引いて歩き出す。

 物怖じしない性格だな、聖刀は。

 

「さすが一刀と華琳の子やな。極自然に女の子の手ぇ握りよったで………」

 

 霞のやつ何言ってんだ?単に人見知りが無いだけだろ。

 

「「「雰だってあれくらいはするだろ?」」」

「あんなぁ………聖刀は男の子やで?」

「「「四歳児にそんなの関係ないって♪」」」

「一刀たちはそう思ぉとるようやけど……春蘭は違うみたいやで。」

 

 霞が溜息混じりに視線を向けた先では春蘭が憮然とした顔でモニターを睨んでる……………さっきの返答みたいな事は考えていないからこの場に留まって居るんだろうけど、不機嫌なのは明らかだ。

 

『あれ?あんたら何処行くの?』

 

 ん?何だ?女の子が集まって来たぞ?

 

『この子においしいお菓子屋さんへ連れてってもらうトコ♪』

『この子って………やだ♪綺麗で可愛い♪』

『さすが都ねぇ。こんな小さな子まで垢抜けてる。』

『ちょ、ちょっと待って、この子!い、いえ、この方は!』

 

 あ、ひとりが聖刀の正体に気付いた。

 ブロマイドとか出回ってるからなあ。気付く子は気付くか………って!女の子達が三十人は集まってないか!?

 

『か、一刀さま!いかがいたしますかっ!?』

 

 明命が通信で指示を求めてきた。

 声がかなり戸惑ってる………無理も無いか、こんなの初めての事だからなぁ。

 まるでハーメルンの笛吹みたいになってるし。

 

『ほら♪ここがそうだよ♪すみれおねえちゃん、おかいものにきました♪』

 

 あぁ………戸惑ってる間に着いちゃったよ………。

 

『はい、いらっしゃい、聖刀くん♪って!その後ろの女の子達はっ!?』

 

 陳震さんには事前に聖刀が行くこと伝えてあったけど、こんな状態で来るのは予想外で驚くよな。

 

『こ、このお店っ!曹相国様認定の看板がっ!』

『だからこの方は北郷聖刀殿下なんだってばっ!』

 

 女の子達もどよめいてる………けど………俺たちがされるのとは反応が微妙に違うみたいな………。

 

『聖刀様♪よろしければご一緒にあんみつを食べて行かれませんか♪』

『え♪あんみつ♪…………でもおつかいが………』

 

「「「よし!俺たちが聖刀の代わりに女の子達と…………………と言うのは冗談で………」」」

 

 一瞬で殺気に押しつぶされそうになった………。

 

『お代は私達が出すから気にしないで♪』

『だから言葉遣い!あ、聖刀様♪都の思い出にぜひご一緒にしていただけませんか♪』

 

「菫玲、料金は私が出すからその子達全員と聖刀にあんみつを出して頂戴。」

 

 今まで黙ってモニターを見ていた華琳がマイクで陳震さんに通信を送った。

 

「「「華琳まで甘やかすのか!?」」」

「ただ甘やかすのではないわ。あの子達が邑に帰ったら聖刀の事を何と言って回るか判るでしょ♪宣伝費だと思えば安い物よ♪」

 

 確かに学園の設立に向けて動き出している今、聖刀がどんな子か広く知ってもらわなきゃいけないし………。

 

『聖刀様♪あ?んしてください♪』

『ひ、ひとりでたべれるよ?』

『そんなことおっしゃらずに♪はい、あ?ん♪』

 

 モニターの中の聖刀は困っているが、どう見てもハーレム状態だ。

 俺たちだってあんな風にちやほやされたこと無いぞ!

 

「なあ、一刀。ウチがさっき言った意味。よう判ったやろ。」

 

「「「うぉおおおおっ!否定できねぇええええっ!!」」」

 

 

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《祉狼の場合》

 

祉狼(四歳)

 

本城 後宮中庭内 華陀邸

【祉狼turn】

 

「それじゃあ、祉狼。お父さん所にお弁当を届けてくるのよ♪」

「うん♪わかったっ♪」

 

 おとうさんがわすれたおべんとうをとどけるんだ!

 おかあさんはおなかにあかちゃんがいてたいへんだからボクがいく!

 ボクはもうすぐおにいちゃんになるんだからおかあさんのおてつだいもしなくちゃ!

 

「祉狼っ!待ちなさいっ!まだお弁当持ってないわよっ!」

「そうだったっ!」

 

 いそいでもどっておかあさんからおべんとうをもらった!

 

「いってきまーーーーすっ!」

 

 いそいでおとうさんにおべんとうをとどけるぞっ!

 

 

【聖刀turn】

 

 祉狼が走って行くのを物陰から見送った後、二刃叔母さんに挨拶をする。

 

「それじゃあ、二刃叔母さん。祉狼の事は任せて♪」

「うん、聖刀くん。よろしくね♪祉狼ったらお兄ちゃんになるからって張り切って気持ちが先走ってるから♪今もお弁当を持たずに何しに行くのかと呆れちゃったわよ♪」

 

 二刃叔母さんは笑ってる♪

 口ではこんな事言ってるけど嬉しいんだ♪

 

「じゃあ、行ってきます♪」

 

 

【祉狼turn】

 

「お、祉狼じゃねえか。」

「おやおや?、お一人で何処へ行くんですか??」

「あ、宝ャと風おばちゃんっ♪こんにちはっ♪」

 

 もんのところで宝ャと風おばちゃんにあった!

 

「おとうさんにおべんとうとどけるのっ!」

 

 ボクはふろしきにつつんだおべんとうをみせた!

 

「初めてのお使いか。祉狼もそんな歳になったんだな。」

「華琳さまに内緒でするとは、二刃ちゃんも水くさいですね?。まあ、からかわれたり手助けしたりされるのを避けたんでしょうけど。ですが、護衛が誰もいないというのは…………なるほど♪」

 

 ?………なんだかむずかしくてよくわかんない………それにボクのうしろみたけどなにかな?

 

「……………なんにもない………」

「祉狼くん。お弁当を手に持ってたら落とすかもしれないですよ?。風が背中に縛ってあげましょう♪」

「うんっ♪」

 

 風おばちゃんがおべんとうをせなかにむすんでくれた♪

 

「転ばないように気をつけるんですよ?♪」

「何か有ったら聖刀と貂蝉と卑弥呼を大声で呼べよ。直ぐに飛んできてくれるぜ。」

「うん!わかったっ!」

 

 ボクは風おばちゃんと宝ャにバイバイしてかいだんをおりた!

 

 

【聖刀turn】

 

「祉狼くんの護衛、お疲れさまなのです、聖刀くん♪」

「お前が居れば二刃も安心だろう。色んな意味で。」

「ありがとう、風媽媽♪宝ャ♪」

 

 ぼくは木の後ろから出て祉狼に黙っていてくれた気遣いに感謝した。

 

「ところで風媽媽。さっき祉狼に卑弥呼と貂蝉も呼ぶように言ってたけど、二人もどこかに隠れてるの?ぼくには気配が全然掴めないんだけど………」

「風にもわかんないですよ?♪でも、あの二人がこの状況で祉狼くんを愛で……いえ、見守らないわけありませんからね?。」

「そうなんだ♪」

 

 風媽媽は確信してる。

 それだけ信頼してるってことなんだ♪

 

「よし!ぼくは祉狼を見守りながら二人の気配を見付ける修行もするよ♪」

「それは良い心掛けです?♪」

「身を守る修行になるぜ、色んな意味で。頑張って会得しな。」

「うん♪あ、祉狼を追いかけなきゃ!それじゃあ、行ってきます♪」

 

 風媽媽と宝ャに手を振ってぼくも階段を降りる。

 

「色んな意味って何だろう?」

 

 

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【祉狼turn】

 

 おとうさんのびょういん!おとうさんのびょういん!

 風おばちゃんがおべんとうむすんでくれたからはしりやすいぞ♪

 

「おーい!ぼん!」

「祉狼!?」

 

「あ!真桜おばちゃんと凪おばちゃん!」

 

 ボクはとまっておじぎした!

 

「ぼん、そない走ってどないしたん?」

「お母さんは一緒じゃないのか?」

「おとうさんにおべんとうとどけるんだ!おかあさんはおうちだよ!」

 

 ボクはおばちゃんにおべんとうをみせる…………みせ………ううぅううう!

 

「ぼん、そんなグルグル回らんでもええで♪」

「祉狼、背中を向けるだけで良いんだぞ♪」

「う…うん……わかった………」

 

 おばちゃんたちにわらわれた…………。

 

「そやけど、お使いなんやな♪ええ子やで♪」

「お母さんのお手伝いができるなんて偉いぞ、祉狼♪」

「うん♪」

 

 ほめられた♪

 

「ところで、ぼんは御守りをちゃんと持っとるか?」

「うん!ちゃんともってる!」

 

 おかあさんがくびにさげてくれた♪

 うん!おなかのところにちゃんとある!

 

「さよか♪ほんなら大丈夫や♪」

「でも気を付けて行くんだぞ!」

「うん!わかった!」

 

 真桜おばちゃんと凪おばちゃんにもバイバイした!

 

 

【聖刀turn】

 

 真桜媽媽と凪媽媽から離れた祉狼を追おうとしたら二人に手招きされた。

 

「お守りおつかれさん、聖刀くん♪」

「お疲れさまです、聖刀さま。」

 

 真桜媽媽はいつものように気安く、でも凪媽媽は恭しく挨拶する。

 凪媽媽も真桜媽媽みたいにしてくれたらいいのに。

 

「うん、媽媽達警備隊の手を煩わせないよう、しっかり追いかけるよ♪」

「よろしゅう頼むで♪そこで聖刀くんにはこれ渡しとくわ♪」

 

 真桜媽媽が懐中時計みたいな物をぼくに差し出した。

 

「これは?」

「探知機や♪ぼんの身につけとる御守りに発信機が入っとるんよ。それでぼんの居場所が判るで♪」

「そんなのが有るんだ!真桜媽媽は凄いなあ♪」

「ぼんはお兄ちゃんになるいうて張り切りすぎやからなあ♪こんなモンでも無いとどこ行くかわからん♪」

「元気なのは良い事なのだが………最近父親に似てきたな……」

 

 あれって駕医叔父さんの真似をしてるのかと思ってたけど、そうじゃないんだ。

 

「それじゃあぼくは祉狼を追いかけるね………あれ?祉狼が止まってる?」

 

 もらった探知機に映っていた光の点が動きを止めていた。

 

 

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【祉狼turn】

 

「おばちゃんどうしたの?おひざいたいの?」

「ええ……でも大丈夫よ♪こうして休んでいれば直ぐに痛くなくなるから♪」

 

 う?ん、でもおばちゃんとってもいたそうだ………おとうさんとおかあさんならなおせるのに………。

 

「いたいのいたいのとんでけーーーーー!」

「ふふふ♪ありがとう、坊や♪…………あら?本当に痛みが引いて………」

「おばちゃん!ボクのおとうさんのびょういんにいこう!おとうさんならなおしてくれるよっ!」

 

 

 

【聖刀turn】

 

 どうしたのかと思ったら、どうやら膝を傷めて休んでた人を見つけて、心配で声を掛けたんだな♪

 偉いぞ、祉狼♪

 

「え?お父さんの………病院?」

 

 あ!あの人、祉狼の事を知らないんだ!

 見た感じどこかの邑から野菜を売りに来たお姉さんだし。

 『病院』って駕医叔父さんに関係している所しか呼ばないから、祉狼が誰か気付いただろうな………。

 

「あっ!いたくてうごけないならおとうさんよんでくるよっ!」

「ぼ、坊や!坊やのお父さんって医者王様かい!?五斗米道の…」

 

 あ………。

 

「ちがうよっ!」

「へ?違うのかい?」

 

「ごとべいどうじゃなくてゴットヴェイドーだよっ!」

 

「え………ごっとべ?」

 

「ゴットヴェイドーだよっ!」

 

 どうしよう…………お姉さん困ってるよ………。

 

「こらっ!祉狼!」

 

 あっ!あれは!

 

「地和おばちゃん…」

「お姉ちゃんと言いなさい!」

 

 ………地和媽媽………それはどうなの?

 

「まあ、それは置いといて………甥っ子が迷惑かけてごめんなさいね。この子、妙な所で頑固だから……」

 

 地和媽媽が苦笑いでお姉さんに謝ると、お姉さんは慌てて立ち上がった。

 

「い、いえ!滅相もありません!こうしてシスターズの地和様にお声をかけていただいたのですから!わ、わたしずっとファンだったんですっ!」

「わあ♪ありがとう♪あ、でもちゃんとお詫びはさせて。」

 

 ふう……この場は丸く収まりそうだ。

 

「このおばちゃん、おひざがいたいからおとうさんのところにつれてくの!」

「まだおばちゃんとか言うか!そんな悪い子は抱っこの刑だ♪」

 

 地和媽媽が祉狼を捕まえてギュッと抱きしめた。

 顔が嬉しそうだ♪悪い子とか言っててもやっぱり祉狼が可愛いんだな♪

 でも、祉狼はジタバタして逃げようとしてた。

 

「あ?ん!はなして?!おとうさんにおべんとうとどけるんだから?!」

「なんだ、お使いの途中だったの?それならあなたも一緒に病院へ行きましょう♪」

「い、いえ!わたしは………」

「あ!そうだ!おば……おねえちゃんはおひざいたいからおとうさんつれてくるんだった!」

「え!そうだったの!?」

「膝はもう痛みが引きましたから…」

「でも動けばまた痛くなるんでしょ?ちゃんと治した方が良いし、お金だってかからないの知ってるでしょ♪」

 

 お姉さんは遠慮してたけど、結局地和媽媽と祉狼に押し切られる形で病院に向かった。

 祉狼はずっと地和媽媽に抱っこされたまま。

 

「ボクひとりであるけるよ?!」

「ダ?メ♪あんたは勝手にどっかすっ飛んで行くんだから♪」

 

 う?ん…………これはひとりでお使いは失敗になるのかなぁ?

 

 

 

十年後 美濃岐阜城本丸 ゴットヴェイドー隊宿舎

【エクストラturn】

 

「なんて事が有ったんだ♪」

 

 聖刀が語った祉狼の昔話に、ひよ子、梅、エーリカが微笑んで頷いていた。

 

「お頭って小っちゃな頃からそんなだったんですね♪」

「幼少時代のハニー?見てみたかったですわぁ?」

「メィストリアの人を思い遣るお心が伝わる良いお話でした♪」

 

 ((痘痕|あばた))も((笑窪|えくぼ))とは良く言った物で、三人は祉狼の幼い頃の行動もただ好ましく思うだけの様だ。

 冬の最中だが珍しく温かくなり、縁側でちょっとした茶飲み話でもと聖刀が語り始め、三人の反応に満足して微笑みを返した。

 そこにもうひとり、庭から美空が現れる。

 

「三つ子の魂百までと言うけど、まあ祉狼らしくて良いじゃない♪」

 

「美空さま聞かれてたんですか?」

 

 この場で唯一人、美空の気配に気付いてなかったひよ子が問い掛ける。

 

「盗み聞きみたいになったけど、話の腰を折るのに気が引けたのよ。」

 

 美空は悪びれること無く縁側に座って話の輪に加わった。

 ひよ子が美空にお茶を淹れながら、ふと気になった事を聖刀へ問い掛ける。

 

「聖刀さま、昴ちゃんの初めてのお使いも御覧になられたんですか?」

「うん♪昴のお母さんには恐縮されちゃったけど、昴も僕の弟みたいに思ってるからね♪」

「ちょっと!私が来た途端にあの煩悩の話になるわけ!?」

「美空さま♪空さまも名月さまもお頭の奥さんになったんですから、そろそろ許してあげてもいいんじゃないですか♪」

 

 ひよ子が湯気の立つ湯呑みを差し出しながら笑っていた。

 

「…………祉狼の親友でもあるわけだし…………聞いてあげるわよ…」

 

 ツンデレではなく、本当に渋々話を聞く姿勢になる美空だった。

 

「あはは♪昴の初めてのお使いは………」

 

 

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《昴の場合》

 

昴(四歳)

 

房都 インテリの邸宅

【昴turn】

 

「いい?昴!((麺麭|パン))屋さんに行って『麺麭ください』って大きな声で言ってこの袋をわたすのよ!そうしたら麺麭屋さんが麺麭とお釣りを袋に入れてくれるから!受け取ったら直ぐに戻って来るのよ!」

 

 ままにふくろをもらった♪

 しろうちゃんがおつかいできなかったっていってたけど、こうはちゃんとできるんだから♪

 

「うん♪いってきまーーす!」

 

 

【聖刀turn】

 

「聖刀さま、お手を煩わせてしまい、本当にもうしわけございません………」

「昴ちゃんもぼくの弟みたいに思ってるから、こうして初めてのお使いを見守れて嬉しいよ♪太白さん♪」

「その様に仰っていただき、嬉しい限りです……」

 

 昨日の祉狼に続いて、今日は昴ちゃんの初めてのお使いだ。

 麺麭を買って帰ってくるだけだし、麺麭屋さんも半里弱で一本道。

 でも慌てて転ぶかもしれないからしっかり見ててあげないと。

 

「って、あれ?昴ちゃん?」

 

 いきなり脇道に入っちゃったぞ?

 

「やっほー♪」

「あ、こうちゃん♪」

「いまみんなでおままごとしてるのよ♪こうちゃんもしよう♪」

 

 近所の女の子達が集まって遊んでるのか。

 

「こうはおつかいなの♪すぐにいかなきゃだから、ちょっとだけみてていい?」

「うん♪いいよ♪」

 

 お使いを忘れてる訳じゃないんだ。

 お友達に挨拶したかったんだな♪…………なんだろう?

 昴ちゃんの表情が、インテリさんがぼくのお姉ちゃん達や妹達を見てる時と同じ様な………。

 

「それじゃあもういくね♪」

「「「「うん♪またね?♪」」」」

 

 五分ぐらいか………まあ、それくらいの寄り道は想定内か。

 と、思ったのも束の間。

 昴ちゃんは麺麭屋さんに向かう途中で門から家の中を覗いたり、他のお店の中を覗いたりしていた。

 

「何か覗く先に統一性が無いなぁ………でも、明らかに目的を持っての行動だよなぁ………次の場所へは迷い無く小走りで向かってるし、疲れないのかな?」

 

 そんなぼくの心配とは裏腹に、昴ちゃんはむしろ元気になっていく。

 一本道をジグザグに進んで、ようやく麺麭屋さんに到着した。

 

「パンくださいな。」

「はい、いらっしゃい♪昴ちゃん♪」

 

 麺麭屋のお姉さんは太白さんから話を聞いているので落ち着いた対応だ。

 昴ちゃんも落ち着いてるなあ♪…………でも、さっきより笑顔が作り笑いっぽく見える気がする。

 

「はい♪今人気の餡麺麭人の麺麭だよ♪」

「え??コウはこっちのきていちゃんのパンがいい。」

「あらあら♪昴ちゃんは可愛い方が好きなのね♪」

 

 お姉さんが木亭ちゃんの麺麭に手を伸ばす。

 

「そっちじゃなくて、ちいさいのがいいの♪」

「はいはい♪じゃあ、小さい木亭ちゃんの麺麭にするわね♪」

「うん♪」

 

 今度はスゴく良い笑顔だ♪

 麺麭を受け取った昴ちゃんは、来た時と同じ様に一本道をジグザグに移動して家に戻った。

 お使いは無事終了♪

 でも、何で昴ちゃんはあんな風に移動したのかな?

 

 

再び十年後

【エクストラturn】

 

「後で気が付いたんだけど、昴が覗いてた家やお店って小さな女の子が居たんだよね♪」

 

 聖刀は笑っているが、ひよ子、梅、エーリカは苦笑。

 美空に至っては呆れ果てていた。

 

「あいつの幼女好きが筋金入りだというのが良く判ったわ………」

「うささんが居るから今は大丈夫ですよ♪」

 

 ひよ子がそう言って美空を宥めるが、美空の表情は晴れない。

 

「どうかしらね…………あの煩悩、今日はスバル隊を増強するって尾張の愛知郡に向かったのよ?」

「え?……………」

 

 美空の言葉にひよ子の顔から血の気が引いた。

 

「愛知郡って確かひよ子さんのご実家が有る場所ではありませんの?」

 

 梅が以前ひよ子から聞いた話を思い出し問い掛ける。

 

「((小竹|こちく))ちゃん!逃げてぇええええええええええええっ!!」

 

 ひよ子は跳び上がって妹の通称を叫ぶが、岐阜城からどんなに大声で叫んでも届く筈も無く。

 ひよ子の悲痛な声は岐阜城内に鳴り響くだけだった。

 

「そう言えば祉狼も町に出掛けたっきり戻って来ないね♪また病人を見付けて治療をしてるのかな♪」

 

 

 

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あとがき

 

 

初めてのお使いを四歳児にさせるのはどうかと思いましたが、小さい子ならではの面白さが有ると思い書いてみました。

結果は御覧の通りw

聖刀はチャーム能力を発揮しあっと言う間にハーレムを築き。

祉狼はマイペース。

昴は幼女しか目に入ってません。

特に昴は木亭ちゃんのパンも小さくより幼女っぽい物を選ぶ徹底ぶりですwww

 

祉狼の所で出てきた風、真桜、凪、地和は、エーリカ、美空、梅、ひよと中の人繋がりでのチョイスとなっております。

 

餡麺麭人とは、かの有名な頭を食べさせたり頭を挿げ替えたり出来る、あのヒーローですw

 

 

 

《次回のお話》

 

次回の【聖刀くんの日常】は

黄乱A     6票

です。

 

以降の予定は次の通りです。

聖刀と貧乳党          5票

聖刀くんの性教育〜漢女にならないために〜

                4票

五胡とオマケ          4票

聖刀さま?親衛隊A        2票

初めてのテスト         1票

 

 

次の投稿は今まで『おまけ三』としていた物を

『三??†無双 四方山話』

と、改題します。内容は

親子鍛錬(脳筋編)  20票

です。

 

 

 

【子供達一覧】

1)華琳の長女 曹沖(そうちゅう) 眞琳(まりん)

2)桃香の長女 劉禅(りゅうぜん) 香斗(かと)

3)蓮華の長女 孫登(そんとう) 蓮紅(れんほん)

4)思春の長女 甘述(かんじゅつ) 烈夏(れっか)

5)愛紗の長女 関平(かんぺい) 愛羅(あいら)

6)風の長女 程武(ていぶ) 嵐(らん)

7)桂花の長女 荀ツ(じゅんうん)金桂(きんけい)

8)雪蓮の長女 孫紹(そんしょう) 冰蓮(ぴんれん)

9)冥琳の長女 周循(しゅうじゅん) 冥龍(めいろん)

10)祭の長女 黄柄(こうへい) 宴(えん)

11)恋の長女 呂刃(りょじん) 恋々(れんれん)

12)紫苑の次女 ?仁(こうじん) 露柴(ろぜ)

13)紫苑の三女 ?信(こうしん) 崔莉(ちぇり)

14)蒲公英の長女 馬援(ばえん) 向日葵(ひまわり)

15)翠の長女 馬秋(ばしゅう) 疾(しつ)

16)麗羽の長女 袁譚(えんたん) 揚羽(あげは)

17)桔梗の長女 厳逹(げんたつ) 竜胆(りんどう)

18)凪の長女 楽?(がくりん) 濤(なみ)

19)七乃の長女 張路(ちょうろ) 八?(やや)

20)天和の長女 張甲(ちょうこう) 九蓮(ちゅうれん)

21)地和の長女 張大(ちょうだい) 四喜(すーしー)

22)人和の長女 張吉(ちょうきつ) 一色(いーそー)

23)炙叉の長女 迷当(めいとう) 直(なお)

24)白蓮の長女 公孫続(こうそんしょく) 白煌(ぱいふぁん)

25)秋蘭の長女 夏侯衡(かこうこう) 鈴蘭(すずらん)

26)月の長女 董擢(とうてき) 春姫(るな)

27)美以の長女 孟節(もうせつ) 花鬘(かまん)

28)トラの長女 ベンガル

29)ミケの長女 マンクス

30)シャムの長女 ペルシャ

31)桂花の次女 荀?(じゅんぐ) 銀桂(ぎんけい)

32)朱里の長女 諸葛瞻(しょかつせん)龍里(るり)

33)雛里の長女 ?宏(ほうこう)藍里(あいり)

34)詠の長女 賈穆(かぼく) 訓(くん) 

35)焔耶の長女 魏覚(ぎがく) 焔香(えんか)

36)春蘭の長女 夏侯充(かこうじゅう) 光琳(こうりん)

37)星の長女 趙統(ちょうとう) 螢(けい)

38)大喬の長女 喬櫂(きょうかい) 愛(あい)

39)小喬の長女 喬順(きょうじゅん) 華(か)

40)亞莎の長女 呂j(りょそう) 茜(ちぇん)

41)明命の長女 周邵(しゅうしょう) 藍華(らんふぁ)

42)華雄(阿猫)の長女 華剛(かごう) ?莓(しゅうめい)

43)桂花の三女 荀?(じゅんしん) 丹桂(たんけい)

44)霞の長女 張虎(ちょうこ) 雰(ふぇん)

45)沙和の長女 于圭(うけい) 紗那(さな)

46)斗詩の長女 顔教(がんきょう) 升謌(しょうか)

47)真桜の長女 李禎(りてい) 真?(ましん)

48)桂花の四女 荀(じゅんぎ) 連翹(れんぎょう)

49)猪々子の長女 文?(ぶんかい) 虎々(ふーふー)

50)稟の長女  郭奕(かくえき) 貞(てい)

51)穏の長女  陸延(りくえん) 毬(ちう)

52)鈴々の長女 張苞(ちょうほう) 爛々(らんらん)

53)流琉の長女 典満(てんまん) 枦炉(ろろ)

54)桂花の五女 荀粲(じゅんさん) 黄梅(おうめい)

55)小蓮の長女 孫仁(そんじん) 蕾蓮(らいれん)

56)音々音の長女 陳守(ちんじゅ) 音音(ねおん)

57)季衣の長女 許儀(きょぎ) 華衣(かい)

58)美羽の長女 袁燿(えんよう) 優羽(ゆう)

59)桂花の六女 荀淑(じゅんしゅく) 來羅(らいら)

60)音々の次女 陳修(ちんしゅう) 音肆(おとよ)

61)華琳の長男 北郷聖刀(まさと) 輝琳(きりん)

62)桂花の七女 荀倹(じゅんけん) 柊(しゅう)

63)璃々の長女 黄慮(こうりょ) 牡丹(ぼたん)

64)思春の次女 甘?(かんかい) 燃秋(ぜんしゅう)

65)紫苑の四女 黄薛(こうせつ) 紅葉(もみじ)

66)管輅の長女 管辰(かんしん) 辯天(べんてん)

67)鈴々の次女 張紹(ちょうしょう) 龍々(ろんろん)

68)美以の次女 孟鉄(もうてつ) 仁亜(にあ)

69)トラの次女 キジ

70)ミケの次女 タマ

71)シャムの次女 ソマリ

72)星の次女  趙広(ちょうこう) 迦具夜(かぐや)

73)愛紗の次女 関興(かんこう) 愛絽(あいろ)

74)雪蓮の次女 孫静(そんせい) 水蓮(しゅいれん)

75)翠の次女  馬承(ばしょう) 駿(じゅん)

76)恋の次女  呂空(りょくう) 恋々恋(れみ)

77)音々音の次女 陳蕃(ちんはん) 韵(いん)

78)音々の三女 陳嶺(ちんれい) 唯音(いおん)

79)小蓮の次女 孫翊(そんよく) 美蓮(めいれん)

80)桂花の八女 荀靖(じゅんせい) 茉莉花(まりふぁ)

81)秋蘭の次女 夏侯覇(かこうは) 恵蘭(けいらん)

82)月の次女 董旻(とうびん) 有明(ゆうみん)

83)詠の次女 賈訪(かほう) 探(たん)

84)蓮華の次女 孫慮(そんりょ) 蓮火(れんふぉ)

85)季衣の次女 許定(きょてい) 春季(ちゅんりぃ)

86)流琉の次女 典堂(てんどう) 騾螺(らら)

87)桃香の次女 劉永(りゅうえい) 桃花(とうふぁ)

88)冥琳の次女 周胤(しゅういん) 

B)桂花の九女 荀Z(じゅんとう) 寿丹(じゅたん)

C)桂花の十女 荀爽(じゅんそう) 秦翹(しんぎょう)

D)桂花の十一女 荀粛(じゅんしゅく) 金鐘(きんしょう)

E)桂花の十二女 荀?(じゅんふ) 橄欖(かんらん)

 

【その他のオリジナル設定】

北郷二刃(ふたば) 一刀の実妹 字:子盾

華佗 真名:駕医(がい) 息子⇒華?(かふ) 真名:祉狼(しろう)

陳越(音々音の母) 真名:音々(おとね)

インテリ⇒寇封(劉封) 嫁⇒孟達 真名:太白(たいはく)息子⇒孟興 真名:昴(こう) 

追っかけ⇒波才 嫁⇒楊阜 真名:門風(めんふぉん)娘⇒楊豹 真名:和了(ほうら)

尻好き⇒宋謙 嫁⇒張承 真名:真珠(しんじゅ)娘⇒張休 真名:珊瑚(さんご) 

董の兄ぃ⇒牛輔 嫁⇒申耽 真名:菫花(きんふぁ) 娘⇒申儀 真名:朔(さく) 

兄者⇒呂曠 嫁⇒徐晃 真名:雲雀(ひばり)娘⇒徐蓋 真名:朱雀(すざく) 

弟者⇒呂翔 嫁⇒張? 真名:豹牙(ひょうが)娘⇒張雄 真名:白虎(びゃっこ)

黄乱 真名:明兎(みんと)

馬良 真名:鷲羽(わしゅう)

馬謖 真名:耶麻(やま)

荀攸 真名:素英(そえい)

魯粛 真名:命佐(めいさ)

董雅(月の父) 董陽(月の母) 真名:日(りい)

曹嵩(華琳の父) 曹静(華琳の母) 真名:蝶琳(ちょうりん)

喬玄(大喬と小喬の母) 真名:玄(げん)

劉玄(桃香の母) 真名:桜香(おうか)

 

匈奴:呼廚泉(こちゅうせん) 蘿蔔(すずしろ)

鮮卑:軻比能(がびのう) 菘(すずな)

?:千万(せんまん) 芹(せり)

羯:石周(せきしゅう) 薺(なずな)

烏丸:阿羅槃(あらばん) 小鬼田平子(こおにたびらこ)

 

華雄 真名:阿猫(あまお)

高順 真名:杉(すぎ)

徐庶 真名:康福(こうふく)

黄月英 真名:雛菊(ひなぎく)

陳震 真名:菫玲(すみれ)

伊籍 真名:早苗(さなえ)

 

 

説明
一刀の息子の聖刀が主人公のお話です。
今回はリクエストの『聖刀、祉狼、昴の初めてのお使い』
『戦国恋姫 三人の御遣い』とも連動しており、
『鍼・戦国†恋姫†無双X 幕間劇1.5』にもなります。
華陀の息子の祉狼。
蜀のロリコン兵の息子で男の娘の昴。
三人の幼少期を御覧下さい♪
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コメント
緋縅力弥さん>そんな人が居たんですね。勉強になります!自分でも調べてみますね♪(雷起)
殴って退場さん>自分もそう思いますwww(雷起)
味野娯楽さん>昴は遺伝子レベルで刻み込まれたロリコンですのでwww(雷起)
匿名希望さん>今後も恋姫無双と戦国恋姫を、色んな意味で繋げて行きたいと思います♪(雷起)
神木ヒカリさん>ひよの妹の小竹ですが、鍼・戦国†恋姫†無双X幕間劇其の二でその模様をお送りしますw(雷起)
神木ヒカリさん>祉狼の失敗は二刃が周りに協力を仰がなかった為ですね。聖刀は華琳の子という事も有り、地和などはどこか遠慮してしまうのですが、祉狼に気安く接する事が出来るので、つい構ってしまうといった所です。(雷起)
まぁ、大体予想通りかな、と。ただ、聖刀くんの話で思い出したけど、「正史」の晋にもいたのよね。潘岳といって、弾き弓を持って、洛陽の街を歩くと、女の子たちが手を繋いで取り囲んだとか。そんなお話を思い出しました。(緋縅力弥)
昴は本当にこの時代に生まれて良かったな。今だったら確実に逮捕されているなww。(殴って退場)
初めてのお使い微笑ましいはずが昂だけはブレないですねww(味野娯楽)
ある意味コラボといったところかな?こういうのも面白いな(匿名希望)
祉狼だけ失敗したんだ。聖刀と昴は、そうだろうな。 そして、小竹は昴の餌食になったのかな。(神木ヒカリ)
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