月夜桜花【第三部 約束の女性との再会】
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二、約束の女性との再開

 

やっと着いた新しい家、田舎のわりには結構良い家だった。

引越しの作業も終りやっと落ち着いた頃だった親父が

「近所に顔を見せに行くぞ」

とうるさく言うので親父について行く事にした。

「どーも、桜木です、河原さん居ますでしょうか?」

親父の声に気付いたのか、家から女の子が顔を出した

「なーに、おじさん?」

かわいい声と、綺麗な顔の女の子が親父に言った

「おお、月ちゃんじゃないか、ずいぶん綺麗になったな」

親父の言葉が嬉しいらしく、

「うん」

女の子が可愛らしく笑った。

河原 月(かわはら るな)は、昔から俺と一緒に居た女の子で、幼なじみでもある。

「よー、月」

俺の挨拶に対して、

「うん、久しぶり幸助君」

桜木 幸助(さくらぎ こうすけ)は、もちろん俺の名前である。

「月は、元気だったか?」

「うん、幸助君こそげんきだった?」

「まーな、バカは風邪引かないって言うし」

「そう?幸助君ってそんなにバカだったけ?」

「いや、俺が言っているのは、スポーツバカのほう」

「フフ、明日から学校だから一緒にいこう?」

「分かったよ、じゃあ、また明日な」

「うん」

嬉しそうに返事をした月の顔が、とても可愛いかった。

家に帰ると明日に必要な筆記用具や教科書などをカバンに入れていた、それが終わると自分の部屋の整理をした、整理が終わると、何もすることが無くなってしまった。

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「はぁー、暇だー」

などと言っていたら

「幸助君いるー?」

月が来てくれたのだ

「どうしたー?」

「あのね、今まで授業でやった所、教えに来たんだけどー」

「じゃあ、中に入ってよ」

「わかった」

そして、月が二階に上がって来て、俺の部屋に入ってきた。

「え〜っと、椅子は?」

「ちょっと待って、わが汝の名において、物質変換魔法を発動し、本の物質を圧縮し、椅子に変換する」

俺が、指を指していたのは、引越し後に出た、いらない本だった。

本の上部にオレンジ色の光がともり、

「発動!」

俺がそう言うと、緑色の光を放ち椅子へと変換された。

「凄いね!」

月がそう言う

「まあな、それじゃあ、勉強始めよう」

「うん!」

始めにやったのは数学、思ったよりも前の学校より進んでいた。それに、どうやらその学校の先生達は、教え方も上手く進むのも早い。そんな先生ばかりだと言う、この後、英語・数学・理科・現代社会の順にやっていき、三時間程ですべてが終わった。

「じゃあ、また明日ね」

「おう、それじゃあ」

この後、月から教わったところも含め、大体の授業の流れを感じとった俺は、夕食を終えて、眠りに就いた…。

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次の日

「さてと、今日から学校だ」

そう言って、新しい制服を着た俺は家を出た。三十分程経つと学校に着いた、そのあと教室に行き自己紹介があったなど色々面倒な事ばかりだったが、ようやく昼休みに入ることができた。

「はぁー、何して昼休みを潰そうかな」

とぼとぼ歩き始めて中庭へと向かった、中庭は思っていたよりも広く芝生が生えていて、真ん中には綺麗な桜が咲いていた、その中の角にある桜の下で俺は昼寝を始めた。

「くぅー」

俺が寝ていると

「わっ」

と誰かに脅かされた

「なんだよー、月」

「ははは…、やっぱばれたか」

と月が返事をする。

「まったく・・・で、何か用?」

と月に聞いた。

「うん、一緒に寝ようと思って」

「はぁ?」

「だからー、一緒に寝たいの」

月が顔を赤くして言った。

「高校になってまでも、一緒に…、かよ?」

「別に良いでしょ」

と月が言い、俺の横に来て月も昼寝を始めた…。

キーンコーンカーンコーン

「ふぁ〜、チャイムか…」

そして月に顔を向ける。

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「すぅー」

爆睡していやがる。

「おい月、チャイムが鳴ったぞ」

「…」

「たっく…」

仕方なく、月の頭を軽く殴った。

「痛ったー」

と月が言い、すぐに俺の顔を見た。

「何で殴るのよー」

ぷぅーと顔を膨らませた。

「俺がいくら起こそうとしても、起きなかったお前が悪い」

「うぅ、確かに…」

などと会話して教室に戻って行った。

「はぁ、次は国語か〜」

などと言い教科書とノートを出していた。そこに、国語を担当している布留川と言う先生が来た。

(やべ、いかにも眠くなりそうな授業をしそうな先生だな〜)

と思い後ろの席でがんばっていた、しかし、予想通り十五分もたたないうちに俺は眠ってしまった。

「おい桜木、授業おわっているぞ」

勝に起こされた、佐藤 勝(さとう まさる)は昔からの喧嘩友達だったが、ここ数年、俺がいない間に性格が変わり、喧嘩をしなくなったという。

「ふぁ〜、眠い」

「眠いじゃねーよ、たっく」

「悪いな、あの手の先生の話は苦手なもんでな、で、次の授業は何?」

「理科だよ」

「マジ?やったー」

「たっく、しょーがねー奴だ」

こんな会話をしてこの日の最後の授業は終わった。

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「はぁー、疲れた」

俺が下駄箱から靴を取り出して帰ろうとしているところに。

「どうして疲れたの?」

「ん?」

そこに居たのは月だった。

「どうしたんだ、月?」

「どうしたも、こうしたも、幸助君の事を心配してあげているんじゃない」

「ごめん」

月の気持ちを汲み取った俺は、素直に謝った。

「いや、別に謝らなくても平気だよ」

「そうか」

「で、どうしたの?」

月が不思議そうに聞いてくる。

「いや、初めての学校の授業がかったるかっただけだよ」

「ふーん、そうだったんだ。あのさ、一緒に帰らない?」

(まぁ、いいか、こいつといると疲れも取れるし)

と思いつつ、

「ああ、良いよ別に」

「やった♪」

「なんで、やったなんだ?」

「んや、別に…」

顔を赤くして月が言った。

「で、どこか寄るの?」

「うん、町の中心にある、桜街道に行きたいなって思って」

「じゃ、決定だな」

「え?良いの」

「ああ…」

しばらく二人で歩いて行くと桜が見えてきた、二本の桜並木の間には綺麗な川が流れていた、その川をまたぐ橋の上で月が止まった。

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「ここ8年間あの、大きな桜が咲いてないんだって」

そう言った月の目の先には、立派な桜の木が生えていた。

「へぇ〜、立派な桜の木だね」

俺は感想を述べた。

「本当に大きな木だよね〜」

月は何か遠く見ているような顔をして俺に言ってきた。

「しかし、何で急に桜が咲かなくなったんだ?周りは咲き誇っているって言うのに・・・」

俺は疑問に思い、月に聞いた。

「私もあんまり知らないの…」

それもそうだ、月が知っていたら、この町に住んでいて、この桜を研究している人達が、その事を聞いたら卒倒だ。

家に戻って俺は自室の窓を眺めた、偶然なのか、月と俺の部屋が道を挟んで向かい合わせになっている、俺はそんな事を考えつつも、眠りに就いた。

「―、平気ですか?今、私が助けます」

少女の声が聞こえた、少女は俺の体に手をかざす。

「―やめろ…」そして少女が呪文を唱え始めた。

「我が汝の名において、治癒転換魔法を施し、―をこの者に、転移させる」

あたりに虹色の光が灯る。

「治癒転換魔法発動!」

―の声に合わせ魔法が発動する。そして、何かの衝撃と共に、俺の背中には大きく綺麗な片羽が付いた。そして、意識が薄れ行くなか目の前に狂うように咲き乱れる桜と、血の海、その血の海に片羽の少女が倒れていくのが見えた。そして、世界が暗転した…。

「うぇ・・・、気持ぢ悪・・・」

朝から、ブルーな夢を見た俺の目覚めは最悪だった・・・。慌てて台所にいき、冷たい水を飲む・・・。

「はあ〜、ブルーな夢だった・・・」

時計を見ると

「五時三十分か…相当早く起きたな…」

外を見ると、まだ、日が昇りきってなかった。

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(しかし、最近になってからこの夢を良く見るな・・・)

「まー、それはさて置き、早いところ制服に着替えて飯食おうっと」

毎朝自分で自分の飯を作るのもだりーもんだと思い台所に向かう、が、台所に向かう途中の玄関で人らしきものが倒れている。

「ん?誰だ…」

警戒しながらその人らしき物に近づく…、ん?あれ…こんな格好をしている奴、どっかで見たような?さらに近づいてよく見ると月だった。

「…月かよ…」

と言うより、なぜ玄関の前で気絶してんだ、しかも俺の家の玄関で…?まぁいい、とりあえず起こさないと

「おい、大丈夫か、月」

「おーい…」

「…ん」

俺の声にやっと気付いたのか、月が目を覚ます。

「んぁ、あ…おはよう」

「ああ、おはよう…、って、そうじゃなくて、何故お前がここに居る?しかも、俺の、家の玄関前で?」

「え…、あれ?」

自分が何をしたかがまったく分かっていないみたいだ。

「だから、何でお前がここで倒れている?」

「え?え〜っと。朝、幸助君のお父さんに会って、幸助君の話を聞いていたら、『幸助は、自分で朝飯を作っているんだよ』って言われたから、作ってあげようと思って、ここに来たんだけど、その後から記憶がない…」

「はぁ…、ってことはあれか、ここに来たまでは良かったけど、転んで気絶したってことか…」「そ、そうみたい…」

月が顔を赤くして言う、

「仕方ない、どうせだから一緒に作ろうか」

「うん!」

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台所へ向かい朝飯の用意をする。

「はぁー、それにしても必ずといって良いほど朝の冷蔵庫は寂しいものだ…」

冷蔵庫の中は寂しいくらいに食べる物の量が少なかった。

「えーっと、豆腐にニンジン、ヨーグルトに白菜…」

明らかに組み合わせの悪いものしかない…、

「あの親父、また人が腹壊す用なものだけ残してやがる」

「おーい、月」

「何?」

「材料がない…」

「平気だよ、私の家から持ってきてあげるから」

そう言いながら家を出て行って、

「持って来たよー」

と何秒かもたたないうちに月が戻ってきた、持ってきた袋の中身は、魚・梅干・味噌・大根などが入っていた。

「朝の食事には、栄養が整った物をちゃんと食べないとね…」

「確かに良いな」

俺はそう言いながら台所に向かおうとしたが、

「私が作るからそこで座っていてね」

「ん?でもさっき一緒に作ろうと言ったんだが」

「いいの、気が変わったの」

「んー?」

嫌な予感が当たらなければいいんだが…。

二十分がたったころ

「できたよー」

と良いながら月が鍋を持ってきた。

ガパ…、そこには魚の切り身と大根などの野菜、その下には雑炊化しているご飯があった。

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「はぁ…良かった」

「何か言った?」

「んや、何でもない」

「しかし、月は何時からこんなに料理が上手くなった?」

「何で?」

「何年か前にお前の料理を食べたときは一回で箸を置いた覚えがある」

そう、何年か前に食べた時、月の料理はこの世とは思えない位におぞましい物だった、それが今となっては黙っても勝手に手が動いていく…。

こうして、朝飯を食い終わった俺は、月と共に学校へ向かった。

チャイムが鳴り授業が始まった

(もうすぐで、十二月か…)

そう思いながら、窓越しに中庭を見る、外には十一月中だと言うのに綺麗に咲き誇る桜がある。

季節感を感じさせないこの桜は、「山桜」と呼ばれている、しかし、ここに咲く『山桜』は突然変異で生まれた物らしく、半年近く(十一月〜四月)咲いている。

この地では、この期間中、咲かない事の方が珍しい、しかし、ここ最近では、月も言っていたが、一部の桜が咲かないなどと言う事があるらしく、特に川に沿った花道の一角に、樹齢200年を超える桜が咲いていないのだ。

しかし、その木を研究している研究者たちは騒ぎ立てるものの、地元の住民は特に気にする様子もなく普段と変わらぬ日々を送っていた。

「さ〜く〜ら〜ぎ〜」

「?」

呼ばれて我に戻り黒板を見ようとした、しかし、何かとてつもなく重いものが飛んできて、俺の顔面を捕らえた。

「ゴンッ!!」

あまりの衝撃と痛みに悲鳴を上げた。

「ぬぅおぉぉぉ〜」

ガタン!衝撃に耐えられず悲鳴と共に床に倒れた。

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「痛って〜、リーダー何するんだよ!」

「あなたが答えないから、本を飛ばしただけよ!!」

カツ…カツ…

そう言って、彼女は俺の目の前に立った。「この、乱暴女ぁ!!」

リーダーの目が光る。

「何か言った?」

こめかみから血が出ても良いくらいに怒ったリーダーが俺を睨む…

「!?、何も言ってない!」

慌てて修正を入れるが時すでに遅し…、リーダーの見事な回し蹴りが決まったのか暗闇へと俺は落ちた…。

気付くと俺は保健室に居た、

「あ、痛たた…」

俺の首には湿布がされていた、見事にきまった見たいだなリーダーの回し蹴り…、などと俺は思った、小林 恵理華(こばやし えりか)こと、リーダーはうちのクラスの学級委員長である。

小学校の時に知り合ったのだが、一見、知性的な綺麗な女性に見える。

しかし、悪口や、気に食わない事があると凶暴的な性格を出すのだ。

「黙ってりゃ、美人なのにな〜」

などと言っていたら、

「確かに、そうなのよね〜」

カーテンの向こうから女性の声がした。

「居たの?川上先生」

「居たの?とは失礼ね!」

「悪い!悪い!」

川上 観里(かわかみ みさと)は、この学校の保健室の医務員だ、この人は俺の従姉弟で年は4歳上の義理の姉貴だ。

「あのね、幸助君、私の事は前から「観里姉」で良いって言ってるでしょ〜、丁寧に『川上先生』なんて堅っ苦しいわよ」

「あのな〜、学校で『観里姉』なんて呼べるわけないだろ!」

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俺の当たり前だという主張に対して、

「それも、そうか…」

納得してくれたのか、観里姉は頷いた

「まあ、良いけどさ、まさか観里姉がここの医務員とわねぇ〜」

目を細めて観里姉を見てそう言う、

「なにが、いけないの?」

「だってねぇ〜」

…5年前、医学大学に進学した観里姉は、成績は学年トップで大学4年生に飛び級で上がり、その大学が経営する大学院まで入った。

しかも、大学の教授達からは「超優等生」やら、「器量良しのお嬢様」やら、さんざん期待されていて、将来確実に都内の一流の医者達が勤める病院に行くと思われていた。

しかし、観里姉は周りの期待とは裏腹に、学校の医務員になると言った。そのせいで、大学の進学機関や教授、観里姉のファン集団を巻き込む大きな騒動を起こしたのだ…。

「…と言う訳だ」

俺が単純明解に答えると、

「だって〜、ここの高校の男子達が可愛かったんだもん♪」

「『だもん♪』じゃ、ないだろ!おかげで親戚中大騒ぎだったんだぞ!」

「あははは…」

まったく参ったもんだと思った。しかし、まだ頭が痛む、

「仕方ない、使うか…」

俺は強打した首に精神を集中させ、呪文を唱える。

「我が汝の名において、治癒魔法を発動し、自身の自然治癒力を促進させ、首の打撲を快復させる」

ポゥ…あたりに、淡いオレンジ色の光が漂う、

「治癒魔法発動!」

俺の声に合わせ、あたりの光が俺の首へと流れ込む…。数秒のうちに自分のケガを回復させ、集中の糸が切れる。

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「はぁ、終わった…」

治癒魔法で自分のケガを治し終えたところに、

「へぇ〜、幸助君って魔法使えたんだ〜」

驚きと感動の声が観里姉の口から漏れ、俺が答える。

「そんなに驚く事じゃないだろ、第一、俺の家は魔力の血を受け継いでる者が多いんだから」

俺の家系は代々、魔力の血を受け継いでる。俺もその血を引いた者の一人だ。なのに、

「いいな〜、私もそれだけの上等魔法を使えれば、もっとケガの治療が出来るんだけどな〜」

この種の家系は世界に少ないと言われている魔力の塊のような家系である。魔力が使えない者と、魔力が無い者がはっきり分かれるくらいに魔力の血は濃かった。

しかし、魔力はあるものの、著しく魔力が小さい者が現れた。

それが観里姉だった。

「さぁて、俺はそろそろ教室に戻るか…、それじゃあ」

「はいはい〜」

俺は教室に戻り席に戻る。

するとリーダーが寄ってきて、

「さっきは、悪かったわ」

リーダーが謝って来たので俺は、

「別に良いよ、元はと言えば俺が悪いんだから」

「なら良いけど」

そう言ってリーダーは自分の席に着いた…。しかし、部活どうしようかな?いくら、転校してきたばかりとはいえ、部活ぐらいは入っとかないと、後で観里姉に何て言われるか分かったもんじゃないしな…。

そんなことを考えていたら、帰りのホームルームが始まっていた。

「いいか、自分のために最近魔法を使う奴が出てきている。これ以上こんな事が続くようなら、規則はさらに厳しくなるぞ」

「はぁ〜い」

この世で禁じられているのと同じように、この学校でも厳しく魔法を扱っている。ホームルームも終わり、全校生徒は、部活に行く者もあり、家路につく者もいる。

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俺は、自分の部活動を決めるため、部活動を見に行くことにした。

「うーむ、これと言って、良い部活は無いな…」

幾つかの部活動を見たのだが、これと言って良い部活は無く、最後の部活動を見に行くことにした。

「ッタン!!」

何か鋭いものが的に当たる音がした、俺が見に来た部活動とは魔弓道部だった、魔弓道とは、空気中に存在する気体を高圧縮して弓と矢に変える魔法である。

そこへ、一人の男子が壇に立つ、その男子は精神を集中させて、手を空気中に差し伸べる。

「わが汝の名において、気体圧縮魔法を発動し、空気中に存在する酸素を圧縮し、弓と矢に変換する」

あたりに青い光が漂う

「気体圧縮魔法発動!」

男子の声に合わせ光が集束し、男子の手元には、数本の矢と、一本の弓が現れた。

そして男子はそれを手にし、構えて矢を的に向けて射る、しかし、弓から離れた矢は赤い光を伴い始めた。

「まずい!」

俺は、その反応がどういうものかがわかった。

(間に合うか!?)

「わが汝の名におき、シールド魔法を発動し、一定の場所へシールドを発動する!」

俺の間髪いれんばかりの声と共に、あたりの空気中に存在する酸素と水素が、その男子の周りにバリアを張る。

それと同時に先ほど放たれた矢がその光と共に男子の方へと向きを変えて、数本の矢と化し、男子の方に向かって勢い良く飛んでく、しかし、俺の張ったバリアによってそれは弾かれた。

「平気か?」

俺は魔法を解除し、その男子の元へと寄って行く、

「す、すみません、おかげで助かりました」

周りを見ると、ここの道場の主将が寝ている。

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そして、出口の方から拍手が聞こえた。

「ん〜、凄い、凄い」

と言って現れたのは、この部活の顧問・前島(まえじま)先生だった。

「いや〜、噂には聞いていたが、君があの家の息子だったとはね」

「こんにちは、前島先生」

俺が挨拶をすると、前島先生は寝ている主将の前に行き

「コラ!佐藤!」

前島先生が大きな声を上げて一喝する。

「ふぁ〜」

あくびを上げて起きたのは勝だった。

「うそ!?、お前が魔弓道部の主将!?」

驚いた、こいつがこの部活の主将だったとは…。そして、俺のそばに前島先生が寄って来る、

「君、魔弓道は使えるか?」

などと、俺に質問してきた。

「はぁ、一応は使えますが」

と俺は質問に対して答えた。

「どうかな、一回、君の魔弓道を見せて貰いたい」

前島先生は、俺に申し出をして来たのだ。

「でも、俺はここの部員ではないし…」

当たり前であるが、部員ではない俺がここで使うのもどうかと思う、すると

「本当は撃てないんだろ〜」

などと、勝が茶化してきやがった、俺は一回、勝を睨んで、

「分かりました、見せましょう」

その後、前島先生は他の部員にも連絡を取り集めてきたのだ、何だかややこしくなってきたな、そう思いながら俺は壇上に立つ、

「防具はいらんのか?」

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そう、魔弓道では先程みたいに魔法が暴走した時、その暴走はすべて術者にかえってくる。その、魔法の反動から身を守るため防具をつけなければならないのだが、先程の様に赤く光る場合には、時として防具を壊す程の反動がある。

「いいえ、必要ありません」

そう言うと、俺は全神経を集中させ呪文を唱える。

「わが汝の名の下に、シールド魔法を発動させ、それと同時に、高圧縮魔法により矢と弓を具現化する。」

あたりに、青い光と緑の光が漂う、

「発動!」

俺の声と共に、光が集束し俺の身体には、シールド魔法によって作られた防具と、矢と弓が一本ずつ現れた。

「何だ、幸助は矢を一本しか具現化できないのか?」

俺の周りにシールド魔法によって作られた防具が見えてないのか、勝がさらに茶化す、しかし、隣では前島先生と部員達が目を輝かせて俺を見ている。

「お前の実力なんて、そんなもんか」

また、嫌味を言いやがって、と思ったが、

「そうだな…」

俺は一言言うと、矢を的に向け放つ、離れた瞬間もう一つの呪文を唱える。

「散れ!」

俺の一言と共に矢が数本現れる。俺の目の前の一本の矢はさらに光を伴い力を増していく、

ドン!!

あたりに砂埃が立ち込める、

「そんな、バカな…」

勝が驚きの声をあげた、その答えは的にあった。道場には等間隔に7個の的がかけてあり、その全部の的のど真ん中に矢が刺さっている。しかも、俺の目の前の真ん中に位置している的は割れていた。

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「俺の魔力でさえ、こんな事は不可能だ」

同じようにして前島先生も驚く、その場に居た部員達は口を開けたままだ。

俺は勝のそばに寄って行き、

「俺の実力なんてこんなもなさ」

と怖い笑顔を作って勝に言う、

「悪かった、許してくれ!」

勝はどけ座して俺に謝ってくる、

「思いしったか、この怖いもの知らずめ〜」

ハッハッハと笑って勝を見下ろした、こうして俺は魔弓道部にスカウトされた。

 

説明
第三部目となります。
まだまだ、未熟なのでお許しを・・・
スミマセン
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