マイ「艦これ」「みほ3ん」(第参部)EX回 第15話『今(NOW)に乾杯』
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せっかくのBar Adomiralだったが美保司令は、お酒を飲まなかった。するとある艦娘もまた決意するのだった。

 

「互いの鎮守府の発展と活躍を願って乾杯しよう」

 

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マイ「艦これ」「みほ3ん」(第参部)

EX回:第15話『今(NOW)に乾杯』

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 Bar Adomiralでは少し、しんみりした空気が流れていた。

 

「あ、ちょっと拙かったかな?」

思わず呟くように私は言った。普通Barで酒断ちの話なんかしないよな。

 

 それを打ち消すように提督は、こちらを振り返って応える。

「よし、わかった! 俺が今から最高の飯をご馳走するよ! さぁ、何でも好きな物を頼んでくれ」

 

その台詞が終わらないうちに奥の方に鎮座していたブルネイ鎮守府の艦娘たちから矢継ぎ早に注文が飛んできた。

私が酒断ちの話をしたばかりだと言うのにカクテルだのボトルだの、その内訳はアルコールばかりだった。

 

 さすがの提督も少し苦笑していた。

 

こちらの艦娘たちは慣れているのだろう。しかし美保の艦娘たちは、その勢いに圧倒されて思わず小さくなり固まっていた。

 

 怒涛の注文が落ち着いたところで提督が言う。

「さて、新米君のトコのお嬢様方は何を?」

 

すると、それまで黙っていた美保の金剛が言った。

「NOW、テイトクが飲まないのに私たちが飲むワケには参りまセーン」

 

この発言にはさすがに度肝を抜かれた。隣の比叡もあたふたしているが、よく見ると金剛はこっちを見てウインクをしている。なるほど……『NOW』ということ、今だけか。

 

彼女の言葉に美保の艦娘たちは軒並み頷いている。

 

ところが、その雰囲気に押されたのか日向が突然その場で立ち上がった。

「この日向も、たった今から酒は断ちます!」

 

この発言には、その場の全員が驚いた。金剛の発言もインパクトがあったが、それを上回る爆弾発言だった。

 

 言った本人は少し下を向いて赤くなって居る。このお盆に私の実家で酔い潰れて人格崩壊していた彼女の姿を知る私にしてみれば、彼女の言葉は正直、にわかには信じられなかった。日向も一途なところがあるけど……後悔するなよ。

 

少し心配になった私は声をかけた。

「大丈夫か?」

 

彼女は私を見て恥ずかしそうに応える。

「はい、大丈夫です」

 

「そうか」

あの時は利根や山城さんに飲まされていたから仕方無いか。「今(NOW)」を一生懸命に生きる日向の決意なら、それは尊重してあげよう。私は、そう考え直した。

 

 提督は、また後ろを向いて感動しているようだ。

 

ちなみにブルネイ所属の、もう一人の日向はというと奥のテーブルでガンガン行っている。既にビール髭も出来て居て、それを軽く拭っている。彼女に比べたら、うちの日向は、お酒に強くなさそうだ。ああなってしまっても困る。

 

提督は日向を始め、お酒を飲まないうちの艦娘たちにノンアルコールのカクテルを作ってくれた。

 

 続けて彼は隠し扉のような所から秘蔵品っぽいボトルを開けてグラスに注いでいる。

そして全員にグラスが行き渡ったのを確認すると自分もグラス片手によく通る声で言った。

「何はともあれ妙な出会いだったが、こんな貴重な経験も無いだろう。さぁ、互いの鎮守府の発展と活躍を願って乾杯しよう」

 

そこで一呼吸。

「乾杯!」

 

『乾杯』

……こんな素敵な「飲み会」ならお酒を飲まない私でも良いものだ。

 

「へぇ、ノンアルコールでも美味しいデスね!」

「ホントですね」

「……」

美保の艦娘たちもキャッキャとはしゃいでいる。彼女たちはほとんど飲みに出ると言う経験が無いわけだからな。

 

 冷蔵庫を開けて中を見ていた提督は、そこから長芋と明太子を取り出した。

「手早く一品作っちゃうから、それつまんで待っててな」

 

ブルネイの艦娘たちが「はーい」と返事をする。

 

 少し雰囲気が緩んで来ると、互いの鎮守府でまとまっていた艦娘たちの席順もブルネイの夕立や金剛を中心に積極的に席替えをして交流を始めている。そんな彼女たちを見ていると感慨深い。

 

オリジナルと量産型……まったく同じ種類の艦娘がいるとはいえ、鎮守府が違えば「雰囲気」が違う。まして普段、願ったとしても他の鎮守府の艦娘と交流する場はほとんどない。

恐らく艦娘が量産化されたとしても、こういった機会は難しいだろう。

 

それが、ひょんなことから別の鎮守府の、それも海外だ。しかも時代が違う艦娘と交流している。これはまさに千歳一隅のチャンスだろう。

 

そんな二度と再現できない貴重な一瞬を過ごしていることを、この中の何人が悟っているだろうか?

 

直ぐに一品が出来て提督が顔を上げる。

「はい完成『長芋の明太子和え』だ。おいお前ら、誰でも良いから運んでくれ」

 

彼がそう言うとブルネイの龍田さんと美保の寛代が立ち上がって、それぞれの席へ運んでいった。

 

速攻で手を伸ばしたのは、やはり双方の金剛。脚だけでなく手も速いか。

「んー♪deliciousデース!」

「確かに、美味しいわぁ♪」

 

金剛に続いたのは静かな龍田さん。二人とも、おいしそうに食べている。

赤城さんは意外に料理には直ぐに手を出さずにニコニコしているだけ。逆に怖いな。

 

「あれ?」

思わず声が出た。

 

うちの祥高さんが先方の青葉さんに料理の写真撮らせているんだ。レシピでも覚えるつもりだろうか?

 

 直ぐに厨房の提督から視線を感じた彼女は言い訳のように応えた。

「あぁ、済みません。あまりに美味しそうだったので、うちの鳳翔さんに写真を参考にして再現してみようかと」

 

「ほぉ、そうしてもらえると助かるな」

私も思わず声をかけた。

 

 海軍の伝統だろう。美保鎮守府の食堂も十分、美味しいメニューが多い。

それでもレパートリーが増えれば皆が喜ぶ。

 

軽く頷いた提督は言った。

「もし良かったらコッチ来る? 材料とか分量とか入ってきてメモした方が楽でしょうに」

 

「えぇ!? でもレシピを盗まれては困るのでは……」

祥高さんは申し訳無さそうに言う。

 

「ハハハ、そんな大した料理は作ってねぇから。ただ呑兵衛が気ままに作ってる家庭料理? ……とも違うか。まぁそんな大層なモンじゃないから、良ければおいでよ」

 

 提督はニコニコして手招きする。

それを見た祥高さんも「それでは遠慮なく」と言いながら厨房へ入るとメモ帳を取り出した。その準備の良さに提督も、ちょっと驚いているようだ。

 

 艦娘でありながら提督代理を務めたこともある彼女。艦娘としての基本スペックの高さは折り紙つきだ。それでいながら美味しい料理のレシピをも気にかける繊細さも持ち合わせている。

 

本当に能力の高い艦娘はドンドン人間に近づくといわれている。彼女は、まさにその典型かも知れない。

 

 ただいつも疑問に思うことは、そもそも山陰の片田舎にある辺鄙(へんぴ)な鎮守府に、なぜ彼女のように優秀な艦娘が居るのだろうか? ということだ。

 

そんな疑問が湧くと、引きずられるようにしてもう一つの心配を思い出した。うちの青葉さんと夕張さん、それにあの技術参謀は、どこで何やっているんだ?

 

「はあ」

私は、ちょっとため息をついてドリンクを口にした。責任者と言うのは気が休まらないものだな。

 

「あ! そうか」

ふと閃いた。

 

誰か口の堅そうな艦娘に通信してもらえば良い……そこで目に付いたのは、やっぱり寛代だ。

 

 

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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サイトも遅々と整備中〜(^_^;)

http://www13.plala.or.jp/shosen/

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PS:「みほ3ん」とは

「美保鎮守府:第参部」の略称です。

説明
せっかくのBar Adomiralだったが美保司令は、お酒を飲まなかった。するとある艦娘もまた決意するのだった。
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