恋姫英雄譚 鎮魂の修羅26の2
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拠点・麗春

 

 

 

麗春「うおおおおおおおおおおおお!!!」

 

サラサラサラサラサラサラ!!!

 

ここは麗春の執務室、この部屋の主が現在猛烈な速さで竹簡に筆を走らせていた

 

桂花「ちょっと麗春!!どんなに早くやっても間違っていたら意味ないわよ!!」

 

燈「いいえ、確認していますけど間違った所は殆どありませんよ♪」

 

桂花「そ、そうなの?・・・・・」

 

稟「凄まじい集中力ですね、そんなに早く一刀殿の資料が見たいのですか?」

 

執務をしている机の真正面では、一刀の提出した同盟資料に目を通している桂花、稟、風がいた

 

麗春「違う!!!そのようなものは二の次三の次だ!!!」

 

桂花「じゃあどうしてそんなに必死なのよ!?」

 

風「分かりませんか桂花ちゃん〜、麗春ちゃんは一刻も早くお兄さんとお話がしたいんですよ〜」

 

麗春「その通り!!!その為にもこの鬱陶しい竹簡を目の前から消去せねば!!!」

 

サラサラサラサラサラサラ!!!!

 

燈「あらあら、更に速さが増してきましたわね♪」

 

風「見ていて気持ちのいい仕事ぶりですね〜」

 

そうこうしている内に

 

麗春「よ〜〜〜し、終わったぁ〜〜〜〜〜!!!」

 

最後の竹簡に止めを刺し、椅子から立ち上がろうとする麗春だったが

 

麗春「くぅ〜〜〜・・・・・疲れたぁ〜〜〜・・・・・」

 

集中の糸が切れたのか、机に突っ伏してしまった

 

燈「お疲れ様です麗春ちゃん、美味しいお茶を淹れて差し上げますね♪」

 

麗春「そんな物よりも、私は一刻でも早く一刀に会いたいんだぁ〜〜・・・・・」

 

燈「そのように疲れ切っていては、まともにお話しすることも出来ませんよ、まずは一服して落ち着いてください♪」

 

麗春「・・・・・それもそうだな」

 

そして、燈からもらったお茶を飲み干し、大きな吐息と共に麗春は椅子にもたれ掛った

 

稟「それにしても麗春殿、普段肩に止まっている鷲はどうされたのですか?」

 

麗春「ん、灰か?・・・・・そう言えば見当たらないな・・・・・」

 

部屋を見回すも、自身のトレードマークの一つである灰が何処にもいない事に違和感を覚える

 

麗春「おかしいな、あいつはよほどの事が無い限り私の傍を離れないはずだが」

 

稟「よほどの事と言うとどのような事ですか?」

 

麗春「主に私が書いた手紙を実家に届ける時だな」

 

桂花「へぇ〜〜、便利ね・・・・・どうやって躾けたのよ」

 

麗春「森の中で怪我をしていたあいつを私が看病してな、それ以来私の傍を離れなくなった」

 

風「ほほう、まるで風の宝慧のようですね〜」

 

宝慧「俺と風の馴れ初めも聞かせてやろうか〜」

 

頭に乗せてある人形を腹話術をしながら操る

 

麗春「いや、興味はない・・・・・それよりも早く一刀に会いに行かなければ!!」

 

燈「鷹さんは後回しですか?」

 

麗春「むぅ、確かに灰も大事だが・・・・・両方同時に探すとしよう」

 

そして、普段と違って肩が寂しそうな麗春は部屋を退出した

 

桂花「まったく、あんな奴の何処が良いのよ」

 

稟「麗春殿も一刀殿の力を目の当たりにした一人ですしね」

 

風「確かに、先にお兄さんの能力を見れば誰しもが欲しいと思うのは仕方のない事ですけどね〜」

 

燈「まあまあ、そこまで魅力的ですの、あの殿方は♪・・・・・私も麗春ちゃんと一緒に籠絡しに行っちゃいましょうか?//////」

 

桂花「止めときなさい、実力が折り紙つきでも、頭の中が捻じ曲がってるもの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗春「・・・・・さて、探すのはいいが何処をどうしたらいいか」

 

両方同時に探すのは構わないが、闇雲に探したところで非効率的なので、まずは情報を集める事にする

 

麗春「もし、そこの者」

 

「あ、これは司馬懿様!」

 

目の前を通り過ぎようとした女文官に声をかけるも、文官は引き攣った声を上げる

 

「私めの様な未熟者に話し掛けて下さるとは、光栄の至りであります!」

 

どうやら麗春に話し掛けられるのも会話をするのもこれが初めてらしく頭を下げっ放しのまま口上を述べている

 

麗春「おいおい大袈裟だな、私だってここに来てそれほど日が経っているという訳でもないんだぞ」

 

「いいえ、かの司馬八達の一人にお声をかけて頂けるなど、嬉しくて涙が・・・・・」

 

この世界でも司馬家は相当な名門である事で有名で、この麗春を含めた八人姉妹は司馬家始まって以来の才女として名を馳せていたためこの文官の態度も納得できるものだ

 

麗春「そのように恭しくしなくともいい、二,三、私の質問に答えてくれればそれで良い」

 

「は、私めで良ければ何なりと!」

 

麗春「灰、私が普段肩に乗せている鷹を知らないか?」

 

「司馬懿様の鷹ですか?・・・・・申し訳ありません、今日は見覚えが・・・・・」

 

麗春「そうか、では一刀・・・・・天の御遣いを見かけなかったか?」

 

「御遣い様ですか、それでしたら先ほど廊下を擦れ違いましたけど」

 

麗春「何!!?どっちに行ったんだ!!」

 

「はい、西の・・・・・」

 

麗春「ありがとう!!」

 

そして、話を最後まで聞かず麗春は走り去った

 

「ああ、司馬懿様!・・・・・文官としてお声をかけてくれた訳ではなかったんですね・・・・・」

 

政に係わる事ではなく、極々個人的な質問だった事に、この文官は残念そうな表情を見せる

 

「それにしても、天の御遣い様ですか・・・・・少し擦れ違っただけでしたけど、とても凛々しいお人でしたね////////」

 

噂で天の御遣いの事は伝え聞いていたが、あの司馬八達の一人すらも見初めさせてしまうほどなので、この女官も一刀に対して畏怖の念を抱いていたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗春「・・・・・私としたことが、早まったな」

 

今思えば西と聞いていただけで、具体的に何処なのかを最後まで聞いていなかった

 

麗春「いかんいかん、少し冷静にならねば・・・・・もう一度戻って聞こう」

 

深く息を吸い込み、気を落ち着け来た道を戻ろうとした時

 

季衣「あ、麗春様だ」

 

流琉「こんにちは、麗春様」

 

廊下の端から曹操親衛隊二人組が現れる

 

麗春「おお、季衣に流琉か、丁度良かった、一刀を見なかったか?」

 

流琉「兄様ですか、兄様だったら先ほど北の・・・・・」

 

麗春「恩にきる!!」

 

バシューーーーーーーン!!!

 

季衣「あ、あれ!麗春様!?」

 

流琉「兄様は北の正門に行きましたよ、麗春様聞いてますかーー!!?」

 

どうやら聞こえてないらしく、目にも止まらぬ速さで麗春は走り去った

 

季衣「うぅ〜〜ん、麗春様どうしちゃったんだろう」

 

流琉「麗春様らしくないよね、兄様と早くお話したいのは分かるけど」

 

季衣「うん、普段だったら話を最後まで聞くのに」

 

流琉「そんなに兄様の事が好きなのかな?」

 

季衣「だったら嬉しいな、僕も兄ちゃんの事が大好きだし♪」

 

流琉「うん、常に皆の事を考えてくれているし、兄様が本物の兄様だったら、私も凄く嬉しいよ♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

麗春「おかしい・・・・・いったい私はどうしてしまったと言うんだ・・・・・」

 

如何に早く一刀に会いたいとは言っても、これでは無様に過ぎる

 

これではどこぞの田舎者として扱われてもおかしくない

 

麗春「いかんいかん、本格的に冷静にならねば・・・・・これでは堂々巡りになってしまう、一旦自分で探してからその後で聞こう」

 

人に聞くからこんな事になってしまうと言うのであれば、まずは自分で探してそれで見つからなければ人に聞く事にしようと決める

 

麗春「・・・・・先に灰を探し出して空から一刀を探し出すのが一番か」

 

今思えば、それが一番効率的だったことに気付く

 

さっきまで無駄に右往左往していた自分を省みて恥ずかしくなってくる

 

麗春「灰〜〜〜〜!!灰〜〜〜〜〜!!!」

 

廊下を歩きながら自身のトレードマークを呼ぶが、何処からも羽ばたき音が聞こえてこない

 

麗春「むぅ、これくらいの声なら、あ奴はすぐにでも飛んでくるはずなのだが・・・・・」

 

城内に居れば、自分の声に反応して肩に止まるのであるが、そうでないのであれば城外か何か動けない理由があるのかもしれない

 

麗春「まさか、あ奴の身に何かあったのか?」

 

焦燥感に駆られ、早足で廊下を進んでいく、そして東の中庭に辿り着く

 

麗春「ん・・・・・おお!一刀ではないか!」

 

城内をほぼ一周する形で一刀を見つける事が出来た

 

幸せの青い鳥を思わせるが

 

麗春「・・・・・なん、だと」

 

そんなものを見つけるより遥かに仰天する光景が目の前にあった

 

一刀「よ〜〜しよし、良い子だな」

 

灰「・・・・・♪」

 

自分のトレードマークである灰が、無刀術の戦闘装束の一部である腕に巻かれた包帯に止まっていたのである

 

しかも、一刀に撫でられ気持ちよさそうに警戒心の欠片も出さずリラックスして止まっているのである

 

麗春「・・・・・驚いたな」

 

一刀「ん?・・・・・よう、麗春・・・・・って、どうしたんだ?鳩が豆鉄砲食らったような顔だぞ」

 

麗春「いや、私はその灰を探していてな・・・・・」

 

一刀「へぇ〜、お前灰っていうのか・・・・・結構人懐っこい奴だな」

 

麗春「そんなことはない!灰は、私以外の人間にこれまで懐いた事は無かった!」

 

一刀「そうなのか?それじゃあ、どういう風の吹き回しだお前、ん〜」

 

灰「♪〜〜」

 

喉を撫でてやると、灰は自ら一刀の手に擦り寄って来た

 

麗春「一体何をしたんだ?この灰がここまで気を許すなど、未だかつて無かったぞ」

 

一刀「別に特別な事なんて何もしていないぞ、強いて言うなら俺は昔から動物には懐かれていたからな」

 

麗春「・・・・・・・・・・」

 

そういう次元の話じゃないと言いたいが、麗春自身も訳が分からないので言葉を発する事が出来ない

 

一刀「ほら、お前のご主人の所に行きな」

 

そして、一刀は麗春の肩に灰を乗せてあげた

 

麗春「・・・・・どうやら、君は私が思っていた以上のものを持っているようだ」

 

一刀「思っていた以上のものだって?」

 

麗春「それが何かは私にも分からない・・・・・しかし、この気性の荒い灰がここまで懐くと言う事は、君には人を引き寄せるだけの何かがあると言う事だ」

 

一刀「人を引き寄せるねぇ・・・・・良い意味で引き寄せられればいいんだけどな」

 

麗春「ますます気に入った、一刀よ本気で私のモノになる気は無いか♪」

 

一刀「そのモノというのは具体的にどういうモノを言うんだ?」

 

麗春「モノはモノだ、深い意味はない♪」

 

一刀「多少は掘り下げろって、抽象的過ぎるっての!家臣とか部下とか色々あるだろう!」

 

麗春「そうだな、あえて言うとすれば・・・・・所有物だな♪」

 

一刀「さようなら、会えてよかったよ、麗春」

 

麗春「あああああ、待て待て!!今のは冗談だ冗談!!」

 

ツカツカとその場を去ろうとする一刀の腕を掴み必死で引き止める

 

一刀「あのなぁ、本当にお前の家は名家なのか?話に聞いていたのとは違う気がするぞ」

 

麗春「確かに司馬家は名家として名が通っているが、性格は其々だよ♪」

 

一刀「とても司馬氏の出とは思えないサバサバした性格みたいだけどな」

 

司馬氏は代々尚書などの高官を輩出した名門の家柄で、司馬懿は幼い頃から厳格な家風の下に育った

 

河内郡温県孝敬里出身、司馬防の次子で、楚漢戦争期の十八王の一人である殷王司馬?の12世にあたる

 

しかし、こちらではどうか知らないので、これ以上細かい所まで掘り下げる事はしないでおく

 

一刀「それで、具体的にモノっていうのは何を差すんだ?」

 

麗春「う〜〜〜ん、家臣や部下も悪くはないが・・・・・一番いいのは、我が夫として司馬家に来てくれることか♪」

 

一刀「またかよ、孫堅さんにも孫家に婿に来いって誘われているんだけどな」

 

麗春「何!!?それはいかん!!今すぐ婚姻しよう、すぐしよう???///////」

 

一刀「早まるなって!!決まった訳じゃないんだから!!・・・・・それより、孫堅さんにも質問したんだけどさ、麗春にも聞きたい事がある」

 

麗春「何をだ?私の体の寸法か??////////」

 

一刀「ちげぇ〜〜よ・・・・・麗春は、具体的に俺の何処に引かれているんだ?」

 

麗春「何処、というのは?」

 

一刀「そこまで俺に固執するには、それなりの理由があって然るべきだろう、モノだの所有物だの、挙句の果てに夫だの言うくらいだからな」

 

麗春「簡単な事だ、私は一刀だから来て欲しいんだ♪」

 

一刀「また抽象的になっているぞ」

 

麗春「むぅ、細かい奴だな・・・・・私はな、私に一刀の全てを捧げて欲しいと思っているんだ」

 

一刀「全てだって?」

 

麗春「ああ、私の手となり足となり、一刀の知略、武、その持てる力の全てをこの大陸の為に差し出して欲しいんだ」

 

一刀「俺に何をさせるつもりなんだ?」

 

麗春「私も今のこの大陸の現状には心を痛めている・・・・・この気持ちは一刀も同じだと思っているのだがな」

 

一刀「具体的に言うと、俺の知識による計略、北郷流の武を持って多くの犠牲を生み出し、大陸統一の為の手助けをして欲しいと?」

 

麗春「一刀の事は聞いている、根っからの平和主義者だと言う事も・・・・・ならば一刀は、自分がしたい事をすればいい、たとえ私の指示だったとしても一刀の意にそぐわないものなら拒否してくれていい、その役目は他の者が担えばいいだけの話だからな」

 

一刀「つまりは、俺に人殺しの片棒を担げと言う事か」

 

麗春「おいおい、それはいくらなんでも我が儘が過ぎるぞ、自分の手を一切汚さずに一生をまっとう出来る人間がこの世に居るとでも思ったのか?」

 

一刀「俺から言わせてもらえば、そんなものは屁理屈だ」

 

この言葉も正しい、そんな事を言い出したら、罪を犯していない人間など居ない事をいいことに悪事を働きまくる者は、不法者ではなく合法者と言う事になってしまうであろう

 

一刀「それに麗春がそんな野蛮な道を歩む事は無い、俺が漢王朝を正し、今の平和を確かなものにするからな」

 

麗春「なるほど、華琳様の言っていた通り、一刀は現実を見ない夢想家のようだな」

 

一刀「現実なら見ているさ・・・・・この先に待っている麗春達が考えもしない悲惨この上ない現実をな・・・・・」

 

麗春「なんだって?」

 

一刀「この話はこれでお終いだ、話せば長くなるし、詳しく話したところで麗春達は信じないだろうしな」

 

麗春「・・・・・・・・・・」

 

この一刀の言葉に、麗春は深く思考を巡らせるが、納得のいく考えが思い浮かばなかった

 

一刀「それと、俺も前から麗春に聞きたかったことがあるんだけどな」

 

麗春「ん・・・・・おお、何でも聞いてくれ♪」

 

一刀「麗春は、自分の手で天下を治めたいとか思っているか?」

 

麗春「!?・・・・・なぜそのような事を聞くんだ?」

 

一刀「いや、麗春がどうして華琳に仕えているのかが気になったんだ、麗春の家系だったら、自ら天下に旗揚げしそうな気がしてな」

 

麗春「おいおい、いくら私の家が名家で各地に顔が効くとしても、そこまでの力は持ち合わせていないぞ」

 

史実の司馬懿仲達と言えば、曹魏に反旗を翻したクーデターの主犯者で有名であるが、そもそも何故司馬懿はクーデターを起こしたのか

 

クーデターを起こすまでの司馬懿は、蜀漢の諸葛亮との幾重もの戦いを見れば曹魏に忠節を貫いていたようにも見えるが、司馬懿は死に際して息子達に次のような言葉を残している

 

「みな私が謀反すると疑っていたので、私はいつもそのような疑いを懐かれぬよう注意を払ってきた、私が死んだら、お前達はうまく国を治めるよう慎重に行動せよ」、と

 

と言う事は、司馬懿は最初から猫を被っていたと言う事であろう

 

魏の礎を創った曹操も、後に西晋の礎を築く司馬懿に対して「司馬懿は誰かに仕えるような男ではない」と常に警戒していたとされるが、それが的中した形となった

 

この麗春も、そんな素振りは見せていないが、常に警戒しなければならない要注意人物には違いない

 

一刀「・・・・・それじゃあ、なんで麗春は華琳に仕えているんだ?」

 

麗春「華琳様が何処からか私の事を耳にして私に招集をかけていたんだが、その時私は病を患っていてな、招集に応じたくても応じれなかったんだ・・・・・という訳で、私は自ら望んで華琳様に仕えている訳ではないんだ」

 

一刀「・・・・・それ、嘘だよな」

 

麗春「?・・・・・嘘、とは?」

 

一刀「病気だったなんて嘘、仮病だったんだよな」

 

麗春「・・・・・何故分かった?」

 

一刀「天の知識、とでも言っておこうか」

 

司馬懿は、その才能を聞いた曹操によって出仕を求められるが、司馬懿は漢朝の命運が衰微していることを知り、曹氏に仕えることを望まず、病気を理由に辞退した

 

曹操は刺客を放ち、「もし驚いて逃げるようであれば殺せ」と命じたが、司馬懿は臥して動かなかったために難を逃れた

 

その後曹操が丞相となり、「捕らえてでも連れてくるように」と命令したため、やむを得ず出仕した

 

魏略によると、曹洪に交際を求められた司馬懿は、訪ねて行くのを恥に思い、仮病を使い杖をつき、恨みに思った曹洪が曹操に告げ口し、曹操に出仕を求められると、杖を投げ捨て応じたとも伝えらえている

 

曹芳の代に至って後事を託された曹爽一派によって実権を半ば奪われてしまう

 

その時は大人しく我慢していたのだが、曹爽達の権力を盾にした横暴な振る舞いを見逃せなくなったのか、とうとう曹爽の目を欺く為に再び病気を装い、後に正始の変と呼ばれる司馬一族による政変を起こして曹爽達を誅殺

 

以後の司馬一族が魏の実権を握るようになるきっかけを作り出した

 

と、このように、この麗春も陳親子と同じように今この時点で華琳に仕えているのはおかしいが、深くは追及しないでおこう

 

なにせあの諸葛亮と?統と徐福までもが、今の時点で桃香に仕えているのだから

 

三顧の礼も涙目であろう

 

麗春「そこまで見抜いているとは、やはり一刀は私が思っている以上の逸材のようだ♪」

 

一刀「どうして仮病を使ってまで先送りにしたんだ?」

 

麗春「妹達の世話が忙しくてな、私が華琳様に仕えるようになればそうそう実家に顔を出すことも出来なくなる、自立させる為に料理を仕込むための時間が欲しかったんだ」

 

一刀「華琳だってそこまで短気じゃないだろう、別に仮病を使うほどの事でもなかったんじゃないか?侍女にでも任せればいいだろう」

 

麗春「私の可愛い妹達の世話を侍女に任せられるわけがないだろう、こう見えても妹達の事は愛しているのでね、流石に全ての世話を出来た訳ではないが、料理だけは必ず私が作っていた」

 

一刀「へぇ〜〜、麗春が料理をね・・・・・」

 

麗春「お、私の手料理を食べてみたいか♪」

 

一刀「そのうちにな・・・・・俺も料理は得意分野だけどな」

 

麗春「ほほう、天の料理か・・・・・これまた興味をそそられる♪」

 

一刀「近い内にご馳走してやるよ、流琉も料理を嗜むと聞いているからな」

 

麗春「ああ、流琉の腕は私も認めている、あれは相当な研鑚を積んできているな♪」

 

一刀「それならここに居る間に料理合戦でもしてみるか、俺も麗春達の料理には興味があるからな」

 

麗春「いいとも、存分に馳走してやろう♪」

 

瞳を輝かせながら心弾ませる麗春、どうやら料理というワードが重なった事がよほど嬉しいらしい

 

麗春「やはり一刀とは馬が合いそうだ、私と趣味が似通っているし、何よりこの灰が懐いているのだからな♪・・・・・なぁ一刀ぉ、本気で私の夫になってくれないかぁ?////////」

 

一刀「な、なんだよ/////」

 

いきなり腕に抱き付き擦り寄ってくる麗春、その豊満な双丘が作り出す谷間が否が応でも視界に入り、おまけに女性特有の薫香が鼻孔を擽る

 

麗春「その代わりに、一刀は私の体を好きにしていいぞぉ?////////」

 

一刀「はぁ!?///////」

 

麗春「当たり前だぞ、私の夫となるんだ、それくらいの権利は与えてやる・・・・・決して他人には言えないような、淫猥で生々しく激しい慇懃を朝から晩までさせてやるぞぉ???/////////」

 

一刀「変に具体的になってないか!!?/////////」

 

麗春「何を言う、一刀だったら私はどのような責めも受け入れてみせるぞ、一刀だって内心期待しているくせに〜〜〜???////////」

 

むぎゅうううううううう!!

 

一刀「むごぁ〜〜〜〜〜〜!!//////////」

 

そして、一瞬で一刀の首に腕を回し、その豊潤な果実に顔を押し付ける

 

只でさえ妖艶でグラマラスでセクシーで劣情を掻き立てフェロモンたっぷりな容姿をしているのにこんな事をされては、理性と煩悩が崩壊しかねない

 

一刀「ちょっ、止めふむぅ〜〜〜〜〜!!/////////」

 

麗春「遠慮する事はない、この体は既に一刀専用の弄物であるのは決定事項なのだから??////////」

 

逃げようとする一刀を逃がすまいと、そのチャイナ服からはみ出る美脚を絡め、更に強く双丘を押し付ける

 

このままでは息が続かないので麗春を押し退けようとするが

 

ムニュウウ

 

麗春「きゃうん???//////////」

 

一刀「っ!!?////////」

 

途端に麗春から発せられる嬌声と、手の平から伝わる円く柔らかい官能的な感触

 

女性の象徴に、自らの手の平が沈み込んでいる

 

麗春「んふんぅ??・・・・いいぞぉ、いくらでも触って甘えてくれぇ??/////////」

 

ムギュウウウウウウウ

 

一刀「ふぐぁ〜〜〜〜〜!!/////////」

 

むしろ嬉しそうに更に密着してくる麗春

 

その感触を確かめるかのように、自ら一刀の手を導く

 

丁度その時

 

桂花「きゃーーーーー!!!麗春があいつに襲われているーーーーー!!!」

 

燈「まあまあまあまあ、何て大胆な?/////////」

 

季衣「うわ、凄・・・・・兄ちゃんと麗春様ってあそこまで仲がいいんだ///////」

 

流琉「////////////」

 

ここに数人の軍師と将達がタイミングを見計らったかのように表れる

 

桂花「心配になって来てみれば予感的中よ!!!誰か、誰かーーーーー!!!」

 

風「お兄さんも隅に置けないのを良い事に、やる事やってるんですね〜////////」

 

梨晏「わぁ〜〜お、やっぱり一刀ってば後宮作っちゃうつもりなんだ〜?////////」

 

一刀「違っむんぅ〜〜〜〜〜!!!/////////」

 

そう見られてもしょうがないが、一刀だってそのような事をしようとは思っていない

 

周りの事などお構いなしに抱き付いてくる麗春を何とか押し退けようとするが

 

ムニュムニュムニュ!!

 

麗春「あふぅん??そうだその調子だぁ、そのように沢山弄んで辱めて嬲ってくれて構わないぞぉ???/////////」

 

更に上下左右に揉み込まれ、豊満な果実がいやらしく形を変えるだけとなる

 

綾香「そ、そんな・・・・・あんな風に、激しく胸を揉みしだいて/////////」

 

燈「ああん、そのような淫行を見せ付けられてしまっては、お腹の奥が疼いてきてしまいますぅ??////////」

 

稟「ああ、ああああ・・・・・麗春殿が一刀殿に、あのようなぶーーーーーー!!!/////////」

 

華雄「いや、どう見てもあれは司馬懿が北郷に抱き付いているとしか・・・・・」

 

一人だけ冷静な者がいるが、たった一人が平常心を維持していたところで集団心理というものは止まらない

 

桂花「このケダモノ、強姦魔、全身精液男ーーーーー!!!」

 

灰「クワーーーーーー♪」

 

麗春の隠された性癖を身を持って思い知った一刀

 

その天国と地獄の状況下で最後に耳に届いたのは、桂花の罵声と灰の嬉しそうな鳴き声だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

拠点・春蘭、秋蘭

 

 

 

季衣「どりゃああああああ!!!」

 

流琉「せいやああああああ!!!」

 

梨晏「うわお!!なかなかやるじゃん♪」

 

華雄「ほほう、元気ではないか♪」

 

現在、城内の闘技場にて梨晏と季衣が、華雄と流琉が其々試合をしていた

 

秋蘭「ほう、あの季衣と流琉の攻撃を難なく躱しているな」

 

季衣のハンマーが唸り、流琉のヨーヨーが襲い来るが二人共余裕を持って軽やかに躱している

 

華琳「ふむ、我が親衛隊を凌駕する武、そしてあの美しい容姿、申し分ないわね・・・・・二人共、欲しいわ」

 

燈「あらぁ、また華琳様の癖が出てきましたわね♪」

 

綾香「華琳が有望な人材に貪欲なのは分かっていますけど、一人はかの孫堅、一人は漢の栄誉を賜っている将なのです、迂闊な勧誘は命取りになりますよ・・・・・」

 

凪「一刀様、次は私達の番です、私もここに来て以来鍛錬を怠りませんでしたので、ぜひご指導ご鞭撻をお願いします♪」

 

一刀「言っておくけど、俺が教えられるのは精神修養の域までだ、それ以上は教えられないからな」

 

麗春「一刀ぉ、早く一刀が戦う所を見せてくれぇ?///////」

 

一刀「ちょっと、抱き付くなって///////」

 

舞台の外側では数人の観客が出揃っていた

 

季衣「うう・・・・・参りましたぁ・・・・・」

 

流琉「こ、降参です・・・・・」

 

梨晏「うん、筋は良いから今後に期待だね♪」

 

華雄「なかなかいいものを持っているな、鍛錬を怠るなよ」

 

と、季衣に紅戟が、流琉に金剛爆斧が突き付けられ勝負はついた

 

華琳「太史慈、華雄、見事だったわ」

 

梨晏「えへへ〜♪」

 

華雄「これくらいはなんて事はない」

 

華琳「どうかしら、私の下で働く気は無いかしら?」

 

梨晏「え!?」

 

華雄「いきなり何を言い出すのだ!?」

 

華琳「あなた達の武、才能は大いに価値がる、それ相応の立ち位置を約束しましょう・・・・・それに、閨では存分に可愛がってあげるわよ♪」

 

梨晏「残念だけど、私は孫策と周瑜に生涯の愛を誓ってるんだ、今更鞍替えなんてする気は無いよ♪」

 

華雄「私もだ、この身は董卓様への恩義を返す為にある、我が決意に一遍の曇りもない」

 

梨晏「それに、勧誘するなら私達よりもよっぽど有意義なのがいると思うけど・・・・・」

 

視線の先には、凪と会話をしながら麗春の抱擁を躱す一刀の姿があった

 

華琳「あなた達も分かっているはずよ、一刀の本質を・・・・・」

 

華雄「・・・・・そうだな、確かにあれは扱いに困るな」

 

梨晏「まぁね、潜在能力は計り知れないけど、考え方が歪曲してるからね・・・・・」

 

華雄「あ奴からすれば、我々の方が歪曲しているのであろうがな」

 

華琳「仮にそうであったとしても、このような時代では私達の歪曲は正常よ、一刀は間違った方向に真っ直ぐ過ぎるのよ」

 

梨晏「けど、一刀の言っている事も正論ではあるんだけどね〜・・・・・」

 

華雄「ああ、そこが憎めない所であるのだがな」

 

其々が一刀の良い所も悪い所も知っているが、その二つが余りに両極端なので、どう批評すればいいのか計りかねる

 

凪「では、今度は私達の番ですね♪」

 

一刀「それじゃあ、軽く相手をしてやるよ」

 

麗春「おお、ようやく一刀の華麗な武を見れるのか、待っていたぞ♪」

 

二人揃って舞台に上がろうとしたその時

 

春蘭「ほんごーーーーーーーーーー!!!!!」

 

まるで馬の蹄鉄の様な足音と主に、眼帯女が闘技場に殴り込んできた

 

春蘭「北郷、貴様!!!そこに直れ!!!」

 

ブゥンッ!!!

 

一刀「うおっ!!?」

 

秋蘭「あ、姉者!!?」

 

凪「春蘭様!!?」

 

いきなり春蘭は七星牙狼を振り降ろし、一刀はこれを躱す

 

直れと言ったのに、その前に武器を振り降ろすのはどうなのであろう

 

春蘭「貴様、華琳様に無礼を働いたそうだな、万死に値する!!!」

 

一刀「おいっ!!俺はそんな事をした覚えはないぞ!!」

 

春蘭「秋蘭、こいつの言っている事は本当か!!?」

 

秋蘭「あ〜〜、何と言うか、無礼と言ったら無礼かもしれないが・・・・・」

 

春蘭「やはりそうか!!!今すぐその首を刎ねてくれる!!!」

 

一刀「だああああ!!!いい加減にしろおおおおお!!!」

 

白刃取りで受け止めるが、思っていた以上の馬鹿力に七星牙狼がグイグイと迫り来る

 

このままでは頭蓋を真っ二つにされてしまいかねない

 

華琳「春蘭、そこまでにしなさい」

 

春蘭「しかし華琳様、私は確かに耳にしました!!こやつが華琳様に無礼な事を言ったと!!」

 

華琳「それは、意見の食い違いがあっただけ、一刀は無礼を一つも働いてはいないわ」

 

春蘭「そ、そうなのですか?」

 

華琳「ええ、だから武器を治めなさい」

 

春蘭「あ、はい・・・・・」

 

自分の主の言では信じない訳にはいかないので、恭しく武器を引いた

 

一刀「いちちち・・・・・なんて力だよ、こりゃ素手で春蘭の剣を受け止める事は出来そうにないな・・・・・」

 

春蘭「は〜〜〜っはっはっはっは♪そうだろう、そうだろう♪私だってこれまで鍛錬を怠ってこなかったのだ♪・・・・・それはそうと見慣れない顔がいるな」

 

梨晏「やっほ〜、噂は聞いているよ、盲夏候さん♪」

 

華雄「うむ、曹操随一の忠臣といえば盲夏候と聞いている」

 

そう、春蘭は随分と前からこの蝶を模した眼帯をしていて、盲目の夏候惇こと盲夏候と呼ばれていた

 

春蘭「貴様ら〜〜!!私がそう呼ばれる事が気に入らないと分かって呼んでいるのか〜〜!!?」

 

そして当然の如く、春蘭はそう呼ばれる事を嫌っている

 

秋蘭「姉者、そう呼ばれてもしょうがない事は、姉者が一番よく分かっているだろう」

 

春蘭「むぅ〜〜、しかしだな・・・・・」

 

秋蘭「すまない、姉者の暴走には私も悩まされていてな」

 

梨晏「いいよいいよ、気にしていないから」

 

華雄「私も軽率だったな、すまん・・・・・」

 

そして、お互いに名乗り合い、春蘭は現状を把握する

 

春蘭「それにしてもお前達、随分と楽しそうな事をしているではないか、何故私に一声かけてくれないのだ!?」

 

秋蘭「すまん姉者、しかしまだ姉者は練兵の時間だったものでな」

 

春蘭「おう、それじゃあしょうがないか・・・・・」

 

凪「それではお手合せをお願いします、一刀様♪」

 

一刀「ああ」

 

と、ようやく一刀と試合が出来ると喜び勇んで舞台に上がる凪だったが

 

春蘭「ちょっと待て!凪が北郷と試合うのか!?」

 

凪「はい、先程、季衣様と流琉様が太史慈様と華雄様と手合せをしましたので、今度は・・・・・」

 

春蘭「凪、私に譲ってくれ!!」

 

凪「え、ええ!?」

 

春蘭「前から北郷の武には興味があったのだ、お前は北郷の手解きを受けた事があるだろう、だから私に譲ってくれ!」

 

凪「いや、しかし・・・・・」

 

春蘭「譲ってくれ!!」

 

凪「私も一刀様と・・・・・」

 

春蘭「譲れ!!!」

 

凪「・・・・・分かりました」

 

強引に押し切られ、凪は恭しく引き下がった

 

凪「・・・・・・・・・・」(しょぼ〜〜〜〜〜〜ん)

 

凪も一刀の指導を受ける事を楽しみにしていたので、その落ち込み要は半端なものではなかった

 

華琳「まったく、春蘭も強引が過ぎるわね・・・・・」

 

燈「凪ちゃん、この後ですればいいんだから、そんなに落ち込まないの♪」

 

秋蘭「すまないな凪、この埋め合わせは必ずする」

 

麗春「私は一刀の武が見られれば、誰であろうと構わないがな♪」

 

そして、凪と入れ替わり、春蘭が一刀と共に舞台に上がる

 

春蘭「ようやく、ようやくこの日が来た・・・・・貴様と思う存分戦える日が、私の望みが叶う日が・・・・・」

 

感極まって全身武者震いをさせる春蘭であったが、当の一刀は何処吹く風だった

 

一刀「俺は望んじゃいない」

 

春蘭「なんだと!?私は一日千秋の想いで鍛錬を続けて来たと言うのに!」

 

一刀「だったら方向性が間違っている、そんな野蛮な事を俺が何より嫌っているのは知っているだろう」

 

春蘭「それだけの武を持っていながら闘う事が嫌いなどとは片腹痛い!」

 

一刀「それが野蛮だって言っているのに・・・・・言っても分からないかな・・・・・」

 

春蘭「貴様こそ、その腑抜けた性根を叩き直してやる!凪、お前が審判を務めろ!」

 

凪「あはい!・・・・・では、開始!!」

 

春蘭「でりゃあああああああ!!!!」

 

一刀「っつ!!」

 

いきなり間合いを詰め七星牙狼を袈裟切りに振り抜く

 

これを紙一重で躱し拳での反撃に移るが

 

春蘭「甘い!!!」

 

一刀「くっ!!」

 

そのまま返す刀で右切り上げで腹を割きに来る

 

これを後ろに飛んで躱すが、腹に巻かれた包帯に血が滲む

 

凪「一刀様!!?」

 

春蘭「案ずるな、腹の皮一枚だ」

 

一刀「春蘭・・・・・本気で斬りに来てるだろ」

 

春蘭「当たり前だ!それくらいじゃないと貴様は倒せん!」

 

一刀「ったく、俺を倒しても何も得るものはないってのに・・・・・あんまり聞き分けが無いなら、こっちもそれなりの対処をするぞ!!」

 

今度は一刀の方から間合いを詰める

 

春蘭「武具も無しに突っ込んでくるなど笑止!!!」

 

今度は唐竹割で、真っ二つにしようとするが、頭に直撃する寸前で春蘭から向って左側に躱される

 

一刀「しぃっ!!」

 

躱したその流れで左足を振り上げる

 

春蘭「ちぃい!!!」

 

顔面に蹴りが来ると読み、屈んでやり過ごそうとする

 

春蘭「(その足貰った!!!)」

 

それと同時に軸足である右足を狙い、七星牙狼を引き戻そうとするが

 

春蘭「なっ!!?」

 

しかし、その軸足が突如視界から消える

 

次の瞬間

 

ガシィッ!!!

 

春蘭「がっ!!!」

 

眼帯をしている左頬に衝撃が走る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋蘭「あ、姉者!!?」

 

華琳「なっ!!?」

 

燈「まあまあまあまあ」

 

綾香「・・・・・凄い」

 

この場の殆どの者が、驚愕の表情を見せる

 

振り上げられた左足はフェイントで、本命は軸足である右足による蹴り当てだった

 

七星牙狼を跨ぎ飛び越しながら隻眼である左の死角を見事に突いたのだ

 

麗春「凄いぞ一刀、まるで曲芸師のようだ♪」

 

季衣「兄ちゃん、春蘭様に一撃を入れちゃうなんて・・・・・」

 

流琉「うん、本当に凄いよ・・・・・」

 

梨晏「まぁ、あれくらい一刀にとってはお茶の子なんだろうけどね」

 

華雄「ああ、見切りに関してはあ奴はおそらくこの大陸でも三本の指に入るかもしれないからな」

 

外から見ていた者達にとっては、紙一重かつ鮮やかな攻防だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・で、これで一本か?」

 

凪「あいえ、急所を突くなり寸止めをするなりしないと、こちらも判断しかねると言うか・・・・・」

 

もともと剣対素手なので、どのように判定をすればいいか凪もよく分からない

 

春蘭「ふふ、ふふふふ・・・・・」

 

一刀「・・・・・?」

 

凪「春蘭様?」

 

その時、打たれた左頬を抑えながら春蘭が笑い声を漏らす

 

春蘭「ふふふふふふ・・・・・強いなぁ〜〜♪・・・・・」

 

不気味で迫力のある中に喜びの入り混じった声を出しながら、眼帯に手をかけた

 

ブチッ!

 

一刀「っ!!?」

 

凪「えっ!!?」

 

春蘭「これは盲夏候じゃ、勝てないかな♪」

 

勢いよく眼帯を取り払った春蘭は左目を晒す

 

見開かれた瞼の内側には、傷一つない、何処までも透き通った宝石のような瞳があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

燈「まあ!?春蘭ちゃんが!?」

 

季衣「え、え、どういうこと、これ!?」

 

流琉「春蘭様って、左目を負傷していたんじゃ・・・・・」

 

華琳「秋蘭、これはどういう事なの!!?春蘭は、過去に敵の矢を受けて隻眼になったのではないの!!?」

 

秋蘭「いいえ、それはあくまで噂にしかすぎません・・・・・姉者の目は、昔からずっと両眼です、それを鍛錬の為に片目を封じたのです」

 

綾香「はい、盲夏候と人々から侮られてもあの子は決して眼帯を取りませんでした・・・・・・強くなる為なら何でもする、それが春蘭です」

 

梨晏「へぇ〜〜、よくやるね〜」

 

華雄「ふむ、その探求心、恐れ入る」

 

秋蘭「しかし問題はここからです、姉者に戒めを取らせたのは流石ですが、果たして北郷が無事で済むかどうか・・・・・」

 

綾香「ええ、両目になった春蘭の実力は私達でも計りかねます・・・・・」

 

華琳「・・・・・・・・・・」

 

二人の額から脂汗が滲み出す

 

この二人がこれ程緊張していると言う事は、二人係でも今の春蘭を止められるかどうか怪しいという事だ

 

綾香「秋蘭、何時でも止められるようにしておきなさい・・・・・」

 

秋蘭「分かっています、綾香様・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「なるほどな、自分にリミッターをかけていたのか」

 

春蘭「りみ?・・・・・なんだそれは?」

 

一刀「天の国の言葉で、制限や制約、戒めといった意味だよ・・・・・それはそうと、そこまでする必要があるのか?」

 

春蘭「何を言う、強さを求めるのに制限などありはしない!」

 

一刀「その貪欲さは褒められるけど、もっとまともな事に向けられないのかよ」

 

春蘭「ええい、貴様の持論などどうでもよい!!今重要なのは、私と貴様、どちらがより強いかだ!!」

 

一刀「まったく・・・・・これっきりにしてくれよ」

 

そして、両者は構えを取り直す

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

春蘭「・・・・・・・・・・」

 

凪「(・・・・・凄い、空気がどんどん張り詰めていく)」

 

「・・・・・・・・・・」

 

この試合を見守る者達は、空気が凍りついた様な緊張感に声を出せずにいた

 

春蘭「ちぇああああああああ!!!!!」

 

この張り詰めた空気を先に破ったのは春蘭だった

 

さっきとは段違いの鋭さで一刀に肉薄し七星牙狼を連続で振るう

 

一刀「ふっ!!!」

 

この斬幕を全身に波動を纏い縮地を駆使して躱していく

 

だが

 

一刀「くっ!!ちっ!!」

 

徐々に七星牙狼が一刀を捉え始め、戦闘装束に切れ目が入り、体に無数の傷を刻んでいく

 

春蘭「(見える、見えるぞぉ、貴様の動きが!)」

 

視界に入る情報量が二倍となった事で、見切りの鋭さも二倍となる

 

いや、そのような単純計算ではない、両目で戦う事に慣れてきた春蘭の動きは更に鋭さを増していく

 

一刀「しぃっ!!!」

 

そして、今度は一刀から間合いを詰める

 

春蘭「もらった!!!」

 

七星牙狼が左薙ぎで襲い来る

 

ガシィッ!

 

春蘭「むっ!!?」

 

それより一刀の踏み込みの方が早かった

 

七星牙狼を持つ右手首を左手で掴みこれを防ぐ

 

一刀「つあっ!!」

 

そして、右拳を腹に叩き込みに行く

 

春蘭「させん!!」

 

ガチィッ!!

 

この拳を左の手の平で受け掴む

 

一刀「ぐうううううう!!」

 

春蘭「むうううううう!!」

 

両者は、ここで押し切きらんとする

 

七星牙狼と拳から身を守りながら、お互いの全ての力を腕力と握力に注ぎ込む

 

どうやら力技では両者は拮抗しているようで、掴んだ手と手が震える

 

春蘭「ぐぅぅぅ・・・・・ふふふふ、嬉しいぞぉ・・・・・私の功夫に付いてくるとは見上げたものだ♪」

 

一刀「最後の切り札は馬鹿力ってか、単純だな」

 

春蘭「誰が最後だと言った!!」

 

ドンッ!!

 

そこから一歩踏み込んだのは春蘭の方だった

 

右肩で体当たりをし、一刀を後退させ、その勢いのまま掴まれた手を外す

 

春蘭「おらあああ!!!」

 

そのまま体を回転させての、右薙ぎ

 

一刀「ふっ!!」

 

これを一刀は飛んで躱す

 

春蘭「獲った!!!」

 

秋蘭「姉者!!!!」

 

綾香「駄目です!!!!」

 

着地点を狙い七星牙狼を左薙ぎに振るう

 

体が宙に浮いた一刀はもはや何も出来ない

 

一同の脳裏には、次の瞬間には上半身と下半身が泣き別れになった一刀の姿が映る

 

しかし

 

ドゴンッ!!

 

春蘭「ぐっ痛!!」

 

七星牙狼を振り抜こうとした右肩に踵落しが炸裂する

 

肩の人体急所に決まり、力が入らなくなる

 

この僅かな力の緩みが七星牙狼の軌道を下に逸らし、一刀はそのままバク転して間合いを取った

 

春蘭「ふふふふ、いいぞぉ・・・・・よくぞ躱した♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋蘭「ふぅ〜〜、肝を冷やしたぞ・・・・・」

 

綾香「よくあんな体勢で躱せましたね、一刀君は・・・・・」

 

華琳「春蘭の武についていくなんて、やはり一刀も春蘭と同格の武人である事は否めないようね・・・・・」

 

季衣「兄ちゃん、凄い勇気があるよ・・・・・」

 

流琉「うん、春蘭様に素手で挑む勇気は私には無いよ・・・・・」

 

麗春「当たり前だ、私が選んだ一刀があれしきでやられてたまるものか♪」

 

燈「殿方にもあのようなお方がいるのですねぇ♪」

 

梨晏「流石一刀だねぇ」

 

華琳「ああ、同じ事をしろと言われても、あれは真似出来ん」

 

正にミリ単位の攻防に外野の一同は息を飲むのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「ふぅ・・・・・大した剣椀だよ、俺のじいちゃんと同じくらいかもな」

 

春蘭「どうした、眼帯を戻して欲しいか?」

 

一刀「・・・・・いや、こっちもそれなりの事をしないと、対処しきれないと思ったんだよ」

 

そして、一刀は腰の兼元に手をやった

 

春蘭「!・・・・・ほほう、とうとう抜くか♪」

 

これまで、腰の物を使わずに素手で相手をねじ伏せる事しかしなかった一刀が本気で戦ってくれると思った一同だった

 

一刀「凪、持っていてくれ」

 

凪「え、あ!?」

 

しかし、一刀は兼元を凪に投げ渡した

 

春蘭「北郷!!貴様この期に及んで、この夏候元譲を侮辱するか!!?」

 

一刀「勘違いするな、動き難くて邪魔だから取っただけだ」

 

そして、その場で軽くストレッチし、再び春蘭に向かい合った

 

一刀「こぉ〜〜〜〜〜・・・・・」

 

春蘭「っ!!?・・・・・確かに、勘違いをしていたようだ」

 

向かい合う男の全身から湧き上がるオーラを目の当たりにし、春蘭は七星牙狼を握り締める

 

凪「・・・・・・・・・・」(キラキラキラキラ)

 

最早審判としてではなく、目の前の男を尊敬してやまない凪がいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

季衣「うわ、兄ちゃん凄い・・・・・」

 

流琉「うん、体中の力が充実してきてるよ・・・・・」

 

麗春「一刀よ、今度は私に何を見せてくれるんだぁ♪」

 

燈「まあまあまあまあ、私が思っていた以上に素敵な殿方のようですわね♪」

 

華琳「春蘭の目が本気になったわね・・・・・」

 

秋蘭「はい、両眼の姉者にあそこまで付いていくとは、予想外です・・・・・」

 

綾香「しかし、何処まで持つでしょうか・・・・・」

 

梨晏「うぅ〜〜〜ん、これは複雑だねぇ〜〜」

 

華雄「そうだな、北郷には勝たねばならないが、かといって殺す訳にもいかんしな」

 

曹操陣営の立場としては、一番の家臣である夏候惇が負ける事など許されない

 

しかし、使者である一刀を殺すなどもってのほか

 

何処で止めるべきかとタイミングを見計らう一同だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「っ!!」

 

春蘭「ぬっ!!?」

 

縮地による初速からの高速

 

いきなり間合いを詰めて来たため、普通に七星牙狼を振るっていては間に合わない

 

斬撃ではなく柄頭での打撃で迎撃しようとする

 

ビキイッ!!!

 

春蘭「ぐあああっ!!!」

 

しかし、七星牙狼を握り締めた左手に激痛が走る

 

交差法で一刀の拳が春蘭の拳に激突し、指骨が数本折れたのだ

 

鍛えた拳の差により春蘭の左手は使い物にならなくなった

 

春蘭「ぐぅぅ!・・・・・まさか、握り拳を狙ってくるとはな・・・・・」

 

一刀「どうする、まだやるか?」

 

春蘭「当たり前だ、これしきで音を上げる夏候元譲とでも思ったか!!」

 

七星牙狼を片手で持ち、一刀を見据える

 

春蘭「(二度と同じ手は食わん)」

 

感覚を総動員し、目の前の男の一挙手一投足を観察する

 

一刀「しっ!!」

 

春蘭「そこだっ!!!」

 

片手で七星牙狼を振るい向かい来る一刀に合せる

 

自分の間合いを意識し、懐に飛び込ませまいとする

 

縮地で間合いを測る一刀であったが、決め手を欠いていた

 

一刀「なるほどな、見切りに関して言えば、俺以上かもしれないな」

 

春蘭「ふん!片手を封じられようと、この目さえあれば貴様を斬り伏せられる!」

 

一刀「・・・・・だけどな」

 

フシュッ!!

 

春蘭「なっ!!?」

 

次の瞬間、いきなり一刀の姿が視界から消える

 

自分は油断していない、全神経を研ぎ澄まし一刀の姿を捉えていた

 

ドゴンッ!!

 

春蘭「ぐはあっ!!?」

 

更に次の瞬間、左脇腹に衝撃が走る

 

電光石火の如く左側面に回り込んだ一刀の右拳がめり込んだのだ

 

春蘭「くそっ!!!」

 

すかさず七星牙狼で反撃に移ろうとするが

 

バシィッ!!!

 

春蘭「うおあっ!!?」

 

今度は右腕に蹴り当てが決まる

 

一刀「目に頼り過ぎなんだよ、馬や驢馬じゃないんだ、そうあちこち見えないのさ!!」

 

眼帯をしていようがいなかろうが、人には常に死角というものが存在する

 

馬や驢馬の様にほぼ360°見渡せるわけではない

 

その死角を突き縮地で回り込めば、どんなに目が良かろうと関係がないのだ

 

春蘭「くぅっ!!おのれえええええええ!!!!」

 

なんとか一刀を視界に捉え七星牙狼を突き込むが

 

ガシッ!!

 

綺麗に躱され、右手首を掴まれ、懐に飛び込まれる

 

一刀「しいぃっ!!」

 

春蘭「くっ!!」

 

左足による後頭部への脚打、これを春蘭は頭を下げる事によってやり過ごすが

 

一刀「終わりだ!!」

 

春蘭「なっ!?ぐおおっ!!?」

 

腕の関節を極めながら、春蘭の首を足で挟みそのまま首投げを打つ

 

腕からの痛みも手伝い、春蘭は舞台にうつ伏せに倒れ伏し、十字固めに極められてしまう

 

春蘭「ぐううう!!くそっ!!」

 

何とか力技で抜け出そうとするが、完璧に極まっているので外せない

 

左手を使おうにも折れた指では何も出来る事はない

 

一刀「無駄だ!腕、肩、おまけに足で首を絞めている!意識が朦朧としているはずだ!」

 

腕を極められた激痛に伴い、首を左足の脹脛と太腿で挟み込まれ、動脈を圧迫され脳に血液が回らない

 

春蘭「(くそぉ、負ける訳には・・・・・)」

 

言われた通り意識が遠退き、視界が暗くなっていく

 

薄れゆく意識の中で、僅かに声が聞こえた

 

華琳「もういいわ!!凪、止めなさい!!」

 

凪「あ、はい!そこまで、勝者、一刀様!」

 

そして、一刀の極め技から解放された春蘭に一同が駆けよる

 

秋蘭「姉者、無事か!!?」

 

綾香「気を確かに、春蘭!!」

 

春蘭「ぶはぁっ!!・・・・・あ、れ・・・・・華琳、様?・・・・・」

 

華琳「気を失っていたようね・・・・・私が分かるかしら、春蘭」

 

春蘭「・・・・・そうですか・・・・・私は、負けたのですね」

 

どうやら首を絞められ、落ちていたようだ

 

目の前に秋蘭と綾香と華琳が寄り添っている状況に、自分がどんな状況にあるのか理解した

 

麗春「流石私の一刀だ、見事だったぞ♪♪♪」

 

季衣「凄い、凄いよ、兄ちゃん♪」

 

流琉「はい、あの春蘭様に素手で勝っちゃうなんて、信じられません♪」

 

燈「ああん、私も麗春ちゃんと一緒に籠絡しちゃいますぅ??////////」

 

凪「是非、是非にご指導ご鞭撻をお願いします♪♪♪」(キラキラキラキラ)

 

一刀「ちょっ、ちょっと、そんな抱き付いてこないでくれ!/////////」

 

振り向くとそこには、勝利を称賛され揉みくちゃにされる一刀がいた

 

春蘭「・・・・・申し訳ありません、華琳様」

 

華琳「いいえ、あの一刀にここまで善戦すれば大したものよ」

 

春蘭「しかし、素手の相手に負けるなど、このような醜態を晒してしまっては・・・・・」

 

華琳「それは、お互いの武器が違っていただけ、春蘭の武器がその剣なら、一刀の武器は己が肉体そのものだった・・・・・ただそれだけの事よ」

 

春蘭「はあ・・・・・」

 

梨晏「まぁまぁ、そんなに落ち込まないの」

 

華雄「ああ、もう一度鍛え直せばいいだけだ」

 

春蘭「・・・・・・・・・・」

 

何とも情けない、華琳にならいざ知らず、他の陣営の将に慰められてしまう始末

 

この慰めはかえって逆効果にしかならず、更に気を落とす春蘭であったが

 

一刀「ちょっと見せてみろ」

 

春蘭「あ・・・・・」

 

いきなり、一刀が折れた左手を取って来た

 

一刀「・・・・・人差し指と中指が完全に折れているな、これは暫く使えないな・・・・・治療をしたいんだけど、どこか落ち着ける所はないか?」

 

秋蘭「では、私と姉者の部屋に行こう・・・・・姉者、立てるか?」

 

春蘭「あ、ああ・・・・・大丈夫だ/////」

 

手の平の暖かい温もりに、春蘭の頬が少しだけ上気していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・それじゃあ、行くぞ」

 

春蘭「お、おう・・・・・ドンと来い//////」

 

部屋の中には上半身の服を脱ぎ、その滑らかな体を晒す春蘭がいた

 

背後に一刀が陣取り、その綺麗な背中を舐めまわす様に触れていく

 

秋蘭「ああ、姉者ぁ・・・・・//////」

 

その傍では、その様子を扇情的な眼差しで見つめる秋蘭がいた

 

そして、一刀と春蘭の距離が一層近付いたその時

 

一刀「ここだ・・・・・はあああああああああ!」

 

突然、一刀の気合いが木霊する

 

一刀「我が身、我が鍼と一つとなり、以下省略!!元気になあれえええええええええ!!!」

 

ズドーーーーーーーーン!!!

 

春蘭「うおおおおおお!!?」

 

体の内側に熱い何かが注ぎ込まれるような感覚に仰天する

 

肩に鍼が突き立てられ、そこから一気に大量の氣が送り込まれる

 

一刀「・・・・・よし、これでいいはずだ」

 

春蘭「お、おう・・・・・もういいのか?///////」

 

一刀「おいおい、いきなり動かせる訳ないだろう!骨折なんだぞ、少なくとも七日は使っちゃ駄目だ!」

 

春蘭「わ、分かった///////」

 

秋蘭「ああ、恥ずかしがる姉者も可愛いなぁ///////」

 

頬を染め、素直に一刀の手当てを受ける春蘭を至福の眼差しで見つめる秋蘭がいた

 

今回、春蘭が折ったのは手の平の中の基節骨二本

 

通常であれば治るのに2週間ほど掛かるが、五斗米道の力で治癒能力を高めれば1週間に短縮できる

 

折れた指を棒で固定し包帯を巻いてもらい、手当ては完了した

 

一刀「これで終わり・・・・・念を押しておくけど、七日間は絶対に包帯を取るなよ」

 

春蘭「わ、分かっている、しつこいぞ!////////」

 

秋蘭「安心してくれ、姉者が無茶をしないよう私も見ているから」

 

春蘭「秋蘭まで・・・・・」

 

まるで小動物の様に縮こまる春蘭を、より一層愛しく感じる秋蘭だった

 

秋蘭「・・・・・それにしても北郷、貴殿の武には敬服するばかりだ」

 

春蘭「ああ、私に素手で勝ったのだ、大したものだぞ!」

 

一刀「止めてくれ、あんな野蛮な事、俺の性に合わない」

 

秋蘭「そう卑屈にならなくてもよいだろう」

 

春蘭「そうだぞ、それだけの強さを持っていながら武を野蛮呼ばわりするなど、おかしくないか?」

 

一刀「俺にとっては、武術なんてものは只の暴力でしかない・・・・・実際こうして春蘭に怪我をさせてしまっているんだからな・・・・・」

 

秋蘭「それは仕方なかろう」

 

春蘭「その通りだ、怪我が恐くて武術が出来るか!」

 

一刀「俺が野蛮と言っているのは、武術を戦争や紛争の暴力沙汰に利用する奴らだ、こういった事は健康や精神鍛錬の為に使うべきなんだ・・・・・なのに、そんな後先考えない奴らが滅茶苦茶な事をするから、この世には争い事が絶えないんだ・・・・・」

 

秋蘭「・・・・・まぁ、それは正解ではあるのだがな」

 

春蘭「だったら簡単な事だ、そんな奴らは我が大剣で根絶やしにすればよいのだ!」

 

一刀「そんなやり方は状況を悪化させるだけだ、そのやり方を真似る人間が次から次へと現れイタチゴッコになり、後の世に負の遺産を残す事になるだけなんだ」

 

秋蘭「それはどうしようもない事ではないのか?」

 

春蘭「その通りだ!ならば武の頂を治め、最強の座の元にそういった奴らを組するしかなかろう!そういった奴らは、最強と言うものには弱く尊敬もする、武力と言う名の統治の下にこの国を治めればよいのだ!」

 

一刀「そんな滅茶苦茶な統治なんて長くは続かない、それにそんなものを目指して何になるんだよ」

 

春蘭「何を言う、武人であるからには最強を目指すのは道理だ!」

 

秋蘭「そうだな、最強の称号が欲しくないのか?」

 

一刀「おいおい、まさか地上最強なんてものがこの世にあるとでも思ったのか?・・・・・まぁ、最強になる方法が無くもないけどさ」

 

春蘭「なにぃ!!?それはどんな方法だ、教えてくれ!!」

 

一刀「簡単な事さ・・・・・この地上に居る人間全てで殺し合って、最後に一人生き残るんだ」

 

春蘭「・・・・・・・・・・」

 

秋蘭「・・・・・・・・・・」

 

この一刀の言葉に、春蘭は目を点にし開いた口が塞がらず、秋蘭は腕を組み深く唸る

 

一刀「自分以外の人間全てがいなくなれば、それで地上最強だよ・・・・・どうだ?空しいだろ」

 

春蘭「・・・・・空しいな」

 

秋蘭「ああ、空しい事だ・・・・・」

 

一刀「だろ?・・・・・だから俺からすれば、これから春蘭達が華琳と共にしようとしている事も空しい事にしか見えない」

 

秋蘭「それとこれとは話が違うぞ、北郷」

 

春蘭「その通りだ、そもそも目的が違う!」

 

一刀「どこがだよ、自分達の意にそぐわない人間がいたら殺して排除する、それを永遠に繰り返し自分たち以外の人間を滅ぼし尽くし、自分達しか居なくなる・・・・・これが空しい事じゃないって言うのか?」

 

春蘭「違うぞ北郷、華琳様が目指しているのはそのようなものでは断じてない!」

 

秋蘭「ああ、確かにその道の途中で一つの種族を滅ぼす事はあるかもしれない、しかしそれは、大陸統一と言う崇高な目的の為だ」

 

一刀「崇高だって!!?とんでもない思い違いだ、それが野蛮な事だって言ってるんだ!!そんな思想の下に一方的に滅ぼされ、殺される人達の気持ちを考えた事があるのか!!?人の血というものは、国・文化・宗教・民族・種族を問わず、赤いんだぞ!!」

 

春蘭「・・・・・・・・・・」

 

秋蘭「・・・・・・・・・・」

 

一刀「俺が目指すのは、この地上に存在する全ての国・文化・宗教・民族・種族の共存共栄だ、その為の第一歩が腐敗した漢王朝の清掃なんだ・・・・・春蘭や秋蘭にもきっと解ってもらえる日が来ると、信じている」

 

そして、この言葉を最後に一刀は部屋を退出した

 

春蘭「・・・・・なぁ秋蘭、私には北郷の言っている事も分からなくもないんだがな」

 

秋蘭「私もだ・・・・・しかし、北郷の目指すものは人の英知の遥か先をいく、神の如き所業のなせる業だ」

 

春蘭「だよな、人の身でそのような事、出来るはずがないよな・・・・・」

 

秋蘭「その通りだ・・・・・あそこまで聡明でいながら、何故その事に気付かないんだ・・・・・」

 

春蘭「いや、おそらく北郷は認めたくないんだろう、人の抱える業というものを・・・・・」

 

秋蘭「そうだな・・・・・本当に罪深いものだ、人の業というものは・・・・・」

 

人の業、それは人間が生きていく上で自他それぞれに与えてしまう因果

 

例えば、大金が入って贅沢を知ってしまうと、もっと贅沢をしたくて自分が欲望に飢える

 

そのせいで他人に迷惑を与えてしまう

 

かといって、それを気にしてばかりでは繁栄や栄華などありえない

 

このどうしようもなく救いがたい人の業に、そしてそれを認めようとしない一刀に、二人は遺憾の意を拭えなかった

説明
沿州拠点・パート2
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コメント
早く次が読みたいです(恋姫大好き)
続きお願いしますm(__)m(恋姫大好き)
スネークさんへ、ご指摘ありがとうございます、毎度毎度口上を述べていたらそれだけで文字数が増えてしまいますから(Seigou)
まさか春蘭の目が両方無事だったとは…両目の春蘭を相手にした場合、愛紗達は互角に戦うことは出来るのだろうか?それにしてもこの世界の一刀の五斗米道はどんどん口上が適当になっていきますねw(スネーク)
中手骨の中の基節骨とありますが、中手骨と基節骨は別物ですよ。掌の部分にある長い骨が中手骨で、基節骨はその先にある最初の関節を作る短い骨です(スネーク)
桂花に頭の中捻じ曲がってる言われるのはお前が言うなwって感じですなw(nao)
おっと、失礼しました(Seigou)
歴史知識が間違っています。「当時の魏国皇帝である曹爽」の所ですが、曹爽はあくまで魏の宗室の一人であって皇帝ではありません。(h995)
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