「真・恋姫無双  君の隣に」 第60話
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「・・・それでは、次にお会いする時を楽しみにしていますよ」

どうやらお話が終わったようです、軍師の人が去っていきました。

護衛としての緊張感が解けると同時に、よく解らなかった会話の内容に頭を悩ませます。

私のような無学者では一刀様のお考えに理解が届く訳がないのですが、それでも言葉の意味すら解らないのは諜報員として駄目だと思うのです。

がいし?がくせい?こくしょくかやく?もくはんいんさつ?

聞いた事が無い言葉が他にも沢山出てまして、意味が半分も解りませんでした。

「明命」

「!!、は、はい!!」

いつの間にか腰を下ろされていた一刀様に呼ばれ、慌ててお傍に行きます。

「今の会話の内容、七乃には内緒にしておいてね」

「分かりましたであります」

今回の陰からの護衛は七乃様からの御依頼だったのですが、流石は一刀様、全て御見通しでございました。

「まあ、俺の行動って秘密にしてても七乃にはバレてるんだよな、ハハ、ハァ〜」

そうなのですか、流石は七乃様です。

「ともかく、夜も遅いのにありがとう、明命」

「有難き御言葉で御座います」

腰を上げられ、戻ろうとされていた一刀様の足が止まりました。

「あとさ、ちょっと聞きにくいんだけど」

「何でもお聞きくださいませ、一刀様の御言葉に否応ございません。お猫様に誓って全てお答え致します」

私はここで疑問を持つべきでした。

普段の一刀様なら人に背を向けて話しかけたりなどしない事を。

それなのに、愚かな私は自ら退路を断ってしまいました。

「・・それじゃ聞くけど、ひょっとして風呂でも護衛してくれてたのかな?」

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 第60話

 

 

目の前でやってる大規模な軍事訓練、俺達左慈の旦那直属軍は現在待機中なんだけどよ。

「おい、チビ、デブ。多分出番だぜ」

「そのようっすね、あ〜あ、哀れっす」

「んだんだ」

予想通り直ぐに、

「ヒゲッ、張南・焦触軍の動きが悪い、潰して来い!」

左慈の旦那の命令、それは俺達直属軍にとって絶対の指令だ。

俺達は躊躇無く遂行、味方だろうが容赦無し、流石に殺しはしねえけどな。

でもまあ効果抜群で全軍必死に戦ってるぜ。

気持ちはスゲエ分かる、敵よりも左慈の旦那が万倍怖え。

身に染みてるからこそ気を緩めずに待機する。

それにしても、俺達も強くなったよなあ。

チビ、デブと野盗やってた頃は弱そうな奴だけ狙ってたのによ、今じゃ余程の奴じゃなきゃ充分勝てるぜ。

もっとも強くならなきゃおかしいけどな、毎日こんな地獄の訓練してりゃよ、戦の方がずっと楽だぜ。

・・あの頃は全く思いもし無かったよな、旦那達と出会う前は。

黒山の賊、張燕の手下に殺されそうになってた時に、張燕を殺しにきた左慈と干吉の旦那に助けてもらった。

左慈の旦那の強さを目の当たりにして、その場で子分にしてくれと頼んだ。

そっからは語るも涙で、おもいっきり扱き使われた。

死にそうな目にあったのも両手で数え切れねえ、よく生き残れたもんだぜ。

・・でもよ、すげえ充実してんだ。

最初は旦那の強さにあやかろうと考えただけだったけどよ、今は本気で旦那達についていきてえんだ。

左慈の旦那は必要な事しか言わねえし、干吉の旦那は腹が見えねえけどよ、それでもなんか信じれんだよ。

自分でもよく分かんねえけど、チビやデブも同じだってよ。

命は大事だけどよ、大事にするだけが全部じゃねえって思ったりしてよ。

へっ、柄でもねえな。

おっと、次の命令が来たぜ、んじゃいくか。

 

激しい戦いが眼下で繰り広げられている。

・・これが実戦ではなく演習とはな。

魏国との戦で実質の勝利を得ていながら、慢心する事無く更なる強さを求める姿勢に、仲国の大将軍、左慈の恐ろしさを改めて認識する。

特に左慈直属軍の強さは圧倒的だ、仲軍最強を謳われるのも納得がいく。

「華雄殿、どうやら見つかったようです。百騎ほど此方に向かってきてます」

そのようだな、この距離で見つかるとはたいしたものだ。

「焔耶、全力で逃げるぞ。桔梗殿もよろしいか」

「ふむ、一戦交えて強さを測りたくもあるが、多勢に無勢ゆえ我慢するかの」

半刻ほど逃走し、敵も諦めたようで馬の速度を緩める。

「桔梗様、華雄殿、以前に私が戦った時の華軍も強くありましたが、仲軍の強さは更に上回ると思われます、正面から戦うのは下策かと」

元仲軍の魏延の意見には重みがある、だが、

「いや、わしの見立てでは五分と見る。華軍も連戦を重ねておるからな、決して引けはとらん」

私も桔梗殿の意見と同じだ、あえて言うなら個では仲、集なら華か。

演習の報を聞いて自身で観に来たのは正解だった、主への報告を追加せねばな。

 

あっ、華雄さん達が戻ってきたみたい。

・・戻ってこなくていい奴もね。

全く、桃香さん達に代わって桔梗さんと一緒に并州に来たのはいいけど、あんな気に食わない奴がいるなら来るんじゃなかったよ。

なにが「私は桃香様をお護りしたいだけで御遣いに仕える訳じゃない」よ。

桔梗さんと華雄さんの知り合いでなかったら、桃香さんが後見じゃなかったらブッ飛ばしてるところだよ。

「たんぽぽ、顔に出てるぜ。気持ちは分かるけど放っとけよ」

一緒に派遣されたお姉様が声を掛けてきた。

「随分冷静だね、脳筋翠お姉様とは思えないんだけど」

ムカつきが収まんない、今の私に触れたら火傷するからね。

「アタシに八つ当たりするなよ。アイツは一刀を知らねえんだから。知ったらどうなるかなんて目に見えてるだろ」

以前のお姉様からは考えられない余裕な態度。

これが同じ脳筋でも未通女と経験済の違いかな。

「ほら、北方の馬商人が来てるらしいぞ。見に行こうぜ」

「何、浮気?」

「だ、誰が浮気だ!あたしは一刀一筋だ!」

一刀様じゃなくて馬の事なんだけど。

まぁ、一刀様もある意味そうだけどね♪

 

 

うん、美味しい。

私の好みに合わせて一刀様自ら作ってくださったおこのみやき、幸せを噛み締めながら有難く頂戴する。

「見事に真っ赤やなあ、流石に大将は凪の事をよお分かっとるわ」

「ホントなの。凪ちゃん愛されてるの〜」

「五月蝿い、真桜達のも卵やちいずを使った特別品だろう」

夜食にと頂いたおこのみやきを三人で食しながら、互いの近況を報告しあう。

「こうして三人揃うのも久しぶりなの。凪ちゃんはまた直ぐに洛陽に戻るの?」

「ああ、開戦の時が近付いているからな。万全を期する為には少しでも兵の力を底上げしておきたい」

「沙和、アンタの方はどうやねん?」

「沙和も兵站線の確保や治安維持の事であちこち回る予定なの。多分春まで寿春には戻って来れないの」

「真桜はどうなんだ?」

「ウチは逆に寿春でやる事がてんこ盛りや。とは言うても昔と違うて人も動かさなあかんから、現場に篭る訳にはいかんけどな」

私もそうだが、二人も今の自分の立場に苦労してるようだ。

不思議なものだな。

片田舎の村人だった私達が、今や大国の重臣となって人に指示を出す立場となっている。

それでも真桜も沙和も以前と変わらない、気のいい子供の頃からの大切な親友のままなのが嬉しい。

歓談しながら大分食べ終わった頃に、一刀様が訪れた。

「追加の差し入れ、俺も混ぜてくれるかい?」

「勿論です。ありがとうございます」

「やったの、ちいずけいきなの」

「流石大将、分かってるやんか」

この方も変わらない、王という私には想像も出来ない重圧を背負われていても。

だからこそ私達は御力になりたい思いが途切れる事は無い。

・・夢の事に関しては、流琉を通しての風殿への報告は続いている。

思い出せるのなら思い出したい気持ちは当然ある。

それでも私達三人は一刀様が話してくださるのを待とうと考えている。

沙和から一刀様の誓いを聞いているし、普段からお傍にいられるので魏の方達と違い心に余裕があるのも否めないだろう。

だが何より待とうと思えるのは、私達が一刀様を愛している事に全く揺るぎがないからだ。

夢の出来事があったから気持ちを引き摺られている訳ではないと。

一刀様と出会い、時と心を重ねてきたからこそ、この想いがあると胸を張って言えるのだから。

 

 

「流琉ー、もう寝た?」

「起きてるよ。季衣、もう寝たほうがいいよ、早朝に出発するんでしょ?」

「そうだけど、なんか寝れなくて。だって次に会えるのって、やっぱり戦場?」

秋蘭様や冥琳お姉ちゃんが色々と難しい話をしてたけど、仲良くすんのは無理だったみたいだし。

「・・分からないよ。華琳様が降服してくれればとは思うけど、それは無いと思うし」

うん、無いよね。

でも魏はもういっぱいいっぱいだと肌で感じるんだ。

守る事しか出来ない状態じゃ、そのうち限界が来るよ。

兄ちゃんは前と変わらずで優しかったけど、もう護ってはくれないよね。

「・・ねえ、季衣」

「うん、何?」

「もしも、もしも魏が滅びそうになったら、季衣は華琳様を兄様のところに連れてきて」

「えっ!」

驚いた僕は上体を跳ね起こす。

「拒否したら力尽くで、きっと秋蘭様たちは手を貸してくれると思うから」

流琉も身体を起こしてこっちを見てる、本気の目だ。

華琳様の誇り高さは誰もが知ってる事で、絶対受け入れないのは目に見えてるのに。

でも、

「分かったよ、その時は僕が必ず兄ちゃんのところに連れてくる」

僕は誓う。

魏国親衛隊、虎豹騎隊長、許仲康の名に懸けて。

 

 

一刀殿の意向を基に、七乃殿、穏殿、亞莎殿と練り上げた華国の今後の戦略。

「朱里殿、雛里殿、是非ともお二人の意見をお聞きしたいのです」

説明を聞き終えたお二人は思考の海に沈まれました。

ねね達も同様に地図へ目を向け直し、新たな考えを見出せないか、見落としは無いかと脳を絞ります。

そして思考の海から這い出られたお二人が発言されます。

「お見事と思います。確かにこれを成せば天下の趨勢は決まるでしょう」

伏龍、朱里殿の強き予告。

「此処の戦場は私に受け持たせてください。私の脳の中の化け物が存分に暴れる事になるでしょう」

鳳雛、雛里殿の猛き宣言。

「「そして、鍵を握るのは一人の将!!」」

ねね達の考えた大陸統一への最短距離。

最後の詰めを構築するのは、聖獣の名を冠した人にあらざる智を持つ軍師二人。

この瞬間こそ、大陸の分水嶺となったのです。

 

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あとがき

小次郎です、読んでいただきありがとうございます。

三年以上かけてまだ60話、プロの小説家の人って化け物なのではないかと、自分の遅筆に目を逸らしているところです。

それでも完結までは頑張ろうと思っていますので、また次回も読んでいただけたら嬉しいです。

説明
嵐の前の一時。
静かに、だが着々と備えは行なわれていた。
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コメント
ねね達の考えた戦略。一体どんなものなのか楽しみ。(神木ヒカリ)
プロでも遅筆な人は居ますよ。榊一郎さん(榊一郎さんは、「筆が遅い」と公言しています)とか。弓弦イズルさんも大概遅いですよ?『IS』止まっているし。(アストラナガンXD)
華琳が記憶を完全に取り戻せば降伏しそうなのにな〜^^;鍵を握る将って誰だろう?(nao)
あなたのは量より質だから問題なんてまったくないという(未奈兎)
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