yurigame!02〜コウvりん〜
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【コウ】

 

 キャラグラやモーション、作品全体の進行具合を確かめながら自分の仕事も

少しずつ進めていく。キャラリーダーだけやっていたときと比べたら

仕事量も周りを見てまとめていくことも全く違っていて難しかった。

 

 時折、りんも差し入れをしに来つつ、様子も見に来るんだけど。

そのたびに最近いい雰囲気になってる青葉やひふみんのことを

羨ましそうに見ているのがわかる。

 

 その様子を見てしまうと私の中でどこか、りんに対して悪いなぁという

気持ちが湧いてしまう。

 なぜそう思うのだろうかこの時の私にはわからない。

いや…わかっていても気づきたくなかったのかもしれなかった。

 

 最初からそう思っていたわけではない。何がきっかけだっただろうか。

休憩の合間に考えているとふと思い出したのはバレンタインの時…。

みんな同じチョコを渡した時にりんがすごく機嫌を悪くしたときだったか。

葉月さんにも呆れられて最初は何のことかと思ったけど…。

 

 後はひふみんと仲良く話していてひふみんに作ってもらった料理の

話をしていてもりんは機嫌を悪くしていた。

 

 その辺で多分りんは私のことが好きなんだと何となくわかった気がした。

改めてそう考えると少し気恥ずかしくなって顔が熱くなってくる。

 

 私もりんのことが好きなのかもしれない。でも私はこの関係が心地良くて、

これ以上距離を縮めることを躊躇った。恥ずかしいこともあるが…

悪いことがあってこの関係がなくなってしまうことが怖かったからだ。

 

 でも、今…青葉とひふみんのことを見て、あんな表情のりんを見ていたら

たまらなくなった。

 とりあえず今は会社に泊まりながら作業しなくてはいけないほどの

状況じゃないから、りんを誘って今日は飲みにいくかと考えた。

思いつくのがそれくらいしかないからしかたないよなって。

自分に言い聞かせながら…。

 

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***

 

お互いに仕事がちょうどキリのいい時間に居酒屋へ向かう。

他の人の視線に邪魔されないような所がよかったから

事前に個室がある店を調べてそこへと向かったのだ。

 

比較的新しい店だったからか店内は綺麗になっていて

気持ちよく呑めそうだった。

個室の中に入ると床は新しい畳で敷かれていて

独特な香りが包み込む。

 

とりあえずくつろぐように足を投げ出すとトントンとドアを軽く叩かれる。

そして伺いにきた店員にとりあえず生二つと軽いおつまみを注文をすると

りんも少し姿勢を崩して少し足を出す。

表情を緩めて二人で仕事の疲れを一時的にとはいえ

語りながら互いに労うことにした。

 

 しばらくりんの愚痴を飲みながら聞いていると

途中からりんの言葉が少しずつ、ろれつが回っていないことに気付く。

 

 ややうつ伏せ気味なりんの顔を覗き込むと

顔を真っ赤にさせ、目はとろんとしていた。

やばい、完全に酔っているやつだ。これ…。

 

「コウちゃ〜ん」

「な、なんだよ…」

 

「いっつも他の子と仲良さそうにして〜、ずるい〜」

「お、おい。酔い過ぎだろ…。水飲め」

 

「いらないー!」

「あぁ…もうまた始まったよ!」

 

 普段は完璧超人みたいで、誰もが信頼を置けて憧れるやつが。

酒を飲むとこうだもんな。まぁ、それを知って飲ませたわけだけども。

 

 何だかんだ言っても私はりんに頼ったり甘えたりすることが多いから

たまにはこうして付き合ってあげたいと思うんだよなぁ。

 

「私もコウちゃんとイチャイチャしたいの」

 

 それにしてもいつもより思ってることが表に出てるな。

聞いてる方が恥ずかしくなるっつうの…!

 

 何て言っていいのかわからずに黙って聞いていると

不意にりんが私の傍に近寄ってきて私の頬にキスをした。

 

「!?」

 

 勢い余ってそのままりんが私を押し倒すような形になって

更に私の顔にくっつきそうな距離にまでりんの顔が近づいていた。

 

「なっ…!」

「私がいつもどんな気持ちでいるかわからないでしょ…」

 

 いつもと違う酔い方をしてるなって思っていたけど

酔いながらもしっかり意識保っていたのか。

 

 押し倒した後のりんの顔は寂しそうに泣きそうな顔をしていた。

いつも私のことばかり見てきて世話をしてきて。

そこまでされて本当に気付かないほど私はバカじゃない。

ただ、そんな純粋に私を見るりんに応えられる勇気がなかっただけ。

 

「わかってるよ…」

 

 傍にあるりんの顔を私は両手で挟むようにして触れて

引き寄せ唇に触れた。

 

 火照ったりんの口の中はさらに熱くてとろとろしていた。

唇は滑らかでふにふにしていて柔らかくて気持ちいい。

意外と気持ち良くてずっとこうしていたいという気持ちになってしまう。

 

 お互いにアルコールを摂取しているからかあまりアルコールの臭いは

しなかった。

 

 ただそれよりも、もっと強い感覚が私を襲ってきて頭の中が白くなってる。

ふわふわするようなそれでいて体中が熱く火照るように…。

周りがぼやけて見えてりんの顔しかはっきり見えなかった。

 

 繋がった唇を離してから私は真剣な眼差しをりんに向けて言った。

 

「わかってたよ…。ちゃんとりんと向かい合えてなかっただけなんだ…」

「コウ…ちゃん…」

 

「こんなに急なのは…やっぱり青葉とひふみんを見てたから?」

「うっ…」

 

 りんは恥ずかしそうにしながらも否定はしなかったところを見ると

そうなんだろう。

 

 もっと長くいた自分たちが全く進展しないから焦ったのかもしれない。

そう思うと私はなおさら申し訳ない気持ちになってしまうではないか。

恥ずかしいという気持ちだけでここまでりんに寂しい思いをさせて

しまっているのは本意ではない。

 

 私は今度こそ、りんと…ちゃんと向き合ってこの先ずっと一緒に

いたいって思ったから…。

 

「りん」

「コウちゃん…」

 

「愛してるよ…」

 

 言って顔から火が吹き出そうなほど恥ずかしいけど

偽りない本当の気持ちをさらけ出せた。

 

 すると、りんは言葉を詰まらせながら涙を浮かばせながら

私のことを見つめていた。そして私は優しくりんを抱きしめて

背中に回した手をそのまま軽くぽんぽんと叩く。

 

「だから、私のことで不安に思うことはないよ」

「うん…ありがとう…コウちゃん」

 

 何だか半泣きの子供をあやしているような感じになったけど

しばらくそうやってからりんと私の気持ちを落ち着かせた後。

時間を見るとけっこう経っていて私たちは店を後にして、

会社へ向かって歩き出した。

 

 行く時と違っていたのは、会社に着くまでの間に二人でずっと

手を握っていたことだった。

 

 暖かくて柔らかくて安心する。りんの手はそんな感じがした。

あれからお互いにあまり言葉にはしなかったけれど

あの後だったから、むしろ安易に言葉にしないほうがよっぽど

気持ちが繋がっているような気がした。

 

 私達はムリに青葉たちのような関係にならなくてもいいと思える。

ゆっくりかもしれないけど、少しずつりんとの関係を育んでいけたらって。

その方が私達らしい気がしたんだ。

 

 月明かりに照らされながら、ちらっとりんの方を向くと目が合って

二人で軽く笑ってから、二人の時間を惜しみながらも

私とりんは会社の中へ入ったのだった。

 

お終い。

 

説明
一応前回から繋がってる部分も。
最初から二人の関係が深いにも関わらず
結ばれるのは一番最後な気がする。
主に八神さんがにぶちんと素直じゃないせいで。
その部分を取っ払えるような理由をぶつけてみました。
くっついた場合二人は同棲するのか、
それともそのままなのか非常に気になりますね♪
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