真祖といちゃいちゃ 2-3
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「……なでなで」

「えへへー」

背中の羽が、軽く荒ぶっている。

まだ少し恥ずかしいが、これからはなるべく意識して撫でてあげるようにしよう。

「質問を変えよう。すずはさ、どっちの姿で居たい?」

「んー?小さい方が楽だけどー。こっちがいいってマドカが言うなら、真祖、頑張るよー」

「いや、俺は別にどっちでもいいって――」

 

待てよ。

 

「すず、今何て言った?」

「小さい方が楽?」

「その次その次!」

「こっちがいいってマドカが言うならー」

 

 

 

頭の中に、言葉のピースが浮かんでくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『マドカ、お前にも出来る事だ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『呪いで大きくしてやるだけよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺が好きなのは、胸の大きいかぶきりひめだ』

 

 

 

「どうしたのー?マドカー?」

真祖の声は、耳に入っているのに届かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『こっちがいいってマドカが言うなら』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう少し、もう少しで届きそうな気がする。

考えろ考えろ考えろ。

 

陰陽師と式姫の関係ならば、言霊によってその姿を縛る事は容易いだろう。

しかし、それはかぶきりひめにとってその姿を象る理由にはならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを象らせるには、かぶきりひめ自身がそうするように仕向ける他はない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時、師匠は――師匠は――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「っくっくっく……そうか、そうだったのか」

俺は声を立てずに一人納得した。気付いてみれば、なんてことはない。

あれだけ頭を悩ませて挙句に掴み取ったのが、こんな単純な答えだったなんて。

「灯台下暗しってのは、こういう事か。ははっ」

「マドカー?」

「あぁごめんごめん。すず、ありがとう。お前のおかげで謎は全て解けた」

事情が呑み込めない真祖の頭を、俺は全力で撫で撫でしてやった。

 

 

 

「剣は持ったか?」

真祖を見送るのに、俺は縁側に出ていた。

「大丈夫、大丈夫ー」

撫で撫でが効いたのか、真祖はご満悦の様子。

 

「あんまり遠くまで行くんじゃないぞ」

「分かってるー」

「体調が悪かったら、無理するなよ」

「分かってるー」

「変な奴には付いていかないようにな」

「……もー、心配しすぎー」

 

 

 

真祖を修行に送り出し、再び寝室へと戻ろうとすると、

「どうやら、答えは出たみたいね」

かぶきりひめが、側柱へもたれかかっている。

 

「これはこれはかぶきりひめ殿。こんな夜更けにどちらまで」

「別にー?今頃、ハルさんが空になった私の部屋へ訪れている頃だと思って」

「師匠ってば……」

 

「そっちにお邪魔しても、構わないかしら?」

「ダメです。師匠にバレたら俺が殺されるんで」

「あら、私の事嫌いなの?ひどいわねぇ」

「ははっ、そうですね。師匠と同じくらい嫌いです」

 

イタズラっぽい笑みを浮かべて、ゆっくりとこちらへかぶきりひめが歩いてくる。

「さて、お聞かせ願えるかしら?」

 

彼女と向き合い、俺は――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は――その姿が一番好きだな」

あの時、師匠はおそらくこう言ったんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?」

かぶきりひめが、一瞬きょとんとした。

「大体、こんなところでしょ?」

 

かぶきりひめが黙ったので、俺は追い打ちをかける。

「この言葉だけでは、言霊としての作用もなにもない」

 

けれど、おそらく師匠はその一言で彼女の姿を縛ったんだ。

「…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故なら、貴方は師匠の事が好きだから」

ピクリと、彼女の尻尾が揺れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言霊より強く、己を縛りつけるモノ。陰陽師でない俺でも理解できるモノ。

それは、俺の知りうる限り、恋愛感情以外に他ならない。

 

『それなりの条件と準備が整わないと駄目なんだが』

そもそも師匠に対して恋い慕う気持ちがなければ、この呪いは決して成功しない。

 

好きな人に、その姿が好きだと言われてしまったら最後、自分で自分に縛られるしかない。

たとえそれが、縛られるのを嫌うかぶきりひめであっても。

 

「…………」

 

かぶきりひめは、否定も肯定もしなかった。ただ、にっこりと笑っている。

 

「まぁそういうわけで、今夜は好きな人の所にでも行ってやって下さい」

俺は返事を待たずに、そのまま寝室へ入って戸を閉めた。

説明
第二章終わり。かぶちゃん考察に対する私の答えは……?
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