艦隊 真・恋姫無双 128話目
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【 予告 の件 】

 

? 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

しばらくして、于吉が説明を始めた。

 

ーー

 

于吉「長らく、お待たせしました! さて、話を再開させましょう!」 

 

「「「 ………………… 」」」

 

于吉「おや? もう少し高揚してもいいと思うのですが……皆さん、静かですね。 ですが、心配されなくても結構です。 この于吉、皆さんの気持ちは、しっかり理解していますので」

 

「「「 ??? 」」」

 

「ここに居る皆さん、私の話を聞きたくて仕方なかったでしょうに素直に馴れない乙女心。 ふふふ……本当に恥かしがり屋さん達ですねぇ〜」

 

ーー

 

ややテンション高めの于吉であるが、それを聞く者達は逆に興醒めしている。 確かに重要な話をするのだから、緊張感もある。

 

しかし、この鬱陶しい態度には少々辟易している事も間違いない。 現に于吉の軽口を聞くと何名かが睨み殺気を飛ばす。 しかし、鍛え抜かれた各国の兵士さえ怯える程の気を受けても、于吉は平然と受け流した。

 

そして、眼鏡の位置を軽く修正しつつ、真面目な顔になり語り出す。

 

ーー

 

于吉「まあ、確かに前置きが長いのも失礼ですし、そろそろ本題へと入りましょうか」

 

「「「 ─────! 」」」

 

于吉「それでは伝えましょう……北郷一刀襲撃における正しい認識を。 これは、とても大事な事ですので、よく耳を傾けて下さい」

 

ーー

 

于吉は後ろに居る一刀へと目を向け、于吉の視線を受けた一刀も頷いた。

 

それは………一刀が艦娘達と共に実行した作戦を教える合図でもあり、味方をも騙した罪を白日の下に晒け出す、一刀なりの誠意であった。

 

 

 

◆◇◆

 

【 確認 の件 】

 

? 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

于吉「まず、今回起きてしまった北郷一刀への襲撃。 皆さん、どう思われますか?」 

 

ーー

 

一刀より承諾を得た于吉は、そんな言葉を投げてきた。 もちろん、一刀や艦娘達ではなく、集まった恋姫達に……である。

 

その言葉により皆が皆、一概に考えて論議された。 

 

ーー

 

冥琳「この宴席の場所は、洛陽城内の奥まった場所。 また同時に出席者は、天の国より降り立ち数々の武名を轟かせた、天の御遣い方だ。 そんな虎穴とも言える場へ刺客を放つなど、普通なら考えられん」

 

詠「警備を掻い潜る手間も結構掛かるし、例え無事に抜けても……あの艦娘って娘(こ)達が黙って見ている訳ないわよ。 瞬時に無力化され、雇主を白状させられるだけになると思うわ。 だけど、現実にアイツは…………」 

 

月「うん、ご主人さまは………私達の目の前で────」

 

蒲公英「ほっんと、蒲公英もビックリしちゃた! 急に知らない顔が現れたなぁと思ってたら……バッ、ババババッ───て、なっちゃってさ! それで気が付いたら、ご主人様が倒れていたんだよ!? もう、どうしようかと……」

 

翠「──────くそっ! 思い出したら腹たってきやがった!! おいっ! ご主人様に攻撃仕掛けた奴は、どうなったんだよっ!? 明命が追い掛けって行ったけど大丈夫なのかっ!!?」

 

雪蓮「その辺は安心してよ、私の勘が無事だって言ってるから。 だけど……凄いわねぇ。 互いに顔を見せる機会が少ない各国の将達が、友達みたいに互いを真名で呼び合うなんて………」

 

穏「………うふふふっ、本当に〜不思議ですねぇ! この広大な大陸に点在する国と親交を結ぶ事さえ難しいのに、まるで親友のように接する冥琳様達! あぁ〜、その秘密を知りたいと思うと身体が熱く────はうっ!?」

 

思春「……………穏様、これ以上の発言は物議を醸しますので、此方へ……」

 

霞「ったく、あんま深う考えると……老けるの早まるでぇ? それに、ウチらが考えにゃならんこと、別にあるんとちゃうか?」

 

祭「はははっ! 確かに言う通りじゃ! 天から御遣いが本当に降り立って来るのであれば、我らの争いなど蝸角?(かかく)?の争いに過ぎん! それよりも、天の孺子に危害を加えた愚か者の追及、これが大事であろう!」 

 

桂花「そうなると………艦娘達を欺き、一刀の命を狙える勢力は三つ。 この漢王朝を牛耳る『王允の派閥』、その漢王朝の転覆を図る『白波賊』、そして……艦娘達に匹敵する力を持つ敵対勢力『深海棲艦』になるわね」

 

ねね「ぐぬぬぬぬ………恋殿さえも手を焼いた白波賊も可能性はあるし、深海棲艦とやらの実力も本物! されど、酷評される王允の権力も侮れないではないですかっ! こ、これでは……どの勢力かなど到底言えないですぞ!?」

 

恋「…………ひとつ、だけ………??」

 

 

ーー

 

────と論議され、然したる時間も掛からず、ある答えに殆どの者が賛成した。

 

それを見た于吉は、満足そうに笑う。

 

ーー

 

于吉「ふむふむ。 すると皆さんの殆どが、今回の襲撃は『北郷一刀を狙った奇襲』と思っていらっしゃる……と、言うことでよろしいので?」

 

「「「 …………(コクリ) 」」」

 

ーー

 

于吉の声で集まった者の大部分が首を縦に頷く中、代表するかのように軍師達が于吉の前へ立ち、その理由を説明をした。

 

ーー

 

冥琳「────総合的に判断すれば、その見識が妥当だろう。 どんなに強い軍でも頭を潰せば脆く崩れる。 天の御遣いの集団といえど……例外では無いからな。 北郷を狙うのは、戦術的に有効だと考えたということだ」

 

詠「だいたい、ボク達が禁断の部屋で宴席を囲んでいるのを、何人が知っていると思うの? あの部屋の存在だって秘密にされているのに、そんな場所を態々勧めたのは、王允だって聞いてるんだから!」

 

桂花「刺客は御遣いと同格である深海棲艦。 これって………標的を完全に一刀と定めて、殺害しようとしたと仄めかしているも同然じゃない!」

 

ねね「そ、それにですぞ! 仲間の御遣いと変わらない姿で、部屋に侵入するなど、余りにも手が込んでいると思わないでやがるのですかっ!? 部屋の状況を知らなければ、こんな芸当なんて無理だと言ってやるですっ!!」

 

于吉「………………なるほど。 それらの情報の集約が、この結果という訳ですか」

 

ーー

 

軍師として名のある四人が語る説明は、要点を押さえて理解し易く、確かに説得力に満ち溢れている。 後方に居る者達も納得しているようで、反論をする者など、誰も居なかった。 

 

だが────

 

ーー

 

于吉「………ですが、残念ながら……ハズレなんですよ」 

 

 

冥琳「────なにぃ?」

 

詠「ちょっ………ど、どう意味よ!?」

 

ねね「な、何ですとぉ───っ!?」

 

桂花「………………」

 

「「「 !?!? 」」」

 

ーー

 

于吉結果を聞いて、冥琳と詠達は其々で驚愕の表情を見せた。

 

どう考えても、相手から仕掛けた奇襲の類いにしか見えないのに、于吉は間違いだと断言したのだから当然と言えよう。 

 

ーー

 

于吉「さて……と。 次は貴女の考えを聞きましょうか?」

 

??「…………………」 

 

于吉「胸に秘めたままなんて気弱な乙女の様な真似事、貴女に演じられる訳がないじゃないですか。 自分の考えを実行し相手に知らしめるのが、曹孟徳として……いや、覇王としての流儀でしょうに?」

 

華琳「勿論よ。 そうでなければ、先の言葉を無視した事になるわ。 それじゃ、一刀を答えとほざいた貴方の顔が、悔しげに歪むのを見物できないじゃない。 そんな面白い見世物を見逃す私じゃないのよ?」

 

于吉「覚えて頂いたとは光栄。 ですが………その自信、逆に私を失望させるような真似などして欲しくないですね。 仮にも貴女は、私の大事な左慈の主になるのですから」

 

ーー

 

そして、そう言い終わったと同時に、前を向いたまま于吉は………自分の背後で立っている人物、華琳にも答えを求める。 

 

腕を組み、一人で于吉の背後より見ていた華琳は、于吉から問われると口を開き、自分の考えを説明し始めた。 

 

 

◆◇◆

 

【 猫耳 の件 】

 

? 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

華琳「貴方は一刀を答えだと言い放ち、司徒王允を小者と酷評した。 そして、刺客の正体である深海棲艦を加味すれば、真相は自ずと見えて来るわ」

 

于吉「…………で、その答えとは?」

 

 

華琳「それは─────『連環の計』よ!」

 

 

 

于吉「……………!」

 

「「「 ─────!! 」」」

 

 

 

ねね「あ、あの筋肉達磨が………連環の計ですとぉ!?」

 

詠「ちょと待ちなさいよ! ボク達でも連環の計を行うのに、かなり濃密で正確な情報がなければ、連続して策を仕掛けるなんて出来ないわ!」

 

冥琳「それに、だ。 言っては何だが……華琳や私に何度も論破された司徒の知略では高が知れている。 その様な相手に、私達や北郷達を相手取り連環の計を実行し成功させるとは………到底思えん」 

 

桂花「………………」

 

ーー

 

『連環の計』───その言葉を聞いて于吉が片眉を上げる中、軍師達や他の者は驚きを隠せない。

 

 

★☆★

 

連環の計とは、《兵法三十六計 連環計》の事。 

 

複数の計略を相手に仕掛け、相手の判断を困惑させるなどさせ、弱体化させる。 この計略を行い、勝利した著名な戦いは少なくないという。 

 

★☆★

 

 

王允は、この漢王朝という伏魔殿の中で、最高権力者まで上り詰めた官僚である。 だが、決して軍師として軍略の才能に秀でているのではなく、政務に優れていた文官だった。 

 

洛陽城内の乱で一刀達の力を見た王允は、一刀達を追い落とそうと幾度も計略を仕掛ける。 しかし、艦娘達による超ド級の戦闘力、時を跨いだ磨かれた冥琳や華琳達の知略で、悉く失敗している状態だったのだ。  

 

それなのに、あの王允が………難易度が高い『連環の計』で見事に成し遂げたと聞いて、皆が驚くのも無理がなかった。

 

だが、華琳は当然と言わんばかりに、その理由を説明をしたところ………思いも寄らない事態が発生する。

 

ーー

 

華琳「驚く事は無いわ。 アレでも王允は……師である郭泰より『王佐の才』と評された男よ。 その実力も────」

 

「「「 ─────ブフッ!? 」」」

 

桂花「ちょっと、汚ぁあああっ! な、何を急に吹き出してるのよっ!?」

 

ーー

 

『王佐の才』………仕える王を助ける才能であり、通常この二つ名は荀文若、即ち桂花の事を示す。 だが、桂花より先に王佐の才と評価された者が存在し、その者が王允だったという事だったのだ。

 

まあ、それくらいなら、目を見開くだけの驚きで済んだ。

 

しかし、桂花の横に居た軍師の頭には………

 

髭を生やした厳つい偉丈夫が、猫耳頭巾を頭に被り、桂花の服装で仁王立ちしているという、肌が粟立つ鮮明な画像が浮かびあがり、その画像の王允が一言だけ呟いた。

 

『へ、陛下など………心配する必要はニャい!』

 

ーー

 

ねね「ぶっ、ぷぷぷぷ………(が、我慢ですっ! ここは雌伏の時などですっ!! で、ですが………猫耳の………」

 

詠「う、くぅぅ……ぐふっ、ぐふん!(た、確かに………陛下や劉協様に対して………ツンツンだった。 ぶふぅ! お、お腹が……お腹が痛い……!)」

 

冥琳「…………うく…………ゴホッゴホッ(私とした事が………軍師として……まだまだ、か。 し、しかし………語尾が……ニャとは………ぐふっ!!)」

 

ーー

 

軍師ゆえに想像力が豊かであった事、見本となる桂花が側に居た事と冥琳達に不幸が重なり、少しの間ではあるが………言葉を話せない状態が続くのであった。

 

 

◆◇◆

 

【 波及 の件 】

 

? 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

華琳「…………もう、良いかしら?」

 

桂花「…………………」

 

 

 

冥琳「…………すまん。 大丈夫だ」

 

 

ねね「こ、これは、ねねを貶める陰謀なのでぇ───」

 

恋「……素直に……謝る……」

 

ねね「………ゴメンナサイ」

 

 

詠「ボクが、こんな恥ずかしい事………」

 

ーー

 

ようやく落ち着いた所で、話は再開────しなかった。

 

ーー

 

于吉「………いやいや、数々の外史を廻りましたが……あの『王佐の才』が揃いも揃ってツンツンとは………くくくくくくくっ!!」

 

卑弥呼「こ、これはっ!? 何という発想! 何という衝撃! 正に漢女道へ新たな一頁を刻み込む、素晴らしい瞬間だぁあああっ!! この猫耳を装着すれば、儂らの魅力は三倍以上にアァァップゥするわぁ!!!」

 

ーー

 

如月「ねえっ、如月にも見せ───あっ………猫耳っ!」

 

菊月「むう………あれは猫耳に対して……失礼ではないのか?」

 

ーー

 

于吉が懐より取り出した水晶玉を取り出すと、外野側で集まって覗き見しているのだ。 

 

見ている者は、于吉は当然として───卑弥呼と部屋に居る艦娘の大半。

 

どうやら、冥琳達の思い浮かべた猫耳姿の王允が、于吉の妖術で映しだされている模様、興奮の坩堝となった騒ぎは、なかなか収まらないように見えた。

 

ーー

 

于吉「それは………実に由々しき事態ですね。 卑弥呼、その装備を漢女道では───永久的に封印してくれませんか?」

 

卑弥呼「───ぬうっ!? 于吉よ、うぬは……猫耳という神器を手に入れた漢女道の超進化を……まさか阻むつもりか!?」

 

于吉「当然です! 猫耳を装着して魅力を増した卑弥呼達に、私の左慈が貴女達の色香に堕ちてしまったら、どうすればいいんですかっ!?」

 

卑弥呼「ふん! 侮ってもらっても困るわ! 漢女道は漁色家どもの集りでは無いっ! 崇高な志を持つ、気高き────」 

 

于吉「ええ、貴女達が一途だと言うのは、よく存じていますよ。 しかし、恋する者を引き留めるのは、余りに難しい事もよく知っているでしょう」

 

卑弥呼「だが、それは! その漢女の魅力が素晴らしいからこそであり────!!」 

 

于吉「それでは………卑弥呼は更に魅力を増やし、華佗以外の男達を惑わすつもりなんですか? そして、そんな卑弥呼を見て、華佗が心を乱されないと……言えるのですか!?」

 

卑弥呼「─────────っ!!」

 

ーー

 

陸奥「へえ、猫耳ね………」

 

瑞穂「み、見たことのない兵装ですね。 これは、新兵器……なのでしょうか?」

 

陸奥「あら、あらあら……瑞穂は知らないの?」

 

瑞穂「は、はい! すいません……勉学不足で。 あの、陸奥さん……宜しければ、瑞穂に御教授して下さい。 この方の頭に着いています猫の耳のような装備は……何という物でしょうか?」

 

陸奥「それは、ねぇ? 提督をヤル気にさせる夜戦装備品の一つよ」

 

瑞穂「そうですか。 提督をヤル気に………や、殺るぅ!?」

 

陸奥「もう、違うわよ。 夜戦は夜戦でもね? 布団の上で、私達が殿方を迎える夜戦の方よ?」

 

瑞穂「そ、そっちの………夜戦……装備品ですかっ!?」

 

陸奥「でね………標準装備が『猫耳、メイド服、猫しっぽ』よ」

 

瑞穂「ね、猫耳……メイド服ぅ───」

 

陸奥「そして、提督の反応次第ではカスタム化も────って、あら?」

 

瑞穂「…………………」

 

陸奥「あらあら、いつの間にか気絶しちゃったわ。 ほんの軽い冗談だったのに………」

 

ーー

 

如月「どう思う、菊月ちゃん。 司令官って………猫耳好きなのかしら?」

 

菊月「それは、本人に聞かねば………はっ!?」

 

如月「ねぇ……菊月ちゃん。 如月と一緒に……猫耳と猫しっぽを着けて、司令官を御迎えしてみる? きっと、司令官も喜んでくれるわよ?」 

 

菊月「い、いや、それは………だな………」

 

ーー

 

鳳翔は世話役で準備に奔走中。

 

一刀は止めようとしたのだが、向かう先が何やら禍禍しい空間が形成されるのを見て、赤城達が頑として引き止めたからだ。 

 

─────『提督を止めに向かわせれば、非常に不味い予感がした』 

 

後日、この事を語った赤城と加賀の感想である。

 

残りの艦娘は………着替えと説教が二隻、そして残りは一刀の側に張り付いている。 こんな時じゃないと、一刀の側に近寄れないので、ある意味『役得』と言っても差し支えないだろう。 

 

冥琳達を反省させた華琳達も、于吉達の様子に苦虫を噛みしめながら、待つしかなかった。

 

──────そんな中、一隻の艦娘が声を大にして叫ぶ。

 

ーー

 

??「何時まで騒いでいるんですかぁ!! 皆さんが説明を待って居るんですよ!!」

 

「「「 ─────!? 」」」

 

??「それに早く静かにしないと、鳳翔さんが怒っちゃいます! どうなっても……知りませんよぉ〜」

 

鳳翔「 (#^▽^) 」

 

「「「 失礼しました────っ! 」」」

 

??「これで取材………いえ、会見がしやすくなりましたねぇ! さあ、どうぞ! 思う存分に話を盛り上げて下さい! この青葉が全力で聞き取りさせていただきます!」

 

ーー

 

こうして、混沌とした騒動が収束されると同時に、青葉も復帰を果たす。

 

勿論、影で動いていた二人も、にこやかに青葉へ手を振り自陣へ戻って行ったのだった。

 

 

◆◇◆

 

【 糾明 の件 】

 

? 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

華琳「………さて、静かになった所で話を続けさせて貰うわよ」  

 

「「「 (゜-゜)(。_。)(゜-゜)(。_。) 」」」

 

ーー

 

一段と静かになった室内に、華琳の声が響く。

 

冥琳達は、華琳の語る一言一行を聞き逃さないようにと、真摯に耳を傾ける。 于吉も眼鏡を光らせて、その行動を注視した。

 

そして、一刀や艦娘達も─────

 

ーー

 

華琳「昨夜の戦いは『駆虎呑狼の計』を用(もち)いて、一刀達を殺害し後釜を狙った王允の計略。 そして、昨晩の計略が失敗したと理解すると、王允は次の計略を発動させて…………今に至るのよ」 

 

詠「『駆虎呑狼の計』って………まさか!」

 

華琳「王允の次に用意した計略は────『二虎競食の計』よ」

 

冥琳「北郷より聞いた………正史の『王佐の才』が行った計略か」

 

ーー

 

前の記憶を持つ者達は、北郷一刀より聞かされた『正史の荀文若』が献策した計略を思い出す。 勿論、王允自身が考えたのか証明など出来ないが、『王佐の才』と言われし男である故、不定も出来ない。

 

ただ、言えるのは…………王允の知略を気付けなかった。 これは、王允の軍師的才能が冥琳達と匹敵してきた、とも言えるのだ。

 

ーー

 

華琳「正確に示せば、『三虎競食の計』になるわね。 王允の狙いは、一刀や御遣い達、深海棲艦、白波賊の三勢力による潰し合いよ」 

 

ねね「ちょっと待つのですっ! 深海棲艦は判るのですが、どうして白波賊が関係するのですかっ!? 昨夜でも、共闘していたと思われるのに!?」

 

華琳「簡単よ。 共通の敵である『北郷一刀』が倒れれば、双方離れるわ」

 

冥琳「ふむ。 元執金吾であり白波賊頭目『楊奉』は、反乱で九分近くまで制圧した洛陽を、北郷達の活躍で手放してしまった恨みがある。 最大の標的と定めるのは、間違いないだろう…………」

 

詠「深海棲艦達も、御遣い側の頭であるアイツ……一刀を狙っているのは、今回の襲撃で理解しているわ。 頭を潰せば……組織は弱体化する。 特に、アイツの周りには慕う者が多いし……って、なんでボクが落ち込まなきゃ!?」

 

ねね「むむむむ……………」

 

華琳「全く、厄介な相手よ。 追い詰められて、真の才覚を目覚めさせるなんて……ふふふふ」 

 

ーー

ーー

 

赤城「提督、お聞きましたぁ!? 追い詰められると真の力を会得できるようです! 私も追い詰められば『改二実装化』も────」

 

一刀「………………ダメだ。 成功しても失敗しても、備蓄が空になる様子しか浮かばない」

 

赤城「そ、そんなぁ〜〜〜!」

 

加賀「……………ボソ(言わなくて、よかった)」

 

一刀「ん? 何か言ったかい?」

 

加賀「…………いえ、何でもありません。 何でも………」

 

ーー

 

華琳が王允の説明になった時、始めて于吉が口を挟む。

 

先程の時より、若干ながら険が取れた様子ではあるが、華琳に対しての指摘は厳しさを増した。

 

ーー

 

于吉「それでは、私から反論致しましょう。 連環の計とは、なかなか面白い事を言われましたね。 ですが、私は言った筈です。 『王允は内応者では無いですが、情報の漏れは王允からだ』と……」

 

華琳「確かに言ったわ。 言い方は違うけど同じ意味合いの言葉はねぇ」

 

于吉「ですが、これでは王允も内応者と言っているようなもの。 ここは、どう答えられるのですか?」

 

ーー

 

華琳は于吉の問いを聞き、口角を上げる。 

 

まるで、その質問を待っていたかのように……だ。

 

ーー

 

華琳「忘れてなどいないわ。 そもそも王允と深海棲艦、たぶん白波賊さえ繋がってないんでしょう………あの性格なら。 ならば、答えは一つしか無いわ。 至極簡単に行き着く結果よ?」

 

于吉「………………」

 

華琳「答えは、王允が場まで整えて知らせたのよ。 深海棲艦か白波賊宛と記載して、自分の部屋、例えば机の上にでも置いて放置すれば、何時かは無くなって、連絡は届く事になるでしょう。 確実に………」

 

ーー

 

華琳の答えに于吉は口をつぐむが、代わりに冥琳、ねね、詠が指摘を行う。

 

軍師としては、粗があれば質問して自分達を納得させれば、他の者達には自分達が説明するという、意思が透けて見えた。

 

華琳は内心で礼を言いながら、三人の質問を次々に撃ち破って行く。

 

ーー

 

冥琳「そ、そんな馬鹿な! 幾ら自分の部屋と言っても、そんな内応の証拠にあたる物を無造作に置いておくなど、ありえん!!」

 

華琳「『司徒』の部屋……だからこそよ。 最高権力者の部屋へ勝手に入り込む官僚は先ず居ないわ。 それに、明命や思春すら入り込めれない警備が厳重な部屋よね? これは、冥琳も認めていたでしょう?」

 

冥琳「だが、それでは………侵入できる者など────あっ!?」

 

華琳「天の御遣いが侵入できるのに、深海棲艦が出来ない理由は無いわ。 それに……楊奉は元執金吾。 洛陽城内に配下の者が、少なからず残っている可能性もある。 どちらにしても、部屋に侵入できる前提が生まれるわ」

 

ーー

 

ねね「で、ですが………あまりにも行き当たり過ぎの……策なのでは?」

 

華琳「司徒の情報は、誰でも欲しい筈でしょ? 冥琳や一刀だって諜報を送っているのに、敵対している所が送らない筈ないじゃない。 かなり高確率的で実行を起こしてくれると、私なら考えるわ」

 

ーー

 

詠「だけど、王允に動きなんか……何もないわよ?」

 

華琳「あったじゃない。 王允が私室の警備を固めたと」

 

詠「─────あ、あれが?」

 

華琳「あれは、一刀が暗殺された場合の裏付工作よ。 自分の所から情報は漏れていないとの示威。 実際に見せれば文官、武官も納得するでしょうし、それ以上の事を三公の筆頭へ言える訳ないじゃない」

 

ーー

 

三人の軍師を降した華琳は、于吉へと向き直り話し掛ける。 

 

要件は当然────

 

ーー

 

華琳「これが、私が出した結果よ。 貴方如きに無能呼ばわりされたくないから、先に王允の謀を暴いてあげたわ。 確かに王允は内応に加担する事なく、情報を漏らすだけで………他の敵対する者達へ一刀の排除を任せる事ができるわね。 連環の計によって………」

 

于吉「……………」

 

華琳「だけど、一刀が証拠? 何が証拠よ! 一刀が狙われていたと証明できただけじゃない! それなのに……私が真名まで賭けた意味など────」

 

ーー

 

華琳が激昂する中、于吉の顔が下を向いていく。 

 

若き少年からは散々罵倒や暴力を振るわれ、恍惚を覚える于吉であるが、今回は若き少女。 

 

異性からの罵詈雑言に、流石の于吉も堪えた………と恋姫達が思った瞬間。

 

下を向く于吉の口から、声が流れ始めた。

 

ーー

 

于吉「…………クックック……」

 

華琳「──────!?」

 

于吉「フッ……ハハハハ………」

 

「「「 ───────!? 」」」

 

于吉「ハーッハッハッハ!」

 

華琳「な、何なの? 私に答えを言い当てられて、気でも狂ったの!?」

 

春蘭「華琳様っ!」

 

秋蘭「早く、お下がりください!!」

 

ーー

 

于吉の変化に急いで駆け付けた春蘭と秋蘭。 一緒に付いてきた季衣と流琉に華琳を託し、于吉の行動を警戒する。

 

だが、于吉は急に顔を上げ華琳を見据えると、パンパンと拍手を始めた。

 

ーー

 

于吉「ブラボー!  おお………ブラボー!!」

 

 

華琳「ぶ、ぶらぼう………?」

 

春蘭「秋蘭、そんな呼名の棒など………あったか?」

 

秋蘭「油断するな姉者、訳の判らない事を言って、相手の判断を奪うのはアイツの常套手段。 我らは華琳様を守るべく注視するだけだ」

 

春蘭「おお、そうかっ! 危なく奴の術中に入るところだったか!! おのれぇ……この夏侯元譲を謀ろうとは、許さんっ!!!」

 

冥琳「ま、待てっ!! 于吉には敵対する意思はない! あの言葉は『賞賛』の言葉だ!!」

 

ーー

 

華琳達が警戒する中、冥琳が慌てて春蘭達を止めに入る。 

 

唖然とする華琳達に冥琳が説明するには、ブラボーは天の国の英語で褒め讃える意味があるそうで、艦娘の金剛から教わったという。

 

始めは疑わしい目で聞いていた華琳だが、鳳翔と目が合い頷かれると簡単に信じた。 

 

ーー 

 

華琳「ま、紛らわしい言い方する奴が悪いのよっ!! まったく…………」

 

于吉「いやはや、余りにも正確に解き明かすので、つい天の国式の賞賛をしてしまいました。 失礼………」

 

華琳「それで、この勝負は私の勝ち───」

 

于吉「いえ、貴女が解いたのは八割だけ。 まだ二割……残ってますよ」

 

華琳「に、二割も───!?」

 

ーー

 

于吉が語る筈だった内容を自力で解いた華琳だが、まだ答えていない物がある事に愕然とする。 

 

矛盾点は全て洗い流し、何度も辻褄も合う事を確認したのに、だ。

 

冥琳達も考えるが、やはり足りない部分が判らない。

 

そんな華琳達が悩むのを見て、于吉が嬉しそうに答える。

 

ーー

 

于吉「ですが、誇っていいですよ。 私の予想では、ここまで解かれるなんて思いもしなかったんですから。 あとの二割の答えは───貴女が切り捨てた北郷一刀なんです。 ふふふ…………判りましたか?」

 

華琳「わ、判るわけ────」

 

于吉「おや、貴女なら判ると思っていたのに、まだ判りませんか?」

 

華琳「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」

 

ーー

 

于吉の弄ぶような言い方に、腹を立てながら考えるが……華琳の頭には思い浮かばない。 一刀が答え、答えが一刀………まるで禅問答のようにクルクルと回る、于吉からの問い。

 

于吉は、わざとらしく溜息を吐くと………答えを出した。

 

ーー

 

于吉「北郷一刀が……こうして無傷で生きて存在している。 これこそ、全ての問いに答えられる証ですよ」

 

華琳「─────あっ!」

 

于吉「彼は………相手の策を見破りながらも便上し、わざと自分を囮にして、敵対する相手を引き摺り出したんですよ。 漢王朝の名を借りた悪意から、貴女達や自分の仲間を護り抜く為に───」

 

説明
別伝ではなく、本編です。  次を書くのに結構時間が………
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スネーク提督 コメントありがとうございます! コメントと頂く事が楽しみな作者としては寂しい限りですw 次の更新は作者の都合で数週間かかります。 どうか気長にお待ち下さい。 (いた)
いやぁ、紙の小説読んでたらTINAMIの存在うっかり忘れてしまった…さぁ于吉くん?俺が読んでた小説式のお仕置きしようか?(小銃と宝珠を取り出しながら)(スネーク)
鼻癒える提督 コメントありがとうございます! 作者本人として既にエタる兆候を示していますが、コメント頂いた方に完結まで頑張ると約束したので継続しています。 そうでなければ、今頃はエタっていたかも………(いた)
知り合いに勧められて読んでみました(数週間かけて)、エタらない時点で尊敬します素晴らしい!(鼻癒える)
雪風提督 コメントありがとうございます! 味方の信頼があってこそ、です!!(いた)
敵を騙すにはまず味方から・・。出来そうでなかなか出来ない行為。(雪風)
クラスター・ジャドウ提督 コメントありがとうございます! ご指摘の通り若干?テンション高めに設定しております。 作者も何でこう変わったのか忘れましたが、たぶん……作品書いてる時のノリで……だと。   (いた)
この外史がかなり特殊な状況に置かれている所為かもしれませんが、少々于吉のキャラが変わってません?元々勿体ぶった口調を好む傾向にはありましたが、やたらハイテンションと言うかヒャッハーしてると言うか…?(クラスター・ジャドウ)
未奈兎提督 コメントありがとうございます! 于吉の悪ノリは更に続く……!?(いた)
まあ流石に悪ノリがすぎるぞ于吉w(未奈兎)
劉邦柾棟提督 コメントありがとうございます! 于吉「ふふ、身のほど知らずな発言で……」??「このドグサレがァァ──ッ!!」于吉「!?」 (o゚Д゚)≡〇)))`3゜).・;'∴(いた)
取り敢えず、于吉・・・・一発殴らせろ!?(# ゚Д゚)(劉邦柾棟)
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