「真・恋姫無双  君の隣に」 第74話
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一刀様が益州外征に出発され、留守を任せれました私達は政務に励んでいます。

「ただいま〜、涼州と雍州の巡察、終わらせて来たよ♪」

「おかえりなさい、蒲公英さん、翠さん。御疲れ様でした」

二ヶ月に亘っての巡察を終えた御二人に感謝を述べます、お飲み物を用意しましょう。

「どうだったの、新法への反応は?そんなに厳しい法じゃないけど締めるところは締めてるしね」

新法作成の一端を担っていた詠ちゃんが質問します。

「戸惑いはあった様だけど漢帝国のよりは分かりやすいし、金持ちへの贔屓も無いから好意的な反応が多かったな」

「賄賂持って来た奴は速攻に投獄したけどね♪」

・・やはり、ありましたか。

中々悪習というのは抜けないものです、官吏には徹底させてますが贈ろうとする人はまだまだいらっしゃいます。

今迄の漢帝国の政を思えば仕方ないとも言えますが、そうやって商いや生活を護られていたのですから。

「投獄の噂が広がれば民も世が変わっているのを更に実感するわ。初犯ならそこまで強い刑罰は与えないから勉強と思って貰うしかないわね」

「そうだな」

投獄された人はある意味で行動力のある人とも取れますし、良い方向に向かって欲しいです。

お飲み物ですが初物の蜜柑が届いてましたね、これを使いましょうか。

蜜柑を絞ったものを皆さんにお出ししながら、翠さんにお聞きします。

「馬騰さんはお元気でしたか?」

西平にも親書を届けて頂きましたから、お会い出来たと思いますが。

病は大丈夫なのでしょうか?

「まあ、病は華佗のお陰で随分良くなってたよ」

どうしたんでしょうか?喜ばしい事ですのに翠さんの歯切れが悪いです。

「お姉様、色々と言われてたもんねえ♪」

「たんぽぽ、余計な事言うな!」

「と・く・に、一刀様の事で。孫を早く抱かせろってね♪」

ガチャンッ!

ま、ま、ま、孫って、へう〜。

「そ、そう。そ、そうね、く、国の、為にも、ひ、必要、かしら」

詠ちゃん、そんな震えた手で持ってたら中身が毀れるよ。

「詠、何を他人事みたいに言ってんだ!お前だって同じ立場だろ!」

「ち、違うわよ。ぼ、僕はあいつの事なんか」

素直じゃないよね、詠ちゃん、でも一刀様との御子、へう〜。

「たんぽぽにも言ってたけどね♪頑張っちゃお♪」

「そこだっ!何であたしにだけ「おまえには似なくていいから北郷殿に似せるように」って、それが母親の娘に言う言葉か!」

「いいじゃない、お姉様だって別に生むのを一人と決めてるんじゃないでしょ?自然にどっちにも似る子が生まれるよ」

そ、そうですね、きっと馬騰さん也の激励ですよ。

「そ、そりゃ、あたしだって・・・」

言葉が小さくなる翠さん。

わ、私も賑やかな将来像を考えて顔が熱くなってきました。

「うわっ!月さん、ちょっとこれ、酸っぱくない?」

飲み物を口にされた蒲公英さんが口を窄まれてます。

「えっ!?ごめんなさい、初物なので熟してなかったのでしょうか?」

「おいおい、折角入れて貰っといて、・・ああ、確かにちょっと酸っぱいかな?」

翠さんも同じ感想のようです。

「そう?僕はそうでもないけど」

詠ちゃんは違うの?

私も飲んで見ます、・・酸っぱいとは思いませんでしたが。

 

 

「真・恋姫無双  君の隣に」 第74話

 

 

「はぁっ」

「焔耶、大技を使うなら相手の姿勢を崩せ。相手の動きを読むのだ」

うむ、今日も励んでおるな。

焔耶にとって、華雄はわしより良き師なのだろう。

わしは得物が特殊ゆえ、技を教えるには不向きだったとも言えるしな。

鍛練中なので声を掛けなんだが、華雄が手を止め此方に向いた為、焔耶もわしらに気付く。

「桔梗様、それに紫苑様も」

「すまぬな、邪魔をしてしまったか」

「ごめんなさいね」

「いや、そんな事はない。小休止にしよう。恋とねねも一緒だったか」

「紫苑がお弁当作ってくれた。これから食べる」

「今日はお休みなので恋殿とご一緒してたのです」

包みの大きさに二人が驚いておるぞ、紫苑、作り過ぎだ。

わしや焔耶達は早々に腹が膨れたが恋は淡々と食べ続けておる、昼間から酒を飲むのもあれだしな。

腹休めを終えたか、焔耶達が鍛練を再開した。

この二人は後の世で将の模範として語られる。

大きな失敗を犯すも、それを糧とし成長した名将と言われ、将の在り方として良き導と称えられるのだ。

ねねは疲れていたのか、紫苑に寄り掛かり眠っている。

この小さき身体に大きな知を持つ事を誰もが驚く、もう数年もすれば知に釣り合う成長を遂げるのだろうが。

「紫苑、璃々はどうした?」

「美羽ちゃんと出掛けてるわ。・・本当に一日一日大きくなってるわ、心も、身体も」

「・・寂しいか?」

「そうね、寂しくあって嬉しくあるわ。あの子が私の子として産まれて来てくれた事を、どれだけ感謝しても足りない位に」

ねねの頭を優しく撫でる紫苑に、女としてどうにも置いていかれた気分になるの。

「それにしても、・・恋よ、まだ食えるのか?」

「うん」

流石に食い過ぎのように思うが、以前よりも量が増えていよう。

「そういえば、恋ちゃん、どうして一刀様の遠征に一緒に行かなかったの?気になってたのだけど」

確かに、親衛隊隊長の恋が何故留守なのだ?

益州出身のわしや焔耶が外れたのは、同郷の者を人質に取られぬようにとの配慮だったのだが。

「留守番した方がいいと思ったから」

むう、恋の場合、わしの様な凡人には理解できぬ直感がある。

その恋が言うのであれば何かがあるのか。

まあ良いわ、その内に分かるであろう。

「ふむ、わしの様に体調が悪くないのなら良いがな」

「桔梗、そうだったの?」

「うむ、どうも最近微熱があってな、時に吐き気もあるのだ」

 

 

白蓮さんの顔色が、もう青いのを通り過ぎて白くなってます。

「何でだ?何で私みたいな凡人が河北全域の行政長官に任命されるんだ?ハハ、こんなの夢に決まってる」

「いけませんぞ、白蓮殿。現実から目を逸らされては」

「だよな。アタイ達の目の前でアニキが指名したし」

「星さん、文ちゃん、これ以上追い討ちを掛けないであげて」

余りの大役に、辞令から三日が経ちましても白蓮さんはこの状態です。

私と文ちゃんと星さんも、白蓮さんと一緒に河北に向かう事になりました。

ですから姫様に挨拶をと思いまして職場を訪ねたのですが、姫様は出掛けていまして、お戻りになるまでとお茶をしています。

「白蓮殿、本当は主と離れるのが寂しいだけなのではないのですか?」

「そ、そんな事は、・・そりゃ、あるけど」

これは白蓮さんだけじゃなくて、此処にいる全員の本音だと思う。

私達は皆、一刀さんが大好きですから。

最低でも半年は寿春に戻って来れないだろうし。

「ですが主の人を見る目は確かです。白蓮殿は自信を持ってよいと、私は思いますぞ」

「そ、そうかな?」

「そうですよ。勿論、私達もお手伝いしますから」

「・・斗詩、ありがとう。私、頑張るよ!」

「アタイも斗詩の為に力を貸すぜ」

「あ、ああ、助かるよ」

文ちゃん、そこは私じゃなくて白蓮さんの為に頑張ろうよ。

「そうだな。皆が一緒に来てくれるんだ、うん、大丈夫だ」

白蓮さんが元気になられて、丁度姫様も戻って来られました。

「お待たせして申し訳ありませんわ、急遽寄りたい所がありまして。それで皆さんが揃って河北に行か・れる・と・・・・」

姫様?

どうしたんでしょうか?

姫様が話すのを止められて、何故かじっと私達を見つめられてます。

いえ、・・私と、・・星さんを?

・・翌日、河北に出発する半泣きの白蓮さんと文ちゃんを、皆で見送ることになりました。

 

 

私は桃香様を抱え、寝室に入りお身体を優しくおろす。

医師を手伝う専門職の育成を考えた計画書の作成に、私や鈴々に朱里と雛里も協力していたのだが、根を詰め過ぎたのか、桃香様が倒られそうになり慌てて休んで頂いている。

「桃香様、痛みや苦しみはありませぬか?」

「・・大丈夫、無いよ。・・ちょっと、疲れたみたい」

「そうですか、鈴々が華佗殿を呼びに行ってます。今は休んでいてください」

朱里と雛里が部屋に入ってきた。

「お飲み物と果物を用意しました」

「の、飲み易い様に吸飲みと、果物は一口大に切ってます」

「ありがとう。貰っていいかな?」

水分を欲するのも食欲があるのも良い事だ。

美味しそうに召し上がっているのを見て、少し安堵する。

桃香様が私達にも食事を取られる様に言われて、自身の咽の渇きに気付いてご相伴する事にした。

食事を取っていたら、複数の足音が近付いてきた。

「あー、ずるいのだ、鈴々抜きで御飯を食べるなんて」

「ふむ。どうやら深刻な事態ではなさそうだが、診させてはもらおうか」

華佗殿が診察を始められる。

「・・成程。どうやら俺は役に立たんな」

「なっ、華佗殿!桃香様の身に一体何があったのですか!」

神医と称される華佗殿に手が負えない程の病だというのか!

「ああ、すまん、言い方が悪かったな。劉備殿は・・うん?・・関羽殿、貴女も診させてもらいたい」

わ、私も?

 

 

本とは素晴らしいですね〜。

絹の道を介しての交易が強化されて様々な国の文献が入って来るようになりましたから、読まないなんて絶対にありえませんよ〜。

ですが文字を読めませんので、暇を作り出しては言語習得に励んでいます。

一刀さんに身を委ねてからは何故か他の者では全く昂ぶらなくなりましたので、安心して講師も雇えます。

読める箇所が増えていき少しずつ身の中に入って来るこの感覚は、一刀さんに全て託させていただいてますから〜。

「冥琳様〜、此方が行政府の書簡です」

「ああ、態々すまんな。至急とはいえ使いの者でよかったんだぞ?」

「いえいえ、お気に為さらずに、序ででしたから」

この書簡を届けましたらお仕事は完了です、このまま部屋に戻って本を読みましょう〜。

「雪蓮、書簡が届いたぞ。今日中には仕上げてくれ」

「うう、一刀の馬鹿ー。仕事をサボったら減給なんて、鬼よ、鬼」

「フッ、言っておくが金は貸さんぞ」

「蓮華にも言われたわよ。解任されないだけ感謝しろって」

雪蓮様は官吏として、外交を統括しています冥琳様の下で働かれています。

華国では豪族と呼ばれる程の力を個人では持てません、当然ですが税収入などありません。

ですから邸や土地は、自身が働いて維持する金を捻出するしかないんです。

私の生家である陸家も既に一族はバラバラになっていて、色々ありましたが各々で生計を立てています。

勿論、孫家もです。

扉が開いて、祭様が入って来られました。

「冥琳、船上での交渉場を作って欲しいとの事じゃが、造船部門より問題点が挙がって来た。意見を聞きたい」

「分かりました。詳しく聞かせて頂けますか?」

「祭、お金貸して!天の酒の特級酒が売ってるのよ、急がないと売り切れちゃう!」

「・・雪蓮、お前という奴は」

雪蓮様は雪蓮様ですね〜。

まあ、祭様もあれで優しいお方ですから、自分の分も含めてお貸しするでしょう。

「それは禁酒しておる儂への当て付けか?」

は?

禁酒?

祭様が?

あまりの言葉に、私も雪蓮様も冥琳様も二の句が告げません。

「クッ、炎蓮め!自分の時は無理矢理付き合わせておきながら、儂の時にはおらんとは」

ほ、本気、ですか?

「あ、あの〜、祭様〜?」

「穏、お主も自覚が足らぬようじゃな。勉学は良いが適度の運動も必要じゃぞ」

 

 

一体どうしちゃったのよ、お姉ちゃん達!

恒例の勉強会なのに、集中どころか上の空じゃない。

「蓮華お姉ちゃん!」

「そ、そうね、登、なんてどうかしら?」

登?って何の事よ!

「思春!」

「斬る、斬らずにはおけぬ」

先から鈴が鳴りっぱなしだよ、何を斬るつもりなのよ!

「亞莎?」

「も、申し訳ありません、で、ですが嬉しくて、申し訳ありません・・・」

これって、シャオに返事してるんじゃないよね。

「明命」

「お、お猫様からの御神託であります。明日からは更に良い物をお供え致します」

何に祈ってるのよ。

・・ハァ、華佗を呼んでこようかな。

一刀が遠征に行ったからって、気が抜け過ぎなんじゃないの?

二ヶ月位で片付くって言ってたっけ。

これで大陸統一か〜。

・・そうだっ!

帰ってきたら、お祝いにシャオを贈り物にしよう!

まだお姉ちゃん達には負けてるけど大分膨らんできたし、中身も成長したシャオなら色気は圧勝してるから、うん、これしかない!

「一刀、早く帰ってこないかなあ」

「「「「 !!!! 」」」」

な、何!?

皆が一斉にこっちを向いて、それに顔が真っ赤。

・・ちょっと冷静に考えてみよう。

先の言葉に今の反応、・・ひょっとして、・・ひょっとしてっ!?

 

 

参りましたねえ、これほど体調に変化が出るなんて。

まだ昼間ですのに横になる事になろうとは。

「七乃、身体は大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ、美羽様。少し休んだら起きますので」

「だめ!おなかに赤ちゃんがいるときはむりしたらだめ!」

これは困りました、璃々ちゃんに言われては暫くは起き上がれませんね。

「赤ちゃんの為に精の付く物を狩って来るにゃ!」

「「「行くのにゃーーー」」」

美以ちゃん達が物凄い勢いで出て行きました、狩って来るって何処まで行くのでしょう?

私はお腹に触れます。

まだ膨らみも分からない段階ですが、不思議と私とは別の鼓動を感じます。

「の、のう、七乃。触れても良いかの?」

「いいですよ。まだ分からないと思いますけど」

「あ、あの、璃々もいい?」

「ええ」

本当に恐る恐る触れる美羽様達ですが、やはり分からなかったようです。

・・一体、誰がこんな未来を予想出来たでしょう?

滅ぶのを待つだけだった私達のところに、あの人が現れました。

怪しさ満載だったあの人は、何時の間にか家族となって、大陸の王にまで上り詰めました。

実態を知っている私からしては大いに首を傾げるところですが、まあ、私の尺度で測れるような人なら今は在りませんか。

理由は知りませんが、今回の益州遠征はあの人にとって序でなんでしょう。

本命は随行している凪さん達の事でしょうか。

・・いいですけどね、寂しそうな顔が見られなくなるのでしたら。

子供にそんな顔を見せたくありませんし。

大体そんな暇はありませんよ、まだ気付いてない人が多いですが何人孕んでるのか分かってるんですか?

華の種馬王伝説は既に始まってますよ。

 

・・本当に、貴方に会えて良かった。

 

・・早く帰ってきてください、一刀さん。

説明
一刀が不在の中、恋姫達の様子は。
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コメント
流石は種馬王(koitaku)
えらいことになっていた(M.N.F.)
本当、一刀と恋姫は、平常運転(^ ^)(Mio)
じゅ、15人いっぺんに懐妊だと!? 華の種馬はバケモノか!?(神木ヒカリ)
そして でんせつが はじまった  まず真っ先にこの言葉が浮かびましたね。 二年のときを経て、やっと種馬の本領発揮、楽しませてもらいました。と言うか、七乃、月、詠、恋、斗詩以外は本編でも懐妊した面々じゃないですか?さて、過去に決着をつけに行った一刀、帰ったら嫉妬と恥ずかしさを誤魔化すための強襲とに晒されるわけですね、死ななきゃいいんですが (鋼の後継)
ていうか、麗羽の奴よく気づいたな。こういうところに大器を感じる。(gx9900)
ベビーラッシュは嬉しいが、タイミングがw(未奈兎)
おお〜!!! 月、懐妊おめでとう!(劉邦柾棟)
こんなに同時に妊娠したら国が回らなくなりそうだな^^;(nao)
出産ラッシュすげえ事になるぞコレw次回も楽しみにしてます。(kazo)
種馬王伝説w やっぱり我らの一刀さんはこうでなくちゃ!(飯坂裕一)
うわあい、物凄い数が懐妊しとるがな。ざっと、月、詠、星、斗詩、桃香、愛紗、桔梗、恋、穏、祭、蓮華、思春、明命、亞莎、七乃……まあ、こればっかりはね。長く一緒にいたからといって授かれるものでもなし。それはそうと、まだ雪蓮のグータラは治ってないのか。「労働と対価」の原則を徹底する世の中では、雪蓮は生き辛いでしょうね。(Jack Tlam)
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七乃 小蓮  愛紗 斗詩 桔梗  北郷一刀 真・恋姫無双 

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