「改訂版」真・恋姫無双 〜新外史伝〜 第22話
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「きゃっ!!」

 

「おら立て!璃々!!お前のその甘えた心叩きなおしてやる!!」

 

現在槍の稽古をしているのは璃々と翠、翠は璃々を何度も地面に叩き伏せていた。

 

璃々が到着して漸く官軍は洛陽へ帰還することとなり一刀たちも恩賞を受け取る為、他の諸侯と共に洛陽に向かうこととなる。

 

璃々の出奔した件についての処分は涼州に帰還してから正式に言い渡すこととなったが、暫定的に移動時間等を除いては翠との稽古を義務付けられた。

 

本来であれば一刀や紫苑も加わって璃々の稽古を付けようと考えたが、今の璃々には為にならないと一刀は考え翠に頼むことにした。

 

少し話は戻るが、璃々と面談してから一刀と紫苑が璃々への暫定的な処分を考えていたが紫苑が

 

「今のあの子には性欲に取り付かれてますわ。私も性欲は強い方ですが…流石にあそこまでは…」

 

「確かにな、今の璃々の頭は欲優先になってしまっている。公私のけじめを付けないと翠たちにも迷惑が掛かる。それで当面の間璃々を翠に預けようと思っている」

 

「翠ちゃんにですか?」

 

「ああ、俺や紫苑だとどうしても璃々が甘えてしまうだろう。だから翠には申し訳ないが璃々の教育係になって貰うよ……」

 

これを聞いた紫苑はしばらく黙っていたが

 

「そうですね…本当であれば私たちがしなければならないことですが、今のあの子には荒療治が必要かもしれませんわ」

 

「ああ…翠には押し付けるみたいで申し訳ないけど…」

 

一刀がそう告げると紫苑は黙って頷いた。

 

そして一刀は翠を呼び出すと翠に説明する

 

「本当なら俺や紫苑がしなければならない事というのは分かっている。だけど俺や紫苑だと璃々が甘えてしまう可能性が高い…だから恥を忍んで翠、君に頼みたい。璃々を鍛え直して欲しいんだ」

 

翠も今回の璃々の行動について呆れていたが、一刀と紫苑は説明を終えると翠に頭を下げる。

 

「ちょ…ちょっと待ってくれよ!ご主人様に紫苑!二人とも謝らなくていいから、まずは頭を上げてくれよ!!」

 

一刀と紫苑は翠に頭を下げると翠は慌てて二人を制止する。

 

一刀から改めて事情を聴いて、翠は今回の璃々の軽率な行為に改めて怒りを覚えると共にそして一刀や紫苑から頭を下げられると否と言う性分では無いことから一刀たちの頼みを引き受けこうして璃々の教育係となった。

 

そして翠は璃々を預かった翌日から行軍終了後、翠との鍛錬が義務付けられることとなった。

 

「おい璃々、立て!!」

 

「ハァハァ……」

 

璃々はもうグロッキー状態で仰向けになったまま立ち上がることが出来なかった。璃々は弓については紫苑には劣るものの既に一流と呼べる位の実力はあるが、その一方槍とかの扱いはまだまだ修行が必要であった。

 

「ハァ…もうこれ以上無理みたいだな。仕方ない璃々、今日はこれで終わりだ。明日も行軍終了後にまた私と打ち込み稽古だからな」

 

「それと璃々。それとこのまま寝っ転がると風邪引くし、他の者の邪魔になるぜ?」

 

まだ力尽きて倒れている璃々に翠は声を掛け、持っていた手拭を璃々の顔に向けて軽く放り投げたが、璃々はそれを受け取る事もままならず、手拭はそのまま璃々の顔を覆いかぶさる形になった。

 

「ウゥゥ……グズッ…」

 

璃々は今回、翠にここまで叩きのめされるとは思ってもみなかった。璃々自身は一刀と紫苑と共に来てからそれなり戦も経験して自分ではそれなりに戦えていると感じていたが、それが慢心であると今、思い知った。

 

そんな璃々は自分に不甲斐無く感じ、手拭をそのままにして両手で自分の顔を覆いかぶさり、翠に圧倒的にやられた悔しさと自分の不甲斐なさや様々な感情が頭の中巡り、涙がボロボロ出てくる。だが泣き顔を翠には見られたくないので体勢を変えずにそのままでいるが、翠は璃々が泣いているのが分かっていたので一声水筒を置いておくことを告げてその場を立ち去ったのであった。

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一方、一刀と紫苑は炎蓮と雪蓮との会話が弾んでいたが、一刀が炎蓮にある質問をぶつけた。

 

「洛陽はどんなところですか?」

 

一刀は前の外史では董卓を戦う為に洛陽に行ったことはあるが、今回と状況が違うので情報を持っている炎蓮に質問してみた。

 

炎蓮は一刀の質問を聞いて苦々しい表情となった。

 

「正直言って、腐っているとしか言い様が無いな」

 

「それは上がですか?」

 

「ああ、今の朝廷の連中など民の事などほとんど考えちゃいねぇ。何進か十常侍の何れか付いてお零れを貰おうという連中が大半で、中立というのが皇甫嵩将軍や盧植将軍などいるが数は少ないな。それにこの二人も形式上何進の下の立場だから身動きが取れねぇからどうしょうもない」

 

「そうですか…」

 

予想できていたとは言え一刀も炎蓮の話を聞いて渋い表情となっていた。

 

「魑魅魍魎が蔓延る都ね…正直言って恩賞が貰うことが無ければ行きたくないわよ」

 

雪蓮がそう言うと皆、頷く。

 

「あと…何進はアンタたちを敵と見ているかもしれないね。それと後、十常侍はどう考えているのか分からないがな…」

 

「なるほど…現状ご主人様は劉協様を娶っている関係上、何進殿とすれば継承権があった劉協様を使ってご主人様が何か仕掛けてくるのではないと何進殿はそう思っている訳ですね」

 

「ああ、それにあの女小心者だから、表立ってはアンタたちには仕掛けてくるとは思えないが裏で何かしら仕掛けてくるかもしれないぜ」

 

炎蓮の言葉に一刀と紫苑は更に気を引き締めるのであった。

 

そして洛陽目前において最初の問題が発生した。

 

と言うのは官軍である皇甫嵩や孫堅、曹操や各諸侯の軍勢は漢の官位もあり軍勢を引き連れて洛陽に入ることは認められているのだが、今回援軍として来た一刀は漢の官位が無いことから軍勢を郊外に留めた上で、限られた人数での入城しか許可しないというものであった。

 

これを聞いて最初に切れたのが翠で

 

「ふざけんな、テメェ!!そっちの要請で援軍に来てこの扱いはどういうことだよ!!」

 

無官の者の軍勢をそのまま城に入れるわけにはいかない、と言うのが使者の主張で、一刀自身漢の官位を持っていないのは事実だが、これは未だに漢が一刀たちを下として見くびっているとしか思えない行為だ。

 

「そうですか…これが漢のやり方ですか」

 

紫苑はこのような行為に怒りを抑えながら言葉にするが、その姿を見て使者はびびってしまっている。

 

そして紫苑は一刀に近づき

 

「これは恐らく誰かの嫌がらせかもしれませんわ。ご主人様どうなされますか?」

 

流石にここで一刀も舐められる訳にはいかないので、ここは一つ使者を脅す事にした。

 

「この国の皇帝や家来どもは礼儀を知らないと見えるな……」

 

一刀は眼光を鋭くして力を込めて使者を睨み付けながらドスの効いた声を出す。

 

「ひぃ!?」

一刀は先程の紫苑よりも鋭い眼光で使者を睨み付け、使者は余りの怖さに悲鳴を上げる。

 

「俺の名前を言ってみろ…」

 

「ほ…北郷一刀様です」

 

使者は何とか失礼が無い様に丁寧に返事する。

 

「違うな……俺の名は『天の御遣い』北郷一刀だ…『天の御遣い』であるこの俺がこの国の官位如きで縛ろうというのか…」

 

「そ…それは」

 

使者も一刀の『天の御遣い』の称号は援軍を要請した時点で暗黙の了解で認められている形であり、それが分かっているので返事を濁す。

 

「これは国の総意で行っているのか…?もし総意でやっているのであればこちらに考えがある……」

 

一刀がそう言うと後は黙った。

 

これを聞いて使者は慌てて、再度確認すると申し述べて一刀の元から離れる。

 

使者から話を聞いて、何進は驚いた。

 

今回の嫌がらせは何進が企んだことであった。それは以前に碧に恫喝されたことや一刀が討伐軍を破ったことで恥をかかされた何進が今回意趣返しで一刀の軍勢を減らすことにより、都への入城の際に官軍の姿と比較してみすぼらしい姿を見せて恥をかかそうと企んだ。

 

「か…考えがあるじゃと、ど…どうせその『天の御遣い』とやらのハッタリじゃ!そうに違いない!!」

 

「で…ですが、もし『天の御遣い』の軍勢が怒って国元に戻り再度の反乱や万が一、町中で蜂起されたら……」

 

使者の話を聞いて何進は身体から冷や汗が出る。もし一刀がこのような扱いを受けて国元に引き上げた場合、漢は援助した者に対して無礼な仕打ちをしたということで信用を失くす事となり、更にここで勇猛果敢な西涼の軍勢が武装蜂起した場合、下手をすれば洛陽陥落する可能性もあり得る。

 

自ら仕掛けた事で逆に窮地に立った何進は、これ以上突っ張れば墓穴を掘ると判断して使者にこちらのミスを強調して決して悪意はありませんとひたすら謝罪する様に命令し、軍勢についてはそのまま入城しても構わない事を告げ、更にお詫びとして自らの財宝の一部を一刀に渡すこととした。

 

十常侍にいらぬ口実を与えない為に何進は今回の不手際を隠そうとした。そして使者が去ってから何進の部屋から物に八つ当たりする大声が聞こえていたのであった。

 

再び一刀の陣に戻った使者は、こちらのミスであることを告げると共に必死の謝罪と何進から手渡された財宝を差し出す事により一刀たちの怒りを解こうとする。

 

一刀たちも使者が命令で言わされただけであるということは分かっていたので、わざと怒りを抑えている様に見せかけ、渋々謝罪を認めたという風にしたのであった。

 

使者が立ち去ると紫苑は一刀に

 

「早速仕掛けてきましたね…」

 

「ああ…入城して鬼が出るか蛇が出るか、どちらにしてもろくでもない物を見せられそうだな…」

 

 

 

説明
前回の話も王冠を頂き大変嬉しいです!

ちょっと間が開きましたが、1月ぶりの投稿です。

では第22話どうぞ。
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コメント
XOPさん>ありがとうございます。直し忘れてました。(殴って退場)
直し忘れ;中立というのが皇嵩甫将軍や→皇甫嵩将軍(XOP)
陸奥守さん>ある程度の理由についてはmokiti1976-2010さんのところに書いた通りです。 後、璃々については快感に嵌まってしまったというのは、やはり血筋といいますか…今回の暴走についても若さから来る過ちでしょうな。(殴って退場)
たっつーさん>これで苦労して成長してくれたらいいのですが…。(殴って退場)
mokiti1976-2010さん >劉協を娶っているが、飽くまで降嫁させたのでもう皇族ではありませんよという何進の考えだったのですが、援軍を求めた際に『天の御遣い』の使用について不問にされているので事実上皇帝と同等と言ってもしれない状態を忘れています。(殴って退場)
はこざき(仮)さん>公開稽古というよりも公開制裁に近いかも…後、あのセリフはつい入れてみましたw(別にアカンフラグではありません)。(殴って退場)
XOPさん>指摘ありがとうございます。修正しました。(殴って退場)
未奈兎さん>普通の人だったら既に辞めたいレベルの職場でしょうね。でも皇帝だから逃げ出す訳にはいかないというのも辛い。(殴って退場)
Jack Tlamさん>何姉妹や十常侍の今後については既に決まっていますが…さてどうなることやら。劉備軍については次回若干の補足という形で入ります。(殴って退場)
劉協娶っているのだから皇族待遇が当然なのにね何進考え無しにも程がある。麗羽みたいな人だな。璃々は性欲に溺れるのは、考えてみると当たり前だな。実母が実母だし種馬に愛されまくられたらねぇ。性欲が原因の暴走ならむしろ一刀が一番悪いと嫉妬混じりに強弁してみる。(陸奥守)
『天の御遣い』という称号もさることながら、一刀は劉協を娶っているわけですから、無官とかいう括りに意味は無いのではないかと…頭の中まで腐ってるとそんな事も忘れるのだろうか?(mokiti1976-2010)
あー璃々ちゃんは公衆の面前で翠と公開稽古ですかー、なるほど… あと北郷、その台詞はアカンフラグやで…w(はこざき(仮))
皇嵩甫→皇甫嵩(XOP)
腐ってんなーある意味劉宏の判断は間違って無かったなと(未奈兎)
やはりですか。時期が来たら何進と何太后は処して良いかと。生かしておく意味も無いし。十常侍は誰かが処すでしょう。誰が反連合を組まれるか次第ですけどね。十中八九、月だろうけど……一刀の可能性もあり。だが、処すことに変わりはない。ところで、無官の者が軍勢を入れられないなら、義勇軍である劉備軍も同じ処置にするべきですが、そこは劉氏補正で入れたんですかね?(Jack Tlam)
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