真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 39
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(さて……)

 

 あの話し合いの後、小休止を挟んで俺たちはついに洛陽へと進軍を開始した。正直、劉備のあの話には色々と衝撃を受けたが、今はそれどころではない。

 

(どうして何も起こらない?)

 

 そう“何も起こらないのだ”。

 

「……ねぇ、ご主人様。洛陽ってもうすぐなんだよね?」

「そのはず、だけどね」

「なんで白装束の人どころか董卓さんの軍の陰すら見えないんだろ……?」

「董卓軍の内部で何かがあったとか?」

 

 北郷の言葉を鳳統が否定する。

 

「それはないと思います。その、董卓軍は大きな関を二つ失いましたけど、その軍の規模は私たち連合軍と大差はありません。ですので、内部崩壊するとは考えづらいです……」

「そうなると、考えられるのは……」

「白装束の人たちかなぁ……」

 

 劉備が語尾を伸ばしながらつぶやいたことを考えてみる。

 

 もし仮に白装束の仕業だとしたら、なぜ何もしようとしない? 必要がないのか?

 

(……いや、何か違う気がする)

 

 そもそも、役目が終わったならばこっちの斥候の記憶が曖昧になったのは何故だ? 必要がないのであればそんなことをする必要がどこにある?

 

(くそっ、考えるための手札が少なすぎる……)

 

 そんなことを考えている間に、劉備たちの話に関羽などが加わって話を続けている。

 

「斥候は放っているのだろう?」

「はい。もう少ししたら何かしら情報は来ると思いますけど……」

「にゃあ、でも、こんなところで止まれないのだ。今は前進あるのみなのだ」

「鈴々の言う通りでしょうな。できることと言えば奇襲の警戒といったところかと」

「星の言うとおりかな。じゃあ、星、全軍に通達を」

「御意」

「雛里は斥候が戻り次第すぐに報告を」

「御意です……」

 

 そういえば……

 

「なぁ、北郷。華雄には何かしら聞いたのか?」

「あ、そうだね。何か知ってるかも」

 

 北郷はすぐに孔明へ華雄の事を聞く。

 

「えっと、華雄さんにはまだ聞いていませんね。でも、正直言うとあまり情報は得られないと思っているんです」

「と言うと?」

「実は、話し合いの後で華雄さんに白装束の事を聞いたんですけど、もう忘れてしまったようなんです」

 

 ということは……

 

「……全部か?」

「そのようです。董卓軍内部の事は覚えてらっしゃるようなのですが、今回肝要なのは白装束の事ですので、忘れてらっしゃる以上は……」

「ちなみに、董卓軍の内部事情に関しての情報は?」

「そちらは教えていただきました。ただ、華雄さん曰く“そんなものはない”とのことです」

「ない?」

「そもそも、董卓さんは涼州を静かにのんびりと治めていたそうなのですが、先の帝位継承争いで張讓さんがその軍事力を利用するために騙し、洛陽に進駐することになり、そのあとは対立していた何進さんの片腕であった袁紹さんと袁術さんに策を弄され、洛陽を制圧した悪人へと祭り上げられてしまったそうなんです」

「で、そのあとはいつの間にか諸侯連合ができて、こっちに攻め込んできたから、その火の粉を払おうとしていたってわけか……」

「そのようです」

 

 北郷がつぶやくように言った言葉に孔明が頷いて肯定する。

 

 にしても、悪人とは程遠い経緯だな。

 

「そうなると、側近のほうも」

「はい。その誰もが董卓さんの考えに賛同し、共に歩もうとする人ばかりだったそうです。特に軍師の賈駆さんは人一倍董卓さんに仕えていたそうなので、反乱を起こすはずはないし、その種を見逃すはずもない、と」

 

 そうなると、やはり攻めてこない原因としては……

 

「やはり、白装束が何かしているから攻めてこない、ってところか」

「そうだと思います」

 

(ちっ、気味が悪ぃな)

 

 何が起こるかわからない状況の中、俺たちは一瞬も気の休まることなく洛陽へと進んでいった。

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(……何事もなく、か)

 

 俺の目には巨大な門が見えている。

 

 そう、洛陽にたどり着いたのだ。何事もなく。まぁ、途中で袁紹の馬鹿が“先行して様子を見ろ”なんて命令を出してきたが、結果としては何もなかった。さらに言うと、こちらの斥候も大した情報を持って帰ることはできなかった。

 

「で、どうする? 北郷」

「ここまでくるとなぁ……いや、むしろ喜ぶべきなのかな?」

「何事もなくてよかったってか? 俺はそうは思えんな」

 

 どうにも嵐の前の静けさにしか思えん。しかも特大の。

 

「う〜ん、朱里はどう思う?」

 

 北郷は近くにいた孔明に話しかけるが、その孔明も眉根を寄せて悩んでいる。

 

「正直、手が読めません。元々、情報が少ないっていうのもありますが、後も何もないと余計に読めません……」

「雛里はどう?」

「私としても朱里ちゃんと同じです……その、一応、斥候を出しますか?」

「……星は城壁の様子、どう見る?」

 

 北郷に尋ねられた趙雲は目を細めて城壁を見える範囲で隅々まで見ていく。

 

「ふむ、特段以上がありませんな。詩の一つ、いや、二つは作れそうなぐらいに」

「ということは異常なし、ってことだね。なら、斥候を出そう。もし、可能なら城に忍び込んで内部の様子を探るように」

「はい」

 

 そう言って鳳統が指示を飛ばしているところへ俺は北郷へ進言する。

 

「北郷、俺も斥候に加わってもいいか?」

「玄輝が? どうして?」

「ちょいとな。城の様子を自分の目で見たいということが1件、白装束の痕跡を探したいのが1件だ」

「将校斥候ですか……現状では悪くないかもしれませんね」

 

 それに関羽が同意してくれる。

 

「でも、玄輝さん一人で平気? 白装束さんのことはほとんどわかってないし……」

「まぁ、たしかに危険と言えば危険だが、今は少しでも情報が欲しい。特にその白装束の情報が絶対的に足りないんだ。ここで危険を冒す価値は十分にある」

 

 その言葉に北郷は頷いた。

 

「そうだね。でも、さすがに玄輝一人には行かせられないから、星も一緒に頼める?」

「私ですか? 構いませぬが、鈴々の方が適任では?」

「まぁ、そうかもしれない。でも、鈴々は俺たちの中で唯一白装束に襲われているんだ。もしかしたら鈴々には何かあるのかもしれない」

「白装束のやつらが欲しがる何か、ですか?」

「うん。だから今、鈴々に行ってもらうのは危険だと思うんだ」

「なるほど。承知いたしました」

 

 と、趙雲が納得したところで、北郷が付け足す。

 

「それに、星ってよく屋根で猫と話してるしね」

「……主、それは“蛇足”と言うものですぞ?」

「そう?」

 

 そう言っていたずらな笑顔を浮かべる北郷に趙雲はやれやれといった顔で溜息を吐いた後、真剣な表情で洛陽へ視線を向ける。

 

「では、玄輝殿。参ろうか、虎穴へ」

「ああ。虎児を得るためにな」

 

 そして、俺たちは準備の整った兵たちと共に洛陽へと侵入していった。

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はいどうもおはこんばんにちわ。作者の風猫です。

 

ついに洛陽侵入までやってきました。

 

でも、ここから長いんですよね……

 

でも、何とか7月の間には……!

 

てことでまた次回。

 

説明
真・恋姫†無双の蜀√のお話です。

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話なので、大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。































大筋は同じですけど、オリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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コメント
はてさて、どうなのでしょうか…… (風猫)
いよいよ洛陽に侵入ですね、さて鬼が出るか蛇が出るか…無事に月達を保護できればいいんですけどねぇ…(はこざき(仮))
タグ
真・恋姫†無双 蜀√ オリジナルキャラクター 鬼子 

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