身も心も狼に 第二話:友達との出会い
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今回の話は大体ルビナス視点でやっていこうと思います。

 

ただ、文章にはルビナスの性格とかは余り出てきません。

 

この時点ではまだ人間に対して心を開いてないので、

 

その状態の心情のままルビナス視点を書くのはどうも…

 

こういう個人主点の文章は苦手なので、

 

正直不安たらたらですが…とにかくよろしくお願いします。

 

ではどうぞ。

 

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土見家に新しい家族、ルビナスが加わったその翌日…

 

 

瞼の裏に感じる日差しと、全身を包んでくれている暖かさの中で目が覚めた。

最初に目にしたものは、不自然なくらいに平らに切られた木。

日の光を反射できるほどに平らで、色もかなりまぶしい。

 

そこから視線をずらすと、今度は人間の顔が。

驚き距離をとろうとするも、背中に重みを感じて動けなかった。

重みの正体は目の前の子供の両手だ。

傷の痛みも加わって力が出せず、抜け出すことが出来ない。

 

だが…不思議と不安は感じていなかった。

その両腕の重みでさえ、目の前の男の子が感じさせてくれる温かさは心地よかった。

いつまでもその暖かさの中にいたいと思ったが、もう一つの欲を満たすことにする。

 

食欲だ。

 

森の中で遊びまわり、その後、この見知らぬ場所に着てからどれほどの時間が経ったのかはわからない。

その間、食事をした覚えは当然無し。

と言う訳で、食料を摂取するべく動くために目の前の男の子を起そうと頬を舐める。

 

「…う〜、うん…」

 

反応はあったけど、残念なことに起きなかった。

それどころか、寝返りを打って、更に強く抱かれてしまう。

暖かさが増し、このまま寝てしまっても〜…と思ったところで盛大にお腹がなった。

その音を聞き取ったのか、やっと男の子が目を覚ます。

 

「う〜〜ん…あ、おはようルビナス!」

 

満面の笑みを浮かべながら、身体を抱きかかえながら起き上がる。

若干驚きつつも、自分を包み込んでくれるぬくもりに身をゆだねる。

 

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階段を下りるときの揺れと男の子 ―稟と言う名前だと分った― の温もりに少々眠くなっていたが、

段々と近づいていく二つの気配に意識が戻る。

そこにいたのは見覚えのある女の人と、初めて見る男の人だ。

 

女の人は下半身を黒のひらひらした服、上は肘から先の見える緑色の服。

男の人のほうは下半身が黒一色、上が白一色。

布の素材の所為か、光に当たってまぶしくも見えるその姿に警戒する。

この格好は、かつて森に訪れ好き勝手していった人間と似た格好だった。

 

が…

 

「おはようお父さん、お母さん」

 

「おはよう稟。ルビナスもおはよう」

 

「おはよう。その子が噂のルビナスかい?」

 

「うん!」

 

お父さん、お母さん…目の前の男の子にとっての両親。

自分にも両親はいた。

いろんなことを教えてくれて、常に傍にいて守ってくれた。

 

だが…今はいない。

 

森が光ったあの時、何があったかはわからない。両親がどうなったかも…

そう考えた途端、視界がぼやけた。

 

「ん?……どうしたの、ルビナス…どうして泣いてるの?」

 

泣いている…このぼやけは涙を流しているからだ。

止め処なく流れる涙、抑えることの出来ない悲しみに、

今もなお自分を包み込んでくれる温もりに縋る。

温もりの主、稟と言う名前の男の子は、変わらず自分を包み込んでくれる。

 

「大丈夫、大丈夫だよ。僕はここに、君の傍にいるよ…」

 

両親がしてくれていたように、自分に触れながら安心させてくれる。

男の優しさに身をゆだねていると、更に二つの手が加わった。

 

「どんな悲しいことがあったかはわからないけど…稟は、私達はそんな思いをさせないからね」

 

「そうだぞ、僕達は家族なんだからな」

 

家族…自分達は本当の親子ではない。それどころか種族さえも違う。

なのに、稟達は自分のことを家族と呼んだ。

 

嬉しかった…

 

本当の両親がいない悲しみは消せないが、

稟と家族でいられることが、その悲しみを和らげてくれるほどに嬉しかった。

 

これからは、信じてみようと思う。

稟を。稟の周りにいる人達を…

 

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4人で抱き合っていること暫く、もう少しこの心地よさを堪能していたかったけど、

その時間は自分が…自分の腹の虫が止めてしまった。

恥ずかしそうに身をよじる自分を見て、稟達は噴出し、笑い出した。

 

「ルビナスお腹空いてるの?」

 

愉快そうに聞いてくる稟に、素直に頷く。

 

「それじゃぁ、朝ごはんにしましょうか?ちゃんとルビナスの分も作ってあるわよ」

 

言いながら、稟のお母さんは奥の部屋へと向かい、稟とお父さんは椅子に座る。

自分を抱えながら座った稟を見て稟のお父さんは苦笑しながら言う。

 

「稟、ルビナスを抱えたままじゃ食べられないだろう。稟もルビナスも」

 

「あ、は〜い」

 

名残惜しそうに下ろされてしまった。

確かに、稟みたいに手が付いてるわけじゃないから、

二人の様に2本の棒を持って食べることは出来ない。

そんなやり取りをしているとき稟のお母さんが戻ってきた。

 

「はい、どうぞ。ルビナスの分はこっちね」

 

出された食事に驚いた。そこから漂う匂いに。

その食欲を多いにそそる香ばしさに!

 

恐る恐る一口口に入れてさらに驚く。

その歯応えに!その味に!!

 

自分達は普通狩った獲物はその場で直ぐに食べるけど、

狩られるときの獲物の悲鳴は聞こえてこなかった。

どうやってこの食事を作り出したかの疑問に浮かび、

同時に…これから、以前の味で食事できるかが不安だった。

 

けど、これは稟と共にいればいつでも食べられるだろう。

そう考えると、これからの稟と一緒の生活が楽しみになった。

 

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「それじゃ、行って来るよ」

 

「「いってらっしゃーい」」

 

食事が終わったら、稟のお父さんは下に着ている服と同じ色の上着を着た。

首には花の模様の紐…にしては薄っぺらくて大きな布を巻きつけて、出かけていった。

 

稟達の話だと”仕事”に出かけるらしい。

”仕事”と言うものがなんなのかは分らないけど、両親が狩りに出かけていくときのことを思い出す。

多分、稟のお父さんも、その”仕事”が終わったら家に帰ってくるんだろう。

 

「さて、今日は日曜日だけど、稟は今日は何をするの?」

 

「楓ちゃんと桜ちゃんにルビナスのことを教えてあげるんだ」

 

「そう、いいわね。もう二人ともゴハンは食べ終わってるだろうから電話してみるといいわ」

 

「は〜い」

 

楓?桜?恐らく誰かの名前なんだろう。

そう考えていると、稟は何個かの押す所のある箱のようなものを取って、

何回かその箱を突いてから、両端が耳と口の近くに当たるように持って来る。

暫く何も言わずにいたけど、突然喋りだした。

 

「もしもし〜、おはようございます。稟ですけど楓ちゃんはいますか?」

 

あの箱に向かって話しかけ、耳に当てている部分からは誰かの声が聞こえてくる。

多分、話している相手は先程話に出てきた楓という名前の人だろう。

人間とは、あの箱みたいなものを使って誰かと話すことが出来るんだと感心していると、

 

「それじゃ、また後でね…さ〜てと、次はっと」

 

一旦会話が途切れると、先程と同じ動作で箱を突いて、

 

「もしもし、おはようございま〜す。稟ですけど桜ちゃんいますか?」

 

今度は桜という人間に、箱越しで話しをする。

 

「じゃ、待ってるよ。あ、楓ちゃんも来るからね」

 

そう言った後、稟は箱を置いた。それから楽しそうに自分のほうに向く。

 

「よーっし、ルビナス。これから楓ちゃんたちと会うからね」

 

楓…桜…自分のあったことのない人間。自分の知らない人間。

未知の存在と出会う恐怖が少しずつこみ上げてくるが、

 

「お友達になれるといいね♪」

 

…友達…稟という家族。楓や桜と言う友達。

不安はあったが、稟の言葉に、二人に会うことが少しだけ楽しみにもなった。

 

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昼…

 

肉と野菜を切り、何かを振りかけながら火で焼いた食べ物。

いつもは肉を食べていたので美味しいのか分らなかったけど、

稟のお母さんが作ったそれは文句なしに美味しかった。

 

昼ごはんを食べ終えて暫くすると、家中に何かの音が鳴り響く。

 

「あ、来た」

 

その音を聞いて、稟は扉のほうへと向かい、外へと続く扉を開けて二人の女の子を迎える。

 

「楓ちゃん、桜ちゃん。こんにちは」

 

「稟くん、こんにちはー♪」

 

「こんにちはー」

 

やってきたのはオレンジ色の髪と黒い髪の、稟と同じくらいの年の女の子。

稟の笑顔、二人の笑顔を見て、3人は仲が良いんだなと思い、この二人なら大丈夫かなと思う。が…

 

「それじゃ、電話で紹介したルビナスにあわせてあげるね!」

 

自分の名前が呼ばれた途端、こっちに来るのだと知ったら思わず隠れてしまった。

 

人間を、稟を、稟の周りにいる人達を信じてみようとは思ったけど、

やっぱりいきなりだと、その…心の準備が…

と思う間に稟は二人を連れて部屋に入ってきて、瞬く間に自分の姿を捉えて、

 

「はい!昨日から家族になったルビナスだよ!」

 

輝かしい笑顔で言ってくれた。

 

「うわぁー、可愛いワンちゃんだね〜」

 

「それにすごく綺麗。白…というよりも銀色の毛並みに、綺麗な青い目」

 

「うん。綺麗だし可愛いし、それにすごくお利口さんなんだよ♪」

 

綺麗…可愛い…お利口…自分のことを稟に褒められるたびに嬉しくなる。

でも、二人の目の前まで突き出されながらだと、どうしても…

 

「ねぇねぇ撫でてみてもいい?」

 

「わ、私も…」

 

「うん!いいよ!」

 

本人の意思に関係なく、稟は承諾しちゃった。

まだ逃げ出したい気持ちはあったけど、信じると決めたのだからと言い聞かせて、

なんとか動かずに二人の手が触れるのを待つ。が…

 

「ねぇ稟君…私達って嫌われちゃってるのかな?」

 

「どうして?」

 

「だって…ルビナスちゃん、なんだか私たちのことを、怖がってる?」

 

「そんなこと!?…う〜ん、やっぱり初めての人だから緊張しちゃうのかな?」

 

自分の気持ちを教えることは出来なかったけど、それでも稟は分ってくれた。

状況は変わらないけど…

 

「稟くんもそうだったの?」

 

「うん。昨日僕達があった時はルビナス怪我してたんだ。包帯があるでしょ?

 何があったかは分らないんだけど…その時、抱きしめてあげたら安心してくれたんだ」

 

「へ〜。いいなぁ、稟くんに抱きしめてもらえるなんて」

 

その時のことを思い出すと、身体と心が温かくなってくる。

同時に目の前の二人に対してちょっと優越感…

 

「だから、二人とも撫でてあげたらルビナスも怖がらなくなると思うよ?

 お母さんたちのこともちょっと怖がってたけど撫でてあげたらそうじゃなくなったし」

 

言われて思い出す。確かに、りんのお父さんとお母さんの姿を見た時は少し怖かったけど、

りんが傍にいてくれて、そして二人が撫でてくれて…

撫でてくれる手は怖さなんか感じさせず、むしろ暖かくて安心できた。

 

「そうなんだ。それじゃぁ…」

 

「ルビナスちゃん、なでるよ?」

 

言いながら二人は手を伸ばしてくる。

そうだ、この二人は稟の友達なんだ、何も怖がる必要はない。

…と頭では分ってるんだけど、どうしても身体が震え、思わず目を瞑ってしまう。

 

そして、二人の手が頭に乗せられる。

一瞬びくっとしたけど、直ぐに警戒を解いた。

二人からは敵意なんてかけらも感じなかったから。

 

「ね、大丈夫だったでしょ?」

 

「うん、そうだね。桜ちゃんも私もルビナスちゃんの友達になれたんだね?」

 

稟と私に問いかけてくる。返答に私は楓の頬を舐める。

 

「ひゃぁ!?な、舐められちゃった///」

 

「あぁー、いいなぁ楓ちゃわ!?」

 

続けて桜の頬も舐める。親愛表現のつもりだったけど、二人は顔を赤くしてた。

 

そうだ、何も怖がる必要はないんだ。

ここにいるのは、稟の傍にいる人たちで、稟が大丈夫と言う人たちは、皆良い人なんだ。

それに、何もしなかったらその人がいい人なのかも分らない。

 

その人を知ろうとする少しの勇気があれば、友達にも家族にもなれるんだ…

 

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第二話『友達との出会い』いかがでしたでしょうか?

 

や〜っとこさ、ルビナスが稟以外の人にも心を開いてきましたよ。

ルビナスはこれからは稟と共にいろんな人に会い、親交の幅を広げていくことでしょう。

 

さて、第二話目にしてようやくルビナスの容姿が出てきましたね。

容姿といっても色だけ。しかも白銀の毛皮と青い目とかなりシンプルですが…

でも、そのシンプルさが返って綺麗さを強調すると思いこうしました。

それが成長するにつれて、美しさに更に磨きがかかり…将来が楽しみです。

 

それではこの辺で。また次回。

説明
SHUFFLE!SSの第二話目です。
珍しく早めの更新と思いきや…
実は二話一気に書いちゃって一話ずつ時間を空けて投稿しただけってオチですw
とにかくどうぞ
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コメント
乱さん、jackryさん SHUFFLE!の作品において「あの事件」は外せませんからね…残念ながら… といっても、次の話はまだそこまでいきませんのでご安心を(MiTi)
ルビナスが心を開き二人とも友達になれてよかった。でも、「あの事件」はやはり起こってしまうのでしょうか?次回期待(乱)
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