マイ「艦これ」「みほ2ん」第69話<お袋の味>
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「お袋の味って、良いですね」

 

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マイ「艦これ」「みほ2ん」

 第69話 <お袋の味>(改2)

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 悩んでいる私を見た秘書艦が提案する。

「ご迷惑かとは存じますが、ご実家に泊めて頂くのは如何でしょうか?」

 

「……」

実は私にも、それは考えの一つにあった。だが……正直、親には頼み難い。

 

 ところが追い討ちをかけるように彼女は言う。

「司令が躊躇するお気持ちも分かりますが……お父様は元軍人ですし、お母様も若い頃は軍で働いていたと伺っています」

 

「……よく知っているな」

秘書艦だから私の素性くらいは調べているのだろう。それでもいきなり言われると驚く。

 

「そうじゃな、あの父上殿なら案外、承諾してくれそうじゃ」

突然、利根が割って入る。

 

「そうね、お母様も軍には理解がありそうだわ」

今度は龍田さんか。彼女が言うと妙に説得力があるな。

 

「司令が言い難いようでしたら、艦娘から提案がありましたということで私からご両親に申し上げても宜しいですが……」

赤城さんまで……何でお前たちは、そんなに押してくるんだ?

 

 私が少し引いたのを見た彼女は長い髪を気にしながら苦笑した。

「いえ、慣れない路地でのトラックの運転は日向さんには大変そうですし何より深夜ですから、ご近所にご迷惑ではないかと思いまして」

 

 微笑んだ赤城さんの発言に私はハッとした。そうだ私は自分のことしか考えていなかった。だが彼女たちは私の家族だけでなく近所まで意識していたのか。

 

 すると誰かが私の袖を軽く引く。見ると寛代だった。

「あ……」

 

意外だったのは彼女までも珍しく微笑んでいたことだ。思わず私は『負けた』と思った。

 

 最前線から足が遠のいて久しい私は彼女たち艦娘の姿や態度に何か自分が大切なものを、いつの間にか失っていたのではないか? という心地になった。

 

 そんなやり取りをしているうちに私たちは実家へ着いた。

 

『ただいま』

艦娘たちが玄関で挨拶をするが夜だから声のトーンは皆、抑えている。

いつもは早々と寝てしまう両親も、まだ起きていた。

 

「お帰り」

……何気ない母親の一言だったが、とても懐かしい響きだった。そうだな、人には帰る家があることが幸せなのだ。

 

 もちろん艦娘にとっての鎮守府が母港ではあるが、それだけでは不十分だろう。時には彼女たちにも拙いながら私の実家で家庭の雰囲気を感じてもらうのも悪く無いだろう。

 

「襖(ふすま)取ったけぇな、居間と和室、広く使えるで」

「え?」

母親の言葉に私は、ちょっと意外な感じがした。私の両親が艦娘たちのために、わざわざ部屋を広くしてくれたようだ。

 

『失礼します』

浴衣を着た艦娘たちは、口々に挨拶をしながら居間や和室に入る。

 

 しかし改めて見ると、お風呂上がりの艦娘たちが実家の居間や和室に、たくさん居るというこの状況は、まるで観光地のホテルにしか見えない。

 

 そんな彼女たちは、とてもリラックスしていた。

 

だが私は改めて両親に彼女たちの宿泊の件を、どうやって切り出そうかと悶々としていた。

 

 私が葛藤して眉間にしわを寄せていると、お茶を準備しながら母親が言った。

「なんなら、家(うち)に泊まって行ってええぞ」

 

「え?」

これは意外な提案。

 

助かったと思う反面、つい否定的な言葉が口をついて出る。

「気持ちは嬉しいけど……こんなにたくさん一度に泊めるのは……」

 

すると母親は返した。

「えぇがん(良いじゃないか)? 夏だけん布団も要らンが? せに、この娘たち軍人だが? 野宿すぅよか、えぇが?」

「……まあ、それはそうだけど」

「父さん何も言わンよ。あぁ見えて艦娘たち気に入っちょオけんな。せにウチは軍人の家系だが? お盆に軍のお役に立てば先祖も喜ぶが?」

 

私は傍に居た祥高さんを見た。もちろん彼女は軽く頷いているし他の主要な艦娘たちも同様だった。

 

「分かった、有難う」

……そういうことで結局、泊まることで安着した。

 

 ただ心配なのは彼女たちは、まだ夕食を食べてないことだ。店も閉まっているし……そう思っていたら母親が言う。

「盆で準備した食材があぁけん、直ぐ作るが」

 

「え?」

躊躇する私をよそに、祥高さんが応える。

「済みません、お母様。私たちもお手伝いします」

 

 祥高さんと龍田さん、それに山城さんが手伝って簡単な夕食を作り始めた。

 

「母親は偉大だな」

小さく呟いた私は改めて自分の父母の大きさを感じるのだった。

 

 懸案事項が落ち着いたところで私は改めて今のソファに腰をかけて周りを見た。

 まぁ赤城さんを除けば、あまり食べる娘も居ないようだし……既に床やソファでダウンしている艦娘が結構いる。

 

(この光景は軍隊というよりも学生の部活動の合宿のようだが)

思わず苦笑する私。

 

 母親が押入れからタオルケットを出して艦娘たちにかけてくれた。

なんだか、こういうのを見ても夜戦型かそうでないか垣間見えるようだ。

 

 準備した夕食を居間の座卓に並べても結局、起きている私たちと赤城さんくらいしか食べなかった。

 

 準備が終わって落ち着いた山城さんが利根と日向と一緒に父親を囲んでいる。

 珍しいな……と思ったら航空機の運用について談義をしているらしい。しかも堅物の父親が嬉しそうに見える。

 

 私は母親に「お父さん、嬉しそうだね」と声をかけた。

「なかなか、普段は話し相手が居らんけんな……」

 

「あ、そうか」

そうだよな。

 

 実は父親はもともと地の人間ではない。確か九州のほうの出身なのだ。一方の母親は境港が地元だ。

 こういう土地で、しかも軍人だったから父親には、この土地に親しい人が少ないのだろう。

 

「航空機とは、そういう運用も可能なのですか?」

「そうだな」

「へえ」

「日向は、まだ甘いのじゃ」

「利根には言われたくないわね」

そこで笑いが起きていた。

 

(父親の笑顔か……久しぶりに見るな)

 

 まあ、若い子が相手で、なおかつ酒の勢いもある。それに自分が培った航空機の伝統を受け継ぐ若い世代が身近に居た、ということで喜んでいるのだろう。

 

 私は台所に居る母親に、さりげなく聞いてみた。

「お父さんって空軍のエースだったの?」

 

彼女は少し間を置いてから答えた。

「空軍でトップ争いしちょったらしいがな……出世と実力は比例せんって良く言っちょるよ。人の操縦は難しいって」

「ふーん」

 

「それ分かります……」

「え?」

祥高さんが割って入ってきた。

 

「実は私にも姉妹艦が居るので……彼女たちも人間関係では苦労しているとか」

「へえ、それは初耳だ。詳しく聞きたいな……」

そのとき祥高さんが受電した。

 

「失礼します」

彼女はサッと窓際へ移動した。

 

それを見た母親が言った。

「良い副官だが? 良かったな」

 

「え? ……あぁ」

母親でも分かるか。確かに祥高さんは出来る艦娘だな。

 

 やがて彼女が戻ってきて報告をする。

「司令、大淀さんから指令室は霞を補佐に付け、交代で仮眠しながら任務継続で宜しいでしょうか? とのことです」

 

「霞? ……あ、あの気の強い艦娘だな」

私の言葉に彼女は苦笑した。

 

「祥高さん『それで頼む』と返信を……」

「はい」

 

私は続ける。

「あと……」

「はい?」

 

「いつも、ありがとうと二人に伝えてくれ」

 

一瞬、驚いたような表情の彼女だったが直ぐに敬礼をした。

「畏まりました!」

 

 祥高さんも、傍に居た母親も笑顔になった。

 

実は私自身が一番ホッとしていたのだ。何か、ここに来てようやく美保鎮守府が一つになりつつあるのかな? ……と感じたから。

 

 赤城さんは、ずっと一人で黙々と食べていた。

だが突然、彼女が俯(うつむ)いて肩を震わせ始める。

 

「おい、調子悪いのか?」

思わず声をかけて近づいた私。

 

一瞬、緊迫。

 

 だが赤城さんは、涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げた。

「ウッウッ、お袋の味って……良いですね」

 

「えっ? ……あ、まぁ、そうだね」

一同、爆笑。実家の居間は和やかになった。

 

 しかし私は思った。

 

……赤城さん、君には母親はおろか姉妹艦すら居ないんだよな。

それなのに鎮守府ではいつも「お姉さん」的な立場が多い。本人も責任感が強いし。結構、無理してるよな赤城さん。

 

 僅かな休暇で小さな実家では大して御もてなしも出来ないが……少しでも「お袋の味」を堪能してくれ。

 

「では、私もご馳走になります」

祥高さんも、微笑みながら席に着いた。龍田さんも、それに続いた。

 

「ああ……」

各人、各様だな。

 

 今宵は久し振りに平和な夜になったようだ。きっと先祖も喜んでいることだろう。

 

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※これは「艦これ」の二次創作です。

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サイトも遅々と整備中〜(^_^;)

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PS:「みほ2ん」とは

「美保鎮守府:第二部」の略称です。

 

 

説明
艦娘たちは結局、司令の実家にお泊まりとなった。そんな彼の胸には様々な想いが去来するのだった。
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美保鎮守府 ア艦これ みほちん 実家 泊まり 艦娘 

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