ヤタガラス-Glitter in the DARK-
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「私は、菊一文字則宗。沖田総司の愛刀さ。」

 

そう ただ ひとつの

 

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「皆、今日の予定は決まったかい?」

 

この本丸に来てから数日が経過した。

朝は全員参加の会議がある。進行役はいつも最古参の亀甲貞宗が取り仕切っている。

・・・最も最終的な決定権は我等が主が握っているのだが

 

「我々はこの子らと実地訓練だ」

「この前の出陣で酷い目に遭ったからな」

 

大柄の屈強な男2人・志田の大太刀の兄弟はそう答えた。

この前、狭く暗い市街地で長物ばかりで戦った結果、予想以上の被害があったと言う。

 

「我々の体では狭き道では身動きが取れぬ。」

「被害を最小限に抑える為にも、小回りが利く短刀を鍛えたほうがいいと。そう思ったのだ」

 

「主は長物ばかり構い過ぎ!僕だってたまには戦場で戦いたい!」

 

少年がむくれた顔をして声を上げる。彼の名は藤原景平。

最近は遡行軍との戦いも激化し、短刀である彼が敵の一撃で大怪我することもあってか

遠征などの後方支援ばかり任されて不満だったようだ。

 

「落ち着け。・・・主だって誰一人折れて欲しくはないと思ってのことだろう」

私はそんな彼を宥める

 

「どんな怪我だって生大刀先生がすぐ治してくれるし!」

「((僕|やつかれ))としては、貴君等が怪我一つせず戻ってくれることがこの上ない喜びなんだがな・・・

まぁ、怪我人を治すことしか能がない僕の唯一の役目だから・・・」

白衣を纏った偉丈夫・生大刀はそうぼやいた。

斬ったものを治す不殺の剣であるがゆえに専ら手入部屋の主をしている。

 

「俺は虎杖と千代と毛抜と共に遠征に出る。志田、同胞達の面倒頼んだ」

火傷を負った顔の男・木下正宗はややぶっきらぼうに言った。

 

「木下!いつもいつもその略し方はないだろ?!」

毛抜形太刀は木下正宗に突っかかった。そしてそれを止める千代金丸と虎杖丸。

 

このやりとりは日常茶飯事である。

彼らが来る前からいた藤原景平や北谷菜切曰く「4人は同じ日にここにやってきてから、ずーっとこんな感じ」

 

「千代にーにーもほっとけばいいんにー・・・わーはたまんかいや料理番以外ぬことやりたい!さっこーにーりるさー!」

南方の方言で話す少年・北谷菜切が愚痴を零す。

元々包丁だったこともあってか、料理の腕は確かなものがある。

 

「・・・やはり刀となった以上、厨以外の《戦場》も行きたくなるものだろうか?」

「やさ!」

北谷菜切はそう言って頷いた

 

「木下・・・いい加減、毛抜型太刀とちゃんと呼ぶべきじゃないか?」

木下を諫めるは、彼の同胞である疱瘡正宗。

「そっちの方が呼びやすい」

「・・・」

彼も相当苦労しているようだ・・・

 

「なぁ、貴殿はどうするつもりだ?」

この本丸唯一の槍・十文字槍が私に声を掛けてきた

「私は・・・」

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「アルジサマ!アルジサマ!」

 

 

 

皆がいる広間に大柄な鴉が舞い込んできた。

「祈誦、どうしたんだ?」

祈誦と呼ばれた鴉は主に耳打ちする

 

「・・・時の乱れが確認された。時代は元治元年、場所は京都・池田屋」

「・・・」

(池田屋・・・?)

 

「皆、ご主人様の命を聞くように!」

 

主は皆に指示を出す。

練度が足りぬ者は、志田の大太刀達と共に実地訓練へ向かわせ

手練の太刀には、遠征の命を出す

本丸内の仕事を希望にした者には、それぞれの当番に就かせた

 

出陣の命を受けた者は、その場に残った

 

「亀甲、菊一文字達と共に池田屋へ出陣を頼む」

「わかった。ご主人様の仰せのままに。」

 

「・・・」

「菊一文字、どうしたのさ?小難しい顔して」

「い、いや、なんでもない。」

「ひょっとして記憶のことかい?」

「・・・」

 

私には記憶がない。

《沖田総司の愛刀》であること以外の記憶が・・・

 

「ご主人様が君に出陣の命を下したのは、『君の記憶が戻って欲しい』と言う、思いからだと僕は思うよ」

「もし、『忘れるべき記憶』だった場合は・・・」

「その時は此処の本丸の皆で助けるさ」

・・・ありがとう

 

「亀甲!早く着替えて出陣の準備ー!」

「あぁ、わかったよ。」

私は鴉の面と黒衣に手を掛けた

 

ここでは出陣の際に黒衣を纏い、鴉の面を被る決まりとなっている。

理由は隠密行動に適しているのと、人を警戒させることで正体を隠す為。・・・と説明を受けた

前者は兎も角、後者はあまり効果がない気がするが

あらゆる時代を渡り歩く身である以上、その時代にそぐわない服で行くのも「歴史を変える」ことに繋がる可能性も否定できない

 

程なくして部隊全員が門の前に集う

 

主が神楽鈴を鳴らしながら祝詞を上げた後、私達は門を開けた。

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_____________元治元年、京都・池田屋

 

「ねぇ?祈誦。池田屋の場所って何処だかわかる?」

藤原景平が同行している祈誦に話しかける

 

「コチラデス」

祈誦は近隣の建物を指した。

 

「此処が・・・池田屋・・・」

かつて総司が私を連れて戦った場所・・・

・・・の、はずだが・・・やはり、思い出せない

 

「!皆!構えて!!」

「敵、まーやが?!」

 

目の前に何処からともなく遡行軍が現れる

遡行軍は私達に気づかずに次々と池田屋に入っていった。

 

「気付いて・・・ない?」

「不思議だね・・・兎に角急ごう!」

「あぁ」

 

私達は池田屋に侵入した

 

そこで見たものは______

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逃げ惑う人々

遡行軍を相手取る新撰組

 

そして、遡行軍が遡行軍を同士討ちする奇妙な光景だった

 

そんなことが・・・あるのだろうか・・・?!

 

 

 

「・・・」

「遡行軍と一言で言っても、内々には幾つもの派閥が存在し、一枚岩ではないというけど・・・同士討ちは初めてだねぇ。」

亀甲貞宗は首を傾げる。

歴戦の彼でも見たことないだと?!

 

「でも、同士討ちしているってことはさ、一気に畳み掛けるチャンスだよね?」

「子供殺法の出番ですね!」

「よ、よし、一気に片付けよう!」

私達は遡行軍相手に一斉に斬りかかった

 

1体、2体、3体と・・・順調に遡行軍を刃で切り裂き、倒していく・・・

総司も池田屋の時、こうやって私を振るい、敵対する者達を屠っていったのだろうか・・・?

 

その最中、今にでも遡行軍の者に襲われている隊士を見かけた

私のかつての主______沖田総司、その人

 

私は、総司を助けようとした。ここで死んでしまったら歴史が変わってしまう!

 

私に気付いた別の遡行軍が前を阻む

・・・そいつらが総司を襲った者を斬り倒したのは幸いか

 

私は遡行軍に向かって、刀を構えた

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対峙した遡行軍もまた、私に向かって、刀を構えた____________私と全く同じ構えで

 

「はっ・・・受けて立とうではないか!」

 

私は相手との距離を一気に詰め、沖田譲りの三段突きを繰り出す

だが、相手も三段突きを繰り出し、私の攻撃を全て弾き返した

 

「なっ・・・!」

三段突きが弾かれただと・・・

 

私が動揺してる隙に別の遡行軍が斬りかかる

 

「うかーさん!!」

「危ない!!」

北谷菜切と毛利藤四郎が敵の刃を防ぐ

 

「こいつら強すぎる!撤退していい?亀甲?」

藤原景平が小さい体で力一杯私を引っ張る

「・・・これ以上は危険かもしれない。皆、一旦ここは退こう!」

 

私達は池田屋を後にした。

結局、私の記憶は戻ることはなかった。

あの遡行軍達との対峙から生まれた靄のみが私の心に残った。

 

何故、私と全く同じ構えを取った?

何故、総司と全く同じ太刀筋をしていた?

何故、もう一人も・・・

 

私は、菊一文字則宗。沖田総司の愛刀。

 

そう ただ ひとつの

 

 

 

総 司 の 愛 刀 は 私 だ け の は ず だ

 

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本丸に帰還後、一人縁側で考え込んでた。

部隊の皆の怪我は大したことがなく、生大刀の出る幕は殆ど無かった。

そんな彼は実地訓練に向かった者達の怪我の手当てで手一杯だ。

 

「菊、どうしたそんな顔をして」

木下正宗が話しかける

 

「・・・実は」

 

今回の出陣中に起きた事、思った事を可能な限り話した。

木下正宗は何度か頷いた末に、口を開けた

 

「不思議なこともあるものだな。仮にお前の記憶が偽りのものだとしても『お前』は『お前』。俺もこの出で立ちで贋作の嫌疑を掛けられたことがある。

例え、俺が正宗の作でないとしても『俺』は『俺』で貫き通す。そのつもりでいる。」

「・・・」

 

私は、そんな彼が少し羨ましく思った。

いつか、真実に直面しても己を貫き通せる位に強くなりたい

 

そう思った

 

 

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後書と解説

 

その姿は、汝にしか見えない。

その声は、汝にしか聞こえない。

その言霊は、全て汝の耳障りが良いものしか語らず。

その御心は、何もかも汝の意の儘。

それは、常に汝の傍に一時も離れずつき従う理想の従者。

 

ちょいとついったーとかでアニメ感想や新男士や極追加の度に

「公式が解釈違い」「キャラデザが気に入らない」「設定が気に入らない」

・・・他色々言う人をちょくちょく見かけるので、少々こういった方向けのブラックな物語を書いてみました。

 

刀剣乱舞自体、ゲームはカスタムドールの素体と最低限の付属品。

アニメや舞台・公式グッズは認可の下りたオプションパーツ。

二次創作は既存品をカスタマイズした非公式の改造パーツや1から作った自作パーツ(故にピンキリ)みたいな物だと思っています。

早い話「そんなに思いつめて愚痴言う位なら、自分の理想をこれでもかと詰め込んだイマジナリー推し作ってそれだけを愛した方が精神衛生上良い」

故に作中の本丸の男士は「艦これにハボクックやナグルファル、海王丸に兵庫第三協栄丸が入る位のレベル」(つまり有り得ない存在)で固めました

・・・あー、でも巴形の件もあるしなー

 

作中には出てないだけで他にも色々いましたけど、台詞考えてる途中で混乱してきたので出せなかった

芝村さんはじめとした設定担当者の方々に足向けて寝れねぇ・・・流石プロ

 

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【亀甲貞宗】都市伝説だつってんだろ・・・アイエエエエエエエエエエエエエエエドエムナンデ?!!!!(執筆中に受取箱に引っ掛かってたよ!)

【毛利藤四郎】都市伝説だろ常識的に考えて

【謙信景光】都市伝説だろ常識的(ry

【志田の大太刀】越後国の弥彦神社の大太刀。名の由来は越後国古志郡夏戸の城主・志田三郎定重が備前国長船の刀工・家盛に鍛えさせて奉納したことから。後に越後国の刀工が奉納した大太刀もそう呼ばれるように

作中では「兄弟」と書いてますが、彼らは別々の刀工の作・・・太郎や次郎みたいなものだと思えばいいです。

【長物ばかり】初心者審神者あるある

【藤原景平】加賀国で作られた短刀。愚生が以前、刀剣のマーケットも兼ねた展示会で見て引き込まれた。そして、その見た目に相応しい価格が付けられてて現実に返りました。

今はもう誰かの手に渡ったようで、そこで大切にされるのを祈るばかりです。短刀は凄く引き込まれ・・・ますよね?ね?

【怪我し易いが故に短刀は専ら後方支援】初心者審神者あるあるpt2

【生大刀】大国主神が素戔嗚尊から奪った(後に正式に譲られた)刀。斬ったものの病や怪我を癒す力を持ち、その力で世を平定したとされている。

不殺の力故に専ら手入部屋の主と化していますが「ほう、生命の力を過剰に送り込むことで逆に破壊すると・・・」誰ですか彼にとある漫画読ませた人は

【北谷菜切】琉球の宝剣の一つ。振っただけで赤子や山羊を斬った包丁を鍛え直した短刀・・・と、されているがどちらかと言えば突くのに特化してるとされている

千代金丸や治金丸とは古い付き合いで兄弟のように仲良し。うちなーぐちに関してはうちなんちゅのフォロワーさんに聞くべきだったと後悔(自力+機械翻訳頼り)

【木下正宗】数少ない正宗の在銘がある刀。それ故に贋作疑惑が持たれる事もあるが、真実は正宗達のみぞ知る。彼が火傷顔なのは本体が火を被った経験があるため。名前をまともに呼ばないのも、自分の名に不安があるため。

【毛抜形太刀】小烏のとっつぁんより若いが、彼も日本刀の祖の一つ。鶯や三日月のジジイよりも上(で、合ってるか不安になってきた)

日本刀の祖の一つとしての誇りを持っており、同じ日に顕現した木下正宗に手を焼いているが、実力は認めている。

【千代金丸】琉球の宝剣の一つ。守護の霊石を切ることはできても、込められた力により主を斬る事は出来ない刀・・・執筆中、資料漁ってたとき薬研が頭によぎったのは言うまでも無い

作中に出てませんが、この本丸には兄弟分の治金丸もいます。人型の姿が治金丸よりも小柄なのを気にしている模様・・・

【虎杖丸】ユーカラに登場する宝刀・クトネシリカの別名。拵えには狼と狐、一対の龍の神霊が宿るとされていると言われ、彼等も虎杖丸の一部として顕現している(浦島のかめきちみたいに)。・・・別名の方にした理由は言いづらいからと言うメタい理由からです。

【4振りの関係】同じ日に顕現してから一緒に行動することが多く、今や気の置けない(?)関係

【疱瘡正宗】疱瘡の病の快癒祝いの度に代々将軍家に受け継がれていったと言う少々変わった(?)経歴の刀。そう呼ばれるようになってからは医学に興味津々。

作中に出てませんが、この本丸には日向正宗や島津正宗、宗瑞正宗もいますが皆少々捻くれてしまってる(経歴が経歴だけに)

【十文字槍】この形状の槍は数多くありますが、彼は真田信繁が使ってたとされる十文字槍。形状の都合上、馬上でこの槍を振るえる者は相当な手練とされております。

【本丸唯一の槍】槍は特定レシピで狙うか、鬼周回しないとまず手に入りません。愚生の初槍は槍レシピ数回やって来た蜻蛉切さん。

【祈誦】審神者の式神。名の由来は「祈り誦える」から。読みは「キショウ」・・・鴉で「キショウ」と言えば、わかる方はわかりますよね?この子の本当の名前

【鴉の面と黒衣】この本丸での戦装束。着用理由は作中通り。鴉の面は暗視ゴーグル機能だけでなく、発言のフィルタリング(及び自動翻訳)機能もある超高性能

【鳥目】祈誦の見た目は鴉ですが式神なので鳥目ではない。

【同士討ちする遡行軍】亀甲の言った通り、彼らにも派閥が存在します。愚生らが見てないだけでこういった同士討ちや内ゲバは日常茶飯事かもしれません

【彼らは歴史を変えずに済んだのか?】これはわかりません

 

【菊一文字則宗】今回の出陣記録は彼自身の視点。彼は有名な刀です。彼は何故か記憶が殆どありません。焼かれたり、破損したりした訳でもないのに・・・

唯一残ったものは「沖田総司の愛刀」と言う記憶のみ

【池田屋に向かわせた理由】戦いを通して記憶を取り戻して欲しい。審神者の純粋な思いから

【対峙した遡行軍】刀種は打刀だったそうですよ。彼に斬りかかった遡行軍も打刀・・・沖田総司と全く同じ太刀筋とか世の中不思議ですよね

 

 

説明
その一団、鴉のような面を被り、黒衣を纏いて現れる
その姿から、時の政府はこう呼んだ。

ヤタガラス

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とある本丸の とある刀剣男士達の 出陣記録

*この物語にはあなたの中の「刀剣乱舞」を揺るがしかねないブラックな内容がヤサイマシニンニクアブラオオメ並に含まれています
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タグ
刀剣乱舞

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