英雄伝説〜光と闇の軌跡〜エレボニアカオスルート
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〜パンダグリュエル・パーティーホール〜

 

「へ………ぼ、僕が”特務部隊”のある人に言いたい事や聞きたい事があるってどういう事ですか……?」

レンの突然の提案に一瞬呆けたマキアスはレンに訊ねた。

「うふふ、とぼけても無駄よ。”Z組”のプロフィールは全員調査しているから、当然マキアスお兄さん―――いえ、”レーグニッツ家”と”特務部隊”に所属しているある人物の”実家”と因縁がある事くらいレン達も既に把握しているわよ?」

「ッ!」

「そ、それって………」

「マキアスの従姉殿の件か………」

「………………」

レンの指摘を聞いたマキアスは息を呑み、エリオットは不安そうな表情で、ラウラは重々しい様子を纏って呟いた後静かな表情で黙り込んでいるステラに視線を向けた。

「……レン皇女殿下。何故そのような提案をされたのですか?もし、その人物の答えがマキアスの求める答えではなかった場合、その人物との関係が悪化する事によってZ組と特務部隊の連携に支障がでる可能性が考えられるのですが。」

「あたしも子爵閣下と同じ意見よ。トラブルに発展する可能性が高いとわかっていて、何でそんな提案をしたのよ?」

静かな表情で問いかけたアルゼイド子爵に続くようにサラは真剣な表情でレンに訊ねた。

「そうかしら?むしろ、昔の事である人物が気になっているマキアスお兄さんの悩みをここで解消した方がマキアスお兄さんは今後の活動に集中できるし、その人物とのわだかまりをさっさと解消させる事で連携しやすくなると思うのだけど?」

「そ、それはそうなのですが………」

「ま、”殲滅天使”の言っている事も一理あるね。その人物とマキアスが昔のマキアスとユーシスみたいになったら、こっちも迷惑だし。」

「さすがにその方とマキアスさんが昔のお二人のような関係へと悪化するとは思えないのですが……」

「そうね。まだあんまり話していないから、わからないけど、少なくてもユーシスとその人物の性格は全然違うから、昔のユーシスとマキアスみたいな酷い関係にまではならないでしょうね。」

「おい……俺達の後でラウラとの関係が微妙になった事で俺達に迷惑をかけたお前にだけは言われる筋合いはないぞ。」

レンの指摘にトワがマキアスを気にしながら同意している中納得している様子で頷いたフィーの答えを聞いたエマは表情を引き攣らせ、セリーヌは呆れた表情で呟き、ユーシスはフィーを睨んで指摘した。

「……わかりました。レン皇女殿下のご厚意に甘えさせて頂きます。」

「……いいのか、マキアス?」

少しの間考え込んだ後決意の表情になって答えたマキアスの答えを聞いたガイウスは心配そうな表情でマキアスに問いかけ

「ああ。機会があれば彼女には色々と聞きたい事があると思っていた事は事実だしな。」

「マキアス君………」

マキアスの答えを聞いたジョルジュは辛そうな表情をした。

 

「その………ステラさん。君は僕の姉さん――――フィオーラ・レーグニッツの事を知っているか?」

「………私がまだ実家にいた頃、名前だけは耳にした事はあります。”ディアメル伯爵家”の跡継ぎであり、私の兄の一人でもあるエリック・ディアメル兄様の婚約者にして、今は帝都知事を務めているカール・レーグニッツ知事閣下の親類の方、でしたよね?」

マキアスの問いかけに対してステラは静かな表情で答えてマキアスに問い返した。

「……ああ、父さんにとっては”姪”に当たる人で、母を早くに亡くした僕や父さんにとっては男所帯であった僕達のお世話をしてくれた恩人だよ。その……”ディアメル伯爵家”にいたステラさんだったら、当然フィオーラ姉さんとエリックさんの婚約はどうなったか知っているよな?」

「…………―――はい。ですが、”それがどうかしましたか?”」

「”それがどうかしましたか”って………もっと、他に言う事はないの!?貴女のお兄さんが最後の最後に裏切ったせいで、マキアスは大切な人を亡くしたのよ!?お兄さん達の代わりにマキアスに謝りたい気持ちとかないの!?」

「お嬢様………」

マキアスの問いかけに対して冷たい答えを口にしたステラの答えを聞いたアリサはステラに指摘し、アリサの指摘を聞いたシャロンは辛そうな表情で見守っていた。

「先に言っておきますが、私はフィオーラ様の件には嫌がらせの件も含めて一切関わっておりません。フィオーラ様を裏切った張本人であるエリック兄様やフィオーラ様に嫌がらせや脅しの手配をした父様達ならともかく、エリック兄様とフィオーラ様の婚約の件に一切関わっておらず、”ディアメル伯爵家”とも絶縁した私が兄様達の代わりにマキアスさんに謝罪する”義理”はありませんし、第一マキアスさんもフィオーラ様達の件とはほぼ無関係で”ディアメル伯爵家”を捨てた私に謝罪された所で、”ディアメル伯爵家”に対する思う所は晴れないでしょう?」

「それは………」

「ステラ……」

「……………その、君はどうして”ディアメル伯爵家”を絶縁する所か、祖国まで捨ててメンフィルに亡命したんだ……?ミリアムやクレア大尉の話だと、政略結婚が嫌で亡命したとの事だが………」

アリサの指摘に対するステラの答えを聞いたラウラとリィンは複雑そうな表情をし、マキアスは複雑そうな表情で黙り込んでいたが気を取り直してステラに訊ねた。

 

「結婚の件も含めて私の”自由”を自分の手で掴み取る為です。」

「へ……じ、”自由”を?」

「一体どういう意味かしら?貴女は名門貴族の令嬢だったのだから、何不自由ない贅沢な生活で過ごしていたのでしょう?」

ステラの答えにアネラスは呆け、シェラザードは戸惑いの表情で訊ねた。

「……確かに平民の方々からすれば、”ディアメル伯爵家”のような名門貴族の生活は豊かで羨望を感じるでしょうね。ですが、その代償に名門貴族のほとんどは欲深い存在へと成り果てています。例えば貴族連合軍の”主宰”のカイエン公や手柄欲しさに猟兵達に他国の領土を襲撃させる事も躊躇わなかったアルバレア公、そして名門貴族の中でも珍しい人格者でありながら、結局はカイエン公に組して”貴族が仕えるべき主”である皇家に反旗を翻したルーファス卿もその”欲深い存在”と言えば、皆さんも理解できるでしょう?」

「そ、それは………」

「ッ………!」

「ユーシスさん………」

ステラの正論に反論できないトワが辛そうな表情で答えを濁し、辛そうな表情で唇を噛みしめて身体を震わせているユーシスに気づいたエマは心配そうな表情でユーシスを見つめた。

「……その話とそなたがメンフィル帝国に亡命した話とどう関係するのだ?」

「………先日も口にしたように、名門貴族の大半は人が持つべき大切な心を忘れ、欲深い存在へと成り果てています。そして名門貴族達は自分達の”家”を存続させ、更に自分達が誇る”尊き血”を保つ為にどういった事をするかは帝国貴族のラウラさんやユーシスさんはご存知ですよね?」

「自分達と同格や歴史がある”家”、又はそれ以上の”格”を持つ貴族との”政略結婚”か………」

「……………」

アルゼイド子爵の問いかけに答えた後問い返したステラの問いかけにラウラは重々しい様子を纏って答え、ユーシスは複雑そうな表情で黙り込んでいた。

「そうです。そして”ディアメル伯爵家”にとって女とは家の権力を繋ぐ道具でしかないのです。」

「女性が家の権力を繋ぐ”道具”って………!」

「そ、そんな………まさか”ディアメル伯爵家”が女性をそんな風に扱っていたなんて………」

「”ディアメル伯爵家”程ではないと思うけど、エレボニアの貴族達の大半は女性をそんな風に扱っているだろうね………帝国貴族の女性とは、嫁いだ貴族の”家”を存続させる為の”道具”だからね………」

ステラの説明を聞いたアリサとアルフィン皇女は信じられない表情をし、オリヴァルト皇子は疲れた表情で呟いた。

 

「エリック兄様も含め、私の兄達は軍人や政治家として家の誇りとなり輝かしい人生を送っていました。でも姉たちはみな、顔も見たこともない相手の家に娶られていきました………そこに愛はなく、泣き暮らしているという手紙を数年に1度もらうだけ………メンフィル帝国に亡命しなければ、私もそうなる運命だったでしょうね。」

「………………」

静かな表情で語ったステラの話を聞いたアリサ達はそれぞれ重々しい様子を纏ったり、辛そうな表情で黙り込んでいた。

「そしてステラお嬢さんは自分もそうなる事が嫌でメンフィルに亡命したって訳か………」

「……ま、そこまで酷い状況だと実家や祖国を捨てて、他国に亡命したくなる気持ちは同じ女として理解できるけど、何で常識とかも違うメンフィル―――異世界に亡命したのかしら?」

口を開いたトヴァルは疲れた表情で呟き、静かな表情で呟いたサラはステラに訊ねた。

「異世界―――――いえ、”百日戦役”で大国であったエレボニア帝国相手に圧倒的な勝利を重ねてきたメンフィル帝国でしたらエレボニア帝国の名門貴族である”ディアメル伯爵家”の権威も何の役に立たず、そして私が”ディアメル伯爵家”のように自分達の欲望の為に利用される事もないからです。」

「メンフィル帝国相手だと”ディアメル伯爵家”の権威が役に立たない事は何となくわかるけど、ステラちゃんが誰かの欲望の為に利用される事はないって一体どういう事なの……?」

ステラの答えを聞いてある事が気になったトワは不安そうな表情で訊ねた。

「……エレボニアの皆さんもご存知のように、”ディアメル伯爵家”は”四大名門”に次ぐエレボニアの名門貴族にして”貴族派”でも有力な貴族です。そんな家にいた私が絶縁したとはいえ、例えば”貴族派”と敵対している”革新派”によってほとんど掌握されているエレボニアの正規軍や共和国(カルバード)に亡命すればどうなると思いますか?」

「なるほどね〜。ギリアスのオジサンやカルバードは”ディアメル伯爵家”と関係があるステラに何らかの”価値”を見出して、何らかの形でステラを利用したかもしれないね〜。」

「口を謹んで下さい、ミリアムちゃん!」

「……つまりステラ様は実家の件で御自分が誰かの欲望の為に利用される事にも嫌気がさしていましたから、その勢力にとって例え御自身が”ディアメル伯爵家”の令嬢であろうと何の価値もないメンフィル帝国に亡命したという事ですか。」

ステラの説明を聞いて推測したミリアムの言葉を聞いたクレア大尉は声を上げてミリアムに注意し、シャロンは静かな表情で推測を口にした。

 

「はい。………”ディアメル伯爵家”に唯一感謝している事は貴族の娯楽の一つとして、狩り―――ライフルの扱いを学べた事くらいです。そのお陰で”籠の鳥”として育てられた私が得意とする唯一の技術がライフル―――銃に関しての技術だった為、メンフィル軍でその技術を存分に生かす事ができたのですから。」

「……そう言えばバリアハートでの戦いの時もステラはライフルを得物としていたな……」

「ん。射手としての腕もかなり厄介だった。多分ステラの銃使いとしての腕前は少なくても”西風”や”赤い星座”でも銃の扱いに長けている部隊長クラスだと思う。」

「ちなみにステラが新兵でありながらリフィア皇女殿下の親衛隊に任命された理由の一つはステラが銃の扱いに長けている事です。」

「ステラちゃんの銃の腕前がゼ、”ゼムリア二大猟兵団”の部隊長クラスって………」

「それだけの腕前があれば、新兵でありながらリフィア殿下の親衛隊に抜擢されてもおかしくないわね………」

ステラの話を聞いたラウラとフィーはかつての戦いを思い出し、セシリアはステラの話を補足する説明をし、フィーの推測を聞いたアネラスは表情を引き攣らせ、シェラザードは疲れた表情で溜息を吐いた。

「それとマキアスさん。実家による嫌がらせでお二人の関係が破談になった件ですが……結果的には”フィオーラ様にとってよかった”と私は思っています。」

「な――――”姉さんにとってよかった”ってどういう意味だ!?”あの人”――――君の兄であるエリック・ディアメルが最後の最後で姉さんを裏切ったせいで、姉さんは自ら命を断ったんだぞ!?」

自分を見つめて答えたステラの予想外の答えに一瞬絶句したマキアスは怒りの表情で反論した。

 

「では逆に聞きますが、もしエリック兄様とフィオーラ様が結婚したとしてもフィオーラ様は幸せになれたと本当に思えますか?例え父様達の反対を押し切って結婚したとしても、”ディアメル伯爵家”にフィオーラ様は結婚前と違って手紙どころか実際に顔を合わせて様々な罵倒や嫌がらせをされたでしょうし、もしお二人の間に子供が生まれたとしても、その子が”ディアメル伯爵家”の血を引く子供として認知される可能性は極めて低いと思われます。そんな状況にフィオーラ様が耐えてエリック兄様と一緒に”ディアメル伯爵家”に立ち向かえるとは到底思えませんし、そもそもエリック兄様に”ディアメル伯爵家”からフィオーラ様を何があっても最後まで守ったり、フィオーラ様と一緒に”駆け落ち”するような度胸があるとお思いですか?―――”ディアメル伯爵家”の権力に負けて最後にフィオーラ様を裏切ったエリック兄様に。」

「それは………………」

ステラの推測を聞いたマキアスは複雑そうな表情で答えを濁し

「―――それともう一つ。エリック兄様は今回の戦争で死亡しましたから、もしフィオーラ様がエリック兄様と結ばれていたら、エレボニアを衰退へと導いた挙句メンフィルによる粛清を受けた愚か者の未亡人になる事によって、今後の人生が暗かったと思いますよ。」

「え………こ、今回の戦争で”あの人”が死んだって……どういう事だ!?確か”あの人”は軍人じゃなくて政治家の上”ディアメル伯爵家”の跡継ぎだったから、今回のメンフィルとの戦争で”戦死”するなんてありえないぞ!?」

ステラの指摘を聞いたマキアスは一瞬呆けた後信じられない表情で声を上げた。

「あら、マキアスお兄さんはレグラムでのレンの話を憶えていないのかしら?――――メンフィルはバリアハートにいる”貴族連合軍”に加担した貴族の当主達を全員処刑した話を。そしてメンフィル軍は一昨日に”ディアメル伯爵家の屋敷もあるオルディス”を制圧したのよ。うふふ、ここまで言えば、ステラお姉さんの話に出て来た人物が”どうなった”かわかるでしょう?」

「!!」

「まさか………オルディスにいる”貴族連合軍”に加担していた貴族の当主達も処刑して”晒し首”にしたのかい?」

そしてレンの話と問いかけを聞いてある事を察したマキアスは目を見開き、オリヴァルト皇子は辛そうな表情でレンに訊ねた。

「ええ。勿論その処刑した貴族の当主達の中には”フィオーラ・レーグニッツを裏切った後実家が決めた婚約者との結婚を機にディアメル伯爵家の当主の座を父親から引き継いだエリック・ディアメル”も含まれているわよ?」

「あの人が他の貴族の当主達のようにメンフィルに………」

「そ、そんな………その……ユーディットさん達はその件について、何と仰っていたのですか……?」

「”ユーディット”……?誰なの、その人。」

「ユーディット嬢とは社交界では”才媛”として有名なカイエン公のご息女の一人だ。」

「ええっ!?カ、カイエン公の娘!?」

レンの説明を聞いたマキアスは複雑そうな表情をし、悲痛そうな表情で訊ねたアルフィン皇女の話を聞いてある人物が気になっているフィーに説明したラウラの話を聞いたアリサは驚きの声を上げた。

「ちなみにユーディット・カイエンはルーファス・アルバレアの婚約者だったのよ♪―――当然”正妻”としてね♪」

「え………」

「し、しかもルーファスさんの婚約者って……!」

「―――ありえない話ではありませんね。”主宰”であるカイエン公はルーファス卿に絶対の信頼を置いていた上、ルーファス卿は”四大名門”の”アルバレア公爵家”の跡取り。更に人柄、能力を考えて自身のご息女を嫁がせる相応しい相手としてルーファス卿しか適任者はいないと判断したのでしょう。」

更なる驚愕の事実を知ったユーシスが呆けている中エリオットは驚きの声を上げ、クレア大尉は冷静な様子で答えた。

「ユーシスは知っていたのか?」

「いや………初耳だ。恐らく父上には話を通さず、カイエン公と兄上だけの話し合いで決まった話だろう。父上とカイエン公は”貴族連合軍”の主導権争いをしていたからな………今思うとバリアハートがメンフィル軍による襲撃を受けた際も援軍を向かわせる所か連絡すら遮断していた事から、カイエン公や兄上は最初から内戦による混乱に乗じて何らかの形で父上を”切り捨てる”事を考えていたのかもしれん……」

「ユーシス……」

ガイウスに視線を向けられたユーシスは静かな表情で首を横に振って答えた後重々しい様子を纏って答え、ラウラは辛そうな表情でユーシスを見つめた。

 

「話を戻すけどカイエン公爵家の”当主代理”のユーディット・カイエンもそうだけど、ユーディット・カイエンの妹で次期当主であるキュア・カイエンの二人は処刑された貴族の当主達に関しては処刑された人達はどの道エレボニアでも粛清されて当然の存在だから、”自業自得”って言っていたそうよ?」

「それは…………」

「……レン皇女殿下。キュア嬢がカイエン公爵家の”次期当主”で、姉君のユーディット嬢の方が”当主代理”とはどういう事でしょうか?ナーシェン卿が戦死した為、カイエン公爵家の長女であるユーディット嬢がカイエン公爵家の”次期当主”である事ならば理解できるのですが、何故次女のキュア嬢が”次期当主”で、カイエン公爵も健在の上ユーディット嬢がカイエン公爵家の”当主代理”を名乗っているのでしょうか?」

レンの説明を聞いたオリヴァルト皇子が複雑そうな表情で答えを濁している中アルゼイド子爵は静かな表情で訊ねた。

「ああ、そう言えばまだその件については教えていなかったわね。うふふ、実はオルディス制圧後ユーディット・カイエンは妹のキュア・カイエンと一緒に”カイエン公爵家”を乗っ取ると同時に貴族連合軍の”主宰”―――カイエン公爵の当主解任並びに爵位剥奪を宣言したのよ♪」

「な―――――――」

「何ですって!?」

「カ、”カイエン公爵家”を乗っ取った上カイエン公爵の爵位剥奪を宣言したって……!」

「なるほどね〜。カイエン公はオルディスを留守にしていた上自分達にとっての唯一の邪魔者であったナーシェン・カイエンが死んだ事でカイエン公の代わりとして揮える”カイエン公爵家”の権限は事実上カイエン公の娘である二人だけになったから、二人はそれを利用したんだ〜。」

「……そう言えばユーディット・カイエンとキュア・カイエンは内戦に反対し、内戦勃発後は自分達の私財をなげうってまで市民達を支援しているとの情報がありました。」

「という事はその人達は”四大名門”―――それも”カイエン公爵家”の人でありながらアンやユーシス君のように内戦に反対していた貴重な人達だったのか………」

驚愕の事実を知ったオリヴァルト皇子は絶句し、サラは驚きの声を上げ、トワは信じられない表情をし、ミリアムとアルティナが口にした推測や情報を聞いたジョルジュは複雑そうな表情をした。

 

「うふふ、それで長女のユーディット・カイエンが”当主代理”で次女のキュア・カイエンが”次期当主”の理由だけど………ユーディット・カイエンは自分自身をオルディスを占領したメンフィル帝国に対する”忠誠の証”としてメンフィル帝国の皇族や貴族、政治、軍の上層部の誰かと”政略結婚”するつもりだったから、いずれカイエン公爵家から他家に嫁ぐ自分はカイエン公爵家の当主を務められないから妹のキュア・カイエンを次期当主にしたとの事よ?」

「ユーディットさんがそのような事を………」

「なるほどね………ラマール州の統括領主であったカイエン公爵家の長女で、しかもエレボニアの社交界でも有名な自分自身と政略結婚する事はメンフィルにとっても”価値”はあると判断して、そんな判断をしたのでしょうね……」

「レグラムでもレン皇女殿下がメンフィルは”英雄王”が戦争で占領した国の王女達と政略結婚する事で、その占領した国の皇族達を生かしてそのままその国の維持をさせていた話も仰っていましたから、メンフィルがユーディット様の考えに同意する可能性は十分にあったでしょうね。」

「で、ですが…………ラマール州はクロスベルに贈与される事になってしまった為、ユーディットさんの目論見は外れた事になりますけど………」

レンの説明を聞いたアルフィン皇女は辛そうな表情をし、セリーヌは疲れた表情で呟き、シャロンは静かな表情で推測を口にし、エマは複雑そうな表情で呟いた。

「クスクス……実は自分相手に見事な交渉をしたユーディットお姉さんに感心したファーミシルスお姉さんがオルディスを含めたラマール州はクロスベルの領土になる事を教えちゃってね………で、その件を知ったユーディット・カイエンは”六銃士”の一人である”黄金の戦王”との交渉の場をメンフィルが用意する事を嘆願したとの事よ♪」

「何だと!?」

「”黄金の戦王”というと………メサイア皇女殿下の父親か。」

「ハハ………」

「へ〜、そのユーディットって人、噂通り滅茶苦茶賢いね〜。”黄金の戦王”って自分が”好色家”である事を公言しているから、自分自身が”黄金の戦王”のハーレムの一員になる事で”カイエン公爵家”が貴族としてクロスベルに帰属する事を許してもらう為に”黄金の戦王”と交渉するつもりなんじゃないかな〜?」

「………ユーディット嬢は社交界に参加する度に多くの貴族達が求婚する程見目麗しい方だ。”黄金の戦王”は”好色家”との事だから、貴様のその推測も強ち間違っていないだろうな。」

レンの話を聞いたトヴァルは驚きの声を上げ、ガイウスに視線を向けられたリィンは苦笑し、ミリアムの推測にユーシスは真剣な表情で同意した。

「……それでメンフィルは彼女の要請に応えたのかい?」

「ええ。ヴァイスお兄さんに話をしたら、ヴァイスお兄さんも結構乗り気のようだったそうだから、多分ユーディット・カイエンの目論見通りになると思うわよ?」

「ま、オリビエと同じ女好きのヴァイスなら、そんな機会、絶対逃さず利用してそのユーディットって女を自分の女にするだろうね。」

「アハハ……ヴァイスハイト様は、筋金入りの”好色家”ですからね……」

「そうね。まあ、自覚している分”無自覚”の兄様よりはある意味マシかもしれないけど。」

「その意見には同意します。”無自覚”が一番性質が悪いかと。」

「う”っ。」

オリヴァルト皇子の問いかけに答えたレンの話を聞いたエヴリーヌは静かな表情で呟き、セレーネは苦笑し、エリゼとアルティナにジト目で見つめられたリィンは唸り声を上げ、エヴリーヌ達の言葉や会話を聞いていたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

「色々と話が逸れたが………そなたはマキアスの従姉殿の婚約の件が破談になった事が”従姉殿にとってよかった”と口にしたが……その結果その従姉殿は自ら命を断った。その件を知ってもなお、そなたは”従姉殿にとってよかった”と思えるのか?」

「はい。―――というかそもそもフィオーラ様は”今も生きていますよ。”」

そしてアルゼイド子爵の問いかけに答えたステラは驚愕の事実を口にした。

 

 

 

 

説明
第63話
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他エウシュリーキャラも登場 他作品技あり 幻燐の姫将軍 空を仰ぎて雲高くキャラ特別出演 閃の軌跡U 

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