ショートストーリー
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「恋愛できない腐れ縁」

 

俺の名前はハックル・クラッキン、とある学園の保険医募集の広告に騙され、何か裏方の方で働くこととなった。

保険医の方は学園長直々の任命で俺と似た外見の腐れ縁がやっていた。とんでもないトラブルメーカーだが、今の所はのんびりしてるから大丈夫だろう。

時間が空いた時は顔出しに行くようになった。ヤツも学園長に言われて保健室から出られないようで、相当暇してたようだ……あの学園長、ヤツの被害者だったのかもしれない。

俺とヤツがやる事といえば雑談ぐらいだ。今回は色恋の話……ぶっちゃけるとヤツはよくモテる。どういうわけかモテる。理不尽なぐらいにモテる。

本人は褒めたり撫でたりしただけと言うが、それこそが口説きの基本形である事を自覚していないようだ……しかしその反面、フラグを折るスピードも早い。

甘えたり甘えられたりするのもダメ、厳しくするのもされるのもダメ、そもそも先の事が不安になったり、能力に見合った威厳や態度であろうとしたりと余計なことを考えて自分から折りにかかる。

しかも後々面倒にならないように、自分からフるのでなく相手に愛想を尽かされてフラれるように画策するから性質が悪い。

最後に付き合いそうになってた子は良い線いってたのだが、他の三人の女の子も同じくらいに好きと言ったりいたしちゃったりした事を暴露して台無しにしやがった。

その当時のことを未練がましく思っているらしいので、それがいい方向に向かえばひょっとしたら……と思っている。

この際だから年下の女子生徒との禁断の恋でも構わないからくっついて欲しいものだが、今のヤツには浮ついた気配も無く、誰かを意識してる様子もなかった。

 

次の日の事、色恋関連の雑談中にヤツが発した言葉を思い出した。

「俺には今のようなのほほんとした雰囲気の方が良いよ。今更誰かと付き合うことになったら、重くて耐えられそーにねーわ……俺、軽いし」

ヤツとは知り合い以上ぐらいの仲ではある俺としては、これまでの人生観や価値観を一変させるような恋愛をしてほしいもんだ。

そう思ってた所、保健室から男女の話し声が聞こえてきた。男の方はヤツだろうが、女の方は聞こえた範囲じゃ二人…三人ぐらいいるな。多分女子生徒だ。

気付かれない様に、俺は保健室の戸の隙間を覗いて見た。するとそこには、女子生徒と話すヤツの姿があった……女子の方はヤツを意識している感じだった、ヤツ本人は気付いてないようだ。

ふむ……これは脈ありという奴ですな。もしかしたらもしかするかもしれない……まあ一つ言える事は、この学園での楽しみがまたひとつ出来たってとこかな?

 

 

「守れなかったものたち、それでも守ると誓ったもの」

 

ある日、女の子が死んだ。もし走って受け止めていれば助かってたかもしれない命だった。

それから時が過ぎ、神様と神様の戦いによって家族や居場所を失った。

あの場所にいた頃の光景が、今でも僕のまぶたに焼きついている。

だからもう、失うところを見たくなかった。だけど神様の使途に、新たな居場所や家族を殺された。

そんな事にはさせまいと強くなった筈だったのに、怖くて恐くて動けなかった。

それから暫くして戦争が起きて、神様の使途が友達を殺そうとした。

刺し違える覚悟で使途に特攻を仕掛けた友達を守りたい一心で、使途に銃口を向けて引き金を引いた。

友達に紙の束を渡された……遊園地のイメージ図だった。

「代わりに建ててくれ」と、自分の夢を僕に託した。僕はその夢を引き受けて、遊園地を建てる事を誓った。

 

神様がなくなって、国を治めながら国政を学んで、継ぎ接ぎで行き当たりばったりでも国を保とうと頑張った。

使徒たちの残党による報復を退くために、かつての仲間達を踏み台にした。

彼らも守るべき者たちだった筈なのに、僕は国の為に裏切り、切り捨てた。そしてとある者の切なる願いでさえも、己の精神を保つために裏切った。

国が安定してきて王家という基盤ができて、役目を終えた僕は売れる私財を売り、使えるものは全て使って遊園地を建てて王座をひっそりと降りた。

それからはとにかく延命して、とにかく生き延びて、神様がなくなったあの日から行方不明となった友達とまた会う為にひたすら待った。

友達と約束したわけでもなく、頼まれたことでもない、自分自身で誓ったものだ……きっと死んでるんだろうけど、何となく心のどこかで生きている気がしたんだ。

 

そんな誓いを立てて幾数年、そろそろ限界が来たようだ。視界が霞み、身体も感覚を失い、意識も薄れていった。

守れるかどうかも解らないものを誓ってる時点で結構可笑しかったのだろうと薄ら笑い、瞼も重くなってきた……そんな時だった。

「ただいま」

そんな声が聞こえて、無かったはずの手の感触が蘇った。ハッとなって思わず瞼を開くと、そこにはあの頃と全く変わってない友達がそこにいた。

夢かと思ったが、相変わらず動けない身体と寝たきりの視界から、夢でない事を確認した……こんな良い夢なら、身体が動けても良い筈だ。

彼はあの日の後、何処か別の世界の学園で高校生活を送っていたようだった……しかし聞いた話だと高校生活と言うには摩訶不思議アドベンチャー過ぎるが、まあ彼は楽しんでたようだし良しとしよう。

そもそもそんな滅茶苦茶ぶりこそ彼ならではだろうし、向こうの世界の陰謀やごたごたを有無を言わさず強引に切り伏せてきた辺り流石だなと素直に感心した。

戦利品を見せながら、お互いにこれまでの事を振り返った。彼はお礼と労いの言葉を口にしたが、礼を言いたいのは僕のほうだ。

ただ何かにすがりつきたかった一心で思いついた、守れもしない誓いを守らせてくれたのだから。

いよいよお迎えが近くなった頃、彼は年老いた僕の手を握った。

「おやすみ、レス」

僕も最期の力を振り絞り、あの頃から変わらなかった彼の手を握り返した。

「お休み……親…友……」

意識は遠くに、もう二度と目覚めないであろうその時、きっと変わらないまま生き続ける彼を見て切に思う。

どうか僕の親友の行く先に、幸せが在らん事を。

 

 

「怪物の見る夢」

 

ある時神に親を殺され、心が欠けた少年がいた。

少年は欠けた心を取り戻すために復讐を誓い、強くなる為に色んな事をした。

神を喰らう剣を手に入れて、色んな物を喰わせて壊した。

壊れた剣は何でも喰うようになり、その衝動がうつって少年は飢え狂った。

あらゆるものを喰わせても「足りない、喰いたい」と呟き、仲間も敵の神も喰わせても「足りない、喰いたい」と呟いた。

そしてとうとう自分も剣に喰わせ、少年は剣の一部となった……かに思えたが、欠けて満たされぬ心の飢えで逆に剣を取り込み、際限なく喰らう化け物となった。

大きくなっていった欲望は数多の星を喰らい、星を喰らい、((宇宙|ソラ))を喰らい、とうとう他所の世界をも喰らっていった。

そしてその体内では喰らった世界が混ざり合い、交差世界という名の怪物の夢となった。

 

怪物があらゆるモノを喰らい続ける中、巻き込まれるように喰われた俺は、その怪物の核に辿り着いた。

そこに居たのは一人の少年。欠けたまま進めず、紛れ込んでいても埋もれなかった心そのものだった。

核である少年は俺に気づき、眠りから覚めて「いらっしゃい」と声をかけた。

「どんな夢を見てたんだ?」と質問してみると、少年は「復讐劇に見せかけたラブストーリーだった」と答えた。

色んな世界の奴らのごった煮ストーリーかぁ……やかましそうだが見てみたい気もする。

それから色々話した後、こんな気味悪い所にいられるかって事で銃を向けた……少年の方は抵抗する気配が微塵も無かった。

どうやら向こうもそろそろ終わりにして欲しいようだ。まあそっちの方が気兼ねないし、さっさと引き金を引くことにした。

 

核を失った怪物はビッグバンが如く大爆発を起こし、これまで喰らった分を吐き出すように、新たな世界をいくつも産み出した。

核となっていた少年も、そんな世界の何処かで新たな生を送っているのだろう。

かつて各々の世界で活躍していた者達も全く違った、或いは以前と似た生を送っているのだろう。

巡り廻るその光景は、眺めて飽きるものではない。

ふと、俺はあの怪物をロストって名付けた。失った者、欠けた部分を満たす為に喰らい続ける底無しの穴、欠け失ったモノが何なのかを知らぬまま、あらゆるモノを喰らい続ける……まあこんな所だろ。

さて、依頼してきた世界に報告しに行くかな……連絡が来た所を考えるに間に合ったよーだしね。

青い空、白い雲、草原生い茂げ、いつかは変わってしまうだろうこののどかな場所を、名残惜しいが後にしよう。

去らば楽園、平穏の象徴、俺のことは……そうだな、ディスペルとでも覚えててくれ。(洒落た台詞が思い付かんかった…)

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ふと浮かんだ粗雑な文ですがどうぞ
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