とある夏休みのとある忙しい日
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「ねぇ亜由美、まだ起きてる?もう寝ちゃった?」

「起きてるよ。何?」

 

 隣で寝ている親友が話しかけてくる。ちょっと前まで二人で取り留めない話に花を咲かせていたが、明日から学校ということもありもう寝ようといって『おやすみ』と交わしたのだった。

 

「今日はありがとうね。宿題とか花火とか。」

「いいよ、私も楽しかった。」

「じゃ、もう一度おやすみだね。」

「うん、おやすみ。」

 

 二回目のお休みを交わして私は目をつぶる。そして、私は夏休み最終日の賑やかだったお昼の時のことを頭に思い浮かべた。

 

 

「もう、無理。私頑張ったよ。見せてくれてもいいでしょう。」

「ダメだよ。ちゃんとやらないと。テストで困るよ。」

 

 親友が不貞腐れながら宿題をやっている。ちゃんとやれば今日中に終わるだけの力はある。なので丸写しはさせてあげない。隣では親友の彼が文句も言わずにせっせと残りの宿題をしている。

 

「ほら、諦めろ。あと少し頑張れば終わるんだから。」

「だって、見せてもらえば5分で終わるんだよ。遊べるんだよ。」

「口を動かさずに、手と頭を動かせ。俺は後、二、三ページで終わりだ。」

「えぇ、ずるい。いつのまに。」

 

 そんなやりとりをしている二人を別にして弟妹の様子を見に、リビングのガラスドアから庭を覗く。二人は庭に貼ってある簡易プールで彼に遊んでもらっている。二人は彼を標的に水鉄砲を向けている。彼はホースでもって応戦している。三人とも楽しそうだ。

 

「亜由美、ここ教えて。よくわかんない。」

「はいはい。どこ?」

 

 親友が解いている問題を見る。その設問は主人公がどんな気持ちでこのセリフをいったのかを15文字以内で書き答えるものだった。私は文章の中からキーとなる部分を探し出し親友に説明する。

 

「だから、この言葉がここにあるでしょう。だからここを書けばいいんだよ。」

「そう言われるとそんな気がするけど、やっぱり記述式の現文って苦手。」

 

 親友は現代文のテキストのページを進める。あと4、5ページで終わりそうだ。。

 

「なぁ、優子。この問題の解って一つだよな。」

「もう私は忙しいの。亜由美に見てもらいなさいよ。」

「いや、亜由美ちゃんはこれ習ってないって。」

 

 親友の彼はテキストを見せながら説明する。数学はあるけどその単位は習ってないので教えてあげれない。親友を見るとしょうがないなと言う表情をしながらも、どことなく嬉しそうにテキストを受け取る。

 

「もう、しょうがないな。ノート見せてよ。ううん、二つあるよ。ー4と9が解になるはず。」

「えっ、嘘。」

 

そういってノートの書いてある式をなぞりながら、確認をしているみたいだ。

 

「あっほんとだ。途中の計算が違う。ありがとな。」

「あんた多いよね。そう言うミス。解き方あってるのに勿体無い。マークだと0点だよ。」

 

 そんな二人の横で私は編み物を始める。本当はこの夏に終わる予定だったんだけどデザインが決まらずに取りかかるのが遅くなった。でも後これだけなので目的の日にはちゃんと全部揃いそうだ。

 

 しばらくの間、三人とも無言でそれぞれのやることに没頭しているとリビングのガラス窓がノックされた。

 

 そちらを向くと彼が妹を抱きかかえて立っている。何があったのかと慌ててドアを開けにいく。彼は片手で妹を抱き直して人差し指を立てて静かにするようにジェスチャーする。よくみると妹は気持ち良さそうに寝息を立てていた。

 

「二人とも寝ちゃった。体を拭いて寝かせてやらないと。」

「よう君も」

 

 そう言って彼の後ろ見ると簡易プールの浮き輪の上で弟が寝ていた。

 

「ちょっと待ってて。バスタオル取ってくるから。あと着替えさせないと。」

 

 バスタオルをとってきて妹をうけと取る。彼にもバスタオルを渡す。髪の毛や体を丁寧に拭き、寝てしまった弟妹を着替えさせてお昼寝の準備がしてある部屋に二人して運ぶ。この夏休みの間、何回こうやって二人で運んだのかな。

 

 そんな風に思いつつも寝ている二人を起こさないように喋らずに静かに二人を布団の上に寝かせる。ゆっくりお休み。起きたらおやつだからね。

 

 そっと扉を閉めて、宿題をしている二人のもとに戻る。二人とも後わずかになったみたいだ。

 

「それにしても、お前ら宿題終わったのか?」

「あと1ページだ。それにしても真一が終わってるのが不思議なんだけど?」

「あんたちゃんと自分でやったの?亜由美の丸写ししたんじゃないの。」

 

 親友が疑いの眼差しで彼を見ている。確かに去年までの彼ならありえたかも。確か去年の始業式の日は眠そうだったな。でも今年は大丈夫。

 

「ちゃんとやったって。わかんないところは聞いたけどさ。」

「亜由美ちゃんコイツのいってること間違いない。」

 

 親友の彼が念を押すように私に聞いてくる。

 

「間違いないよ。数学は教えてもらったしね。」

「夢じゃないのか。」

 

 親友の彼がそう言うと親友は遠慮なく彼氏の頬を引っ張る。

 

「いひゃい。なにゅひゅる。」

「夢じゃないよ。」

 

 親友は片手でひっぱりながら課題を進めていく器用なもんだ。私は再び編み物を始める。彼はベストセラーになっている上下巻の本の続きを読んでいた。読み終えたら、今度貸してもらおう。

 

 その後、私は二人を夕食に誘う。すると親友は泊まっていくと言って課題を終えた後、着替えを取りに戻った。

 そして戻ってきた親友と私でカレーを作り六人で夕食を食べ。日が落ち炎が映える時間に手持ち花火でこの夏を色鮮やかに締めくくった。

 

fin

説明
 本日は夏休みの中でも一二を争う忙しい日。下手したらオールになる事を覚悟している方もいらっしゃるかもしれません。さて彼女はというと、それなりに忙しく充実した日を過ごしたようです。そのひと時を覗いてみたいと思います。
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小説 とある 夏休み 

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