異能あふれるこの世界で 没話
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≪南三局・開局前の赤土晴絵≫

 

赤土『はあー』

 

赤土『……』

 

赤土『調子わるっ!』

 

赤土『これだけテンパらないのも珍しいわね。捨て牌と合わせても、まともな手順でテンパれる局がほっとんどないじゃん。誰が打ったって無理なパターンがこの対局できちゃうとか、私相変わらず運ないなー』

 

赤土『一半荘で実力の差を痛感させる自信はあったんだけど、これじゃ望み薄か? なーんもできてないもんなあ。あーあ、そこそこ苦労した仕込みが台無しだよ』

 

赤土『予定通りなのは、せいぜい戒能ちゃんを完封するくらい? もうちょっと直接叩けていたら、わかってもらえたかもなあ。まーったく、上手くいかなくてヤになるよ』

 

赤土『点数だけは調整させてもらってるけど、こんなのあがれない状況で仕方なくやってることだし。さすがに評価してくんないよねー。あーもうどうしよっかなああああ』

 

赤土『……』

 

赤土『はあ。もうしゃーないか。普通に勝っちゃおう。それで、どうだ強いだろーって言ってみよう。認めてくれたらラッキーだし』

 

赤土『マジで意味ないわ。色んな小技を有効に使った上で、対局の解説を講義に利用していこうと思ってたのに。ほっとんど使えないまま終わるとか、どんだけの準備とどんだけの予定をダメにしたんだって話よ』

 

赤土『使った時間の何%かでも眠ってたら、この目の下のくまも取れてたんじゃないの? 癖にならないようには気をつけてるけど、加減ミスると化粧でも隠せなくなる年になってきたんだよなあ。んー笑えない』

 

赤土『はあ。勝つって言ってもなあ』

 

赤土『あーあー、恭子は相変わらずわかりやすいこと。開局前からやることが顔に出てるってば。そんじゃ一つも食わせないようにしますか。やえと戒能ちゃんは、テンパりそうになるまで無視でいけるっぽいね』

 

赤土『ん。このパターンなら余裕で想定内だ』

 

赤土『じゃあこの親で恭子を叩くのが第一目標ね』

 

赤土『オーラスで仕掛けにくい点差にすれば、勝手に崩れてくれるのが恭子の悪癖。得意なパターンを選択できなくなった時点で、相手のミスが起こらなければほぼノーチャンス。負けパターンにご案内しよう。気付けるなら評価アップだ』

 

赤土『やえは実力が隔絶している面子と本気で打ったことが無いんだよな。だから、心を折った時点で私たちには勝てなくなる。これを良い経験として、対策の手法を作っていくといいよ』

 

赤土『戒能ちゃんは、ね。用意してきているであろう私対策は、対局直前に全てちゃぶ台返しさせてもらった。勝てない勝負にさせてゴメンな』

 

赤土『そのカウンター戦法も、張られるであろういくつもの罠も。即興レベルの手は経験済みのものばかりなんだ。対策なんて、考えなくてもできちゃうよ』

 

赤土『うん。私だけ事前準備万端だ。どう考えても圧勝できるはずの状況だ』

 

赤土『なのに、どうしてこうなった?マジで今度、望んちでお祓いでもしてもらうかな。私の人生、大事な時はいっつもこうだ……』

 

赤土『まあいいや。そんじゃ恭子をあがらせないようにして、のんびり手を進めていくかあ。あがりはたぶん、捨て牌が三段目に入ってからだろうね。狙いやすくていい感じ。どうせ相変わらず配牌も悪いんだろうし』

 

赤土『フォローもいくらか入れとくか? 誰かの手にふらっと早い手が入るパターンも……私の麻雀歴にはほぼないけど、万が一は起こるもんとして考えておかなきゃな』

 

赤土『しっかし、なんでみんなパターン化しないんだろうねえ。麻雀の手牌は人の手に負えないくらいのパターンがあるけれど、展開の数はそれほど多くない。超絶レアなのは捨てていいわけだから、検討の余地があるパターンなんて、多く見積もってもたかが数万』

 

赤土『そこまでやんなくても、自分の対局だけでも全てデータベース化しておけば、自由自在に研究ができるだろ。なぜこの手法が流行らないのかがわからん。情報を集めて利用しやすいように加工するだけで、めちゃくちゃ楽に対応できるようになるんだぞ。せめて自分の負けパを潰すくらいはやる価値あるだろ』

 

赤土『思考の基礎として役立つと思うんだけどなあ。手間がどうとかリターンがどうとか、つべこべ言う前にやれること全部やればいいのに。教えろっつうから教えてやったんだぞ。こっちに妬みをぶつける前に、愚痴ってる時間を有効に使えばもっと強くなるわ。ほんとあの実業団の自称先輩クソ補欠どもは……』

 

赤土『別にこんなの、手法の一つなんだからいくらでも教えるさ。肝ってわけでもないし、恭子ややえは教えないしな。効果が出るまでに時間かかるから。そんなことに時間を費やすのは、麻雀を職業にした後でいいんだよ。なーにがこれさえあれば指導者としてもやっていけるよねーだあいつら』

 

赤土『って、ああーもう。イヤなこと思い出しちゃったよ……やめやめ。はい切り替える』

 

赤土『……』

 

赤土『よし。オーラスの恭子対策。軽い手が入っても意味がない程度の点差をつければほぼ確勝。他はもう確勝に近いから優先順位は今のまま。この局の仕上げが最重要。次に親の流れ方。オーラスはその二つ次第』

 

赤土『出来れば7,700くらい欲しい。ただ、あんまり点数を追うと隙ができるし、恭子に合わせるようにするから恭子次第ではある。やるべきことはやや多いか』

 

赤土『ただあがって勝つよりは、この手の方が印象はいいだろう。勝率はさして変わらないはずだから、狙い澄ました形を作っていく。出来なかった場合でも、もう形が入らなくてもあがんなきゃいけない局面だからあがっていくことにしよう』

 

赤土『確認。方針転換をする。これ以上、後の講義を気にすると負けかねない。勝ち方は、狙い澄ましちゃう私ってすごいだろ、のパターン。効果予想は最低レベルだけど、この際仕方ない』

 

赤土『対局後、この勝ち方でドヤらないといけないってのが泣けるなあ。今から覚悟しとかないと。大したことないって思われてるっぽかったら……戒能ちゃんに解説役を振って、どうにかしてもらうしかないか。お願いだから空気読んでよー? 戒能ちゃんなら大丈夫だと思うけど』

 

赤土『ああ、でもこれ』

 

赤土『もし勝てなかったら、すっげー笑えるな』

 

 

説明
頑張って書いたのですが、当時は公開するのを控えたものです。

赤土さんの超絶上から思考。実力差を把握しているが故に。
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