真・恋姫無双紅竜王伝A〜覇王との邂逅〜
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彼女は夢を見た。

自らを乗せて天を駆ける紅色の竜の夢を―――

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「おはよう、春蘭、秋蘭」

討伐軍に従軍する諸侯の一人・曹操は日が昇る頃に起きると、すでに起きていた2人の部下に挨拶をした。

「おはようございます、華琳様!」

「おはようございます、華琳様。お早いお目覚めですね」

挨拶を返したのは黒髪と水色の髪とよく似た顔つきの女性だった。黒髪の方は夏候惇、水色の方は夏候淵。2人は双子の姉妹であり、曹操のいとこにして部下である。春蘭・秋蘭とは彼女達の真名。曹操の真名は華琳という。

「秋蘭。何か報告はある?」

「は。討ち死にした指揮官の後任として何進大将軍の名代が洛陽を発進し、こちらに向かっているとの報告を受けました」

「そう」

彼女にとってそんなことは重要な事ではなかった。朝廷軍の将の質の低さは既に大陸中に知れ渡った事実であるので、誰が総大将でも変わりはないと考えていた。

「そういえば2人とも・・・」

曹操は睡眠中に見た不思議な夢について2人に話した。

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「紅色の竜・・・ですか?」

「その竜が華琳様を乗せて天に昇って行ったと?」

「ええ。ま、所詮は夢の中の話よ」

この話題は終わり、とばかりに食事の手を進める曹操。しかし夏候惇が嬉しげに曹操に向き直った。

「華琳様!もしやそれは華琳様が紅色の竜を従えて天下を制する、という天からのお告げではないでしょうか!」

夏候惇のプラス思考な発言にキョトンとする曹操だったが、やがてニコリと微笑むと

「そうね・・・そういう考え方もあるわね。春蘭、何事も前向きなあなたの考え、私は好きよ」

「そ、そんなぁ・・・」

「(照れる姉者も可愛いなぁ)」

曹操に褒められて嬉しそうにてれてれと頭を掻く夏候惇。その姿を愛でる夏侯淵。しばらく和やかな雰囲気で食事が進められた。

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「申し上げます!何進様の名代と名乗る方が2万の軍勢を率いて着陣なさいました!」

『なっ!?』

兵の報告に驚きの声をあげる3人。曹操は夏候淵に慌てて振り返った。

「秋蘭、名代の軍はいつ洛陽を発したの!?」

「そ、それは・・・」

夏候淵は慌てて報告書を読み返したが、どう考えても出陣した日とここまで来る日にちが合わない。早すぎるのだ。

「朝廷軍にも有能な将軍がいるのかしらね・・・ともかく、あいさつに行きましょう」

曹操は2人を従えて、設営されたという本陣に向かって行った。

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本陣には長方形の漆黒の旗が並び、兵たちが本陣設営の為に動きまわっていた。曹操の一行は案内の兵に連れて行かれながらその光景を眺めていた。

(なかなか兵の質がいいわね・・・)

いまだ見ぬ指揮官の姿に期待感を膨らませる曹操だった。

しかし―――その期待は天幕から聞こえてきた怒声にしぼんだ。

「なんでこの名門・袁家の当主たる私ではなく、閣下は織田さんを総大将に指名なさったのですか!?」

「うっさいわこのクルクル女!こっちにも深い事情があるんじゃい!」

「きー!なぁんですってー!」

「・・・はぁ。またやってるのね、あの馬鹿は」

聞き覚えのある声が聞こえたが、直前になって入らないわけにもいかずいやいやながらも曹操は天幕をくぐった。

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天幕の中にいたのは曹操の幼馴染であり冀州を治める袁紹と、上座に腰掛ける長い深紅の髪を雑に後頭部でまとめた青年だった。曹操が入ってきた事に気がつくと、2人は口喧嘩をやめてこちらに向き直った。青年は袁紹を追いだすと、曹操に向かって一礼した。

「あー、すまん。貴殿が曹孟徳殿ですね?俺がこの戦で指揮を執る事になった織田舞人っていうもんだ」

こちらの名前を確認した時は敬語だったが、普段敬語を使わないようで、すぐに砕けた口調に戻った。

「織田・・・舞人?珍しい名前ですね・・・」

いちおう冠位が彼女より上なので敬語を使ってみたが、彼は苦笑して手を振って見せた。

「ちなみに姓が織田で名が舞人。字と真名はない・・・孟徳殿、俺に敬語は使わないでいいぜ。どうせ普段は無位無官なんだ」

「そう。では私の事も曹操で構わないわ、織田」

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軍議が開催されることになり、参陣している諸侯が本陣の天幕に集ってきた。北海太守・孔融(孔子の20世の孫)や済北国の相・鮑信などの身分のある将軍たちにも舞人の態度は変わらず、親しげなものだった。聞けば孔融と鮑信に過去に仕えていたのだとか。

「それじゃ、軍議を始める。廬植先生、状況はどうなってる?」

舞人の質問に答えたのは副将の廬植。黒髪を腰まで伸ばした知的な雰囲気を醸し出す妙齢の美女であるが、ただのか弱い女性ではない事を腰にさした戦斧が物語る。

「敵軍は15万で指揮は波才が執っています。と8万の我が軍より2倍近くの多く、敵はこちらの指揮官を討った事で意気軒昂・・・」

「俺らが勝てる可能性はあまり高くないって事か」

ふむ、と舞人は腕を組んで考え込んだ。

(敵はこちらの指揮官を討って士気が高い。それ即ち敵が油断している証拠でもあるよな・・・ならば)

舞人は断を下した。

「我が軍の進退、ここに極まったな。撤退するか」

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着任早々撤退を決め込んだ総大将を非難する声が止まぬ天幕から抜け出した舞人は、兵糧の詰まった米俵を担いでいる兵に近寄り、すれ違いざまに何事か耳打ちした。兵は微かに首を縦に振り―――何事もなかったかのようにすれ違って行った。

(さてと、三流将軍を討ってつけ上がった馬鹿どもの始末を始めますか・・・)

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主人公

織田舞人(おだ・まいと)

長い深紅の髪の毛を無造作に後頭部で無造作に纏め、腰には獲物である日本刀をさげている外見。深紅の瞳の目つきは悪く、言動も粗野だが武人としての腕は確か。幼い頃より現在の傭兵のような仕事で生計を立てていて、一般兵から一軍を預かる指揮官までこなす。

直属の兵団を持ち、指揮官として戦に出るときは彼らを招集して戦に臨む。趣味は昼寝。

 

オリキャラ

何進(かしん)

漢の大将軍にして皇太子劉協の母方の伯父。舞人の現在の雇い主でもある。

舞人からは「おっさん」呼ばわりされているが、何気に信頼されている人物。現在十常侍と皇帝の後継者争いをしている。

 

劉協(りゅうきょう)

何進の妹が産んだ皇帝・劉宏(霊帝)の子。次男だが、愚鈍な長男・劉弁に代わって皇太子の座に何進の強い推薦で就いた。舞人の事を慕っており、「舞人さん」と呼ぶ。実は・・・

説明
第二弾です。@でしてなかった登場人物の設定を最後のページに載せていますので参考までにご覧ください。
では、どうぞ!
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コメント
舞人の策が楽しみですね。(ブックマン)
劉協と劉弁の母親が逆のような気がするのですが仕様ですか?続き楽しみにしときますw。(Kito)
最後の「実は・・・」が気になりますね(キラ・リョウ)
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