晦の夜 第1章 闇夜
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12月の夜中の寒い時間、私は目が覚めた。

 

寒さで起きたわけではない。冬というのに喉が乾いてしまった。

 

温かいベットから起きて、机の椅子に掛けてある上着を羽織った。

 

部屋を出ると長くて寒い廊下がある。

 

私の家は、豪邸の様な家であり、飲み物があるリビングまで行くのに大変だ。

 

スリッパを履いていない私の足は、氷の様に冷たい廊下を歩いて、幅が広い階段に着いたところで

 

赤くなっていた。

 

霜焼けになるかもしれないと思った私は、早歩きで階段を降りた。

 

「ルナお嬢様、夜中のリビングに何か御用ですか?」

 

シェル=ナルドと言うこの家の執事が階段の上で蝋燭を持ちながら質問してきた。

 

シェルは、蝋燭に負けない位の赤毛で、標準男性の背より高く、凛々しい体型。何より強さは、ア

 

メリカに滞在していた時に、世界一のボクサーと対決して無傷で勝利したという。

 

ちゃんとしている執事だ。

 

「喉が渇いたので、水が飲みたかったのです」 

 

私が言うと、用意しましょうと階段を降り、私にスリッパを渡してきた。

 

本当にちゃんとしている…

 

リビングは、階段を降りて、右に曲がって、2つ目の部屋にある。

 

初めて来た人は、何処がどんな場所だか解らない位の複雑な家だ。

 

部屋のドアの前まで来ると、執事のシェルがドアを開けてくれた。

 

リビングは、大きなシャンデリアがあり、大きな細長い机が置いてある。

 

冷蔵庫は大きいのが二つあり、たくさんの量の食品や飲み物などが入っていた。

 

細長い机の椅子に座ると、シェルが丁寧に水を出してきた。

 

「どう?この家に慣れた?」

 

水を少し飲み、私はシェルに質問する。

 

「はい。とても綺麗な家で、良い場所です」

 

シェルはアメリカから昨日、帰国してきてこの家に来た。

 

もうこの家の常識は、もうすべて知っている。

 

「でも、少し不気味な家でしょ?」

 

私は苦笑しながら言った。

 

「いえ、そんなことはありません」

 

笑顔でシェルは言い返した。

 

そんなことを話していると、いつの間にか水は飲み終わっていた。

 

シェルが飲み終わった食器を手に取り、もういいですか?と聞いた。

 

私は頷き、シェルのおやすみなさいを聞くと、シャンデリアの光で輝いているリビングの部屋を出

 

た。

 

明るい部屋に居たため、あまり目の前の道が見えなかったが、数秒経つと暗順応の御蔭で少し先の

 

道が見えてきた。

 

階段を上り、私の部屋に入ると、ベットの上で横になった。

 

私はベットの上から、部屋にある大きな窓に顔を向け、月を見た。

 

「明日の夜中からかな。闇が迫るのは…」

 

私はそう言って、上着を脱いで、毛布の中に潜り眠りについた。

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大きな窓から、日差しが当たる。

 

眩しい。

 

「おはようございます。ルナお嬢様」

 

シェルが、カーテンを開け、私の前に立ち、挨拶してきた。

 

「おはよう、シェル…。貴方、良くあの時間まで起きてて、眠くない顔でいられるわね」

 

夜中にルナが起きた時間は、2時。

 

シェルは、家の隅々まで侵入者がいないか確認していた。

 

私が眠りにつく前に、一階にある大きな玄関扉に、最終確認で鍵をした音が聞こえた記憶がある。

 

多分、シェルが寝た時間は、約3時頃だろう…

 

今の時間は6時48分、シェルは父の仕事の手伝いで5時起き、睡眠時間は約2時間位という結果

 

だ…。

 

「慣れですよ」

 

シェルは、笑顔で私に言ってきた。

 

「普通のひとは、慣れで毎日は無理だと思うけど…それよりも早死にするわね。まぁ、貴方は普通

 

じゃないからこういうことができるのよね」

 

ルナは、苦笑いして、ベットの上で背伸びをした。

 

「そうですね。実際は寝なくてもいいのですが…どうします?」

 

今まで通りで、と私は答えた。

 

シェルは、起きてても、脳の疲れを癒す力を持っている。

 

寝なくて良いのはそのためだ。

 

寝る時間が多いと、脳の活性化が基準より数十倍活性化するらしい。

 

でも、普段は家に居るため、そんな能力は必要ないので、2時間がベストタイムだそうだ。

 

「ご飯を用意しておいて、すぐ着替えてリビング行くから」

 

「朝食は準備済みです。では、失礼します」

 

シェルは、部屋を出た。

 

私は、2人用ベットの様な大きいベットを降り、制服に着替えた。

 

ルナは、近くの私立高校に通っている。

 

その私立高校は、大学と同じく自由でありながら、県の中ではトップクラスの難関高

 

校だ。

 

リビングに着くと、大きいテーブルに皿が3皿置いてあり、その皿の上には、イタリアンの高級な

 

食事だ。

 

「シェル、私は、朝食あまり空かないので、こんなに要りません」

 

「ですが、食べないとお腹空きますよ」

 

笑顔で、本当に有り得そうなことを言ってきた。

 

「解りました、食べます」

 

ルナは、一皿10分というペースで食べ終わった。

 

「ごちそうさまでした。さてシェル、学校に行って来るので、家のことは宜しくお願いしますね」

 

リビングを出て、ルナは玄関の扉を開けた。

 

行ってらっしゃいませ、とシェルは礼儀正しく礼をして、玄関のドアが閉まるまで見てい

 

た。

 

扉が閉まると、家の中は静かだ。

 

「さて、お掃除しますか…今日の夜は、色々とお客様がいらっしゃる」

 

シェルは少し笑みを浮かべ、掃除を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
今、晦日が始まると、それは悲惨な出来事。


とても良いとは言えない闇だらけだ。


生まれながらにして、美しいもの、醜いものを完璧に認識する審美眼という能力持つ少女、ルナ=セレナ。


月の光のない世界は、闇。


闇の中でルナと闇の住民が繰り広げられるものは…。









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