英雄伝説〜灰の軌跡〜 閃V篇
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〜遊撃士協会・クロスベル支部〜

 

「なん……ですって!?旧Z組――――トールズ士官学院生って事はレンちゃんが学生服を着ていたって事じゃない……!クッ……一度でいいから、学生服姿のレンちゃんをこの目で見たかったわ……!」

「ハア………あの娘なら頼めば案外面白半分で学生姿のコスプレをしてくれるのじゃないかしら?第一、あの娘は本来だったら学生服を着ていてもおかしくない年齢だし。それにしてもあの”殲滅天使”が学生だなんて、そっちもそっちで想像し辛いわねぇ……」

「ハハ、こっちの”殲滅天使”は教官を務めているから、余計に想像し辛いね。」

ミュゼの答えを聞いて真剣な表情で声を上げたエオリアの様子にその場にいる全員が冷や汗をかいて脱力した後ミシェルは呆れた表情で指摘した後リンと共に苦笑し

「へ……そっちの世界のレン先輩は教官を務めているって言っていましたけど………」

「ああ、こっちの世界の”レン”はあんた達の学校――――トールズ第U分校の教官を務めているんだよ。」

「ちなみに担当しているクラスは確か……”主計科”だったかしら。」

「まあ………」

「ええっ!?レ、レン先輩が\組―――”主計科”の担当に……!?あれ?それじゃあトワ教官は………」

リンとミシェルの説明を聞いたミュゼが目を丸くして驚いている中信じられない表情で声を上げたユウナはある事に気づいて戸惑いの表情をし

「”トワ”って確か1年半前の内戦時”紅き翼”の艦長代理を務めていたトールズ本校の才媛だったわよね?その娘なら、”主計科”の副担任として第U分校に務めているわよ。」

「僕達の世界の第U分校には”副担任”なんて存在はいなかったのですが………これも”世界の違い”か。」

「もしかしたら[組やZ組にも副担任がいるかもしれませんね。………ちなみに先程から気になっていたのですが、そちらの世界のレンさんはどのような立場の方なのでしょうか?」

ミシェルの答えを聞いたクルトは驚きの表情で呟き、アルティナは静かな表情で推測を口にした後ミシェル達に訊ねた。

 

「アタシ達の世界のレン―――いえ、レン皇女はメンフィル帝国の皇女の一人で、異名は”殲滅天使”。”天使”のような可憐な容姿を持ちながら殺戮を愉しむ事からその異名がついたちょっと……いえ、かなり問題がある悪癖がある皇女で、才能も頭脳を含めてそっちの世界のレン皇女同様あらゆる才能に長けていて、4年前の”リベールの異変”で結社から奪い取った人形兵器――――”パテル=マテル”の操縦者でもあるわ。」

「ちなみにレンちゃんの武装は物語とかで出てくる”死神”が持っているような戦闘用に改造された”大鎌”よ。」

「ええっ!?レ、レン先輩がお姫様!?しかも結社から人形兵器――――パテル=マテルを奪い取ったって……!」

「それも先程話に出て来た異世界の大国―――”メンフィル帝国”の皇女、ですか。」

「しかもわたし達の世界の”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”の双子の妹の異名や性格、パテル=マテルの操縦者である事が一緒である事に加えて武装まで一致しているなんて、一体どういう事なんでしょう……?」

「ああ……”単なる偶然”とは思えない程、似ている部分があるな………」

ミシェルとエオリアの説明を聞いたユウナは驚き、ミュゼは真剣な表情で呟き、困惑の表情で呟いたアルティナに続くようにクルトは真剣な表情で考え込みながら頷いた。

「そう言えば、ちょっと気になっていたんだけど……そっちの世界のレン皇女を旧Z組のメンバーが知っている事にユウナは複雑そうな顔で答えを濁していたけど……そっちの世界のレン皇女と旧Z組は何らかのトラブルがあったのかい?」

「あ……その……トラブルというか……考え方の違いというか…………」

「………こちらの世界のレンさんはD∴G教団事件が終結し、特務支援課が一旦休止になった頃に旧Z組――――トールズ本校に転入してきたらしいのですが………IBCによる各国に対する資産凍結後エレボニア帝国が緊張状態になった頃にレンさんを心配したご両親―――ブライト家から内戦勃発が近いと噂されているエレボニア帝国の内戦に巻き込まれる前に祖国であるリベール王国に戻ってきて欲しいとの連絡があった為ご両親の意を組んでトールズ本校を休学してリベール王国に帰国。しかし内戦勃発後、貴族連合軍によるトールズ本校への襲撃の際に散り散りになった教官達が全員合流し、更にはオリヴァルト殿下達とも合流した時期に自ら姿を現し、自身は2度と旧Z組―――いえ、トールズ本校には戻ってこない事を宣言して教官達に一方的な別れを告げたとの事ですわ。」

「……その別れの際に当然教官達もレンさんを引き留めようとしたのですがレンさんの意志は固く……レンさんは自分を引き留めようとする教官達を諦めさせるために最後の機会として自身とレンさんの妹であるユウナさんと戦い、もし勝てたら旧Z組に戻り、負けたら自身を引き留める事を諦める条件を出して旧Z組と戦ったのですが………結果はレンさんとユウナさんの”圧勝”だったとの事です。ちなみに内戦終結後レンさんは意図的にエレボニアを避けるかのように祖国であるリベールを始めとしたエレボニア以外の国家や自治州等で遊撃士としての活動をしている為、教官達―――旧Z組の人達は誰も未だレンさんとの再会を果たしていないとの事です。」

リンの質問にユウナが複雑そうな表情で答えを濁しているとユウナの代わりにミュゼとクルトが詳しい経緯を説明した。

 

「それはまた…………」

「アリオスさんと同じ”八葉一刀流”の皆伝者で他にも様々な武術を修めているレンちゃんに加えて”執行者”だったというレンちゃんの妹が相手だったら、幾ら学生でありながら内戦終結の鍵となった旧Z組でも相手が悪すぎたんでしょうね……」

「ああ………旧Z組って事はサラもいたんだろうけど幾らサラでもさすがにA級―――いや、下手すればS級クラスの正遊撃士と執行者を同時に相手にするのは厳しかっただろうね。けど、そっちの世界のレン皇女は何で特務支援課の時とは真逆の対応をしたんだろうね?」

二人の説明を聞いたミシェルは表情を引き攣らせ、気まずそうな表情で呟いたエオリアの言葉に頷いたリンは不思議そうな表情で自身の疑問を口にした。

「……その”特務支援課”が理由です。」

「アル………」

「”特務支援課”が旧Z組に別れを告げた理由ってどういう事なのかしら?」

アルティナの答えを聞いたユウナが複雑そうな表情をしているとミシェルが訊ねた。

「教官達の話によると”特務支援課”には”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”にとって返しきれない”恩”があり、更には特務支援課は自分にとっての”本当の仲間”である為、その”恩”を返し、そして”本当の仲間”を救う為にクロスベル動乱時窮地の状況に陥っていた特務支援課を―――クロスベルを助けにクロスベルに向かう為に教官達に別れを告げたとの事です。」

「レンちゃんの特務支援課に対する”恩”って言うと確かエステル達が言っていた………」

「実の両親の件ね………しかもその話だと、旧Z組は”殲滅天使”にとっての”本当の仲間”じゃなかったみたいだから、別れを告げられた挙句仲間じゃないって言われたそっちの世界の旧Z組にとってはショックな出来事だったでしょうね………それにしても、別れを告げたタイミングがオリヴァルト皇子達とも合流した頃って言っていたけど、その時オリヴァルト皇子達はその場に同行して、旧Z組と一緒に”殲滅天使”の説得をしたり、”殲滅天使”達と戦ったりしなかったのかしら?」

アルティナの説明を聞き、エオリアと共に複雑そうな表情をしたミシェルはある事が気になり、ユウナ達に訊ねた。

 

「勿論殿下達もその場に同行して教官達と一緒に説得しようとしたとの事ですがそれでもレンさんの意志は固く、戦いになった際は殿下達も教官達に加勢しようとしたのですが………」

「レンさんは先程ユウナさんが仰っていたクロスベル動乱時の特務支援課を救う為に連れて行った”仲間”――――”暁の翼”の中でも相当な使い手達を殿下達の相手をさせてその使い手達は殿下達を無力化したとの事です。」

「………”暁の翼”?口ぶりからして何らかの組織みたいだけど、一体どんな集団なのかしら?」

クルトとミュゼの説明を聞いてある事が気になったミシェルは不思議そうな表情で訊ねた。

「――――”暁の翼”。アルセイユU番艦――――”自由の翼アルビオール”を移動手段兼拠点にしている”Ms.L”でもある”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”の協力によって結成された遊撃士協会の特殊部隊です。」

「へ………」

「な――――”遊撃士協会の特殊部隊”だって!?」

「しかも”アルセイユU番艦”を拠点にしているって言っていたけど……それって、”カレイジャス”みたいな高速巡洋艦の事よね?しかもレンちゃんが”Ms.L”とかいう存在でそのレンちゃんの協力によって結成されたって言っているけど、それってどういう事―――いえ、そもそも”Ms.L”ってどういう存在なのかしら?」

アルティナから語られた驚愕の事実にミシェルは呆けた声を出し、リンは驚きの声を上げ、エオリアは表情を引き攣らせて疑問を訊ねた。

 

そしてユウナ達は”Ms.L”とは神がかっているかのような資産運用によって上場した株や相場で莫大な富を築き、”ラインフォルトグループ”や”エプスタイン財団”のような世界的大企業の大株主の一人でもあり、また経営等の才能も神がかっているのか”Ms.L”が会社経営に口を出せばその企業に莫大な利益をもたらすことから、”現代の福の神”として称えられた存在であり、一個人でありながらIBC(クロスベル国際銀行)を経営していたクロイス家をも超える世界一の資産家である事、”暁の翼”はレンが遊撃士として西ゼムリア大陸内の各国の応援に行っている時に拾ったり保護した様々な複雑な事情によってまともな生活ができなかったり等、社会的立場が”日陰者”である人々がレンの教育や援助を受けた事によってレンに感謝し、レンから受けた恩を返す為にレンの力になったレンを助ける部下にして仲間――――通称”戦天使の勇者達(エンジェリック・エインフェリア)”と呼ばれる者達に加えて様々な組織や武装集団―――――”星杯騎士団”や”西風の旅団”、”北の猟兵”が”Ms.L”であるレンによる交渉によって所属している遊撃士協会直属の特殊部隊で、その目的とは各地の遊撃士協会の支部の応援やリベールの異変のような国家の大事件解決の協力に加えて自治州や小国のような立場の弱い組織や国家等がエレボニアやカルバードのような大国による一方的な武力侵攻が起こった際武力介入して民間人の保護に加えて”戦争を仕掛けてきた側”である軍を撃退する事で組織や国家間の問題の解決を目指す事、そして古代遺物(アーティファクト)の不正利用を行っている国家や組織に対して武力介入をしてでも古代遺物(アーティファクト)を回収する事を目的とした組織であり、本拠地としてアルセイユU番艦である高速巡洋艦―――”自由の翼アルビオール”を所持する事に加えて最新の戦車や軍用飛行艇まで所持している事を説明した。

 

「国家間の武力衝突に武力介入して相手の軍を撃退するって……要は戦争に武力介入して片方に肩入れするって事じゃないか!しかも高速巡洋艦どころか戦車や軍用飛行艇まで所持しているなんて、もはや”軍”同然の存在じゃないか!何でそっちの世界の遊撃士協会はそんな組織の設立を許したんだい!?そんな組織を設立しちまったら遊撃士協会の中立性を否定しているようなものじゃないか……!」

「しかもレンちゃんがクロイス家を超える資産家で自分が集めたお金や人材でその組織を設立した上”カレイジャス”みたいな”アルセイユ”の姉妹艦に加えて戦車や軍用飛行艇まで手に入れているとか、”西風の旅団”や”北の猟兵”みたいな猟兵団(イェーガー)に加えて”星杯騎士団”――――七耀教会まで協力しているって、色々と突っ込み所や聞きたい事が山ほどある組織ね………」

「ハア………どうやらそっちの世界の”レン”はこっちの世界の”レン”が霞んで見える程のとんでもない存在になっているみたいね……それにしても、リベールの異変解決の為にエステル達と一緒にリベル=アークに乗り込んだオリヴァルト皇子や”光の剣匠”、それにB級正遊撃士のトヴァルまで撃退できるなんて、どんなメンツが集まっているのかしら、その”暁の翼”って組織には……まあ、少なくてもあの”西風の旅団”が協力している時点で、相当な使い手達が集まっている事はわかるけど。」

説明を聞いたリンは信じられない表情で声を上げ、エオリアは表情を引き攣らせ、ミシェルは疲れた表情で溜息を吐いた後疑問を口にした。

「教官達の話では殿下達の相手をした使い手は”西風の旅団”も含まれていたそうですが……大半の人達は”戦天使の勇者達(エンジェリック・エインフェリア)”によって無力化されたとの事です。」

「”戦天使の勇者達(エンジェリック・エインフェリア)”………そっちの世界のレン皇女が各国を遊撃士としての活動を行って回りながら拾って援助とかして自分の仲間にしたっていう集団ね………話を聞く感じ、何だか”鉄血の子供達(アイアンブリード)”と似ているわね。」

「言われてみればそうだね………」

「まさか”鉄血の子供達(アイアンブリード)”と何か関係があるのかしら……?」

アルティナの説明を聞いたミシェル達はそれぞれ考え込んだ。

「レンさんが”戦天使の勇者達(エンジェリック・エインフェリア)”という集団を作った真の意図は未だ不明との事ですが………”戦天使の勇者達(エンジェリック・エインフェリア)”を含めた”暁の翼”は戦闘能力は当然ですが情報収集能力にも長けており、1年半前の内戦時には貴族連合軍の隙をついてカレル離宮とザクセン鉄鉱山を同時に奇襲し、それぞれの場所に囚われていた皇太子殿下を含めたエレボニア帝国の重要人物達を幽閉場所から連れ出し、騒ぎに気づいた貴族連合軍の援軍が現れるまで撤退を完了させた事もありましたわ。」

「内戦時に貴族連合軍の隙を突いてエレボニア帝国の重要人物達の救出を成功させたって………」

「まあ、人質奪還は遊撃士協会としての活動として間違ってはいないけど………それにしても、何でその”暁の翼”って集団―――いえ、そっちの世界のレン皇女はその集団にそんな事をさせたのかしら?話を聞いた感じ、その集団はそっちの世界のレン皇女直属の”軍”みたいな組織なんでしょう?」

クルトの説明を聞き、話の内容の凄まじさにエオリアが表情を引き攣らせている中疲れた表情で溜息を吐いたミシェルはある事が気になって質問を続けた。

「………教官達からの又聞きになりますけど、レン先輩は教官達―――旧Z組やオリヴァルト皇子様に自分が旧Z組で世話になった”義理”を果たす為に”暁の翼”と共に貴族連合軍に幽閉された教官達のご家族を救出したそうなんです。」

「なお、貴族連合軍に幽閉された旧Z組の関係者はレーグニッツ知事閣下にイリーナ会長、そしてエリゼ先輩です。」

「それと救出作戦の際にエリオットさんの姉君―――クレイグ将軍のご息女も帝都(ヘイムダル)から連れ出し、救出したエリゼさん達と共に教官達の元に送り届けたと教官達が仰っていました。」

「どの人物も内戦時に貴族連合軍に幽閉されるか人質にされていた人物ばかりだね……」

「ええ……私達の世界のエリゼちゃんも貴族連合軍に狙われていたらしいしね……」

「なるほどね………もしかしたらそっちの世界のレン皇女は旧Z組から去る”詫び”の代わりとしても、貴族連合軍に幽閉された旧Z組やオリヴァルト皇子の関係者を救出したのかもしれないわね。それにしても、幾ら内戦時で人質奪還の為とはいえ、奇襲をされた側であるエレボニアは内戦後にその件を問題にして遊撃士協会に責任とかを追及しなかったわね……帝国内での遊撃士協会(アタシ達)の活動を大きく制限した”鉄血宰相”あたりなら、遊撃士協会(アタシ達)自体を完全に潰す大義名分としてきそうだけど………」

ユウナ達の話を聞いたリンとエオリアが真剣な表情で考え込んでいる中疲れた表情で溜息を吐いたミシェルは複雑そうな表情で推測を口にした後再び疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「それは…………」

「勿論オズボーン宰相はそのつもりだったとの事ですがエリゼ先輩達の救出の件でエレボニアが”暁の翼”―――いえ、遊撃士協会に責任を追及する事をユーゲント皇帝陛下直々から禁じられる”勅命”をされた為、オズボーン宰相も実行に移せなかったとの事です。」

「ハ?何でそこでユーゲント皇帝が関わってくるのかしら?」

自分の疑問にクルトが複雑そうな表情で答えを濁している中静かな表情で答えたミュゼの答えを聞いたミシェルは不思議そうな表情で訊ねた。

「………”暁の翼”の団長にして”戦天使の勇者達(エンジェリック・エインフェリア)”の筆頭である人物がユーゲント皇帝陛下やオリヴァルト殿下も生存を諦めていたエレボニア帝国の皇女にして、オリヴァルト殿下の母君である今は亡きアリエル・レンハイム様のご息女でもある方だった為、今まで認知せずにレンさん――――”Ms.L”に拾われるまで自分達の加護や援助も無しに自分一人の力で苦労して生き続けていたその方に対するせめてもの”償い”として皇帝陛下はオズボーン宰相に件の指示をしたとの事です。」

「それはまたとんでもない人物がいたもんだね………」

「ええ……というか向こうの世界のレンちゃんはどうやってその人物と出会ったのかしら?」

「それよりもオリヴァルト皇子の母君が産んだ娘って事は腹違いの妹のアルフィン皇女やセドリック皇太子と違ってオリヴァルト皇子と直接血が繋がっている妹って事でしょう?アタシ達の世界にはそんな人物はいないから、それも”並行世界”による違いなんでしょうね。………ちなみにそのもう一人のエレボニア皇女はどんな人物なのかしら?」

クルトの説明を聞いたリンは目を丸くし、エオリアは苦笑し、疲れた表情で溜息を吐いたミシェルはある事を訊ねた。

「―――――”剣(つるぎ)の聖女”リーゼロッテ・レンハイム―――いえ、リーゼロッテ・ライゼ・アルノール皇女殿下。皇女殿下が繰り出すその剣技は次元違いと言える程の絶技にして、性格はとても高潔かつ力無き者達―――民間人には非常に優しい事からそのような異名で呼ばれるようになった”史上最強の遊撃士”との事ですわ。」

「”剣の聖女”は”暁の翼”団長就任前は”Ms.L”でもある”戦天使の遊撃士(エンジェリック・ブレイサー)”の秘書兼代理を務めていましたが………更にその前は東ゼムリア大陸で遊撃士としての活動を行いながら、東ゼムリア大陸の様々な国々が抱えていた問題を解決した事から、S級正遊撃士の昇格が何度も打診された”東ゼムリア大陸の大英雄”とも称されている人物だとの事です。」

「なんていうか………色々な意味で凄い人物ね、その”剣の聖女”って人物は。」

「そうね……話を聞く感じどう考えてもアリオスさんやカシウスさん以上の人物みたいだし………下手したら、結社最強の使い手だったあの”鋼の聖女”とも互角なんじゃないかしら?異名も似ているし。」

「少なくてもこっちの世界のリーゼロッテ皇女とは完全に別人なんだろうねぇ………」

ミュゼとアルティナの話を聞いて冷や汗をかいて表情を引き攣らせたミシェル達はそれぞれ疲れた表情で溜息を吐いた。

「それと……リーゼロッテ皇女殿下は他にも異名がありまして。その異名はリーゼロッテ皇女殿下にとって相応しい異名にしてエレボニアに対する皮肉の意味を込めた異名をレンさんから名付けて貰ったとの事です。」

「その皇女にとって相応しい異名にしてエレボニアに対する皮肉の意味を込めた異名ってどんなものなのよ?」

「――――獅子心女帝(レーヴェ・ザ・クイーン)。意味は”獅子心女帝”ですわ。」

「”獅子心女帝”………まさか、その異名って250年前の”獅子戦役”を終結へと導いたドライケルス皇帝の異名である”獅子心帝”を参考にしているのかしら?」

複雑そうな表情で語ったクルトの話を聞いて訊ねてきたミシェルの質問に静かな表情で答えたミュゼの話を聞いてある事を察したエオリアは目を丸くして訊ねた。

「はい。教官達からの又聞きになりますが、リーゼロッテ皇女殿下はレンさんに拾われてからレンさんの教育や援助によって育ったとの事ですが……元々”素質”があったらしく、武術もそうですが政治、経済等あらゆる分野に対しての能力も秀でていて、更に”人を惹きつける力”も身に着けているらしく、”戦天使の勇者達(エンジェリック・エインフェリア)”の約半数はリーゼロッテ皇女殿下のお陰で集まったとの事です。」

「なるほどね………話を聞く感じ、まさに第二の”獅子心帝”のような人物だね。」

「そうね……しかも生まれも”獅子心帝”のように帝位継承者としてはあまり縁がなかった所も一致しているわね。」

「そしてそんな人物を見捨てたエレボニアに対する皮肉の意味を込めて、”獅子心女帝”という異名をそちらの世界のレン皇女が名付けたって事ね………ちなみにそちらの世界のオリヴァルト皇子はそのリーゼロッテ皇女に対してどう思っているのかしら?事情はわからないけど、オリヴァルト皇子も生存を諦めていた自分の妹なんでしょう?普通に考えたら会って話をしたいと思うんだけど。」

クルトの説明を聞いたリンとエオリアが考え込んでいる中疲れた表情で溜息を吐いたミシェルはある事が気になり、訊ねた。

 

「当然リーゼロッテ皇女殿下の事をお知りになったオリヴァルト殿下はあらゆる伝手を使って何とかリーゼロッテ皇女殿下との面会を手配しようとしたとの事ですが………様々な複雑な事情に加えて肝心のリーゼロッテ皇女殿下自身がオリヴァルト殿下との面会を望んでおらず、未だに面会が実現していないとの事です。」

「―――元々”暁の翼”はエリゼ先輩達の救出の件でエレボニア帝国が”暁の翼”の”力”や”実績”を示す為の”踏み台”にされた事に加えて”暁の翼”が設立された理由の一つとして”大国による一方的な武力侵攻が起こった際武力介入する”というまさにゼムリア大陸の大国の一国であるエレボニアに対する当てつけの理由もある事から帝国政府からは相当忌み嫌われ、警戒されている組織である事に加えて、リーゼロッテ皇女殿下自身、今まで自分を認知しなかったユーゲント皇帝陛下や自分と違って認知してもらったオリヴァルト殿下に対して思う所がある為、オリヴァルト殿下とリーゼロッテ皇女殿下の面会が実現する事は非常に厳しい状況なのですわ。」

「なるほどね………”暁の翼”と帝国との事情の件は置いておいたとしても、今まで親の加護無しに苦労してきたリーゼロッテ皇女からしたら今更自分と会って話をしたいだなんて言われても、普通は断るでしょうね………」

「そうね……後はユーゲント皇帝やオリヴァルト皇子―――いえ、エレボニア帝国が”暁の翼”の団長であり、レンちゃん―――”Ms.L”とも親しい関係の自分に利用価値を見出している事も邪推しているかもしれないわね……」

クルトとミュゼの説明を聞いて事情を察したミシェルは疲れた表情で溜息を吐き、エオリアは複雑そうな表情で呟いた。

「そう言えば先程から気になっていましたが……こちらの世界にもリーゼロッテ皇女殿下は存在していらっしゃっているのですか?」

「ええ。とは言っても、こっちの世界のリーゼロッテ皇女はそっちの世界のリーゼロッテ皇女とは事情が全然違うわ。そもそもこっちの世界のリーゼロッテ皇女の親はユーゲント皇帝の正妃――――プリシラ皇妃にとって姉にあたる人物の娘として産まれて普通にプリシラ皇妃の実家の娘として育って来たから、両親自体が既に違うもの。」

「ちなみに貴族の令嬢として育ったリーゼロッテ皇女がエレボニア皇女になった理由は”七日戦役”や内戦によって衰退したエレボニア帝国全体が暗い雰囲気に陥りかけたから、その雰囲気を何とかする為の明るいニュースとして既に両親を亡くしていたリーゼロッテ皇女が灰色の騎士の坊やに嫁いだアルフィン皇女の代わりとしてアルノール皇家の養子として迎えられたとの事だよ。」

「な、何それ……何でアルフィン皇女様が教官に嫁いだからって、その代役としてその人が新たなエレボニア皇女になったとか全然理解できないわ……」

「こちらの世界のエレボニアの状況を考えると様々な憶測が考えられるな………ちなみにそちらの世界のリーゼロッテ皇女殿下の年齢は何歳なのでしょうか?」

ミュゼの質問に答えたミシェルとリンの話を聞いて呆れているユウナに自身の推測を答えたクルトはある質問をした。

「確か……アルフィン皇女やセドリック皇太子と同い年だったから今年で17歳のはずよ。」

「年齢も私達の世界のリーゼロッテ皇女殿下とは異なりますわね。」

「ああ……恐らくこちらの世界のリーゼロッテ皇女殿下は僕達の世界のリーゼロッテ皇女殿下と比べると完全に別人なんだろうな。」

「さてと……色々と話は逸れちゃったけど、そろそろアナタ達がこの世界に来た経緯を説明してもらってもいいかしら?」

ミシェルに説明を促されたユウナ達は少しの間黙り込んだ後互いの顔を見合わせて小声で相談を始めた。

 

(………どうする?こちらの世界は僕達の世界と事情が随分違うようだが………)

(当然話した方がいいに決まっているでしょう!?”あんな事”、例え世界は違っても絶対に未然に防ぐべき事じゃない!)

(はい………せめてこちらの世界のわたし達が今のわたし達のようにならない為にも事情を話して、”巨いなる黄昏”を防ぐ為の行動をしてもらうべきかと。)

クルトの確認に真剣な表情で答えたユウナに続くようにアルティナは辛そうな表情で答えた後決意の表情になった。

(アル………そうよね。今だったら、こっちの世界の教官もそうだけどミリアムさんやアンゼリカさん、それにオリヴァルト皇子達も助けられるかもしれないものね……!)

(―――この世界にとっての”未来”になるかもしれない出来事を説明をする事に関しては私も反対はしませんが……説明をする前にミシェルさん達に――――いえ、遊撃士協会にいくつかの条件を呑んで頂く必要がありますから、彼らから何の”対価”も払ってもらわずに未来を話すべきではないかと。)

アルティナの言葉にユウナが頷いたその時ミュゼがユウナ達にある指摘をした。

(た、”対価”って……!あんた、一体何を考えているのよ!?エレボニアどころか、世界中の危機になるかもしれない事なのよ!?なのに、何でそんな事を………!)

(落ち着け、ユウナ。………ミュゼ、遊撃士協会に何らかの条件を呑んでもらう必要がある理由は僕達が自分達の世界に帰還する為か?)

(ふふ、クルトさんはすぐにお気づきになられましたか。)

(あたし達が自分達の世界に帰るために遊撃士協会に条件を呑んでもらうって……)

(さすがに遊撃士協会と言えど、世界間の移動と言ったそのような非常識な問題は解決できないのでは?)

ミュゼの指摘に憤っていたユウナだったがクルトの指摘を聞くと呆けた表情をし、アルティナは戸惑いの表情で指摘した。

(さすがに遊撃士協会もそのような非常識な問題が解決できるとは思っていませんわ。ですが、遊撃士協会は様々な組織や国家に対して豊富な人脈がありますわ。)

(あ…………)

(なるほど……そういう事か。ミュゼは僕達が元の世界に帰還する為に様々な組織や国家が僕達の帰還方法を調べてくれるように遊撃士協会に働きかけさせる事を条件にするつもりなんだな?)

(うふふ、その通りですわ。後は当面の資金の調達方法や私達の拠点等の用意をして頂く事も頼むつもりですわ。)

(確かに今のわたし達だと帰還方法を探る以前に拠点等の用意が必須になりますね。)

ミュゼの説明を聞いたユウナ達はそれぞれ納得した様子になった後相談を止めてミシェル達に視線を向けた。

 

「それで………アタシ達の今後にも関わるかもしれないアナタ達の事情をアタシ達に説明する代わりの”対価”の相談は終わったのかしら?」

「ア、アハハ……気づいていたんですか……」

「ふふっ、ユウナちゃんも知っているでしょうけど遊撃士は交渉力も求められているから、私とリンもユウナちゃん達が自分達の世界に帰るために私達を頼る事も予想していたわ。」

「ま、とは言っても遊撃士協会(あたし達)の力だけじゃ、未来の並行世界に帰還する方法なんて用意する事はできないけど遊撃士協会には様々な国家や組織の人脈があるからね。あんた達もそれを頼って、あたし達に”依頼”をするつもりなんだろう?」

「ふふっ、話が早くて助かりますわ。私達の事情であり、皆さんの”未来”にもなる可能性が高い出来事を話す”対価”は―――――」

そしてミュゼはミシェル達に自分達が過去の並行世界である今のゼムリア大陸に来た事情を説明する対価として、自分達の世界への帰還方法の用意、拠点や偽造の戸籍、更には資金調達の方法を提示した。

「………なるほどね。ま、アナタ達の世界への帰還方法を除けばどれもアタシ達にとっては簡単な事だし、構わないわよ。」

「ほ、本当ですか!?」

「ええ。むしろアタシ達からしてもありがたいくらいよ。何せ、サポーターとはいえ4人もの遊撃士の活動を手伝える人材が増えるのだから、こっちとしても大助かりよ。」

「え。」

「ふふ、資金調達の方法が条件に出た所で何となく予想はしていたけど……」

「ハハ、まあいいじゃないか。実際今のクロスベルは応援が来ているとはいえ、それでも以前以上に忙しい状況で、猫の手も借りたいくらいだしね。」

ミシェルの答えに嬉しそうな様子を見せたユウナだったがミシェルの口から出た不穏な言葉を聞くと呆けた声を出し、エオリアとリンは苦笑していた。

「……その口ぶりですと”資金調達の方法”はまさか僕達に遊撃士の活動をさせるおつもりなのですか?」

「あら、中々察しがいいわね。”特務活動”だったかしら?”特別演習”で遊撃士協会(アタシ達)に似た活動をしていたんだから、アナタ達にとっても慣れた活動でお金を稼げるから、何らかの仕事を紹介されるよりそっちの方がいいでしょう?」

「そ、それはそうなんですけど………確かクロスベル支部って、滅茶苦茶激務って話を聞いた事がありますよ!?準遊撃士になったばかりのクロエさん達ですらも、正遊撃士のリンさん達と大して変わらないくらい忙しいって話も聞いた事がありますし……」

「まあ、貴女達だったらすぐに慣れるわよ。あ、アルティナちゃんは当然私のサポーターに来てね♪優しく教えてあげるし、たくさん、可愛がってあげるわ♪」

「………何となく不埒な気配がするので、お断りします。」

クルトの確認の言葉に答えたミシェルの答えに表情を引き攣らせているユウナに苦笑しながら指摘したエオリアは嬉しそうな表情でアルティナを見つめ、見つめられたアルティナはジト目で答えた後エオリアから距離を取り

「クスクス、”働くもの食うべからず”ですから、そのくらいは仕方ありませんわね。それではお話しますわ。私達の”事情”について――――――」

その様子を微笑みながら見守っていたミュゼは気を取り直してミシェル達を見つめ、ユウナ達と共に自分達の事情を説明し始めた――――――

 

 

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今回の話でいつか書く予定のあの世界の話がネタバレされまくっちゃいました(汗)なお、あの世界のリーゼロッテの話になった際のBGMはベルセリアの”Theme of Velvet -short ver.-”だと思ってください(一応言っておきますがベルセリアの主人公とは全く関係がありません)

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異伝〜終焉に諍う英雄達の来訪〜第3話
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