司馬日記55
[全1ページ]

10月27日

魏財務局にて財政事務取扱基準(案)が作成され、総務局にも供覧が回ってきた。

課長以下の事務手続きの内容が主であり委細は分かりかねるが、非常に合理的かつ属人的な紛れがなく執行出来る基準書であると考えられた。

公達様へ近年の事務基準の整備は目を瞠るものがありますと報告すると、

「そりゃそうよ、中間(管理職)の連中は決め事はっきりさせて下(部下)に仕事投げて、浮いた時間を出世にかけて一刀様の腰にまとわりつこうとしてるんだからそりゃ必死よ。一般事務の『まにゅある化』自体は効率化になるって一刀様も奨励してたし、法令整備に血道をあげてる桂花なんかいい例じゃない」

と言う。

日々一刀様の御尊顔をお近くで拝している私は余り意識していなかったが、確かに御傍勤務でない者にとっては一刀様との時間をとる為には重要なことであろうし爆発的に事業が増加し人手不足が慢性化している昨今においては合理的な事でもある。

一刀様は御自身の賢政のみならず、間接的にも臣下の職務にも良い影響を与えておられる事に感動した。

 

10月30日

一刀様直轄総務部の勤務にて先日の基準書の件を思い出し、月様へこちらの事務(一刀様の身の回りのお世話)について御作りになった要領書は先見の明であったと思いますと述べた。

すると月様は少し困ったような表情をされこういったものを作成しないと身が持ちませんのでと言い、それを見ていた詠様は身がって言うより胃がねと呟かれると月様は益々困ったような苦笑いを浮かべられた。

 

11月1日

職員の定期配置転換制度について各本国合同で総務室へ提案された。主な理由としては本国勤務の勤労意欲向上及び昇進機会の均等化であるという。

詠様曰くは『御前等ばかり種馬と盛ってないで私らにもイチャコラさせろ』と言う事らしい。

内政問題であり総務室では回答しないとし、人材育成については各国にて適切に対応されたいと添えて各国総務局へ回送された。

 

11月3日

魏でも総務に携わる身としては先の配置転換制度は他人に投げて終われない問題だ。

公達様は件の収受文書を見られるや半眼で舌打ちされ『雌奴隷予備軍共が…ぐだぐだ言うのは部長級になってからにしろってのよ』と呟かれた。

しかしおそらくはその部長級になるが為の陳情であり、又地方の者が全て被虐願望者であるとは限らないのではないだろうか?

 

11月4日

管理職研修で『円滑意思疎通能力』という講義を受講した。天の国の言葉ではこみゅにけーしょん能力と言うらしい。

その研修の一環で隣席の人と一対一で互いに褒めあうというものがあったが、亞莎や凪のようによく知る者を褒めるのは簡単だがほぼ初対面のような相手を褒めるのは中々難しいと感じた。

一方相手方の女性はは蜀の地方の方であったがむず痒くなるほど褒めちぎられ、何故か私の事を知っていたらしく有名であるとも言われた。

何時何処で人の口に上るかは分からぬものであるので、一刀様の格を傷つけぬためにも臣下として日頃の行動には気をつけねばなるまい。

 

11月7日

元直らと休憩中に先の研修を思い出し、元直や子敬相手であれば比較的褒めるのも容易なのだがと語った。では褒めて見せろと言うので容姿に優れている、剣戟の腕も素晴らしい、政治経済に通暁している等と褒めて見せたが揃って半眼で『気持ちが欠片ほども感じられない』『社交辞令にしても酷過ぎる』等と言う。

その後では誰が褒めるのが上手かと言う話となり、月様、曹操様、白蓮殿らの名が挙がったが、それを隣で聞かれていた詠様が

『女褒める事に関しちゃアイツが一番よ。仕事でやってるからね』

と呟かれ、全員が納得していた。

 

一方、褒め下手な人についても話が挙がったが余りにも多く、半ば愚痴のようにもなりここに書くにも憚られるものであった。

 

11月10日

休暇をとり、再び璃々嬢、恵達と雅達に短戟の手解きを士季と共に行った。

自身未だ老け込む年ではないとは思ってはいるが、指導を通してとは言え後進の者とのふれあいはどことなく心温まるものがある。

璃々嬢は授業中は幼少の頃の様に結んでいた髪を終業後に下ろすと、未だ小柄ながらも女性らしく抑揚のついた身体の成長とも相俟ってその美少女振りははっとさせられるものであった。

終業後は士季とお茶をしたいと言い、二人で街へと出かけていった。

 

夕食の際に士季に璃々嬢とどこへ行っていたのかと聞くと、

「まあその辺でお茶しただけですけどね。ま、利害が一致したんで対呉のヤバい奴同盟結んできましたよ」

と言う。思い当たらないが、呉にそんな危険人物が居るのだろうか。

 

11月11日

李典工場長は時折一刀様に『真桜えもん』と称される事がある。

『えもん』の意味をお尋ねしたところ、天の国に未来の青狸が万能の技術力を駆使して子童を助ける著名な書物があり、その青狸の名に由来しているとの事だ。

嘗て曹操様が文若様を張子房になぞらえた事と合わせ、このように一刀様に特別に御呼び頂ける様忠勤に励むよう家で妹達に説諭すると、恵達は三国塾に通う馬鈞なる娘が発明の才が高く、中等部に属する身ながら李典工場長の工房に出入りしており級友からは『鈞えもん』と称されているという。

次の世代においても確りと一刀様を支えて貰わねばならないところであり、末頼もしい事だ。

 

11月15日

文若様が一刀様の執務室を訪れ法令の御説明をされていた時に

「ジロジロ人の顔見てんじゃないわよ!」

と言われた。かねてから一刀様より、一刀様への文若様の物言いについては口出し無用と念を押されていたので敢えて指摘しなかったが、前回ご説明の際には

「人の話を聞く時は相手の目を見て聞きなさいよ!」

と怒鳴られていた筈だ。

 

魏の総務部へ戻った際、公達様へその事を話したところ、

「しょうがないのよ、あれ(桂花)はそういう病気だから」

と事も無げに言われ、全く気にされるご様子も無かった。

 

11月17日

終業時間後、詠様が珍しく麻雀をしないかと私と元直、子敬を誘われた。曰く、近々麻雀大会があるのだそうだ。

偶には気晴らしにいいと元直らも乗り気であったので私も付き合わせて頂く事とした。

二半荘行ったところで私は二位、三位であったが、詠様がじっと私の方を見られながら

「あんたの駆け引きゼロの機械じみた打ち方、ある意味究極のあの女狐対策になるかもしれないわね…」

と呟かれ、元直と子敬もはっとした表情でそれマジで行けるかもしれませんよと答えていた。

女狐とは誰の事だろうか。

 

11月19日

業務の合間に、一刀様より詠様らと麻雀をしたんだってと問われその通りで御座いますと答えたところ、俺もちょっとやりたいなぁと呟かれた。御給仕されていた月様がそれを聞かれ、ではお仕事の後でしたらお相手しますよ、詠ちゃんも仲達さんも如何ですかとお答えになられたが、一刀様は私と月様の顔を見比べられると決まり悪げな御顔をされて「有難う、でももうちょっとレベルの低いところでやらさせて」と固辞されてしまった。

月様はがっかりされていたようだが、詠様は「月も心読める相手と麻雀しろとか無茶言わないの」と月様を窘められていた。

…残念だ。

 

11月20日

各国王と三国塾の視察に行かれた一刀様が、疲れた御表情で執務室に戻られてきた。

視察先は初等部であり、一刀様は日頃子供らの相手は苦にされないと思っていたが何かおありだったでしょうかと伺うと年少の子らの喧嘩の仲裁をしていたとの事だ。そのような些事は教諭らにお任せ頂いて宜しいのではと申し上げたが、いやその場に居たからと言われ、休憩室へ行かれてしまった。

 

同行されていた詠様に何があったのか伺ったところ、視察の為廊下を各国王らと歩かれていたところ、教室内で口喧嘩をしていた呉属と思しき娘が

「ばーか!ばーか!お前の王様ぺったんこー!!」

と罵ると魏の娘が負けじと

「ふーんだアホー!あんたの王様そんざいかんぜろー!」

と罵り返した現場に出くわしてしまった為一刀様が慌てて教室に乗り込み止めに入ったとの事だ。

「おまけに止めに入った蜀の娘も『王様ぱっぱらぱーの国のやつは黙ってなさいよ!』とか言われてたしね。三人とも、お通夜みたいな顔して帰ってったわ…まあ、何ての?大人は子供の前で迂闊な話はするなって事よね」

と溜息をつかれて席に着かれた。

 

11月21日

昼食から執務室に戻ったところ、三国塾初等部部長代理の崔州平殿が平身低頭しきりに一刀様の執務室から辞されるところに行き違った。

 

曰く、先日の初等部の子らの発言のお詫びとの事であったが、私と同行していた元直が

「あぁらがきんちょ達の面倒一つ見れない州平さぁん、一刀様の御部屋に何か用ですかぁ?そんな方が大陸の頭脳を司る総務室に異動したいとかひゃっっっく年早いんじゃありません事ぉ〜?」

等と煽ると憎々しげな目つきで元直を睨みつけ、今に見てなさいよこの色ボケ女と吐き捨てて出て行かれた。

(水鏡)女学院出身者は仲が悪いのかと元直に尋ねると、別に本気で仲悪い訳じゃないけどあいつとはちょっと遺恨(※)があってね、と答えた。

※『司馬日記外伝 三国塾からの報告書』参照

 

11月24日

于禁殿の給与に関する稟議が総務室へ回ってきた。かねてより服飾等の開発・構成等について活動されていたが需要が高過ぎ、正式に業務として三国に成果品を供給することとなり各国からの負託金を原資に于禁殿の給与・活動費を支給することとなった為だ。

一刀様が決裁される際、御自身も寵姫らの下着や特殊衣料を意匠されている事から

「俺も開発やってんだけどなぁ」

と呟かれた。すると詠様が

「あら、あんたは前々からその報酬貰ってるでしょ?金じゃない形で」

と答えられ、一刀様は苦笑いを浮かべられながらそういやそうだった、と頭を掻かれた。

 

説明
お久しぶりで御座います。
その後の、とある文官の日記です。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
7301 5214 31
コメント
対七乃さんレベルとかマジで凄いな仲達さんwww(happy envrem)
↓ 脱衣にしたら、誰かがわざと一刀に振り込んで脱ぎ始めたら、それに続くのも出てくるって(ken)
一刀達のマージャン脱衣にしたら一刀強そうww(味野娯楽)
なんというかほんとこの外史の天下って一刀さん主体でまとまってるんだなって・・・。(未奈兎)
でも一刀の話題振られたら一瞬で崩れそう(rokueda)
詠ちゃんのツッコミがキレッキレですねw そして我らが仲達さんは対朱里兵器に加えて対七乃兵器に進化か!?(飯坂裕一)
11月20日の喧嘩をみて、鬼越トマホークのネタも良さそうだと思った(tomorou)
更新お疲れ様です。ないから心配しました。個人的には更新速度を速めて頂くか、活動報告で定期連絡をして下さると幸いです。頑張ってください(紅蓮)
タグ
恋姫無双 本当は恐い水鏡女学院 

hujisaiさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com