真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 58
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「……………」

 

 俺は、短いような、長いような昔話を終えると長いため息を吐いた。その息に怒りなどの負の感情を乗せて。

 

「……これが、俺と奴らの因縁だ。あいつらは、俺のすべてを奪っていった。そう、全てだ」

「“…………”」

 

 みんな悲痛な表情になってしまっていた。

 

「……俺はその後、飛ばされた先でこの剣を身に着けた。で、師匠から全国行脚して来いって叩きだされてな。その途中で雪華、お前に出会ったんだ」

「…………玄輝」

 

 いまだに愛紗の傍を離れない彼女に近寄って目線を合わせるためにその場にしゃがむ。でも、相変わらず目は合わせてくれない。それでも俺は話さなければいけない。

 

「……すまない、お前を傷つけてしまった」

「…………」

「許してくれなくてもいい。ただ、二つだけ約束をさせてくれ」

 

 そこでやっと俺の目を見てくれた。

 

「約束?」

「ああ。一つ目は必ず戻ってくること。それと、二つ目はお前を必ず守ることだ」

「………う〜」

 

 その言葉に彼女は愛紗の元を飛び出して俺の胸に飛び込む。

 

「雪、」

「やだぁ!」

 

 いつもとは、違う色をした“いやだ”だった。

 

「やだやだやだぁ! そんな約束いらない! 一緒に行く! 私も行くぅ!」

 

 胸の中で泣きじゃくる雪華を見て、あの日の俺が重なる。

 

(……ああ、そりゃ嫌だよな)

 

 そうだ。家族に置いていかれる悲しみは、よく知っているじゃないか。

 

(……でも、それでも)

 

 俺は胸の中で泣き続ける雪華の頭をやさしく撫でる。

 

「……ごめん、でもやっぱり連れていけない」

「やだぁ!」

「…………白装束の事を覚えられる俺にしか戦いようはないんだよ」

 

 だが、そこで思いもよらない言葉が返ってきた。

 

「私、覚えてるよぉ!」

「…………雪華、お前今なんて」

 

 胸から引きはがしてその涙まみれの顔をやさしく拭ってからもう一度問いかけた。

 

「今、何て言った? 覚えている?」

「わた、わたし、おぼえ、おぼえてるもん……」

「白装束の事をか?」

 

 その問いに雪華は鼻をすすりながら頷く。

 

「どうして今まで……」

「玄輝、いつもの玄輝、ひっくじゃないからぁ」

 

 思わず自分の額に手を当てた。

 

(この馬鹿たれ……!)

 

 自分の不甲斐なさに怒りが込み上げてくる。だが、今すべきは自己嫌悪じゃない。怒りを鎮めてからいくつか質問を投げかける。

 

「じゃあ、一つずつ聞いていくぞ。まず、奴らの目的は?」

「シン」

「あの白装束の正体は?」

「しきがみ」

「死体はどうなる?」

「よりしろ? に戻って、ひっく、また出てくる」

 

 ……こりゃ参った。完全に覚えている。

 

「でも、どうして雪華は」

 

 そこで肝心なことを忘れていたのに気が付いた。

 

(まさかこの世界の人間じゃなければ覚えていられるのか!?)

 

 だが、すぐにその気が付いたものが間違っていることがわかってしまう。

 

(いや、だとしたら北郷も覚えていられるはずだ)

 

 そう、北郷もこの世界の住人ではない。元は平成の世界の人間だ。思わず向けてしまった視線に当人はきょとんとした表情をしている。

 

「玄輝? どうしたの?」

「……北郷、お前はさっき雪華が言っていたこと、覚えていたか?」

「……いや、覚えてなかった。正直、さっき質問していたこともあんまり身に入ってこないっていうか、はっきりしない感じがする」

「そうか……」

 

 なんだ? なんで雪華は覚えていられて北郷は覚えていられない? 俺と雪華にあって北郷にないものは一体何なんだ?

 

(くそっ! 情報が足りん!)

 

 ここから奴らのこの記憶が消える特性を打ち消す方法が分かるかもしれないのに……!

 

 悔しい、心の底からそう思っていた。

 

「玄輝……?」

「っ!」

 

 ダメだ、ここで険しい顔だけはだめだ。

 

「すまない、雪華」

「ぐすっ……」

 

 いまだに泣き止まない雪華の顔をもう一度拭って頭を撫でる。

 

「……行っちゃヤダ」

「たっく、面倒な妹を持っちまったもんだ」

 

 その言葉に雪華だけでなく、みんなの顔が今度は驚きに変わる。

 

「……妹? 私?」

「お前以外に誰がいんだよ」

 

 そう言ってデコピンを当てる。

 

「ひぅ」

「たっく、予定が大幅に変わっちまったじゃねぇか」

 

 まぁ、こうなっちまった以上は仕方ねぇ。

 

「……北郷」

「ん?」

「悪い、やっぱりキャンセルだ」

「え? キャンセルって、まさか」

「……今日の出立はキャンセルするってことだよ。その、色々言っといてなんだが、また少しだけ世話になる」

 

 その言葉に北郷だけじゃなく周りの面々も何を言っているのかわからないという表情だったが、次第に理解していったのか、

 

「やったぁ!」

 

 いの一番に桃香が北郷を巻き込みながら飛びついてきたことで色々と爆発した。

 

 

 

 そのあとはもうてんやわんやの大騒ぎだった。出立を祝う目的が残ることを祝う目的に変わってしまい、何時ぞやの立食パーティーのようになってしまった。

 

 ただ、その時と違うのは俺自身が心の底から楽しいと感じていたことだけだった。

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はいどうもおはこんばんにちわ。作者の風猫です。

 

久々のハイテンポ更新です。やはり、同時進行していた真・恋姫†無双を我慢できずにクリアしたのが影響しているか……

 

……まぁ、何にせよこの調子で更新していきたい所存です。

 

こんなところでまた次回!

 

何かありましたら、コメントにお願いいたします。

 

説明
白髪の鬼子と黒の御使いの、守るために戦い抜いたお話

オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。

大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。































ちゃんとオリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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コメント
はこざき(仮)さん>>人間、のんびりやるのが一番ですよ…… さて、これが攻略の鍵となるかは後のお楽しみという事で(風猫)
自分も積みゲーになってる真・恋姫と蒼天をクリアしなきゃ(ものぐさ) 意外な所からヒントというか情報が出てきましたね。しばらく劉備軍と共に行動しますし、そこから何かわかればいいのですが…(汗)(はこざき(仮))
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オリジナルキャラクター 鬼子 蜀√ 真・恋姫†無双 

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