ストライクウィッチーズ 砂漠の国から来た傭兵
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<?Side>

私の名は、サキ・ヴァシュタール。

中東にある小国の『アスラン王国』の国王の甥であり、アスラン王国空軍の外人部隊……通称『エリア88』の司令官だ。

いや……「だった」というべきだろうか……。

 

かつて、私は故郷のアスランで起きた内戦を戦った。

私の父……アブダエル・ヴァシュタールが始めた内戦を。

 

父の率いる反省軍の雇った傭兵部隊……ウルフパックとの死闘。

原子力で動く巨大な鉄の怪物……地上空母との激戦。

 

そして……戦争の悲惨さを何とも思わない「死の商人」達が集まり、自らの利潤を追求する為、世界中の戦争を継続的にコントロールする悪魔の様な計画『プロジェクト4』との死闘……。

 

私はこれらの激戦の数々を『エリア88』の面々と共に戦った……。

 

ベトナム帰りの元アメリカ海軍戦闘機パイロットで、エリア88のナンバー2の”ミッキー・サイモン”。

タフで豪快、ケンカっ早いが、戦友の死に涙する人情家で、非常な戦時下においても人としての道を示すヒューマニストの”グレッグ・ゲイツ”。

南アフリカの小国ルンガの第3王子にして、エリア88の皆が可愛がっていた弟分の”キム・アバ”。

エリア88の紅一点にして、冥府に誘う伝説の怪物「セイレーン」の名に相応しい女傑……セラこと、”セイレーン・バルナック”。

私の右腕にして、エリア88の作戦参謀であり、涙もろい一面もあった元イギリス海軍少佐の”ラウンデル”。

そして、エリア88のナンバー1にして、私の最も信頼する兵士の一人だった男……”風間真”こと、”シン”。

 

他にも多数のグエンやウォーレン、ケンと言ったエリア88の戦友達と共に、私はアスランの内戦を戦った。

 

そして、数々の激戦の末に内戦が終わりを迎え様とした時……。

 

私は最終決戦のアスラン首都奪還の最中、乗っていた戦闘機のクフィールが被弾し、炎上。

脱出し、パラシュートで降下したのは、かつての住処だったアスラン王家の王宮。そこで私は父と再会した。

だが、父はシンの友人だった男……神崎悟の率いるプロジェクト4の手によって、麻薬中毒の廃人となっていた。

 

その姿を見て、私は故郷を血に染める事になった父を殺そうとした。

だが、私を追って燃料切れの機体を放棄し、脱出したシンと、それをハリアーで追って着陸したキムの二人に止められた。

その後、父を連れ、シンと共に脱出しようとした時、父は衛兵に撃たれ、致命傷を負いながらも、正気を取り戻した。

 

正気を取り戻した父の口から語られたのは、父が”内戦を始めた理由”だった。

 

血液ガンに冒された母……ソリアを治療する為、母を冷凍保存体として霊廟に移したうえで医学の進歩を待ち、その過程で確立された技術をアスランに導入して母を救う為……というものだった。

父はその為、国王に任命されたら、真っ先に外国資本を導入して、アスランを改革しようと考えていた。

だが、私のお爺様……アスラン王国の先王であったヴァシュタール前国王は、父の弟にして、私の叔父であるザク・ヴァシュタールを国王に任命。

父は母を救いたい一心で、これを不服とし、内戦を起こしたのだ。

 

初めて聞かされた父の目的を聞き、私は父を許した。それは余りにも、余りにも遅すぎた和解だった……。

そして、全てを語った後、父は息を引き取った……。

 

父の亡骸を抱え、私はある決意をする……。私も”父の後を追う決意”を……。

 

当然ながら、シンは止めようとした。

 

だが、もう私は疲れ切っていた。すべてを終わりにしたかった……。

中東で最も美しい国と言われたアスランを地で真っ赤に染め上げた者を父に持つ者として、私も父も多くの人を殺してきた……。

人々は父も、私も許さないだろう。きっとこのまま生き延びた所で、怒りに燃える群衆に殺されるのが結論だろう……。

第二次世界大戦におけるイタリアの独裁者、ムッツリーニの様に……。

だから、この今までの行いを全て清々し、息子としてできる最後の親孝行……そして、”最後の詰め”を自分の手で行う決意をした……。

 

「見送りは感謝する……、達者でな……」

「サキ!!やめろ!やめてくれ!!俺達は一体、何の為に戦ったんだ!?何の為にエリア88はあったんだ……サキ!?」

 

最後まで私を気遣い、止めようとしてくれるシンを振り切るかの様に、私は彼に礼を述べ、燃え盛る王宮の一角にある母の墓廟内に父の骸と共に入り、自らに銃を突きつける。

 

そして私は引き金を引いた……。

 

「サ……キ……、サキ!!」

 

燃え盛る王宮の中で、私が死の直前に聞いたのは、私の名を呼ぶシンの声だった……。

 

 

 

 

……

 

………

 

 

 

あれから、どれ程の時がたったのだろうか……。随分と長い時が経ったような気がする……。

「んっ……、んんっ……」

ふと目を覚ました時、私の視界に飛び込んできたのは真っ青な空だった。

 

……これは、どういうことだ?

私は燃え盛る王宮の中で、父の亡骸と共に自決したはずだ……。

 

そう思いながら、私は更に周りを見渡すと、私が今いる場所が生前の愛機であったイスラエル製の戦闘機……クフィールのコックピットである事を知り、ますます頭が混乱する。

まさか、これが死んだ後の”天国”だというのか?いや、あれだけのことをして、天国に行けるはずがない。

だとしても、今いる場所が”地獄”とも思えなかった。クフィールのコックピットから、見える周りの青空は地獄のものとは思えない綺麗な青だからだ。

「……まさか」

尽きる事無く湧いてくる自問自答を押し殺しつつ、クフィールの操縦桿を握りした時だった。私の中で、ある事が蘇る。

それは、かつて地上空母との死闘の末に壊滅した旧エリア88基地を復旧するために、視察した時の事だった。

そこで、私はかつての戦死した部下だった男……フーバーの亡霊と対面した。

亡霊となったフーバーの口から、語られたのは「サキが最も信頼する7人の部下と共に冥府に来る」という予言だった。

もしかしたら、ココがフーバーの言った”冥府”なのか……?

そうだとしたら、ミッキーやグレッグ、キム、セラ、ラウンデル、シン達も……。

「………」

ただひたすらに何とも言えない感情が湧いてくるが、それをかき消すかの様に突然、クフィールのレーダーが反応する。

ピーっという警告音と共にレーダーの示した方向を見ると、そこには、巨大な黒い物体が重力を無視するかのように飛んでいたのだ。

 

あれは一体!?

 

驚きながら、私はその物体を更に見つめる。

形としては、アメリカの戦略爆撃機である”B-52”に似てはいるが、その大きさは比べ物にならない大きさで、かつてエリア88が激戦を繰り広げた原子力と鉄の怪物である”地上空母”にも、迫る大きさだ。

何なんだ、あの飛行物体は……「航空力学や機械工学を無視している」なんて、言葉では片づけられない異様な代物だ。

そんな感情を胸に抱きつつ、その物体を見つめていた時だった。

物体の方も、どうやら私の方に気づいたらしく、コチラにスピードを上げて向かってくる。

これを見て、私が咄嗟に安全装置を解除した瞬間だった。

 

その物体は私の乗るクフィールを目がけて、何と赤いビームを放ったのだ。

 

咄嗟にロールして、回避する。まるでアメリカのSF映画のような光景だ。

そんなことを思いながら、私は無線をオープンチャンネルにし、交信を試みる。

「コチラはアスラン王国空軍エリア88司令、サキ・ヴァシュタールだ。繰り返す、こちらは……」

そういって交信を試みるが、物体は更新する気はないらしく、私にめがけて次々とビームを放ってくる。

どうやら、完全に私を敵機と認識したのだろう。ならば、こちらも戦うまでだ。

「くっ!!」

そう決断すると同時に、私はクフィールのスロットルを引いて加速し、物体の放ったビームを回避する。

次に操縦桿を倒し、物体の方にクフィールの機首を向け、ヘッドアップディスプレイに物体を捉えると、トリガーを引いた。

瞬間、二つのDEFA 550 30mm機関砲が火を噴き、轟音とともに30o砲弾が物体を目がけて発射され、次々と着弾し、物体をえぐっていく。

その様子を見ながら、私は物体の横を通り過ぎる。

 

流石に、あれだけ撃ち込めば少なからず無事では済まされないだろう……。

「っ!?」

そう思いながら、物体の方を確認した瞬間、私は再び驚くことになった。

何故なら、その物体は機関砲で撃ち抜かれた箇所を再生し、まるで傷がなかったかのようにしていたからだ。

「……なんて奴だっ!!」

その光景を見つめていた瞬間、再び物体が多数のビームを放ってくる。

「クソっ!!」

そう悪態をつきながら、再び先ほどと同じ様にロールや急加速、急減速を繰り出して回避していくが、一つのビームが直撃ルートに入ってしまった。

「……ここまでか」

視界に飛び込んで来る真っ赤なビームを前に、諦めにも近い感情が湧いた瞬間だった。

三度、私の視界に信じがたいものが飛び込んでくる。

「少女が……、空を飛んでいる……!?」

私の視界に飛び込んできたのは、足に機械を付けた少女が空を飛び、物体の放ったビームを光の壁で弾くというアニメか、漫画のような光景だった。

 

 

この光景にあっけにとられていると、その少女は私の方を振り返り、オープンチャンネルでこう言い放つ。

『そこの戦闘機、気をつけなさい!!』

「………」

呆然としながら、その少女を私は見つめた。

少女は金髪で眼鏡の10代ぐらいの年齢で、頭とヒップの辺りに動物の耳と尻尾を生やし、手には銃を持っていた。

そして更に先に述べたように、足に機械を付け、下着丸出しという……何というべきか、その刺激的な姿で空を飛んでいた。

その姿を見て、再び呆然としていると、その少女は物体の方に視線を向けるなり、一直線で向かっていく。

同時に、彼女と同じ様な姿をした他の少女達も同様に一斉に物体に向かって飛んでいくなり、一斉に手持ちの銃で銃撃を加えていく。

そんな彼女達に銃撃された、物体はみるみると削れていく。

 

これは一体どういうことだ?

 

そんな感情を胸に抱かざるを得ない中、私は再び操縦桿を操作し、クフィールを物体の方に向ける。

そこには先程の物体から、分離したと思われる小さな物体がバラバラに散って少女たちに襲い掛かる光景が広がっていた。

小さく分裂した物体に対し、少女たちは手持ちの銃器で次々と撃ち落としていくが、その内の一機が銃撃の雨を?い潜り、先程の少女に襲い掛かろうとしていた。

「状況がよくわからないが、少女が殺される所を黙って見ている訳には行かないな!!」

私は一人そう呟きながら、素早く操縦桿の武装切り替えスイッチを押し、武装を機関砲からサイドワインダーに切り替える。

同時に先程と同じ様に、その少女を目がけて飛んでいく物体をヘッドアップディスプレイに物体を捉えるなり、トリガーを引く。

瞬間、クフィールのパイロンに搭載されていたサイドワインダーが轟音と共に発射され、物体を目がけて一直線に飛んでいく。

そして、物体に命中するなり、轟音と共に炸裂。物体を粉々に粉砕する。

 

 

その光景を見て、少女達が唖然とした表情でその威力に驚いている中、私が思わず「ふぅ……」と息を吐いた時だった。

『国籍不明の戦闘機へ、国籍と所属、名前を答えなさい』

無線機から、少女たちの指揮官と思われる少女の声が聞こえてくる。

咄嗟に私は無線機のチャンネルを操作し、その指揮官と思われる少女と通信を繋ぐ。

『繰り返します、こちらは第501統合航空団。国籍不明の戦闘機へ、聞こえますか?直ちに国籍と所属、名前を答えなさい』

「了解、聞こえている」

少女との通信を繋ぎ、そう答えると私はすぐさま国籍と所属を伝える。

「こちらはアスラン王国空軍外人部隊、エリア88。指揮官のサキ・ヴァシュタールだ」

『アスラン王国空軍?』

無線機越しに少女に伝えるが、少女は疑問の混じった声で答える。どうやら分からない様子だ。

そんな少女の反応を聞き、私の中で先程から湧いていた疑問に対する”1つの仮設”が浮かぶ。

 

もしかしたら、ココは異世界なのでは……?

 

そう思いながら、改めて少女達の姿を確認すると、その恰好はさっきも述べたように下着丸出しと言う、あられもないの姿であると同時に身に着けている服装は私服の様な格好の者も居るが、基本的には第二次世界大戦中の旧ナチスドイツ軍や、日本海軍の軍服に良く似た物だ。

少なくとも私のいたアスランはこの様な文化形態では無かった。少女たちの服装を見て、そう思いながら私は問いかける。

「すまない、今の世界標準時を教えてくれないか?年度だけで良い」

この私の問い掛けに少女たちの指揮官は「何を言ってるんだ?」と言いたげな口調で、答えた。

『1944年よ』

「1944年か……」

少女たちの指揮官から帰ってきた1944年という年号で、私は先程の仮説が正しいことを悟る。

 

どうやら、私は1944年にタイムスリップしたらしい……。異世界の1944年に……。

まぁ、ある意味では、フーバーの言った”冥府”の一種と言っても外れでは無いな……。

 

疑惑が確信に変わり、いろいろと思うものが胸の内を駆け巡るが、とりあえず私は彼女の指揮官にこう話しかける。

「……話したいことは色々あるが、まずはこの機が着陸できる場所を教えてくれないか?」

『分かったわ。この先に私たちの基地があるわ、そこに誘導するわ』

「了解。それと聞くのが遅れたが、君の名前は?」

『あぁ、申し遅れたわね。私はカールスラント空軍JG3航空団司令、第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズ隊の隊長のミーナ・ディ―トリンデ・ヴィルケ中佐よ』

「了解、ミーナ中佐。誘導をお願いする」

そう私の要請に対し、少女たちの指揮官……もとい、ミーナ中佐は『了解』と一言返すと、自信を含め、部下の隊員数人を私のクフィールの前を飛行し、誘導を始める。

私はその誘導に従い、その彼女達の基地へとクフィールを飛ばしていくのだった……。

 

 

 

 

……

 

………

 

 

 

 

それから、少しして彼女達の基地に着陸した、私は武装解除の上でクフィールから降り、基地の一角にある個室へと案内された。

どうやら、ここで私は尋問を受けるらしい。さて……彼女達にはどこから、話すべきだろうか?

火のついたタバコを片手に、そんな考えを胸に抱きつつ、待っていると部屋のドアが開き、ドイツ軍の将校服に身を包んだ赤髪の少女と日本海軍の士官服に身を包んだ黒髪のポニーテールの少女が入ってくる。なぉ、二人とも、何度も言ったように下着丸出しだ。

「お待たせしました。先程も述べたように、私がこの第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズ隊の隊長のミーナ・ディ―トリンデ・ヴィルケ中佐です」

「そして、私が副隊長を務める坂本美緒少佐だ。早速だが、取り調べを開始させてもらう。まずは名前と国籍、所属、階級をお願いする」

「サキ・ヴァシュタール。アスラン王国空軍外人部隊”エリア88”の指揮官で、階級は中佐」

そう話した瞬間、目の前の二人の少女は二人揃って顔を見合わせる。どうやら、ココが異世界である事は間違えないみたいだ……。

タバコを灰皿に押し付け、火を消しつつ、二人の反応を見て、仮説が確信に近づいていくの感じていると、美緒少佐が、ぎこちない口調でこう言い放つ。

「サキ中佐……。この世界にアスラン王国という国は無い」

「……そうだろうな。どうやら、私は、この世界にやってきた異世界の住人になるらしい」

私が信じられない口調で、そう言い放つと、ミーナ中佐も信じられないような口調でこう言い放つ。

「そうね……。信じられない話だけど、貴方の乗ってきたジェット戦闘機や、持っていた所有品を見る限り、そうとしか言いようが無いわね……」

そうミーナ中佐が言ったのを最後に、私たちは三人そろって黙り込んでしまう。当然と言えば、当然だろう。

目の前にいる男が異世界の住人だということは、彼女たちにとっても信じがたい事実であり、私も目の前にいる少女達がこの世界の住人であるという信じがたい事実を知ったのだから……。

この信じられない事実を前に3人揃って呆然としている中、この空気を破るかのように美緒少佐が問いかけてくる。

「サキ中佐、まず貴方の居た世界について教えてほしい。この世界ついても、話そう」

「……そうだな」

そう短くつぶやくと、私は知っている事を全て話した。

 

私が1986年の世界から来たことに始まり、故郷のアスランを含む、国家の種類や社会情勢……。

彼女たちが今いる1944年が、私の居た世界では多くの人々が血で血で血を洗い、5000万から8000万人が亡くったとされる戦争……第二次世界大戦を行っていたこと……。

故郷のアスランでは、内戦が勃発し、同じアスランの人々が殺しあった事を……。

その内戦を始めたのが、私の父である事を……。

父の始めた内戦に、私は外人部隊のエリア88を率いて戦ったことを……。

エリア88の戦ってきた数々の激戦、そしてかけがえのない部下にして、戦友たちのことを……。

そして、全てが終わりを迎えるあたり、父の亡骸と共に自決したことを……。

 

「……という事だ」

そう言って私は全てを話し終えると、喉の渇きを潤すように水を喉へ流し込んだ。

そんな私の話を聞いて、二人は信じられないような表情を浮かべていた。

当然だろう、彼女達には人類同士の殺し合い……さらに言えば、同じ国の人間同士で殺しあうなんてシチュエーションには縁がないのだから……。

そう思いながら、私がコップを机の上に置くと同時にミーナ中佐が口を開いた。

「その……辛かったですね。同じ国の人間同士での争いと言うのは……」

「……あぁ、辛かった。だが、もう終わったんだ。きっと今頃、アスランは元の美しさを取り戻そうと頑張っているだろうな」

「きっとそうですよ……」

「あぁ、ミーナの言うとおりだ。そう信じた方が幸せだ」

まるで労をねぎらうかの様に言うミーナ中佐と美緒少佐の言葉を聞き、何処か胸の中でつっかえていた物が取れたかのような感覚を覚えた。

そんな感覚を胸に覚えながら、私は彼女たちに問い掛ける。

「今度は、君達がこの世界について教えてくれ」

「分かった。まずはだな……」

私の問い掛けにこたえるように、坂本少佐はゆっくりと口を開き、この世界に関しての説明を始める。

その説明をまとめると、下の様になる。

 

この世界では、古代から人類と怪異との戦いが行われてきた事……。

その戦いにおいて、戦いの主力となったは魔法を使える十代の魔女たちであったという事……。

1939年にヨーロッパに突如として、出現したネウロイと呼ばれる存在の事……。

それに対して、人類が一致団結して戦っている事……。

 

……といった感じで、私の居た世界とは正反対のことが起きているのが、この世界らしい。

「……といった感じだな」

「なるほどな……。しかし、対抗策とはいえ、10代の少女たちを戦場に駆り出すとはな……。これはこれで、残酷だな……」

美緒少佐の言葉を聞き、思ったことを口にした私の言葉を聞き、ミーナ中佐が複雑な表情でこう言い放つ。

「まぁ……人類同士で殺しあうよりかは、マシなのかもしれないでしょうけど……」

「戦いにマシも、悪いもないさ……。相手は人間であろうと、バケモノであろうと、生きるか、死ぬか……、殺すか、殺されるか……、それだけだ……」

「「………」」

この私の言葉を聞き、思わず二人揃って再び黙り込んでしまう。流石に彼女達には、重すぎる言葉だったな……。

二人の様子を見て、私はすぐに謝罪を述べる。

「すまない……少々、愚痴っぽくなったようだ。今、言った事は忘れてくれ」

「え、えぇ……」

「……」

そう私の謝罪に対して、返す言葉が見つからない二人。そんな二人に対して、私は無理やり話を変えるように問いかける。

「所で、ミーナ中佐、私は今後どうなるのか?」

「えっ?あっ……あぁ、そうね……」

この私の問い掛けに対し、ミーナ中佐は一瞬、豆鉄砲を食らった様な表情になったが直ぐに側に置いてあったファイルを手に取りながら、こう言い放つ。

「サキ中佐、とりあえず貴方の件を上層部と部下達に報告します。その後に、上層部との話し合いをもって今後を伝えますので、ここで待っていて下ださい」

「……分かった」

「他に何か聞きたいことはあるか?」

ミーナに続くように、問いかけてくる美緒に対して、私は少し気が引ける気もしたが、気になっていたことを問う。

「その……なんだ、その恰好は……この世界における一般的な文化形態なのか?」

「え?えぇ、これが一般的な服装ですよ」

「……そうか」

異世界とは言えど、なかなかイカレタ文化形態だな……。

「ほかに質問は?」

「いや、結構だ……」

「そうですか。では、一旦、失礼しますね」

胸の内で、そう思いながら、ミーナ中佐の言葉に短く返す。それを聞き、ミーナ中佐と坂本少佐は部屋を退室した……。

 

 

 

 

……

 

………

 

 

 

 

<?Side>

サキの取り調べを終えた私は美緒と共に部屋を退室しながら、こう言葉を交わす。

「信じられないわね……。あのサキ中佐って人、異世界から来たなんて……」

「あぁ、だが……彼の眼は正直な目をしていた。それに一番、困惑しているのは中佐本人だろうな……」

美緒はそういって「はぁ……」と珍しく溜息を吐いた。

まぁ……こんな場面に出くわしたら誰だって溜息ぐらい吐きたくなるわよね……。

そう胸の内で思いながら、私はこう言葉をつづける。

「えぇ……祖国での内戦の末に、この世界に来たんだもの……。困惑しない方が無理な話よ……」

「同じ人類同士での殺し合い……。それも昨日まで仲の良い隣人だった人同士でだ……。この世界でも、ネウロイがいなければきっと起きていたかもしれんな……」

「……想像したくもないわね」

「あぁ……。サキ中佐はそんな想像もしたくないことをやって来たんだろう……。しかも、それを始めたのが実の父親だからな……やり切れないにも程があるぞ……。」

そう美緒は言い放って、サキ中佐に同情にも近いような表情を浮かべる。

確かに、人類同士の殺し合いなんて、想像もしたくないようなことをやってきたんだから……。

おまけに始めたのが、血のつながっている父親だなんて……そりゃ、同情の念だって湧くわよね。

美緒の表情を見ながら、そう思っていると、美緒は再び私に顔を向けて、問いかけてくる。

「……それでミーナ、サキ中佐の今後はどうする予定だ?」

「……できれば、彼を501に向かい入れたいと思っているわ」

「珍しくお前らしくないことを考えるもんだな……理由は?」

「私も……、上手く説明はできないんだけど……サキ中佐がこの世界に来て、私たちにあったのは何かしらの運命にしか思えないもの」

ハッキリ言って根拠の無い話なのは、自分でも分かっているつもりだった。だけど、間違いではないとハッキリ思えるのも事実だった。

だったら、ココはイチかバチかギャンブルに出てみよう……そんな考えが脳内を駆け巡る中、私の言葉を聞いた美緒は「ふっ……」と不敵な笑みを浮かべると、こう言い放つ。

「……そうだな。ハッキリ言って、馬鹿な話だが……面白い。面白いってことは、大事だからな、ミーナ」

「……えぇ」

そう言って私と美緒は共に揃って不敵な笑みを浮かべながら、会議室で待つ皆の元へと向かった。

 

 

 

 

……

 

………

 

 

 

そして、やって来た会議室で私と美緒はサキ中佐の話してくれた事を待っていた皆に全て伝えた。

「……という事らしい」

美緒の説明を聞いた皆の反応は揃って『信じられない』という様な物だ。

当然の反応と言えば、当然ね。まぁ……ハルトマンは”難しい話”と悟った瞬間に居眠りの体制だけど……。

そんなハルトマンの頭に鉄拳を叩き込みながら、トゥルーデが私達に問い掛ける。

「ミーナ……さっき言ったことは、本当なのか?到底、信じることができない内容だぞ……」

「えぇ……だけど、この助教から見て、信じるしか他に手立ては無いわ……」

「それにサキ中佐の目を見てみたが、あれは嘘をつくような目じゃなかった。正真正銘、真実を述べているときの目だ」

「……こんな馬鹿な事が起きるなんて」

とても信じられない様子のトゥルーデだけど、美緒の言葉を聞き、渋々納得した様子で椅子に腰かける。

そんなトゥールデーの側で、彼女に鉄拳を喰らわさせれたハルトマンが頭に出来た大きなタンコブをなでながら、トゥールデーと入れ替わりに問いかけてくる。

「それでミーナ、そのサキって人は悪い人じゃないの?」

「えぇ……話してみて、教養もしっかりあるし、とても悪い人には思えなかったわ」

「ふーん……じゃあ、良いんじゃないの〜?」

といった感じで、聞いた割にはあっさりとした反応を返すハルトマン。それ横目に見ながら、トゥルーデは怪訝な表情だ。

 

 

そんなトゥルーデのことなど気にも留めない様子で、今度はエイラさんが問いかけてくる。

「それで隊長。その……サキ中佐は、今後どうなるんダ?」

「あぁ、それに関して今から説明するわね」

私はこのエイラさんの問いに対して、そう短く返すと一回息を吸って、さっき美緒と話し合って出した結果を伝える。

「サキ中佐の今後ですが……この501に向かい入れたいと思います」

私がそう告げた瞬間、皆揃って「「「「「「「「「えっ?」」」」」」」」」と言わんばかりの表情になり、すかさず再びトゥルーデが声を大きくした。

「正気か、ミーナ!?」

「えぇ……ばっちり正気よ。現にこんな事が起きている以上、何かしら運命が動いているとしか思えないもの」

「まぁ……確かに、そういっても過言じゃない状況ではあるけどな……」

そう私が言い放つとトゥルーデも、今までの説明を振り返りながら、渋々納得した様子だ。

一方でシャーリーさんは、トゥルーデとは正反対に嬉しそうな表情を浮かべながら、こう言い放つ。

「なぁ、なぁ、ミーナ。今言ったこと嘘じゃないよな!?ホントだよな!?」

このシャーリーさんの問い掛けに私が「本当よ」と返すと、シャーリーさんは「うっひょ〜〜〜〜〜!!!」と叫ぶなり、こう言葉を続けた。

「いいねぇ〜!!あの戦闘機、乗せてもらおう!!すっげえスピードで飛んでいたもん!!」

「嬉しそうだね、シャーリー」

実に嬉しそうな表情を浮かべるシャーリーさんに対して、ルッキーニ少尉が話しかけると、シャーリーさんは満面の笑みを浮かべて「あぁ、もう最高の気分だよ!!」と返す。

本当に彼女は空を早く飛ぶことに夢中なのね……。まぁ、確かにあれだけの長加速や高機動ぶりを見たら、シャーリーさんの心を鷲?みでしょうね。

 

 

興奮冷めやらぬシャーリーさんを見て、そう思っていると今度はサーニャさんが問い掛けてくる。

「でも……アスラン王国なんて国が無い以上、所属はどうするんですか?」

「そうねぇ……。そこが悩み所なのよねぇ……」

サーニャさんが言ったように、この世界においてサキ中佐の祖国であるアスラン王国は存在しない以上、サキ中佐は”国籍不明”という事になってしまう。

そんな国籍不明の人物を軍隊の一部隊に配属させる事を上層部が決して許可するはずがない。

だから、何処かしらに所属する軍人という事で処理する必要があり、それを決めないといけないのよね……。

「だったら!!」

胸の内でそう思っていた時、突如としてペリーヌさんが立ち上がり、こう言い放つ。

「ガリア軍の外人部隊の所属という事してはどうでしょうか?彼自身も外人部隊の指揮官だったみたいですし……」

「あぁ、なるほど。その手があったな」

ペリーヌさんの提案に納得の声を上げる美緒。確かに今の状況では、一番ベストな選択かもしれないわね。

外人部隊なら、過去や経歴、国籍を問われない事に加え、ペリーヌさんの言ったようにサキ中佐は元々、外人部隊の指揮官だった訳だし、ある意味では自然な流れと言えるわ。

「そうね……それで行きましょう。助かったわ、ペリーヌさん」

「いっ、いえ、当然のことをしたまでですわ!!」

「………」

私が礼を述べると、何処が自慢げに言葉を返すペリーヌさん。

そんなペリーヌさんをジーっと見ていたエイラさんが一言。

「なんだツンツンメガネ。あの男に惚れたのカ?」

「そういえば、確かに助けてもらっていましたもんね」

「そっ、そんな訳あるわけでしょ!!適当な事を言うのも、いい加減にしてもらえません!?」

「ぺっ……、ペリーヌさん落ち着いて……」

「大体、貴方たちはですねぇぇあwせdrfgtyふじこlp;!!!!!!!」

エイラさんの指摘に続くように言い放った宮藤さんの言葉を聞くなり、ペリーヌさんは顔を真っ赤にして叫び、リーネさんが宥めるのも眼中にない様子で取り乱している。

 

やれやれ……。まぁ、これがいつもの501ね……。

ペリーヌさん達のやり取りを見て、そう私はそう思った……。

 

 

 

 

……

 

………

 

 

 

<サキSide>

ミーナ中佐と坂本少佐が、一旦退室して約30分程度経った頃だろうか……。

「お待たせいたしました、サキ中佐」

「スマナイ、待たせてしまったな」

ドアの扉が再び開き、ミーナ中佐の坂本少佐が謝罪しながら部屋に入ってくる。

そんな二人に対して、私は「いや、大丈夫だ」と短く返しながら、彼女達に問い掛ける。

「それで……私の処置はどうなるの?」

「それに関して、今から説明しますね」

そうミーナ中佐は言い放つと、持っていたファイルから書類を取り出しながら、こう言い放つ。

「処置を伝えます。貴方をたった今から、第501統合航空団の所属とします」

少なからず予想はしていたが、こうなったか……。

ミーナ中佐の伝えた処置に対して、そう胸の内で思いながら、私は更にミーナ中佐に問い掛けた。

「立場は?」

「ガリア軍の外人部隊から派遣されてきたパイロットとしての技術と資格を有する軍事顧問という事で、処理する予定よ」

「………」

……なるほどな。確かに外人部隊なら、過去や経歴、国籍を問われない。

現に私の居たエリア88もそうだった……。

 

所詮、私は外人部隊という器の中でしか生きられないのだろう。

だが、もうアスランにも私の居場所は無い。既に私は死んだ身なのだから……。

それ以前に、この世界に私の故郷……アスランは存在しない。

だったら、新たに用意されたこの世界という器の中で生きてみようではないか……。

 

ミーナ中佐から告げられた私の今後に対し、そう胸の内で思っていると、坂本少佐が一言聞いてくる。

「受け入れてくれるか、サキ中佐?」

どこか緊張した口調で問い掛ける坂本少佐の側で、同じように緊張した表情のミーナ中佐。

そんな二人の顔を見て、私は「フッ」と軽い笑みを浮かべながら、こう言葉を返す。

「……喜んで受け入れよう。ミーナ中佐、坂本少佐、これから宜しく頼む」

そう私が告げると、緊張した様子の二人も表情がほころび、年相応の笑顔を見せる。

「こちらこそ、よろしくお願いね。それと口調は崩して良いわ、堅苦しいのは嫌いなの」

「それはありがたい。私も階級で呼ばれるは好きじゃない。それと、これから、私を呼ぶ時とは『サキ』で構わない」

「それじゃあ、改めて、サキさん。これからよろしくお願いするわね」

「こちらこそ」

そういって、私とミーナは握手を交わし、それを坂本が笑顔で見つめるのだった……。

 

 

 

 

……

 

………

 

 

 

それから、少しした後、私はミーナと美緒の部下達が待つブリーフィーングルームへとやって来た。

ここに来た理由は勿論、交流会を兼ねた私の自己紹介の為だ。

「えー……大体わかっていると思うが、本日、501に新しいメンバーが加わる事になった」

「アスラン王国空軍及び……ガリア外人部隊・第2外人落下傘連隊より参加するサキ・ヴァシュタール中佐です。中佐、入ってください」

ミーナに呼ばれ、私はブリーフィーングルームのドアを開け、中に入り、目の前の椅子に座るミーナと美緒の部下達の前に立ち、自己紹介を始める。

「紹介のあった、サキ・ヴァシュタールだ、呼び名はサキで構わない。階級は中佐。所属はアスラン王国空軍・外人部隊”エリア88”及び……ガリア外人部隊・第2外人落下傘連隊から、軍事顧問及びパイロットとして参加する事になった。今日から、宜しく頼む」

「はい……それじゃあ、皆も自己紹介して頂戴」

私がそういって自己紹介を終えると同時に、ミーナが手をパンと叩きながら、部下たちに自己紹介するように言い、部下達の自己紹介が始まる。

まず最初にやって来たのは、仏頂面でやって来たツインテールの少女だ。

「ゲルトルート・バルクホルンだ、階級は大尉。中佐……正直に言わせてもらうが、私は貴方の言ってる事を全て信じることが出来ない……」

「理解しなくても構わない。私自身も、正直、今置かれている状況のすべてを理解している訳じゃないからな……」

私の返事に対し、バルクホルンは「……そうか」と手短に言葉を返すと、私の前から立ち去っていく。

それと同時に入れ替わるように、金髪のショートカットの少女が「相変わらず不愛想だねぇ〜……」とボヤキながら、私の前にやってくるなり、自己紹介を始める。

「私はエリーカ・ハルトマン、階級は中尉だよ。これから宜しくね、サキ♪」

「あぁ、宜しく」

そう言って私がエリーカと軽く握手を交わす。

 

握手を終えると同時に今度は目をキラキラさせ、豊満な胸を持つ少女がやってくる。

「あたしはシャーロット・E・イェーガー、階級は大尉、シャーリーって呼んでくれ」

「そうか、それで呼ばせてもらおう」

シャーリーにそう言葉を返すと、彼女はより一層目を輝かせながら、言葉をつづける。

「なぁ、サキ!!お前の戦闘機凄いな、何て名前だ!?」

「クフィール。ヘブライ語で”子ライオン”という意味だ」

「クフィール……、子ライオンかぁ……。最高速度は?」

「2440kmだ」

「うっほおおおおおおおおおおおおーっ!!」

そう私がクフィールの最高速度を伝えた瞬間、彼女のテンションは最高点に達したのか周囲の目線も気にせず叫ぶ。

スピード狂の癖がある子だな……。

彼女の非常に高いテンションを見て、そう胸の内で思っていると当の本人は私を見て、こう言い放つ。

「なぁなぁ、操縦教えてくれ!!乗って最高速度でかっ飛ばさせてくれよ!!」

「……それは別に構わないが、壊したら弁償してもらうぞ。クフィールは最低でも、50万ドルはするぞ」

「……自腹で?」

「当然だ。エリア88では、所属する隊員は全て自腹で戦闘機を用意するのが決まりだったからな。私のクフィールも自腹で用意した物だ」

「そんな殺生なあぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

私が告げた瞬間、彼女の表情は天国から地獄に落ちたような表情になり、地面へとガックリ崩れ落ちる。

もし、この場にマッコイがいたら、すかさず”アフリカの内戦で墜落した機体を複数拾い集めて、部品取りしたうえで作ったミグ17”や、”空母からの落艦事故で、海に沈んでいた所を引き上げた、元アメリカ海軍のF-4ファントム”……と言った、いわくつきの馬鹿に安い戦闘機を彼女に売りつけている所だろうな……。

そう思うと同時に、彼女の崩れ落ちる様を見た、バルクホルンが「いい気味だ」と言っていたのは、彼女の名誉の為に黙っておこう……。

 

 

地面に崩れ落ち、心なしか泣いている様にも見えるシャーリーを見つめていると、そんな彼女に話しかける1人の少女が話しかける。

「うぅ……宝くじでも買ってこようかな?」

「残念だったね、シャーリー」

そう励ますのも手短に、その少女は私の顔を見るなり、「あっ」と言いながら、年相応の笑顔を見せながら、自己紹介を始める。

「あたしはフランチェスカ・ルッキーニ、階級は少尉。ねぇねぇ、サキは虫好き?」

「あぁ……小さい時は、弟のリシャールとよく虫取りをして、遊んだものだ」

ルッキーニの問い掛けに、ふと少年時代の古き良き思い出を思い返しながら、私は答えた。

そんな私に返事に対し、ルッキーニは嬉しそうな表情を浮かべながら、こう言葉を続けた。

「珍しい蝶の標本もらったから、今度、見せてあげる!!」

「そうか、楽しみしてるよ」

私の返事に年相応の笑顔を見せながら、満足げなルッキーニ。

ウィッチも銃を持って戦っているとはいえ、それ以外は全て年相応の少女なのだな……。

彼女を見ているとマダム・ビンセントの娘さん……、ベルベットを思い出す……。

 

 

満足げに席に着くルッキーニを見て、懐かし気に思っていると今度はタロットカードを手にした少女が、何処か眠そうな少女を連れて話しかけてくる。

「なぁ、サキ。さっきシャーリーに行った話、もう少し詳しく聞かせてくれ」

「……それは構わないが、その前に君の名を教えてくれ」

「あぁ、エイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉。で、こっちがアレクサンドラ・ウラジミーロヴナ・リトヴャク中尉……”サーニャ”で構わない。って、ほらサーニャもちゃんと自己紹介するんダ!!」

「よ……よろしく、おねがい……しま……す」

そういってエイラは、サーニャを起こして自己紹介させようとするが、当の本人は頭が回らないのか何処かぎこちない口調だ。

私の為だけに無理をさせるのは、マズイな。サーニャの様子を見て、そう思った私はこう言い放つ。

「あぁ、宜しく。それとサーニャ中尉、決して無理だけはするな、私に構わず休んでくれ」

「は……、はい……」

この私の呼びかけに答えるように、サーニャは自分の席に座ると同時に眠り込んでしまう。

夜間任務にでも、出動する予定だったのだろうか?そうだとしたら、悪いことをさせてしまったな。機会があれば謝罪しておこう。

それ以前に、ふと思ってが、彼女たちは”女の日”には、出撃免除などがあるのだろうか?私はセラが”女の日”には、出撃を免除させていたが……。

ふとそんな考えが湧いていたが、それは良いとして……問題はエイラの言った事だ。何故に”エリア88が自腹で戦闘機を用意する”と言う事に関して、聞きたいんだ?

「いやぁ〜私の故郷の戦友によくストライカーぶっ壊す奴がいて、戦闘隊長が頭痛めてるんダナ」

「……私の心を読んだのか?」

胸の内で思っていたことを問い掛けるよりも先に、答えが返ってきたことに驚き、彼女を問い詰めて帰ってきた答えは「まぁ、私の固有魔法は予知能力だしナ」と言う物だ。

どうやらウィッチというのは、私の想像よりも何倍も凄い能力の持ち主らしいな……。

 

 

今にも「どうだ!!」と言わんばかりの表情のエイラを見ている私に対して、今度は二人の少女が話しかけてくる。

そのうちの一人は、シンと同じ日本……コチラの世界で言う扶桑の少女だ。

「初めまして、宮藤芳佳です。これから宜しくお願いします。あ、階級は軍曹です」

「リネット・ビショップと言います……。階級は芳佳ちゃんと同じ軍曹です……。その……よろしく……、お願いします……。それと……その……、額の傷は……」

「私の額の傷に関して、君は何も心配しなくて良い。私自身の不注意が原因だ、君には関係のないこと……それに話した所で、あんまり気持ちの良い話じゃない」

「は……、はい……。これから、宜しくお願いします」

「あぁ、宜しく」

私はそういって二人と軽く握手を交わすと、リーネは顔を真っ赤にしていた。彼女は照れ屋な子なんだろう。

同時に、赤の他人の事を心配してくれる心優しい子だ……。

過去に私の甘さと判断ミスで、犯した過ち……それを忘れぬ為に刻んだ傷だというのに……。

リーネの様子を見て、そう思っていると芳佳が再び私に話しかけてくる。

「あのサキさんって、扶桑……じゃなくて、日本の料理って食べたことあります?」

「そうだな……食べた事は無いが、シンがたまに”故郷の味が恋しい”って言たから、興味はあるな」

「えっ……、その……サキさんの居たエリア88に扶桑……じゃなくて、日本の方が居たんですか?」

私の言葉に対して、疑問交じりの表情問い掛ける宮藤。周りにいたほかの面々も同じような表情だ。

そんな周りの面々を見ながら、私は「あぁ」と短く言うと、こう言葉を続けた。

「風間真と言う名の日本人で、階級は大尉、私も他の皆も”シン”と呼んでいた。総撃墜数92機、対地目標物撃破約230車輌、指定目標攻撃率86%、出撃率95%、事故損失12%……間違いなく彼はエリア88ナンバー1の実力を誇ったパイロットだ」

「……凄い方だったんですね」

「あぁ、凄い奴だったよ……」

そう宮藤の言葉に返しながら、私はシンと戦ってきた日々を思い返していた。

同時に「今、シンはどうしているのだろう?」という考えが胸の奥から湧いて来て、次の瞬間には無意識の内にこう言っていた。

「……今、シンは幸せに過ごしているんだろうか?」

「きっとそうですよ。そう思った方が、シンさんも幸せですよ」

「……そうだな。スマナイな、つまらない事を聞いて」

「いえ、気にしないで下さい」

私が無意識のうちに言った言葉に対して、肯定する様に言い放った宮藤の言葉に、何処か救われたような気分になる。

 

 

そんな気分を胸に抱きながら、ふと横を見てみると、先程の物体……もとい、ネウロイとの戦闘で私が援護した金髪で眼鏡の少女が目に入った。

「君はさっきの……」

「はっ、はいっ!!」

私の呼びかけに、ビックリとした様子で少女は答える。

どうやら、リーネと同じ照れ屋か、異性に接するのが苦手な子なんだろう……。

彼女の何処か恥ずかしそうにしている様子を見て、私はそう思いながら、話しかける。

「大丈夫か、ケガは無いな?」

「あ……は、はい……。サキ中佐の方こそ、大丈夫ですか?」

「見ての通り、五体満足だ」

「……そ、それは良かったです。あ、名前を申し遅れましたわね……わたくし、ペリーヌ・クロステルマン中尉と申します。ペリーヌで構いませんわ」

「そうか……これから宜しく頼むぞ。ペリーヌ」

そう言いながら、私が目の前にいる少女……ペリーヌと握手を交わした瞬間、彼女の顔がさらに真っ赤になり、頭から湯気を挙げながら俯いてしまう。

やはり、彼女はリーネと同じ照れ屋か、異性と接するのが苦手な娘なんだろう……。

彼女の様子を見て、私がそう思っている側で、エイラ、ハルトマン、シャーリーの3人が悪ガキの高校生の様にペリーヌを茶化す。

「オー、ツンツンメガネが男に惚れてらァー」

「あーホントだ、ホント!!」

「こりゃ傑作だぜ!!」

この3人の茶化しを黙って聞いていたペリーヌだったが次の瞬間、彼女の怒りのスイッチが入ったのか……。

「う、う、う、う、うるさいですわねぇぇぇぇぇぇえあqwせdtfgyふじこlp;@:・!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

……といった感じで、さっきまでのオドオドした態度から一転し、凄まじい表情で3人に噛みつく。

「………」

「あらあら……」

「何時もの事だ、気にする事はないぞサキ。直ぐにでも慣れるさ、はっはっは!!」

この余りの変わり様に、私は思わず唖然としてしまうが、側にいるミーナと美緒にとっては何時もの事らしく、得意も気にもせずにサラッと受けて流している。

 

 

そんな私達の様子に気づいたのか、ペリーヌは「あっ!!」と一言呟くと、再び顔を真っ赤にして、黙り込む。

同時にシュンとした様子で、小さくなってゆく彼女に対して、私は一言こう述べる。

「……君は、感情豊かな子だな」

「あっ、あの……、その……お見苦し所を、お見せしてスイマセンでしたわ……」

こうして、ペリーヌの謝罪によって、私の自己紹介を兼ねた交流会は幕を閉じるのだった……。

 

 

 

 

……

 

………

 

 

 

それから暫くして、私は新しい住処となるミーナ達が用意してくれた部屋に居た。

この世界の時代が1944年なので、古く臭さこそ感じるが、それが逆に良い味を出しており、まるでアンティーク調なホテルに宿泊している様な気分であった。

そんな気分にさせてくれる部屋の中で、私は501の面々となって初めての仕事となる書類作業……それも私に関する書類の処理だ。

ミーナと美緒は「今日は休んで良い」と言ってくれたが、流石に彼女たちを頼ってばかりなのは私の気が済まない……そう伝えて、いくつかの書類を受け取り、今に至るわけだ。

私も軍司令官を務めた身だ、書類作業に関するイロハぐらい頭の中に叩きこまれている。そのイロハを生かし、私は次々と捌いていく。

そうして、最後に新しく私に”クフィールが使えない際の予備”として、支給されることになったイギリス……こちらの世界で言うブリタニア制のジェット戦闘機である”グロスター・ミーティア”の受け取りに関する書類に、私のサインを書き込んで一通りの書類作業が終わる。

終えると同時に私はペンを机の上に放り投げ、リーネがいれてくれたハーブティーを片手に部屋で一息つく。

「書類作業が面倒くさい仕事なのは、何処の世界でも一緒か……」

ハーブティーを片手に呟きながら、窓の外を見てみる。既にもう陽は暮れており、太陽は海へと沈もうとしていた。

「……綺麗な夕日だ」

海へと沈んでいく夕日を見て、私は呟く同時にアスランでの日々を思い返していた……。

 

アスランの夕日は、血に染まり、赤色にくすみ、厳しい物だ。それでも美しかった……。

だが、ココの世界の夕日は、それ以上に綺麗で……、そして優しい赤色だ……。

ネウロイとの戦いがあることを全く感じさせない美しさと優しさだ……。彼女たちは、この空を守るために飛ぶ……。

そして、私もこの世界で彼女達と共にこの空を守るために飛ぶ……。それが、神が私に下した新たなる使命なのだろう……。

 

ふと夕日を見ながら、そう思っているとドアがノックされ、宮藤が入ってくる。

「サキさん、晩御飯の時間です。早く行きましょう、冷めちゃいますよ」

「そうか……」

そう短く、私は宮藤に返しながら、部屋を後にし、食堂へと向かう。

 

共に空を飛び、戦う新たなる仲間たちの元へと……。

 

 

 

 

……

 

………

 

 

 

終わりがあれば、始まりがある……。

砂漠の国……血濡れの故郷での戦いを終えた傭兵は、捨てたはずの命を拾った……。

それは神のいたずらか……、悪魔の誘いか……。

そして、傭兵は砂漠で乾ききった心を潤すかの様に……、自分の存在を示すかの様に……、彼は|魔女《ウィッチ》達と共に飛ぶ事を決めた……。

この日、ブリタニアの空で、砂漠の国から来た傭兵の新たなる闘いの日々が幕を開けた……。

説明
※この作品は過去にハーメルンで掲載していた作品です。

TINAMI以外にも、自作ホームページ、暁、PIXIVでも掲載しています。
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