愛しいひとへ。−変わってしまった君へ−
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そうか 

君も去っていくんだな。

大切なものは、みんな俺から去って行く。

 

お互いに我が儘を許しすぎたかな。

 

最初に、一人の時間が欲しいと言ったのは俺だった。

君は何か言いたそうだったが、黙って言うとおりにしてくれた。

 

君の休みの日は、俺は仕事に行った。

一人残された君は、毎週外に出掛けていった。

そして、仲間をつくり、週末は家にいないようになった。

俺は、土曜の夜も帰ってこない君を、疑いもせず送り出していた。

 

考えてもいなかった。

まさか、君が他の男を好きになるなんて。

 

 

なんとなく、君の態度がおかしいことには気がついていた。

あんなに俺の名前を呼んで、にこにこ嬉しそうだった君が、

俺の傍で、なんとなく居心地悪そうにしてる。

携帯を気にして、メールがくるとすごい勢いで中を見てる。

 

何か、おかしいよ。

 

指摘され、君は迷った末に、決心したように言った。

 

「他に好きな人ができた。だから、別れて欲しい。」

 

なんで?

君と俺は夫婦なんだよ?

昨日や今日、一緒になったんじゃないんだよ?

 

「わかってる。

でも、他に好きな人ができて、貴方を好きでいられなくなったの。」

 

そうだった。

君はそういう人だった。

1つの事に夢中になって追い求め、それに飽きると、次を追うのに夢中になる。

そう

仕事も、人間も。

 

でも、夫婦なんだ。

おいそれと、別れられないんだよ。

それをわかってて、俺と結婚したんじゃないのか。

 

・・・・・・

 

都合が悪くなると、だんまりか。

 

君がそうしたいと言うから、君の言うとおりの家を建てた。

あれも、捨てて行くのか?

 

君は、今にも泣きだしそうな顔をして、ずっと下を向いていた。

いっさい、俺を見ることはなく。

 

 

それでも、君はなぜか俺と一緒に暮らしていた。

いつもなら、思い込んだらすぐに実行するのに。

なぜか、いつまでも俺といた。

一度、出て行こうとしたところを、君の親父さんが止めたらしいが、

そんなことであきらめる君ではない。

それなのに。

 

「たぶん、相手の人に断られたんだよ。」

口をそろえて友が言う。

俺も、そう思う。

でも、もうだめだ。

 

君は俺の事が、嫌なんだ。

俺の存在が嫌なんだ。

 

冷たい声で、俺を呼ぶ。

冷たい目で、俺を見る。

冷たい態度で、俺に接する。

 

あのとき、俺が「うん」と言えば、こんな風にはならなかったのか?

君が結婚してたから、相手が、それはまずいと断ったのか?

 

いや、そんなはずはない。

君は、思い込んだんだ。

相手が、君を拒むはずがない、と。

でも、断られた。

だから、仕方なく、俺と一緒にいたんだ。

このまま、元に戻ろうとしたが、自分の心が許さなかったんだ。

一度離れた心は、もう戻らなかった。

 

もう、いいよ。

自由にしてやる。

 

いや、自由にしてくれ。

君のその冷たさから、俺を解き放ってくれ。

 

さよなら。

俺がいないときに、出て行ってくれてかまわない。

そして、もう二度と君には会いたくない。

 

説明
誰かに何かをしてあげるということは、とても勇気のいることだ。
『してあげる』という言い方でさえおこがましいような気さえする。
相手が望んでもいないのに、自ら行動を起こすのは、私にはとても難しいことだ。
でも、もし、相手が本当は助けて欲しいのに、「助けて」と言えない人だったら・・
私はどうしたらよかったのだろう。
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変わってしまったひと 去る 嫌い 

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