艦隊 真・恋姫無双 134話目
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【 偽装 の件 】

 

 

? 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

冥琳に問い質された華琳は、哀愁を帯びた表情でポツリポツリと理由を語る。 だが、その内容は『北郷一刀を知る者』にとって衝撃な話だった。

 

たが、この話は……ただの妄言と片付けられない。

 

何故、一刀が刺客により害されたのに関わらず、殆ど怪我らしいものを負わなかったのか?

 

何故、刺客が立ち去った後、左慈や華陀が直ぐに駆け付けたのか?

 

何故、一刀を慕い付き従う御遣い……艦娘達が、一刀が倒れたのに関わらず、冷静沈着な態度をとっていたのか? 

 

動転していた気付かなかった疑問点を、華琳は一刀の言葉で思いだし瞬時に計算した。

 

そして、これらの見解より、導きだされた答えは……

 

 

  ── 死を偽装した潜伏 ──

 

 

………だった。

 

 

ーー

 

冥琳「…………」

 

「「「 …………… 」」」

 

華琳「その存在を私達から消す理由には、先程言った事もそうだけど他にもあるわ」

 

「「「 …………… 」」」

 

華琳「それは──『御遣い達の独立』よ!」

 

ーー

 

簡略的に説明すれば……

 

北郷一刀は今回の件で、漢王朝の腐敗を肌身に感じとり、王允が自分達に危害を加える事を理解した。 そして、この王朝内の束縛は、自分達の枷にしかならないと見限る。

 

そして、己が身を守るために死を偽装して漢王朝から離れ、

時期を見計らい独立を宣言し、文字通り天敵である『深海棲艦』との直接対決を臨むと見たのだ。

 

 

言うなれば、独立採算制方式の鎮守府設立である。 

 

今でも漢中鎮守府があるが、今の予算は益州の国庫より捻出されているところであるので、もし独立採算を目指すのであれば、一刀達で予算を稼がなければならないのだが。

 

この意見には、流石に聞き役に徹していた恋姫達も華琳に向けて質問を投げる。 確かに真意は未確定だが、筋は通っているし、言われてみれば納得もできる。

 

たが、頭で納得できても乙女心までは納得しないからだ。

 

ーー

ーー

 

問 「あ、あの……そのような事が……なぜ必要なのですか?」

 

答 「敵対する相手は尋常で無い者だから。 現に相手をしたのだから、この言葉だけで貴女なら十分理解できる筈よ」 

 

 

問 「おいっ! ご主人様があたし達を見捨てるって、どういう事なんだよっ!?」

 

答 「それくらい察しなさい! 私だって……口にしたくないんたから! それは………ここに居る大陸の将達が全て………一刀達の足手まといになる……からよ!!」

 

 

問 「ねぇ〜、貴女と司令官って……どんな関係?」

 

答 「私は一刀とは───って、今の質問は誰っ!?」

 

 

ーー

ーー

 

多くの質問に気丈にも答えていた華琳だが、答えるたびに心が磨り減り、表情が徐々に暗くなっていく。 また、質問した者も現実を突き付けられ、悔し涙にくれる。

 

考えてみれば、当然の話である。

 

提督諸兄も既に御存知………っていうか、その恨み骨髄に徹するまでの方も居ると思われる『深海棲艦』なる勢力。

 

この大陸の一騎当千が挑んでも足下さえ及ばず、万夫不当の将でも羽虫と同様に扱われ、幾ら神算鬼謀を巡らしても、普通に進むだけで押し潰す──破壊の権化、百鬼夜行の集団。

 

普通ならば、この大陸の誰もが勝てない異形なる者。

 

如何に大陸屈指の名将達が集まろうと、勝てる勝率などなかったのだ。 この世界に艦娘達が………来なければ。

 

ーー

 

??「よし、やっと順番が来たか。 早速で済まないが大事なことだ、聞かせて貰うぞ!」

 

華琳「………今度は何? 大概の答えは言ったから、もし重なた質問なら喋らないわよ。 はぁ………もう泣き出したいのは私なのに………」

 

??「いや、なかなか面白い事を考えるなと思ってな。 だが、この磯風が共に進むと誓った司令を、そんな薄情な男だと思われるのは、実に心外」

 

華琳「えっ────!?」

 

??「無事に帰還してみれば、司令は青白い顔で項垂れ、そちらの将達は将達で、涙を流すやら悲痛な面構えで磯風を睨むのでな。 同輩に尋ね、やっと得心したところだ」

 

ーー

 

そう言って、腰まで伸びる黒髪が揺れ、赤い色の瞳が驚き唖然とする華琳を映し出した。

 

その人物………陽炎型駆逐艦十二番艦『磯風』が、華琳の目の前でニヤリと笑っていたのだ。

 

 

◆◇◆

 

【 回顧 の件 】

 

 

? 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

華琳が質問で忙殺されている頃。

 

 

一刀の側に艦娘が一人……些か沈んだ表情で案内されて来た。

 

一刀「磯風……か!?」

 

磯風「司令、連絡が遅くなってすまない。 先に帰した天津風より報告されていると思っていたのだが、どうやらとんでもない事になっているようだな」

 

ーー

 

磯風の声を聞いた一刀は俯いていた顔を上げ、磯風の姿を慌てて探し、その無事な姿を見て喜色の笑みを浮かべる。 

 

その反面、先程の沈んだ表情を真顔に整えた磯風は、緊張した様子で一刀に海軍式の敬礼を取りつつ報告した。

 

ーー

 

磯風「戦況報告、我が艦隊は追撃した敵艦を轟沈。 その後、応援に駆け付けたと思われる別の敵艦二隻と交戦、これを撃退。 結果……無事に我が艦隊が帰投完了した」

 

一刀「……………」

 

磯風「だが、勇猛な敵艦に反撃され、艦隊の被害は甚大。 小破、中破はほぼ全員。 特に不知火、扶桑、山城は大破」

 

一刀「────!」

 

磯風「艦隊は一時壊滅の覚悟を定めるが、いやに筋肉美が映えた『霧島』と名乗る謎の艦娘、そして吹雪と夕立の援軍で窮地を脱出できた事を付け加える。 以上、報告終わりだ」

 

ーー

 

一刀は報告を聞いた後、少しだけ考え事をするかの如く目を瞑りながら黙り、それから磯風へ問い質した。

 

ーー

 

一刀「………大破した……皆は?」

 

磯風「このままだと轟沈の可能性ありと考え、この磯風の独断で他の皆で護衛させ鎮守府へ戻らせた。 皆が皆、司令の指示を無視でいいのかと反論していたがな」

 

一刀「………そうか」

 

ーー

 

一刀の口より重苦しい言葉が漏れるが、磯風は普段と同じ態度で接する。 椅子に座る一刀とは違い、直立不動の磯風と目線が違うのは仕方ない話。

 

たが、ここで問題なのは、磯風が不知火達を鎮守府へ独断で戻した件である。

 

洛陽に赴いた磯風達だが、これは一刀の指令により動き、今も一刀の命令に従い行動を起こしていた。 そして、一刀は少し前まで、人事不省で倒れていた状態だ。

 

それなのに、磯風は旗艦権限で艦隊を解散させ、鎮守府の帰還及び入渠する指示を出した。 無論、一刀から解散発令、及び鎮守府への帰還発令も出ていない。

 

それどころか、指揮権代理さえも受けていないのに関わらずに、だ。

 

通常は命令無き場合は待機となり、その場での上官の指示に従うのが筋。 たとえ、艦娘が状態異常になったとしても、司令である一刀に許可を得て、始めて行動ができるのだ。

 

今回の件は、磯風の独断専行となり、命令違反による罰則が与えられる。 罰則は其々だが、その罰は大変厳しいと、受けた艦娘達からの噂である。

 

ーー

 

磯風「………言っておくが、この磯風、命令違反も覚悟の故だぞ? 旗艦として不知火達を危険に晒したまま、司令の命令を待つのは危険と判断したからだ」

 

一刀「……………」

 

ーー

 

責任は自分にあると発言する磯風に、一刀は黙って磯風に視線を合わす。 顔色は蒼白く、よく見れば手が微妙に震えているが、表情は固く何も言わないまま磯風を注視するだけ。

 

そんな一刀達の少し前では、律儀に質問を答えんと奮闘する覇王、何気ない様子で聞き耳を立てる孫呉の名軍師が居る。

 

ーー

 

磯風「…………司令、そう難しい顔をされては困る。 何が言いたい?」

 

一刀「…………軍規厳正の磯風にしては……珍しいから……」

 

磯風「………」

 

ーー

 

一刀の言葉に苦虫を噛み潰したような表情をすると、『これは……私の我が儘なんたからな』と小さく呟くと、意外な話を始めた。

 

ーー

 

磯風「司令……当然知っているだろう、この磯風の戦歴を。 真珠湾、ミッドウェー、ソロモン、ケ号作戦……と、全部数え上げれば切りがないほど……皆と一緒に戦い抜いた」

 

一刀「……………」

 

磯風「人は輝きし戦歴というかもしれないが、この磯風にとって……後悔ばかり積み重なった辛き航跡に過ぎないのさ」

 

一刀「…………」

 

磯風「戦う度に目へ焼き付けるしかなかった彼女達の最後。 護れなかった不甲斐なき我が身を何度も叱咤し、次こそはと信じ護国の鬼となり挑みかかった……あの戦いの日々……」

 

一刀「…………」

 

磯風「だが、結局………最後の海戦……坊ノ岬沖も……」

 

ーー

 

今も当時の出来事が、磯風の頭の中で繰り返されているのだろう。 磯風の端正な顔が苦しげな表情を見せる。 

 

両手を拳に握り変えた手も、小刻みに震えた。

 

ーー

 

磯風「護るべく大和が沈み、今まで共にした浜風も居なくなり、敵の攻撃で動けなくなった私は、泣き顔で歪む雪風へ無理に介錯を頼み、皆が待つ海原に轟沈するしかなかった……」

 

一刀「…………」

 

磯風「今は幸運にも、司令の下へ当時の僚艦達が違う形で舞い降りた。 あの厳めかった金剛が、こうも司令相手に慕うとは、初め見た時は大いに驚いたものだがな」

 

一刀「…………」

 

磯風「だから……思うのだ。 今度こそ、金剛を、大和を、武蔵を、大鳳を……そして、今居る僚艦達を護って見せると!」

 

一刀「…………」

 

磯風「あの頃、救う術もなく歯噛みしながら何度も僚艦の轟沈する様を見届けた事を思えば……いや、今の磯風に救う術があるというのなら、この磯風の行うのは一つだけ!」

 

ーー

 

そこまで言い切った磯風は、自分がえらく熱弁を披露したと知り、慌てて咳を軽くした後に一刀へ再度告げた。

 

ーー

 

磯風「だから、どんな罰則を受けても、反省も後悔などしないしする事もないぞ。 これは、この磯風の誇りであり、まだ見ぬ僚艦達との誓いだからだ!」

 

一刀「……………」

 

ーー

 

一刀が納得した様子で頷くので、磯風が下がろうとする。

 

すると、今まで黙って話を聞いていた一刀が声を掛けた。

 

ーー

 

一刀「皆が……無事に帰ってこれた。 それだけで、嬉しく思う。 磯風……ありがとう……」

 

磯風「───!?」

 

ーー

 

急に礼の言葉を掛けられた磯風は、思わず口をパクパクさせるが、一刀は無自覚に更なる追撃を掛ける。

 

ーー

 

一刀「古より……『君命に受けざる所あり』という。 磯風が必要と思うなら……俺は『諾』と……いうしかない」

 

磯風「だ……だがな、司令! この磯風に報いる言葉など不要! 艦隊を率いて不覚を取ったのは磯風の責! 敵艦を撃破したのは皆の活躍、帰投出来たのは吹雪達の働きだ!」

 

一刀「だが……不知火達を……鎮守府のドックに連れて行くよう……指示をだしたのは……磯風だろう?」

 

磯風「………そうだ」

 

一刀「ならば、俺は……礼を述べる相手を……間違えていない。 艦隊を救ったの吹雪達だが……不知火達の轟沈を予見し……罰則を恐れず対応したのは……磯風の手柄だ」

 

磯風「───!!」

 

一刀「だから……感謝を込めて……ありがとう……だ。 不知火達を……救ってくれて………」

 

磯風「……くっ! これだから、司令は!!」

 

ーー

 

その言葉を近距離から喰らった磯風は、僅かな間に赤面し文句を口にしながら直ぐに離れ、後ろを向く。 一見、磯風が機嫌を損ねて拗ねたように思えるが、さにあらず。 

 

罰を与えらると思案していた筈が、何故か褒めら思わず頬が緩みそうになる情けない姿を見せたくない。 磯風の武人気質と乙女心が手に取り起動した、照れ隠しである。

 

ーー

 

磯風「は、話は変わるが……司令………き、聞きたい事が……あるんだが……」

 

一刀「今なら……いいぞ」

 

ーー

 

そんな磯風に、ふと一つの考えがあった。

 

磯風は此処に来る前に天津風に会い、この部屋で起きた出来事を聞いている。 一刀が倒れた後の状況、言わば荀文若の活躍から曹孟徳の暴走を細大漏らさずに。 

 

天津風も他の僚艦より聞いた事ゆえ、多少の誤差があると言えるが、それでも大要は掴み取れたのは、歴戦の艦ゆえか。

 

ーー

 

磯風「な、なぁ………」

 

一刀「……………?」

 

ーー

 

ただ、それが真実か、はたまた偶然の一致か……それを確かめる勇気を、今の磯風には持ち合わせていない。

 

そんな普段の磯風と到底思われぬ彼女から放たれた言葉は───何故か、全く関係ないどころか、かなり的外れ。

 

ーー

 

磯風「な……『泣いた赤鬼』と言う童話を知っているかっ!?」

 

一刀「…………………?」

 

 

 

◆◇◆

 

【 月旦 の件 】

 

? 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

騒然とする中で、威風堂々と現れたる磯風。

 

すると、華琳は磯風を一目見ると、膝を付き頭を垂らし、貴人に接するように挨拶を始めた。

 

ーー

 

華琳「あ、貴女は───」

 

磯風「北郷一刀司令官の指揮下に居る『陽炎型駆逐艦十二番艦 磯風』だ。 別に姓とか名とか難しく考えてくれなくていい。 ただ、磯風……とだけ覚えてもらえば光栄だ」

 

華琳「……………それは、真名と考えて?」

 

磯風「大陸での考えで言えば、そうでないと言えよう。 だが、強いて言えば……この名は私の全てであり誇り。 それだけ、磯風の名は重き物だと知って貰いたい」

 

華琳「その名の尊さを知る貴女になら、私の真名を預けます。 姓が曹、名が操、字が孟徳、真名は華琳。 どうぞ、華琳とお呼び頂ければ……」

 

磯風「ならば、その様にしようか、華琳。 ただ、この磯風は司令が操る手足の一つ。 敬称など面倒……じゃない、そんな偉い立場ではない故、敬称や敬語など不要で頼む」

 

華琳「ならば……承知したわ。 私も磯風と気安く呼ばせて貰うわよ。 以後、宜しくお願いするわね、磯風」

 

磯風「うむ。 こちらこそだ、華琳」

 

 

「「 ………………? 」」

 

 

ーー

 

二人の受け答えを聞いて、両陣営より『?』が浮かぶが、それぞれが尋常では無い者。 何を考えているのか判らない故に、唖然として眺めるしかなかった。

 

ただ言えるのは、この友好的な態度とは裏腹に……二人とも警戒の念を解く事はなかったのである。

 

ーー

 

 

 《 二人の心中 》

 

 

『………面白いわね。 この曹孟徳とあろう者が、あの御遣い……磯風を相手に思わず粟立ってしまったわ。 しかも、自然と頭が下がるなんて……ふふ、本当に面白い』

 

『明らかに他の御遣いとは違う歴戦の風格、わざわざ一刀の部下だと意思表明する強固な忠義、下手に出ても対等な立場を堅持する至誠心……実に見事と、褒め称えましょう』

 

『だけど、私の疑問を解き明かすと放言したけど、桂花との会話からすれば、弁舌が冴えているとは到底思えない。 どちらかと言えば……かなり春蘭に近いものを感じるわ』

 

『そんな貴女が、この私、曹孟徳を……どう納得させるのか、ぜひ聞かせて貰うわよ?』

 

 

 

 

『うむ、これは興味深い。 人の身で深海棲艦、それも上位種の覇気を纏うとは。 今は何とか落ち着いてくれているが、甘く見れば手痛いしっぺ返しを受けるな』

 

『しかも、相手は……かの三國志の英傑、曹孟徳。 たかだか海原を駆けずり回った駆逐艦が、どうこうできる相手ではないな。 無理、無茶、無謀……この言葉で終わりそうだ』

 

『だが………今の磯風は強いぞ。 司令より信頼を一手に担う我が身、姫級だろうが負ける気などせん。 いや、それどころか……あの秋刀魚さえも上手く焼ける気が──』

 

『司令、改めて、この磯風が誓おう。 この少女が司令の考えを読み間違えないよう導いてみせると。 そして、今度こそ……約束された勝利の秋刀魚を司令に捧げると!』

 

 

ーー

 

そんな二人の挨拶?の後で、冥琳も挨拶を交わし真名を預けるのは当然お約束なので……描写は省く。

 

ただ、冥琳の身体を一瞥した後、自分のとある部分を見て溜め息を吐いたのは、この作者の目をもってしても想定外であった。

 

 

 

【 童話 の件 】

 

? 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

代表たる二人に自己紹介を果たした磯風は、腕を胸の前に組ながら、一刀の理由を説明しようと口を開いた。

 

ーー

 

磯風「さて、司令の件だが………よく見抜いたものだと褒めるべきだろう。 勿論、僚艦達の演技が大根だったという可能性もあるが──」

 

菊月「一番早く追撃に向かった磯風から、大根呼ばわりされるとは、流石に心外だぞ。 言っておくが、磯風より菊月の方が古強者……ふん、威張れるものじゃないがな……」

 

陸奥「本当に長門の縮小版ね。 困った事になると、すぐに私へ押し付けようとするんだから……」

 

磯風「そこの外野、少し口を慎んでくれ。 話が進まない───」

 

ーー

 

磯風の開口一番で放った言葉の爆雷が、僚艦へ誘爆し何とか鎮火。 話を円滑に導く為に取った、磯風の軽い茶目っ気であったが……逆に早々つまずくはめになった。

ーー

 

磯風「…………ああ、失礼した。 話に潤いをもたらす為に、自虐的な話題を入れたのが……失敗だったな」

 

華琳「自虐をするのは、私にとってどうでもいいわ。 でも、わざわざ内紛を誘発させる自虐を興ずるのは、流石にどうかと思うけど?」

 

磯風「それは心配ない。 何故なら、そう簡単に磯風達の結束を崩す事は出来ないからだ」

 

華琳「それだけ貴女達の絆が強固であると、私へ暗に意思表示しているの?」

 

磯風「ふっ……それだけじゃない。 司令という存在が控えているから、磯風達がこうして自由にやれる。 規則に反しない限り温かく見守ってくれるんだ。 あの人は……な」

 

華琳「………………」

 

ーー

 

それだけ語ると、磯風は華琳より視線を外しながら口元で拳を作り、咳払いを一つ。 

 

そして、恐々と周りの視線が集まるのを見て、止まっていた説明を続ける。

 

ーー

 

磯風「まず、真相を話す前に……とある天の国の話を聞いて貰いたい」

 

「「「 ────! 」」」

 

磯風「まあ、そう構える必要はないさ。 幼子に話して聞かせる簡単な構成の物語だ」 

 

ーー

 

磯風の様子を警戒していた恋姫達は、『天の国』という言葉につられ傾聴する態勢を取った。

 

磯風が名乗る題名は──『泣いた赤鬼』

 

そして、磯風の言葉に反応して、早くも質問を投げ掛けるのは……この人である。

 

ーー

 

華琳「昔、一刀から聞いたけど…………天の国に居る鬼は、大陸に伝わる鬼とは違うと………」

 

磯風「もしかして、ここでは鬼という意味は……人の死霊という意味であっているのか?」

 

華琳「そうよ。 人が亡くなり迷いがあれば鬼となり現れる。 まあ、そう直接呼ぶのは憚れる(はばかれる)から、好兄弟と呼ぶ方が多いわ」

 

ーー

 

華琳から話を聞き、どうやら大陸と天の国の間では鬼のイメージが違うと聞き、磯風は天の国でのイメージを伝える。

 

勿論、深海棲艦の鬼級の事ではない。

 

頭に角が生え、虎の皮のふんどしや腰布を付けた………例のアレである。

 

ーー

 

磯風「まず、容貌は人に似て、頭に二本の角があり、虎の皮の下着を身に付けている」

 

華琳「角があるのは自分の恐ろしさを、凶暴な虎の皮を着けているのは武勇に優れているという、自己顕示を表すわけね」

 

冥琳「なるほど、幼子を怖がらせるには利にかなった姿か」

 

 

磯風「それから……口から牙を生やし、不思議な術を使う」

 

華琳「孔子に曰く『怪力乱神を語らず』っていうけど……」

 

冥琳「天の国に住む鬼は……怪しの類いか」

 

 

磯風「あと、語尾に『だっちゃ』『〜っちゃ』が付いたり、愛しい相手が浮気をすると嫉妬して電撃を放つ。 因みに愛しい相手は『だーりん』と呼んでいた」

 

華琳「……………はぁ?」

 

冥琳「何やら……とんでもない話が出てきたぞ……」

 

ーー

 

そんな曖昧模糊な説明をしたのち、磯風は朗々と童話を話して聞かせるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

【 おまけ の件 】

 

 

? 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

ただ、冥琳の身体を一瞥した後、自分のとある部分を見て溜め息を吐いたのは、この作者の目をもってしても想定外であった。

 

 

 

磯風「………………はぁ」

 

冥琳「まあ、私が言うのも何だが………大きくても良い事はないぞ? 肩凝りは酷いわ、仕事の邪魔になるわで………」

 

磯風「…………まあ、いいさ。 如何に厚い胸部装甲が司令の好みだろうが、過ぎたる物はなんとやらだ。 無駄なバルジと同じく、戦闘での遅れになっては話にならんからな」

 

??「………………」

 

冥琳「意味はよく判らないが、納得してくれればそれで良い。 中には、人の苦労も知らずに己の良さを欠点と蔑み、私の様な者達へ敵対行動を起こす者も居る始末………」 

 

磯風「ふむ……虚しいものだな」

 

??「………………チッ」

 

冥琳「ああ、実に嘆かわしい。 『煮豆燃豆? 豆在釜中泣』と言うように、なぜ同じ人であるのに関わらず、身体の大小で価値を決めて争わなければならないのか」 

 

??「………持てない者の悲しさを理解しようともしないくせに。 『豊満安んぞ俎の悲哀を知らんや』──貧乳に仇なす巨乳なんて、この世から滅んでしまえばいいのよ……」

 

冥琳「………ふっ、孟子曰く『人必ず自ら侮(あなど)り、然る後に人これを侮る』───あまり感心しない振る舞いをすると、北郷に嫌われる一因になるぞ………桂花」

 

桂花「────ッ!?」

 

 

 

 

説明
今日が終戦の日だと知り、慌てて書いて投稿しました。 
8/31に追記しました。 前にも書きましたが、11月まで更新しないつもりです……多分。
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コメント
未奈兎提督 コメントありがとうございます! 早く凛々しい曹孟徳に戻らせるよう頑張ります。(いた)
どんどん華琳ちゃん化が深刻になっていく(未奈兎)
mokiti1976-2010提督 コメントありがとうございます! 確かに良い表現とも思えませんので、変更します。 『泣いた〜』は追記で入れるつもりですが、著作権がある物語だと分かり、どうアレンジして入れようか悩んでいます。 もしかすると変更も?(いた)
『終戦記念日』と『終戦の日』のどっちが正しい表現なのでしょうね〜。とりあえず『泣いた赤鬼』を出して来た意味が気になります…これは後日追記分でって事で良いのですかね?(mokiti1976-2010)
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