PokemonSM CosmosEpic 30:霊の試練
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ウラウラ島で二つ目の試練に挑むために、ヨウカはアセロラについていき海岸にある、とある建物に到着した。

 

「ここは・・・」

 

その建物をみたヨウカはポカン、と立ち尽くしてしまった。

アセロラにつれてこられた場所は、単刀直入にいうと潰れたお店だったのだ。

窓にはひびが入りペンキは薄くなっていて、カラフルだったのであろう看板も錆水によるものだろうか不気味な装飾となってしまっていた。

そんな店の姿を見たヨウカに、アセロラは説明をする。

 

「ここはスーパー・メガやす跡地って場所なんだよ」

「スーパー・メガやすって・・・ロイヤルアベニューにあるあの大安売りで評判の店のこと?」

「んんー、そうだねぇ。

ここが潰れてから店長は別の場所に移動しちゃったというし・・・多分同じ人なんじゃない?」

「そっか・・・。

・・・ってアセロラちゃん、もしかしてあなたの試練が行われる場所って・・・ここ?」

「そうだよ!」

 

確かにここなら、アセロラが得意とするゴーストタイプのポケモンがすむにはうってつけかもしれない。

それにしたって不気味だなぁ、とヨウカが思っているとアセロラは試練について説明するというのでそちらに耳を傾ける。

 

「あたし、アセロラの試練はねぇ・・・。

このお店の中にいるぬしポケモンを写真に撮ることだよ!」

「ぬしポケモン・・・ここにいるんだ」

「途中で怪しいものがあったら、このロトムで写真を撮ってみてね!

そしてここに戻ってきて、あたしに確認させて・・・撮影に成功してたら試練達成だよ!」

「・・・わかった!」

 

これは試練なんだ、と自分に言い聞かせてヨウカはうなずき返した。

彼女が試練に挑むことを確認したアセロラはにっこりと笑って試練開始の合図を告げた。

 

「それじゃ、アセロラの試練のぉー・・・はじまりはじまりー!」

「よっしゃ、やったるでぇ!」

 

アセロラに見送られながら、ヨウカはメガやす跡地に入っていったのだった。

 

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メガやす跡地は薄暗く、ボロボロだった。

特売セールのチラシが散らばっており、商品が並んでいたであろう棚は倒れている。

おまけにほこりっぽく、ライトもついていない。

持っていた懐中電灯を回しながら周囲を確認しながら進むヨウカの身体はふるえていた。

 

「・・・気合い入れて入ってみたはいいけど・・・やっぱこわいよー!」

「ヨウカ・・・じつはボクも、ユーレイはニガテなんだロト」

「ほぇ、そーなん?」

 

ロトムの意外な弱点を知ってポカンとしつつ、ヨウカは懐中電灯で怪しい場所やぬしポケモンを探した。

アセロラの話では、怪しい場所を見つけ次第シャッターを押せば姿を見せる可能性が高いとのことだ。

どこかにないかと懐中電灯を動かしていると、ライトが当たった瞬間に大きな物音がした。

 

「きゃー!

なん、なん、なんかうごいたよぉぉー!」

 

その物音にビックリして叫ぶヨウカの目の前で、商品を流すためのベルトコンベアが動いていた。

なんで電気が入っていないのに動くんだ、と怖がりながらもヨウカはロトムに頼んでシャッターを押してもらう。

シャッターを押した瞬間、目の前にゴーストタイプのポケモンであるゴースが姿を見せた。

 

「ごーすっ!」

「いやぁー!」

 

叫び声をあげながら、ヨウカは咄嗟の判断でサンくんを出した。

 

「さ、サンくん・・・メタルクロー!」

「サァン!」

 

ヨウカの指示にあわせてサンくんはゴースを攻撃した。

次に飛んできたゴースのシャドーボールを丸くなることで防いだあとで、つららおとしを食らわせて戦闘不能にした。

 

「ほわわぁ・・・ビックリしたぁ・・・ありがとうサンくん!」

「サンッ」

「次もヘンなポケモンが出てきたら・・・よろしくね」

「サーン」

 

そう言いながらヨウカはサンくんを出したまま先へ進んでいく。

途中で古びたカートがガタガタ音を立てながら小刻みに動いたり、取り残されたぬいぐるみが突然宙に浮かぶという現象に見舞われ、そのたびにヨウカが悲鳴を上げるということがあった。

だがそれらすべては、ここにすんでいるゴーストポケモンの悪戯だった。

すぐにサンくんが飛び出して、そのゴーストポケモンを相手に果敢に戦ったのだ。

 

「サンくんって結構勇敢だね。

あたし怖がってばかりなのに、自分からゴーストポケモンに挑んでいくんだもん」

「サッド!」

 

任せて、と言うかのようにサンくんは自分の胸をたたいた。

そんなポケモンの姿に頼もしさを感じてほほえんでいると、遠くの方でなにかが移動しているのを発見した。

 

「・・・ロトム、いまのみた?」

「ちょっとだけなら、みえたロト」

 

ヨウカとロトムが目撃したもの。

それは黄色いからだに長い耳、ぎざぎざの尻尾。

それらの特徴を持つポケモンを、彼女達は知っている。

 

「・・・今のって、ピカチュウなんかな?」

「うーん・・・いっしゅんだったからブンセキしにくかったロト」

「・・・ようし、追いかけてみよう!」

 

先ほどみえた、ピカチュウらしき影をヨウカはロトムやサンくんとともに追いかけた。

その先にあったのは、人一人分のドアだった。

 

「・・・このおくかな・・・?

あけてはいるよ、準備オッケー?」

「オッケーだロト」

「サッド!」

 

ロトムとサンくんをみてヨウカは頷き、ドアを開けた。

 

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ピカチュウらしき存在を追って、メガやす跡地の奥にある扉を開けその部屋に入ったヨウカ達の視界に奇妙な光景が広がった。

 

「ここは・・・」

 

部屋の壁にはいくつもの、ピカチュウの写真やイラスト、新聞記事などがべったりと貼られていた。

帽子をかぶった少年の肩に乗るピカチュウ、服を着ておしゃれに着飾ったピカチュウ、耳に傷のあるピカチュウ、花飾りをつけたピカチュウ、青い目を持ちサーフボードに乗ったピカチュウ、前髪に当たる部分の毛がはねているピカチュウ、どんぐりを持っているピカチュウ、リボンをつけた女の子と一緒にいるピカチュウ。

様々なところで日の目を見ているピカチュウの姿を描いたものばかりが貼られた部屋。

この部屋はいったい何のために存在しているのだろうと、ヨウカが周囲を確かめようとしたとき、背後に気配を感じて瞬時に振り向いた。

 

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 

沈黙が、訪れる。

目の前にいるのはピカチュウのような形をしたもの。

 

「うわわわわわぁぁぁぁ!!?

で、で、でたぁぁぁ!!」

「ミ、ミタァー!」

 

ヨウカと同時に声を上げて、そのピカチュウのようなものはヨウカの前に現れる。

ロトムは、図鑑を開いてそのポケモンの正体を告げる。

 

「あれは、ミミッキュというポケモンだロト!

しかもこれ、ふつうのサイズよりずっとでかいロトー!」

「じゃ、じゃあこの子・・・ぬしポケモン!?」

「カノウセイはたかいロトッ!」

 

そう話をしている間にもぬしのミミッキュは戦う体制に入り、ヨウカの近くにいたサンくんを敵と認識すると、シャドークローで攻撃してきた。

 

「サンくん、まるくなるからのアイスボール!」

 

サンくんはまるくなることでシャドークローから身を守り、そこからアイスボールでミミッキュを攻撃する。

そしてまるくなるを解除してミミッキュにたいし相性のいいメタルクローで攻撃した。

だがミミッキュがそれで簡単に倒れてくれるわけがなく、シャドーボールを乱射して反撃に出てきた。

 

「タフやねっ」

「サイショのアイスボールはとくせいのばけのかわによって、ボウギョされていたようだロト!」

「そゆことか!」

 

だったら、とヨウカはもう一度まるくなるを指示してミミッキュの攻撃をガードさせる。

直後にミミッキュは野生のゴースを呼び寄せてとなりで戦わせようとしたが、サンくんのアイスボールですぐに撃退し、ミミッキュごと攻撃する。

アイスボールを受けた直後に追撃でメタルクローを食らわし、一気に体力を奪う。

サンくんの怒濤の攻撃により追いつめられたミミッキュはフルパワーのシャドーボールを放ってきた。

 

「みっきゅ?」

「ミィィ・・・!」

「えっ!」

 

サンくんはこうそくスピンのスピードを利用して部屋を高速で移動することでシャドーボールを回避したのだが、シャドーボールの先にはふつうのサイズのミミッキュがいた。

ぬしのミミッキュも、そのミミッキュの登場に対し驚いているようだ。

 

「危ない!」

 

このままではあのミミッキュにシャドーボールが当たってしまうと思われたそのときだった。

ヨウカはその小さなミミッキュに飛びつくとそのポケモンを抱えて飛び上がる。

彼女の咄嗟の行動によって、そのミミッキュがダメージを受けることはなかった。

腕の中にいるミミッキュをみて、外傷がないことを確認したヨウカは安心する。

 

「キュー?」

「・・・よかったぁ、無事みたいやね・・・。

さ、ここは危ないからはやく、出て行った方がいいよ」

「・・・きゅ」

 

ミミッキュにそう呼びかけつつ、ヨウカは部屋の扉を開けてそこからミミッキュを部屋の外へ出した。

扉が閉まり、これでミミッキュは大丈夫だと確信したヨウカは再び戦う体制に入った。

 

「さ、勝負を続けよ・・・」

「・・・」

「・・・あれ?」

 

だが、ぬしポケモンのミミッキュはそのままじーっとしたまま、動かなくなった。

ヨウカの方を見つめているようだが、さっきまでの戦闘意識は感じられない。

ロトムは動きが止まった今だと思い、ミミッキュに向かってシャッターを切る。

 

「イチオウ、シャシンをとったロト」

「・・・キュー・・・キ・・・キー・・・」

 

ロトムが写真を撮ったことを確認したらしい、ミミッキュはそのままその場を去っていってしまった。

その場に残ったヨウカは、ポカンと立ち尽くした。

 

「・・・いっちゃった・・・。

写真撮ったから、これで試練達成でいいのかな?」

「うーん・・・アセロラにカクニンしてみたらいいロト。

いちどもどって、カクニンとるロト?」

「そうしてみよっか・・・」

 

ヨウカ達は一度、ここをあとにするのであった。

 

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「やっほー、待ってたよー!」

「あ、うん!」

 

メガやすの跡地の、その外。

アセロラはずっとここで待っていたらしく、ヨウカの姿を見るなり笑顔で駆け寄ってきた。

 

「どう、写真にとれた?」

「うん、頑張ってみたよ。

みてくれる?」

「はーい、みまーす」

 

そう言ってアセロラはロトムの写真データを確認した。

そして一枚の写真に写っているポケモンをみて、満足な笑みを浮かべる。

 

「わぁー、このこはぬしポケモンのミミッキュだね!

この子ってなかなか写真に撮らせてくれないんだよ」

「せやの?」

「うん、条件を満たしているし・・・あなたの試練合格を認めちゃうよ!」

 

その言葉と一緒にアセロラが取り出したのは、濃い紫色のZクリスタル・・・ゴーストZだった。

 

「ありがとう、アセロラちゃん」

 

そのクリスタルを受け取り、ヨウカはアセロラにたいし礼をいう。

彼女の実力にたいし個人的に考え込んでいるアセロラをよそに、ヨウカはこのメガやす跡地で体感した出来事を振り返った。

 

「・・・」

「どーしたの?」

「うん、実はね・・・」

 

ヨウカはそのミミッキュに出くわしたときの話をした。

ピカチュウ関係のもので埋め尽くされた、メガやす跡地の中にある、奥の部屋のことを。

そこでぬしポケモンのミミッキュを発見して戦ったこと、そして他のミミッキュが巻き込まれそうになって助けたら、ミミッキュは戦いをやめて写真を撮らせてくれたことを。

だが、話を聞いていてアセロラはクスクスと笑い出したのだ。

なにを笑ってるんだろうとヨウカが首を傾げていると、アセロラは衝撃の事実を突きつけてきた。

 

「なにを言ってるの?

もしかして、あたしを怖がらせようとしているとか?」

「えっ」

「だって奥の方には・・・部屋なんてないんだもん」

 

その衝撃の事実に、ヨウカの表情は固まった。

 

「・・・え・・・」

「・・・あれ、なんか風が涼しくなって・・・いや、さむくなってきた・・・?

帰ろっか・・・?」

 

そう言ってアセロラはエーテルハウスにむかって歩き出した。

ポカンと立ち尽くしてたヨウカは、やがて身を震わせる。

 

「あうぅ・・・」

 

ヨウカも寒気を感じたらしい。

早足でメガやす跡地を離れ、エーテルハウスへ帰って行ったのだった。

 

「・・・」

 

そんなヨウカの後ろ姿を見つめる影には、誰も気付いてはいないのであった。

 

説明
この試練もなかなかに怖かったですね。
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