真・恋姫無双 〜黄龍記〜 第四話
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真・恋姫無双 〜黄龍記〜

 

 

第四話

 

 

黄巾賊討伐編 中編

 

 

責任・・・進むべき道

 

 

 

義勇軍陣地

 

一刀は内心困惑していた。

 

何の前触れも無く深夜に訪問して来た盧植将軍が連れて来た女性。

 

ぽわわんとした天然の雰囲気を持った美少女、彼女が三国志を代表する英雄の一人にして、後に蜀の国を建国して皇帝の座に就く人物だと言うのだ。

 

そしてそんな彼女に付き従う女性達。青龍偃月刀を持ち黒髪を束ねた美少女と、自身の身長の倍はあろうかと言う得物・丈八蛇矛を持つ少女。

 

この二人が劉備と義兄弟の契りを結んだと言われる万夫不当の名将関羽雲長と、曹操軍を唯一騎で退かせたと言う猛虎将張飛翼徳だと言う。

 

三国志の詳細を知る一刀にしてみれば「有り得ない!」、この一言に尽きるだろう。

 

だが桜=徐晃の例もある為、そう言う事もあるかと(無理矢理)自分を納得させた。

 

深く考える事を止めたとも言うが・・・・・

 

 

その後、気を取り直した一刀は彼女達を天幕へと迎え入れて歓談する事になった。

 

正式な自己紹介に始まり、天の御使いと噂される事の真偽、それに対する一刀の否定と説明などなど、始めて会ったとは思えない程に一刀達と劉備達は打ち解けあい、終いには真名で呼ぶ事を許すまでになっていた。

 

そして一通り話題が尽きた頃、盧植将軍が本命の話を切り出してきた。

 

 

「さて一刀よ、今後の事だが如何する? 黄巾賊は御主の率いる義勇軍に対しては過剰に警戒して積極的に攻撃を仕掛けてこなくなった。

こうなると寡兵の義勇軍では動き様があるまい?」

 

「そうなんですよ、一度仕掛けて来ないなら此方から!、と思って攻撃を仕掛けてみたら敵に取り囲まれそうになりましたよ。まあその時は逸早く囲まれる前に気付いたおかげで無事脱出出来ましたけどね。

けど敵の狙いが解って迂闊に仕掛けられなくなりました。それで桜と善後策を考えていたんですけど・・・」

 

「良い考えは無い、と」

 

「あははははは、その通りです。敵を挑発したりと色々試しましたけど、一向に乗って来ません。

余程警戒してるんでしょうね。こうなると数の少ない義勇軍だけじゃあ打つ手がありません。出来れば官軍の兵を借りたい所なんですけど・・・・・無理ですよね」

 

「無理じゃな。唯でさえ押されている状況の中、正規兵を義勇軍に貸すなど馬鹿な将軍達が認めまいよ。

わしの軍に余裕があれば貸してやらん事もないのじゃが、わしの采配で動かせるのは騎兵五千のみ。

その上遊撃部隊として黄巾賊牽制の役割があるからとてもそんな余裕はない」

 

 

盧植の言葉に「でしょうね」と力無く言うと一刀は肩を落とした。

 

 

「一刀様、少々報告したい事が・・・・・」

 

 

丁度その時、天幕の外から一人の兵士が話し掛けて来た。

 

その声を聞いた一刀は『ぴくっ』と一瞬眉を動かした後、皆に一声掛けてから早足で天幕を出て行った。

 

声を掛けて来た兵士。身形こそ義勇軍の一般兵士と同じ姿だったが、声を聞いた一刀は直ぐに気付いたのだ。

 

その兵士が玄武の長だと言う事に・・・・・

 

 

一刀が席を外して十分程たった頃、当の一刀が戻ってきた。

 

何かありましたかと聞く桜を抑え、一刀は真剣な顔で盧植と向き合った。

 

そして・・・・・

 

 

「盧植将軍、申し訳無いが軍を離れる許可が欲しい」

 

 

突然突拍子の無い事を頼むのだっだ。

 

 

 

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『軍を離れたい』

 

いきなりの申し出に盧植将軍も咄嗟に言葉が出なかった。

 

だが一刀の真剣な顔と眼を見て、何か深い訳と理由がある事を盧植は感じ取った。

 

そして一瞬、盧植は詳しい訳と理由を聞こうと考えたが止めた。

 

一刀が広宗に来てからと言うもの、一緒に酒を飲んだり愚痴に付き合ってもらったりとまるで祖父と孫の様に接してきて、それなりに一刀とは親しくなれた。

 

そんな一刀が詳しい訳や理由も話さず軍を離れたいなどと言うからには余程の訳と事情があるのだろう。

 

そう考えると盧植は何も聞けなかった。

 

 

「・・・判った、将軍達にはわしから話しておこう。

どのみち今の状況では義勇軍の活躍は期待できん。それ所か将軍達の中にはここ連日の様に黄巾賊と戦おうとしない御主率いる義勇軍を裏切り者呼ばわりして危険視する馬鹿もいる。

軍を離れたいと言うなら今が丁度良かろう。それに何をするつもりかは知らんが少なくともワシらが不利になる様な事はせんじゃろうしな」

 

 

確認する様な盧植の言葉に一刀は確りと頷く。

 

それを見届けた上で、盧植は馬鹿な将軍達の下へと早速報告に向かった。

 

そして桃香、愛紗、鈴々の三人も自分達の陣地に戻って行った。

 

最も戻る前に「どうして軍を離れるんですか?」とか、「理由を教えて下さい」と迫られ、終いには「天の御使い様と一緒に戦えると思ったのに・・・」等と言われて落ち込まれたりしてかなり大変だったが・・・・・

 

更にその後、何故か桜が不機嫌になっていて暫くの間 一刀は必要最低限の会話しかして貰えなくなったりするのだった。

 

 

 

 

翌日・明朝

 

急ぎ出立の準備を整えた一刀率いる義勇軍は冀州・広宗を離れてある場所に向かった。

 

冀州に存在する今は廃棄されて使われなくなって久しい古城。

 

 

そう、一刀に仕える忍・玄武、彼等の調べにより判明した大賢良師と渾名される張角と、その妹張梁、張宝のいる古城。

 

その古城に一刀達は向かったのだった。

 

 

そしてそれから数日後、一刀率いる義勇軍は張三姉妹と黄巾党が立て籠もる古城に到着していた。

 

 

 

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「あの古城に居るんですね、黄巾賊の総大将と目されていた張角、張梁、張宝の三人が」

 

「ああ、城内に居る人の数は五万を超える、その全てが彼女達の熱狂的な支持者だそうだ。

廃棄されていた古城は支持者の中に居た技術者達の手で多少なりとも立て直されているらしいし、城内は同じ支持者の富豪や豪商達の援助で小さいながらもそれなりの賑わいを見せる邑みたいにまでなっているらしい。最早普通の城と大して変わらないな。

最も城を守る兵士としてまともに戦えそうなのはその内約一万程度、残りは色々な階層の人達で彼女達がここに居ると聞いて集まっているに過ぎない、と」

 

「成る程、それでどうしますか?

見た所城門は完全に閉められてますし、城壁の上には弓を手にした人達がこちらを伺ってますけど」

 

 

桜の言う通り城門は頑丈な閂を掛けられ、城壁上には「来るなら来て見ろ!」と言わんばかりの兵士達が戦う気満々でこちらの様子を伺っていた。

 

 

「何て言うか、戦う気満々だね。戦をする為に来たんじゃ無いんだけどな」

 

「仕方ありませんよ。向こうからすれば官軍だろうと義勇軍だろうと自分達を討伐に来たとしか思えないでしょうから」

 

「確かにね。まあ取り敢えずこちらに敵意が無い事を報せて置こうか」

 

 

そう言うと一刀は全軍待機の命令を出し、自ら使者として古城に向かおうとする。

 

慌てて桜が一刀を止めようとするが・・・・・

 

 

「大丈夫、いきなり殺される様な事は無いよ。

それに使者として弁の立つ者が義勇軍には居ないからね〜〜。仕方ないさ。

そんなに心配なら桜も一緒に行く?」

 

 

と、言われてしまい仕方無く桜は一刀と共に古城へと向かうのだった。

 

そして一刀は古城の城門近くまで来ると城兵に用件を言い放つ。

 

 

「我が名は并州義勇軍の総大将北郷一刀。

ここに黄巾党の者達が崇める大賢良師張角と、その妹張梁、張宝の三人が居る筈、彼女達と話し合いがしたい為、取り次いで貰いたい」

 

 

一刀の言葉に城兵達が戸惑いを覚えて騒ぎ始める。

 

恐らく皆が皆、自分達を問答無用で討伐に来たと思っていたのだろう。

 

そんな中で話し合いがしたいとの言葉、城を守る城兵達が戸惑うのも無理は無い。

 

暫くすると城兵の一人が何処かへと駆け出した。

 

察するに上、つまり張角達に御伺いを立てに行ったのだろう。

 

 

「一刀様、張角達は会ってくれるでしょうか?」

 

「多分ね。彼女達も自分達の置かれた状況を理解している筈だから、その状況を打破する為にも会ってくれると思うよ。

それに俺達は義勇軍、腐った官軍ならいざ知らず、人々の為にと立ち上がった義勇軍なら話し合う価値は十分あると向こうも考える筈だ」

 

「なるほど、確かにそうかもしれませんね」

 

「それにさっき俺は彼等の事を黄巾賊とは呼ばずに黄巾党と呼んだ。

つまり彼等の内情と状況を詳しく知っていると遠回しに伝えたんだ。その意図を察してくれれば先ず間違いなく会ってくれる筈さ」

 

 

暫くすると一刀の言葉を証明する様に城門が開かれて城内に招き入れられた。

 

そして城兵の案内の下、一刀達は城内の住居の中でも比較的まともな屋敷に連れて来られた。

 

そして一刀達は出会う。正史では黄巾党を率いて漢帝国転覆を企み、その結果歴史に悪名を残す事になった人物達に・・・・・

 

 

「へーーー、貴方が天の御使いって噂の人なんだ。結構かっこいい」

 

「うんうん、確かに」

 

「ちょっと姉さん達!まだ彼らが敵じゃないって決まった訳じゃないのよ!」

 

 

最も、この世界では流れの旅芸人として高い人気を誇り、一種のカリスマ性を持つアイドル姉妹でしかなかったのだが・・・・・

 

 

 

 

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数日後

 

 

一刀は天和(張角)、地和(張宝)、人和(張梁)の三人を無事仲間に加える事に成功していた。

 

数日前に行われた会談で一刀は彼女達の置かれた立場と事情を知って助けたいと申し出たのだ。

 

無論、突然の申し出に三人が素直に頷く訳も無かったのだが、一刀は根気良く彼女達を説得した。

 

 

幾ら利用されただけとは言え、反乱の首謀者に祭り上げられた以上は身の安全の確保は困難。

 

何よりもいずれは反乱の首謀者として官軍に、或いは真の首謀者達に口封じの為に殺されるだけ。

 

そうなる前に身の潔白を証明しなければならない。そこで一刀は自分達が利用されただけである事を広く喧伝した上で、彼女達に黄巾賊討伐の為の兵を挙げて貰う事にした。

 

即ち自ら討伐の兵を挙げる事で身の潔白を証明しつつ、黄巾賊の士気を下げる。

 

更に張三姉妹が利用されていただけだと知らずに黄巾賊に属してしまった彼女達の支持者達を引き抜いて黄巾賊の戦力を低下させつつ、逆に自軍の戦力を高める。

 

一石二鳥、いや一石三鳥の策を一刀は彼女達に提案したのだ。

 

結果、始めは戦場(近く)に出る事を怖がって拒否していた三人だが、他に助かる道が無い事と常時護衛として黄巾党の兵士達を彼女達の傍に十分就かせる事で納得して貰った。

 

こうして晴れて張角、張宝、張梁の三姉妹は一刀の仲間になったのだった。

 

 

そして一刀はすぐさま玄武に命じて周辺の邑や県城に噂を流し、更に張三姉妹も黄巾党に属する様々な階層の者達に頼んで広く噂を広げて貰った。

 

噂の内容は勿論、張角、張宝、張梁の三姉妹は黄巾賊の首領などではないと言うもの、その上で彼女達の名を利用して栄耀栄華が企む真の首謀者達の名が各邑や城の城門に貼り付けられたのだった。

 

やがて噂の内容が人々の間に浸透しきった時、

 

 

「皆さん! 私達は今日立ち上がります!」(人和)

 

「私達を利用した悪人達をやっつける為にぃーーー!」(地和)

 

「みんなーーー! がんばってねーーーーー♪」(天和)

 

「「「「ほわぁあああああああっ!!!」」」」(黄巾党の者達)

 

 

・・・・・彼女達は立ち上がったのだった。

 

 

 

 

 

因みに一刀達はその様子を少々(?)不安げに眺めていたのだが、些細な出来事である。

 

 

「・・・少し早まったかな?」

 

 

・・・・・・些細な出来事である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お待たせしました。第五作目の更新完了です。

 

中途半端な所で話が止まってしまって申し訳ない。

 

改めてお詫びします、申し訳ありませんでした。

 

さて、物語の方は黄巾賊討伐の章の終盤に差し掛かりました。

 

後二話か三話で黄巾賊の話は終わる予定ですのでお楽しみに。

 

 

では次回をこうご期待!

 

 

説明
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コメント
名前を捨てないのは珍しいですね・・いいと思います(明夏羽)
めずらしいパターンですね。(ブックマン)
無理をせずに頑張ってください!(キラ・リョウ)
次回楽しみにしています!!無理せず自分のペースでがんばってください(HIRO)
遅くても満足ですので頑張ってください!(cielo spada)
更新楽しみにしてるけど無理しないでがんばってね〜(motomaru)
誤字らー! 2P 「そして桃花・・」×→「桃香」○(thule)
ごめん追加タグ・桃香・漢字違いですお(st205gt4)
おー段々ドンドンおもしろくなってきた!更新は自分のペースでいいのでは?無理だけはしないで下さい(st205gt4)
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真・恋姫無双 黄龍 北郷一刀  劉備(桃香) 

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