真・恋姫†乱舞 第00話〜出会い〜
[全7ページ]
-1ページ-

 

 

―――俺が望んだのは仲間の幸せ。

 

――――僕が望んだのは安住の地。

 

―――俺達が求めるは一つの幸せでは無く…

 

――――僕たちが求めるのは一つの物でもない。

 

 

――――欲しい物は幾らでも手に入れる。

 

 

―――例え罪人になろうとも。

 

――――例え殺人鬼と呼ばれようとも。

 

―――例え世間・世界にとっての『悪』と呼ばれる行為でも。

 

――――僕たちにとっての『正義』なら、敢えてこう名乗ろう。

 

 

―――我ら『悪魔なり』っと。

 

 

-2ページ-

 

 

―――とある貴族邸―――

 

 

「い、いやっ!」

 

「くっはっはっ!いいぞ、もっと泣け!その方が興奮するという物だっ!!」

 

 

この館の一室で若い女の悲鳴が聞こえるが、その廊下を通る者は皆何も聴こえない振りをして通り過ぎる。

 

この館の主は俗世間で云う、最低な者であった。

 

権力に物を言わせ、街の税を上げて払えぬなら若い娘を差し出せなどと言う者であった。

 

その他にも賄賂・裏奴隷市場などを大っぴらに経営していたが、刺史で在った為に誰も指図出来なかった。

 

 

―――権力が全て物言う時代では当たり前。これが『この時代の常識』であった。

 

 

寝台が軋み上がる。その上で美しい…いや、その手前の蕾が開く前の可愛い少女が顔を歪めて助けを呼ぶ。

 

 

「無駄だ。この館にはワシの部下しかいない。どんなにワシに敵意を持とうと、刺史であるワシに楯突こうという馬鹿はいまい!」

 

 

 そう言いつつ、初老をいっていると思われる男が、下種の笑みを浮かべながら少女の衣服を破く。その行いに少女は心砕けそうになる。

 

 誰も助けてくれない事くらい、少女も分かっていた。でも、希望を捨てたくは無かった。

 

 だから、願った。

 

 

「(誰か…)」

 

 

 だから、叫んだ。『この時代の常識』を壊してくれる……助けてくれる者を。

 

 

「…誰か、助けてください!!!」

 

 

 精一杯叫んだ。その願いは………届いたのだろうか?

 

 

「ちっ!流石に煩いのう。大概にしないと…」

 

「―――どうすんだい、包茎野郎?」

 

 

-3ページ-

 

 

 

―――否、届いていた。

 

 

「なっ!?」

 

 

 男が、声が聴こえた方を向けば、そこには開けた覚えのない窓の淵に座り込んでいる者がいた。

 

真黒な軍用靴に漆黒のジーンズ。明らかにサイズの違う大きなカッタ―シャツの第一から第三までのボタンを外し、深紅の外套を羽織った金髪の青年が居た。

 

 

「貴様!何処から入った!」

 

「んっ?そんなもの、決まっているだろ?……」

 

 

男が声を荒げるが、青年はその強気な虹彩異色症〔ヘテロクロミア〕と思われる金色[右]と銀色[左]の瞳で睨むと男が威圧され黙る。

 

しかし、青年は睨んでいたのではなく考えていた。

 

 

「………はて?何処から忍び込んだんやら、忘れちまった」

 

 

 男と少女はずっこけた。

 

 少女は期待していた。若しかしたら、自分を助けてくれるのかもと。しかし、無理そうであった。目の前の青年は頭に『?』マークを浮かべて首を捻っていた。

 

 心の中で両親に『今日、自分はこの爺に女にされます』と懺悔している少女を余所に、男は大声で兵を呼ぶ。

 

 しかし、何時まで経っても来る気配がない。

 

 

「どうなっているっ!?どうして、誰も来ない!?」

 

「―――アンタに嫌気が差したからさ」

 

 

 とても冷たい、感情が篭もっているようには到底思えないほどの声が聴こえた。

 

 発したのは先ほどの、と呆けていた青年であった。

 

 

「どうして、ここにいるか?答えはいたって簡単!誰一人としてアンタに報告、騒がないように促したからな…」

 

「くそっ!なぜだ!?」

 

「金で雇った者は、所詮金の為にしか動かん。大金を積めば、簡単に裏切る…。アンタはそれを知っているはずだぜ?金をケチらずに大金を出せばよかったな?」

 

 

 男は焦って裸のまま、逃げ出そうとした。

 

 だが、何もかもが遅すぎた。

 

 男は何もなに場所で、盛大にこけた。同時に激痛が襲う。床とぶつけた場所では無い、脚がだ。

 

仰向けになり、己が脚を見るがそこには何も無かった。

 

そう、何もない。在るのは…真っ赤に染まっている床だけ。そして、気づいた。自分の脚はこの青年に斬られた事を。

 

 

「遅いんだよ、何もかもが。俺に会ってから逃げるんじゃ意味がない。最近、在る噂が起っていると思うのだが?」

 

「う、噂?……っ!!?」

 

 

 男は思い当たった。最近、近くの州ではこのような噂が流れていた。

 

 

―――新月が近い時、もしも赤い外套を羽織った青年と蒼い外套を羽織った青年を見かけ、自分が悪行をしている際は逃げろ。奴らには『常識』などない殺人鬼。その名を―――

 

 

-4ページ-

 

 

「双月妖魔〔そうげつようま〕!『紅月の悪魔』か!?」

 

「別名『風の射撃者』又は、『天空の帝』などと言う異名で呼ばれております。まぁ、それでも正解♪正解者には死を送りましょう!」

 

 

 愉しそうな声を上げながら、どこからか取り出した両刃剣〔西洋剣〕を取り出し、振り上げる。

 

 

「ま、まてっ!?金か、金ならいくらでも出そう!?女が欲しければどんな美女でもくれてやる!だから・・・」

 

「いらねぇよ。俺“たち”は欲しい物は自分“たち”で手に入れる。行きたい場所に行き、やりたい事をやる。お前が俺“たち”に出来る事は唯一つ。その命を差し出す事だけ」

 

 

 死刑宣告に顔を歪ませ、恨みを込めて叫んだ。

 

 

「くそっ!!悪魔が〜〜〜っ!!!」

 

 

 そして、ここにここの……陳留の刺史の終端を迎えた。

 

 

「……悪魔、か。ふん、知れた事」

 

 

 青年はそう呟くと西洋剣を“消し”て、寝台の上で呆けている少女をみた。

 

 

「…………」

 

「…………えっと、大丈夫か?ペチャパぶるっ!!?」

 

 

 取り敢えず、呼びかけてみようと身体的特徴で呼んでみたが、物凄い速さで殴り飛ばされた。

 

 

「助けられて何ですが、人の気にしている所を不用意に言うのは礼儀として、どうでしょう?」

 

「いけない事だと思いました。はい」

 

 

 少女も救ってくれた者に対する、仕打ちでは無いと思っていたが雰囲気的にそうしなければいけない気がした。

 

 

――――――???〔少女〕のレベルが上がった!Skill−THUKKOMI[ 突っ込み]を会得した。

 

 

「???なに今の?」

 

「電波だろ?」

 

「???」

 

「気にするな、流せ」

 

 

 いつの間にか復活した青年が言うが、この時代の者に電波は通じなかった。

 

 その時、コツコツという足音が聞こえてきた。

 

 段々と近づいてくる足音に、少女は怯え青年の後ろに隠れる。やはり、先ほど犯されかけた事がトラウマとなっているようだ。対照的に青年はかったるそうに扉に近づく。

 

 同時に扉が開いた。

 

 

「……あれ、まだ居たのですか?何か気配がすると思って来てみれば………仕事が終わったらとっとと帰還する貴方が何故…?」

 

 

 入ってきたのは男の番兵では無く、青年と同じくらいの背丈の銀髪の青年であった。

 

 優しそうな顔つきに深紅の瞳。和服に下駄。その上に蒼い外套を腕を通さずに、肩に掛けていた。

 

その銀髪の青年が、少女に気づくや否や金髪の青年に近づて、イヤラシイ笑みを浮かべながら耳打ちする。

 

 

-5ページ-

 

 

「……紲〔キズナ〕とうとう襲ったんですか?」

 

「光魔〔ミツマ〕、それは辞世の句として受け取るぞ?」

 

 

 銀髪の青年―――光魔の発言に青筋を立てながら威圧する金髪の青年―――紲。

 

 光魔が『冗談ですよ』と言いながら後退すると、紲も威圧感を消した。少女はその威圧感に呑まれていたがすぐに、気を取り戻した。

 

 

「それより、光魔?」

 

「計画は滞りなく、もう直、官軍がここへ到着するでしょう」

 

 

 少女は二人が何者知らないが、救ってもらった以上、礼を言おうと話しに入ろうとして。

 

 

「そんじゃ、まぁ。いつも通り」

 

「退散しましょう。このままじゃ、捕まって殺されてしまいます」

 

「…はいっ?」

 

 

 思考が停止した。

 

 そうだ。もともと、この人達は何者?どうして、ここにいて、男を殺した?権力を持った人を殺すなんて…。

 

 少女はそう考えて知らない内に乞うような言葉が出た。

 

 

「…貴方達、何者なの?こんな事して…殺されるわよ?」

 

 

-6ページ-

 

 

 二人は顔を見合わせて、強気な笑みでこう言った。

 

 

「そんな事知るかよ」

 

「僕たちは自分で良かれと思った事をしただけ」

 

「この世の常識?そんな物、知らん」

 

「僕たちはこの世界の者では無いので」

 

「例え、世界にとって悪でも…」

 

「自分の正義を偽るくらいなら…」

 

「高らかに!」

 

「宣言しましょう!」

 

『俺(僕)達は「悪」だと!』

 

 

「俺は『紅月の悪魔』――無時 紲〔ムトキ キズナ〕だ」

 

「僕は『蒼月の悪鬼』――火雅 光魔〔カガ ミツマ〕です」

 

 

 

「世間からはこう呼ばれている」

 

 

 

『常識外れの狂者。―――双月妖魔』

 

 

 

 これが私、司馬徽[シバキ]こと白亜[ハクア]とツンデレ紲と天然光魔との出会いであった。

 

 

 

〜〜真・恋姫†乱舞〜〜第00話――出会い――

 

 

 

-7ページ-

 

 

 後書き

 

ハッキリ言いましょう。続きません。もう一つの小説が進行が遅れそうなので、一刀のもとの性格となった小説を投稿しました。

 

この小説は、時間軸、出会い、三国志の設定を無視したものです。駄文ですがよろしくお願いいたします。

 

多分、続編書いても進行が遅いし、文も短いです。それでよければ気長にお待ちください。

 

 

 

 

―――紹介―――

 

時間軸………『真・恋姫†無双』が始まる5、6年前。

 

『双月妖魔』

 

 この乱世に舞い降りた乱世を破壊する者。『この時代の常識』を覆し、時代の常識処か普通の常識すらも通じない2人の若者を差す。

 

『双月妖魔―――紅月の悪魔』

 

○無時 紲〔ムトキ キズナ〕

 

 年齢15歳

 

職業…何でも屋

    届け物から探し物。人探しから殺人まで請け負う。しかし、本人がかなりの気分屋な為に仕事の好き嫌いがある。しかも、高額を要求するが親しい間柄だとかなり値引く。

 

 性格

気分屋だが冷徹な一面も持っており、笑いながら人も殺せるが別段“冷酷”と言う訳ではない。割と情に脆いが表情に出す事は無く、長い付き合いの光魔にしか分からない。

人を小馬鹿にしつつも、確りと相の手を差し伸べる兄貴肌の持ち主でもある。

因みに妖術使いでもあるが、ド派手な事はしない為にあまり知られていない。

 

 武器

 

・西洋剣――始まりの帝王

 

・リボルバーの銃――最後の光

 

・妖術―――ほぼある事にしか使っていない。〔張宝の師とか〕

 

 

 

『双月妖魔――蒼月の悪鬼』

 

 

○火雅 光魔〔カガ ミツマ〕

 

 年齢14歳〔生まれた年は同じ〕

 

 職業…何でも屋〔助手〕

主に暗殺・情報収集能力に長け、男版周泰のような者。しかし、彼は七変化と言っていい程“役”に入りきる。

 

 性格

しっかり者ではあるが、どこか抜けている天然。心優しく礼儀正しい。動物に好かれ、話す事も出来るらしくて良く鷹などに敵譲視察させている。本人曰く、『動物は友達だ』らしい。

しかし、戦闘状態に入ると自分を止める事が出来ず、紲となら平気だが単独で戦っていると殺戮鬼となってしまう事がしばしば。こうなると、紲でないと止める事が出来ない。その後、反省…ネガティブ状態に入ってしまう。かなり知識が豊富でその知識を使い、紲が策を練る事もしばしば。

 

武器

 

・刀――紅夜叉

 

・糸――金剛糸

 応用――絡繰

 

・妖術――火。高温の為に蒼くなる。

 

 

 

―――他―――

 

○性―司馬 名―徽 〔シバ・キ〕 真名―白亜〔ハクア〕

 

 取り合えず、突っ込み担当。

 

後日更新

 

説明
もう、一つの小説ができるまでの繋ぎということで…。

H24.4.15修正。司馬懿→司馬徽
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
6087 5003 41
コメント
清々しいですね。(ブックマン)
・・・・・素でカッコイイと思ってしまった(笑)(韻)
タグ
真・恋姫†無双 恋姫 真・恋姫†乱舞 無時  火雅 光魔 司馬懿 刺史 陳留 

覇炎さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com