真・恋姫†無双外史 〜侍女長降臨〜その6
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今回登場するオリジナルキャラ

 

和名 姓:白江 名:萌(しろえ ほのか)

恋姫名 姓:白 名:江 字:なし 真名:萌

 

陳留のはずれに墜落した現代のメイドに憧れてメイドに弟子入りしてメイド修行をした少女。チャームポイントの黒髪は足元まで伸ばしていて、顔も可愛いので華琳様のお眼鏡にとまり専属侍女になれた。ただし、出生について華琳様に何も伝えていないので天の御使いとは認識されていない。基本的にオールマイティな性能だが前回、右眉〜右肩を一閃された。

この世界で言う天の世界にいた時に真・恋姫無双をプレイ済み。

 

 

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遠征帰還の次の日の朝

 

「うみゅ〜…」

 

むにっ

 

…むに?

なんだろう…あったかい…それに…とっても安らぐ…

 

むぎゅっ

 

「あんっ?」

…あん?

あれ?なんで目の前が真っ暗なんだろう…そっか、寝てるからか。そーいえば華琳ちゃんと遠征に出てたはず…早く起きて朝食の支度しないと…

そう思って目を覚ましたんだけど…

「…どういう状況?」

「おはよう萌。…萌って、意外と積極的なのね(ポッ」

わざとらしく顔を赤らめないで! あたしにはそんな趣味はないんだからっ

「…とりあえず、叫んでいい?」

「ダメよ。まだ寝てるコもいるんだから」

いや…ホントにどーいう状況なんだろね?

 

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とりあえずあたしの布団に入ってた華琳ちゃんには丁寧にお願いして布団から出てもらった。それにしても、「むぎゅっ」ってのはあたしが安心感から抱きついた音だとして「むにっ」って音は華琳ちゃんのどk…

「…ほ〜の〜か?」ワキワキ

い、いや、華琳ちゃんもれっきとした女の子なんだから触るとそういう音もちゃんと聞こえるよね! うん!

 

「でさ、華琳ちゃん。あたし、斬られた後どうなったの?」

「……覚えてないの?」

「? うん、全然」

「……そう。まずはあの行軍の目的だった賊だけど、あの砦から逃がした賊を含め全て討伐し、きちんと目的は果たしたわ。あとは貴女の傷のことだけど…」

とりあえず、華琳ちゃんから話をまとめると、あたしが斬られた後、華琳ちゃんと衛生兵の適切な処置もあってか、傷口はそこまでひどくならなかった。とはいっても傷跡はいくらかは残ってしまうそうだけど…。あと、眼球にも傷が入ってるため右目の視力低下はもちろんのこと、最悪右目は見えなくなるかもしれないそうだ。どーりでピントが合わないわけだ。今は一応見えるけど、この分だと近いうちに右目は見えなくなるんじゃないかな。

「なるほど…で、どーして華琳ちゃんが一緒に寝てたの?」

「それは萌がうなされてたからよ。帰りは春蘭に持たせていたけど、城に戻って布団に横にしたとたんうなされだしたから、人肌が恋しいのだろうと思って私が添い寝してたってわけ」

「………」ぺたぺたぺた

添い寝だけで済んでるのだろうかとあたしは自分の体を確かめるように触った

「…普段萌がどういう風に私を見ているのかがよく分かったけど。今はそれは置いておきましょう。ちなみに、意識のない相手を無理矢理組み敷くほどあたしは卑劣じゃないわよ」

「あ、いや、うん。。。わかってはいるんだけど、念のため、ね」

華琳ちゃんはともかくとして、作者がヤりかねないから。

「…で、右目と右腕の調子はどうなの? とりあえず右手は動かせてるみたいだけど…」

あ、そっか。目はともかく、肩も斬られてるんだっけ。とりあえず片目づつ瞑ってみたり、右手を閉じたり開いたり手品の動きをしてみたりした。

「ん〜…右目はだいぶ視力が落ちてるかな。この分だとしばらくすると見えなくなるんじゃないかな。右腕は…動かすのはあまり問題ないっぽいけど、握力がちょっと落ちてる気がする」

「そう。……ごめんなさい」

「か、華琳ちゃん!?」

とりあえずそんくらいかなーと分かったことを伝えると、華琳ちゃんは頭を下げて謝罪してきた。

「ちょ、ちょっと華琳ちゃん」

「私の力が及ばないせいで、あなたの珠の肌に傷をつけてしまった…」

「そんな、これは華琳ちゃんのせいなんかじゃ…」

「いいえ。貴女を危険にさらすことが無いと思ってた私のおごり、あんな状況になることに思い至らなかった私の認識の甘さ、そして危険にさらしてしまった時に助けることができなかった私の力不足…全て私のせい。だか「違う!」ら…」

「違うよ、華琳ちゃん。私が怪我をしたのは華琳ちゃんのせいじゃない。あたしだって華琳ちゃんの隣にいてあんなことが起こるなんて思ってなかったし、あたしの身が危険にさらされたのだってつまるところあたしの注意不足。だから、おごりや認識の甘さなんて言うんだったら、それはあたしのせいでもある。だから、誰のせいでもないの」

あたしはじっと華琳ちゃんの目を見ながら言った。華琳ちゃんが自分を責める必要はないんだと、その視線に思いを込めて。

「…(ぽっ) そ、そう。。。貴女がそこまで言うのならそういうことにしましょう。」

ほっ、どうやら考えを改めてくれたようだ。華琳ちゃんの顔が赤くなってるように見えるのはきっと気のせい。差し込む朝日の光で華琳ちゃんの顔は白いままだ。うん、アカクミエタノハキノセイキノセイ

「けど、だからといって大怪我をした萌に何もしないのは曹孟徳の名が廃るというもの。近いうちに貴女の右目と右腕を補佐するものを仕えさせましょう。それと、行軍の糧食の件、褒美として一つだけ望みを叶えるわ」

「うん……え?」

行軍の…褒美?

「右目と右腕の怪我の補佐をするものを一人仕えさせる。と言ったのよ」

「いや、そっちじゃなくて…行軍の褒美って?」

確か糧食の件は季衣ちゃんが10人分食べて足りなくなるはずじゃ…

「あら、言わなかったかしら。帰還時の兵の食欲がなくて、結果的に糧食は少し余った状態で帰還したわ。糧食の味の変化か、あるいは何か心配事で食事が喉を通らなかったのか…どちらにしろ、結果は結果。あなた達の勝利よ」

してやられたって顔で言う華琳ちゃん。これは絶対後者だね。

「まぁ、いきなり望みと言っても、起きてすぐじゃ考え付かないでしょうし、決まったら言いなさい。それと、今日は休んでいいわよ。他の子たちにもそう伝えてるから今日中にきちんと疲れを取って、右手の感覚に慣れておきなさい。……そこのあなた、聞こえてるんでしょう。萌は目を覚ましたから、皆に伝えなさい。そろそろ起床の時間でしょう」

そう言って華琳ちゃんは扉も開けずに外で耳をそばだててた侍女に伝達を頼んだ。ってか、華琳ちゃんも気づいてたんだ。盗み聞きはどうかなぁと思うけど。

「いいえ、気づいてたのではなくて知ってたのよ。彼女、一度入ってきて私が添い寝してるのを見て出ていったもの」

……さいですか

 

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……で、お昼時。今日は同僚の桃ちゃん(侍女の真名)が食器を片付けてくれてる…んだけどあたしそこまで重傷じゃないと思うんだけどなぁ。なんか、食べる時もやたら食べさせようとしてくるし…

※帰還中気絶してるほどの怪我は重傷だと思うなぁ(by作者

「ね、萌ちゃん」

「なにー?」

お茶を飲みながら気だるげに答える。んー、こーやって気を使わない友人っていいよねー。華琳ちゃんとかはご主人様だから、結構気使うから、こーいう時間はすっごく貴重なんだよねぇ。

「曹操様と契ったって噂、本当だったんだねぇ」

ぶーーーーーーーーーーーっ

「わっ汚いよぉ、萌ちゃん」

「いや、だって、契ったって、んなわけ」

「だってー、朝来たら曹操様と同衾してるんだもん。曹操様ったら、あたしが来たのに気づいたら「あら、貴女も混ざる?」なんて言われて〜////」

そーか、朝の除き魔はアンタですか。ってか華琳ちゃんはナニを言ってるのっ!?

「あれは曹操様のじょーkじゃないや、冗談! あたしは朝まで意識なかったんだから!! それに、あたしはノーmでもなくて、いたって普通だから! 恋愛対象は基本的に男性だからっ!!!」

「でも、あたしが出てすぐ曹操様余韻で喘いでたよ?」

「それはちがっ!! それは…単に、あたしが寝ぼけて華琳ちゃんに抱きついて…」もごもご

「そう、それ!」

「…どれ?」

あたしがもごもごと状況説明(たぶん傍から見ると言い訳)をしてると、桃ちゃんが声を上げた。

「真名。曹操様は気に入った女性にしか真名を預けないんだよ。それなのに、萌ちゃんはここに来る前から真名を教えられてて、お仕事も曹操様の身の回り優先の仕事じゃない。…まぁ、仕事の効率がすごくいいのも重なって、実質裏侍女長みたいって、皆ささやいてるけど」

いや、裏侍女長って…ん? まさか…

「そーいや、噂って…」

「うん、さっき言った理由で、萌ちゃんが来た日から侍女の皆がそう言ってるよ」

それかっ! どーりで桃ちゃん以外の侍女の対応がよそよそしかったり、桃色だったりしたのはっ。ってか、桃ちゃんも当然と言った顔できょとんと言わないでっ。

なんかもう、頭痛くなってきた。とりあえずこれ以上話を聞くと涙が出そうだから、部屋を出よう。右目にも慣れないといけないし。

そう決めると10秒で着替えて(桃「ほえっ? いつの間に着替えたの?」)部屋を出…

「ちょ、ちょっと萌ちゃん、安静にしてないとダメだって! それに、今日はお休みでしょ?」

ようとしたところで桃ちゃんに腕をつかまれた。ってか、何気に桃ちゃん力あるのね。細い腕のどこにそんな力が…いや、言うまい。それを言ったら季衣ちゃんとか、武将全員に疑問を持たなくちゃいけなくなる。。。

「大丈夫。気絶してる間にほとんど怪我は治ってるし、今日の休みだって、安静にする意味じゃなくて今の体に慣らすために与えられたものだろうし。それと、あたしの服は全部メイド服…侍女服しかないよん」

メイドたるもの、常に主に仕える気持ちを忘れるな。そう言われてからメイド服以外の服を着ることはなくなったけど…今真剣に考えるとあたしがどれだけ恩人のメイドに憧れてたかよく分かる。ま、かと言って今更メイド服以外着る気はないけど。

「んじゃ、出てくるねー」

「ちょ、ちょっとぉっ」

焦ってる桃ちゃんの言葉を背に受けながらあたしは部屋を出た。ってか、あの天然系のノリは、なんか劉備ちゃんに似てる気がするんだよねぇ。名前も桃だし…分裂した片割れかな?

 

※劉備が分裂した事実はこの外史ではありません。ちゃんと一個体、一君主(予定)として存在してますよん

 

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さて、と言うわけで部屋から出たんだけど…逃げるように出たから当然目的地なんてあるわけでも…いや、体を慣らす目的があるか。ん〜…ならやっぱ、体を動かすのが一番かな。んで、体を動かすって言ったら、練習と鍛錬か。そうと決まれば中庭を目指そう。っと

 

と言うわけで、中庭の一角にある休憩スペースに来た。鍛錬は疲れるから先に練習を、という魂胆だ。なのでまずはコインを取り出して…

ピンッ      ヒュルルルルルルルルル パシッ

打ち上げたコインを両手を交差させた瞬間右手で取る。とりあえずキャッチは問題なし。次は…

ピンッ      ヒュルルルルルルルルル

打ち上げるところまではさっきと一緒。そこから…

シュババババッ

両手を交差するのではなく縦横無尽に動かす。ハ○ター×○ンターのゴトーさんのアレだ。右手の限界を測るために楽なスピードからどんどんスピードを上げていく…っ

パシッ

右腕の痛みがひどくなる直前で左腕でコインを取る。これで大体右腕が痛まないレベルで動かせるスピードと我慢できるスピードが割り出せた…んだけど、動かすレベルを割り出す以前に全体的に右腕の動きが遅れてる。少し神経をやられたのかな?とりあえず自分の意識するスピードと実際のスピードの誤差は速く直さないとダメだなぁ…

「すごいです! お姉さまっ!!」

「ふわっ!?」

普段なら後ろから誰か来ても気配で分かるのに、今、桂花ちゃんが目の前に来るまでまったく気づかなかったあたしは驚いてコインを取り落としてしまった。

ってか、桂花ちゃん今前から来たよね…? なのに気づかないとかorz ま、まぁそれほど腕に集中してたってことでっ;;

「…萌お姉さま?」

思考を自己完結させてると桂花ちゃんが心配そうに声をかけてきた。

「あ、あぁうん。大丈夫。それより、どうしてこんなところに?」

とりあえず、心配させないように笑顔で答えつつ、桂花ちゃんがここに来た理由を聞いてみる。

「あ、あの…ホントはお姉さまが起きたと聞いてすぐ会いたかったのですが朝議で華琳様が仕事が終わるまではお姉さまに会いに行くなと言われたので、急いで終わらせようと思ったのですが、なかなか終わらないので少しでもお姉さまに近い場所でやればはかどると思い、気分転換を兼ねてここまできたら、お姉さまが先にいらしたのでこれは運命だと思い急いで駆けつけたのですっ」

…うん、長い説明ありがとう。後半の1行分の理由だけ聞かせてもらえたら十分だったけど^^;

まぁ、おかげで誰もお見舞いに来ない理由が分かったけど。あたしの部屋に皆が殺到して仕事が遅れたり、今みたいにあたしが外に出てる間にすれ違いにならない様にしてくれたんだろうね。

「なるほど…あ、そっちかけていいよ。邪魔しないようにするから」

「邪魔なんてとんでもないですっ」

と言いつつ持ってきた書簡を置く。って、結構多いなぁ。っと、勢い余ってこっちに二つほど転がってきたので拾ってあげる。どうやら報告書っぽ…い…ぇ?

「あ、ありがとうございます、お姉さま」

「あ、うん……」

あたしが拾ったのは幽州琢郡の報告と荊州南陽の報告で…どちらも「天」「御」「使」の3文字が入っていた。この世界で落ちてきたのはあたしだけだと思ったけど、違うのかな…? それに、二箇所ともってのが気になる…。幽州はたぶん劉備ちゃんのところで、荊州は孫家…どちらもゲームで落ちてるところではあるから、偽情報とは断定しきれない……

「…ぇさま? お姉さま?」

「ふぇっ、な、何? 桂花ちゃん」

どうやら思考の沼に沈みかけてたところを桂花ちゃんにずっと呼びかけられてたっぽい。

「あのですね…先ほどの、もう一度見せてもらえませんか?」

「さっきの…? あぁ。いいけど…そだっ」

ちょうどよく観客ができたことだし、手品をしよっと。何かをして気を紛らわせた方が、余計なこと考えないで済むしね。

「んじゃあ、この硬貨を弾いて取るから、どっちの手で取ったか当ててみて」

「えっ、私じゃあの速さは見れ…」

桂花ちゃんが言ってる隙にあたしはコインを真上に弾く。そして、最初と同じく両手で交差しながら左手でキャッチ。すかさず握ったままの手の甲を見せるような感じに構える。

「これなら、分かるでしょ? さて、どーっちだ?」

「あ……えっと、左手…?」

おそるおそるといった感じで自信なさそうに言う。ぅ、なんかしおらしい桂花ちゃんって、新鮮かm…じゃなくって! あたしは言われた左手を開いてみせる。そこには…弾いたコインが収まっていた。

「あったりー♪ んじゃ、もっかいねw」

ちょっとノってきたあたしはもう一度弾いて、取る。今度は右手で取り、さっきと同じように手の甲を見せるような感じにする。

「さて、どっちでしょう?」

「今度は右手ですねっ」

最初ので自分でもできる! と思ったのか、今度はしっかりと見て自信ありげに答えた。そして、あたしが広げた右手には…コインが、ない。

「えっ、嘘っ!?」

「そう、嘘w」

そう言って手首を一回転させてもう一度手のひらを見せると、ちゃんと右手のひらにコインがある。

「すごいですお姉さま! どうやったんですかっ!?」

「んー、そこはまぁ、秘密ってことで……その代わり、もうちょっとだけ不思議なことやったげる」

そう言ってあたしはコインを右手親指と人差し指ではさみ、拳打を打つ場所…って言うのかな?第二間接と手の甲の間の指の上? にコインを乗せると、指を動かしてコインを小指の方に持っていく。それはまるでコインが生きてるかのように……。

二週くらいコインを移動させると、今度はコインを左手で持ち、右手には何も持ってないことを見せ、左手を手のひらが上になるようにし、右手をその上に構えて…

「やっ!!」

いきなり声を出す。桂花ちゃんが声に驚いた瞬間にコインを手のひらから打ち上げて右手でキャッチ。声に驚いてた桂花ちゃんは右手にコインがあるのが不思議そうに見ている。最後に、最初に桂花ちゃんに見せたようにコインを軽く打ち上げて取る。そして、両手の中身を机の上に落とすと…コインの落ちる音が右と左にそれぞれ一枚。さらに右手からコインを出して同じ手順を。今度はコインが落ちる音がそれぞれ二枚。計六枚のコインが机の上に転がった。

「っと、こんなものかな」

「………………」

どうやら凄すぎて声が出ないようだ。

「……で………が…」ブツブツブツ

どうやら凄すぎて声が出ない…? いや、小さい声で何か言ってるっぽい。ちょっち聞き耳をば。

「……だから、あれは声で意識を逸らした瞬間に…つまりは急な行動で意識を逸らしその瞬間に奇襲や…これは使える。それに、最後の増殖は同じ手を二回使うことは相手に読まれるけど、二回目の増援の量を相手の予想以上なら、奇襲足りえ…」

なんてことを小さな声で分析されてた。なんていうか…逞しいね、軍師って。

「けい…ふぁ、ちゃん?」

どうやらこの程度の呼びかけじゃ聞こえてないっぽいね。んー、邪魔しちゃ悪いし、席を立とうかな。

さって、手品で右手の感覚は掴めたから、炊事とかの力加減はなんとかなるかな。あぁ、腕の動きの鈍さだけ慣れないといけないけど…ま、それは今から鍛錬でなんとかしよ。

 

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「ふっ! はっ! やっ! はっ!」

桂花ちゃんと別れてからしばらく、あたしは竹刀の素振りをやっていた。基本的に右手の力で振り、左手は添える程度。これで右手のスピードを目と体に覚えこませることができるはず。その証拠に、たまに落ちる木の葉に竹刀を振ると、最初は振り遅れてたのが、今ではちゃんとあたるようになっていた。

「んー…やっぱり、だいぶん腕の動きが鈍いなぁ。あんまり無理に動かすと肉も引きつるし…」

なんて休憩をいれて考えていると。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ

……なんか、ものすごい勢いで赤いものがそこの廊下を通ってった。

ドドドドドドドドドドドッ

あ、なんか戻って来て…こっち来る!?

ドンッ!

「ぐぇっ」

「萌、大丈夫か! 怪我はないのか!? 目は見えるか!? 生きてるよなっ」

ぎゅ〜〜〜〜っと締め付けられ…って、この声は春蘭ちゃん? あ、息が…さっきまで生きてたけど、窒息死に…そ…きゅぅ。。。

 

んで…三十分後(んと、恋姫だと漢時代だから…四半刻、かなぁ?)くらいに、開放された。

「すまんっ!」

「いや…まぁ、それだけ心配してくれたってことだし、いいよ」

手を振りながら、気にしてないから、とアピールしてみる。

「そ、そうか…。ところで、萌はこんなところで何をしていたんだ?」

「素振りをちょっと…」と言いながら竹刀の方に目を向ける。

「素振り…? なるほど。よし! ならばわたしが鍛錬を手伝ってやろう!」

「え、い、いいよ」

春蘭ちゃんが相手だと手加減とかできなさそうだし! ってか、命がいくつあっても足りなさそうだよっ。

「遠慮するな! 先ほどのお詫びだから、気にせず構えるがいい!」

そう言って春蘭ちゃんは七星餓狼を構え…って、ちょまっ。

「いくぞ…! でぇいっ」

「ちょ、春蘭ちゃんっ」

振り下ろされる七星餓狼を竹刀で受け止め…られずに真っ二つに折られた。

「なんだ、そんな武器では戦場では役に立たんぞ!」

「練習用の竹刀なんだから、当たり前でしょっ。ってか、その武器刃引きしてないっしょっ」

そういいつつスカートの中から匕首を両手に装備する。って、武器なくなったんだからちょっとくらい待ってくれたってっ

「なんだ、ちゃんとした武器があるではないか。最初からそれを使ってればいいものを…」

言いながら振る二撃目を匕首で受け止め切れず、外に逃がす。

「っく」

すっごく言い返したい気分だけど、その余裕がない。その証拠に春蘭ちゃんは三撃目を振ろうとしてるし。左袈裟と見て振り下ろす寸前に防御行動に入る。振り下ろされる太刀筋は…左袈裟! 読みどおりの攻撃を右手の匕首でなんとかとらえ、七星餓狼に這わしたまま力をもら…って重すぎるよっ!?

「んもうっ」

リィィンと、普通の打ち合いでは聞かないような澄んだ金属音を響かせながら春蘭ちゃんの射程外に逃げる。ってか、力の大半は逃がしてるのに、なんでこんなに痺れるの!?

「ふむ。打ち込みが甘かったか。今度はもっと強くいくぞ!」

「いや! 手加減してよねっ!?」

とりあえず、コレだけは言っておかないと、死ぬかも。

「何を言っている? 手加減してるではないか。攻撃の手応えがまったくないのだからな。なので先ほどより強めにいってやる! その方が鍛錬になるだろう?」

「それはあたしがいなし…っ!」

反論しようとしたところを右胴が来たのでバックステップで躱し、距離を取ろうとしたけど、春蘭ちゃんはそれを許さず距離をつめるようにしながら今度は左逆袈裟を放ってくる。これは避けきれないので匕首で上に流す。

「なかなかやるではないか!」

「い、いや…っ! これでも、いっぱいいっぱい、だからっ!」

 

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それから暫く打ち合ったけど、あたしの体力が尽きたところで打ち止めとなった。ってか、腕時計見ると一時間しか経ってなかった。…濃い一時間だなぁ。

「なんだ、もうへばったのか。だらしないぞ」

「んなっ、こと、言われ、ても。あたし、病み上がり、それに、もともと、体力、ない」

息もたえだえとは、こーいうことなんだなぁと実感した。いやマジで。

「あれだけ手加減してこれだけしかもたないとは、戦場で真っ先に死んでしまうぞ」

「…………」

…いや、思いっきり全力だったんですが。打ち込みの手応えだけで判断しないで…orz

仰向けに倒れて息を整えていると、急に周りが見えなくなった。しかもひやっ。

「お疲れ様」

「おつかれ〜」

秋蘭ちゃんと季衣ちゃんがきたっぽい。珍しい組み合わせ…あ、顔に濡れた手ぬぐいかけられたのか。ひんやりして気持ちいい〜。

「しかし、萌も無茶をする。姉者と鍛錬とは…右目もちゃんとは見えていないのだろう?」

「いや、まぁ…いろいろと、ね…」

顔に手ぬぐいがかかったまま答える。あぁ〜生き返る〜♪

「でも、姉ちゃんもすごかったよー。春蘭さまが攻撃する前から動いてたもん」

「そうだな。最初は勘で動いてるのかとも思ったが、ああも攻撃に合わせられると、勘ではないように見えたが。」

うっ、やっぱ分かるか…

「んっと、動線って言っても…わかんないよね。建築用語で人が自然に動く道って意味なんだけど、その応用で、春蘭ちゃんの腕が動く道を大体予想できるの。そしたら後はソコに武器を構えて、攻撃をいなしたり、躱したり…できるの。まぁ、感と言えなくもないんだけど」

「なにっ。じゃあ、わたしの攻撃は全部読まれてたのかっ」

「…あー、うん。まぁ」

それでも力が強すぎて避けるかいなすかが精一杯で、攻撃転換なんてまったくできなかったんだけどね。

「ほぅ、いくら姉者が直線的な攻撃とはいえ、全て読むとは…」

「ほえー…姉ちゃんって、ほんとはすごかったんだねー」

いや、読めるだけで対処しきれてないから意味ないんだけどね;;

「…そーいや、秋蘭ちゃんと季衣ちゃんって、不思議な組み合わせだね」

「そうか? 今日は季衣に案内をしていたからな。大体終わったので萌の様子を見に行こうとしたところで通りかかってな。最初は止めようとも思ったのだが…意外と萌ががんばっていたので、止める代わりに水と手ぬぐいを用意してきた」

「あ、そーだった。ほいっ、姉ちゃん」

そーいって季衣ちゃんが水の入った竹筒(水筒)を投げてくれた。

「ありがと、季衣ちゃん」

「えへへ^^ でも、じゃあ何で姉ちゃんは攻撃しなかったの?」

「あぁ、それは単に…」くぅ〜〜〜〜〜

「「「………」」」

「あ、あはは^^; 運動したらおなか減っちゃった」

穴があったら埋めて欲しいっ><

「まぁ、夕飯にもちょうどいい時間だしな。…そうだな、萌の快気祝いに私が夕食を作ろう」

「おぉ、秋蘭の料理は久しぶりだな!」

「あ、あたし手伝うよー」

聞きたいこともあるから〜という思いを視線に込めて送ってみる。…届くかな?

「……ふむ。たくさん作らなければならないようだから…そうだな、簡単な作業くらいは手伝ってもらうか」

やった♪

「ではわたしは華琳さまを呼んでこよう。季衣、付いて来いっ」

「あ、待ってくださいよ、春蘭さま〜」

 

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あとがき

 

えと、一月かかった割に中身薄いと言うか、ムリヤリだった気がしないでもない物で申し訳ないです;;

うん、とりあえずあたしがんばったと思う。

最初は拠点っぽいのいらないかなーと思ってたんだけど、知り合い兼読者に相談したところ、「もちろんいるじゃろう」との返答をいただいたので拠点っぽさを出してみました。桂花たんと春蘭ちゃんだけですが。桂花たんはなんか職業病っぽいことになってるけど、きにしないでいただけると嬉(ぁ。次回は秋蘭ちゃんと季衣ちゃんの拠点っぽいのが上がる…と思う。たぶん、きっと

え、華琳様の拠点だって? そりゃあもちろん、最初のベッドインでしょう! 寝てる間にナニをシタのかは…いつか書くかも書かないかもw

 

ちなみに、コイン(お金)と腕時計は萌のメイド服の中にあった、あるいは装着したまま持って来ていたものです。作者は一話まで確認しに言ってきましたので確かですw

次回からは持ち物も1pに書くかなぁ

あ、あと鍛錬と言う名の戦闘描写もちょっとだけ書いてみました。で、萌の強さの目安ですが…先に書くか、話の中で知っていってもらうか、どっちがいいかなぁーとか考えたり。まぁ、今のトコ本編に影響ないので伏せとこっと。一応、さいきょーではありません。アタイサイキョーとか言いたいけど、萌はHじゃないので分をわきまえています。

 

最後に、今回はちょろっとだけ複線を張ってみましたが、一つ目の複線は次回にすぐ明らかになるかと思います。もう一個は…コレって複線だったの!? と言う反応を見れたらいいなーとか考えてます。アレ、コレ複線だよね…うん、複線のはず、たぶん、きっと、だろう、だと思う(マテ

 

……で、ではまた次作でお会いしましょうっ

次の話は大体できてるから今回のよりは早く上げれるハズ。たぶ(ry

 

説明
なんとかSW中にあげれました! 6話目ですっ
自分でやったこととはいえ、なんか傷入れた意味あるのか?見たいな中身ですが、今回は文字通り目をつぶっていただけるとうれしいです。
あぁ、早く華琳様萌を食べないかなぁ(ぁ
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コメント
続きは書かれ無いのでしょうか(とんぷー)
何故か自分の笑いのつぼに嵌る作品ですね。それでは……ざっと見て気づいた誤字 p7 まぁ、感と言えなくもないんだけど→勘:p8 作者は一話まで確認しに言ってきました→行ってきました:8p 最後の5行前から 複線→伏線 ですかね。 ところで、某シューティングの某パーフェクトメイドは猫舌なのが唯一の欠点らしいですよ……えぇ、唯一の……(雷砲)
本気だしたら・・・グランドゼロですね。(ブックマン)
サンタマリアの名において……かw(リアルG)
>jackryさん なれば強いんですけどねぇ、速さだけあっても力が無いからww それに、きっと武将クラスならアレぐらいの目くらましは通用しないかとw(ティリ)
>キラ・リョウさん が、がんばりますっ!(ティリ)
>とらいえっじさん 斬った男の末路は次の次あたりの華琳ちゃん視点の補足で…書けたらいいなぁ(ぁ(ティリ)
>乱さん いいえ。桃ちゃんはただの天然です。ってか、最初は名無しメイドで普通に世話するだけだったのに、天然口調で書いたらいつの間にかあんな話に…wしかも劉備ちゃんに似てたからと言う理由で「桃」と名前まで決まったww(ティリ)
>sionさん ブラックラグーン良くは知りませんが(やふーで調べてタイトルだけ分かった)殺し殺されを体験すればすぐにでも行えるのではないでしょうかw(ティリ)
>ストーさん そうですねw しかしおーるまいてぃゆえにすぺしゃりすとには勝てないと言う… 桂花たんはデレた時尻尾を振り回して空を飛んでる絵が見えるのでまだ足りないくらいw(ぇ(ティリ)
続きが楽しみです!!(キラ・リョウ)
そして萌を斬った男の行方は誰も知らない……(とらいえっじ)
とゆーか、桃ちゃんもソッチなのか?(乱)
しかしこの侍女はいつか「生者のために施しを死者のためには花束を〜全ての不義に鉄槌を!」を地でいきそうですねw恐ろしいやら何やら(sion)
まさにおーるまいてぃ萌ですね。 あと桂花自重ww(ストー)
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