真・恋姫無双紅竜王伝K〜洛陽の変(上)〜 |
(私は・・・無力だ・・・)
光武帝が定め、帝都とした洛陽の街は燃え上がり、衰退した王朝の帝である自分を惨めに照らし出している。
「くそっ・・・たれが・・・協、無事か?」
「は、はい。舞人さんのおかげでなんとか・・・」
彼女を守らんと覆いかぶさっている深紅の髪と瞳をもつ青年の体には折れた槍や矢が突き刺さり、あちこちから血を溢れさせて青年に脂汗を流させている。
そして彼女と青年が乗っている黒馬・舞月の前には十数人の槍と刺又を構えた、いるはずのない袁紹軍の兵、そして―――
「織田さん、これ以上はいかにあなたといえども戦えないはずです。武器を捨てて投降してください」
出入りを禁止されたはずの袁紹軍の将・顔良だった。
遡る事数十時間前―――
「うーん」
足を組んだ舞人は漢の領土の地図を眺め、唸っていた。
「なーんか、おかしいんだよなぁ・・・」
短剣が刺さっている場所は黄巾党の残党が反乱を起こしている地域を示しており、これには周囲の諸侯と舞人が派遣した霞・恋・華雄が軍を率いて指揮を執っていた。これにさらに詠が月を伴って派遣される事態に陥るほど残党の動きが激しくなっていた。さらに幽州の易京城主・公孫賛からは『烏丸族の動きが怪しい』という報告がされていた。彼女はこれを迎え撃つため出陣するという。
「なんだ?何か引っかかるな・・・?」
各方面に出陣した軍はいまだに戻ってきておらず、洛陽を守る兵は3千。少々手薄である感は否めない。
「袁紹は瞳の勅命があるし、恐らく攻めてはこないだろ。黄巾党の残党くらいなら2千でも俺なら蹴散らせるし何も問題はないはずだ」
しかし・・・彼の直感が囁くのだ。
(なにか・・・嫌な予感がする。なんなんだ、この不快感は?)
彼の不快感″の原因はこの数十時間後、見事に的中してしまうのである。
それも、最悪な方向に―――
本殿の大将軍執務室の寝台で眠っていた舞人はパチリと目を開け、ガバと起き上がった。
(なんだ・・・?)
彼は自分が寝起きが良くない方だという事は分かっている。だから分かるのだ。
(今までの経験からして、こんな夜はよくない事が起こるんだ・・・)
寝台を抜け出すと、寝具から普段の深紅の戦闘衣に黒の外套を纏って腰紐に刀を吊るす。これでいつもの戦闘態勢は整った。
「誰かいるか!」
舞人が叫ぶと、顔見知りの小姓の少年が「お呼びでしょうか」と扉の外から話しかけてきた。
「悪いが、舞月―――俺の黒い馬を曳いて来てくれないか?」
「こんな夜にですか?」
小姓の少年は不思議そうな声で応答する。確かにそうだろうとも舞人は思う。こんな夜更けに遠掛けや出かける奴はそういない。それこそ、軍事関係でもない限り。
「あぁ。とりあえず用意して―――『一大事です、閣下!』なんだ!?」
バタバタと慌てた様子で駆けてきたのは、もう一人の小姓の少年だった。
「袁紹、謀反!洛陽の街に突入し、建物に火をつけながらこちらに攻め寄せてきております!」
「んだとっ!?」
舞人は中庭に飛びだし、屋根に飛びあがって街を見渡すと―――
「・・・そんな、馬鹿な・・・」
帝都・洛陽の街は炎に包まれて赤々と照らされていた。
この明かりこそ、後の世に『洛陽の変』と呼ばれる後漢王朝崩壊の序章を告げる狼煙となる炎だった。
新・恋姫無双紅竜王伝L〜洛陽の変(下)〜へ続く
説明 | ||
第12弾です。上下2回にお話しを分け、物語を大きく動かします。 ・・・でも3つに分けるかも。まぁこちらはあんまり可能性はないですが。 |
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コメント | ||
急転直下ですね。せっかく拾った命、自分から捨てやがった?(ブックマン) プライドだけは高い袁紹の暴走・・・・。部下が哀れだ・・・。(りばーす) もう殺っちゃいましょう!斗詩や猪々子に気使うこと無いよ! 次作期待(クォーツ) 馬鹿が謀反を・・・ あとがどうなるやら・・・(キラ・リョウ) 謀反て…成功しても風聞的にヤバイのでは。正史の曹操や董卓ですらこんな直接的にはやってねーぞ(吹風) あぁ、やはり謀反をやってしまったか。舞人、頑張ってくれ。(ほわちゃーなマリア) |
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