真・恋姫無双〜魏・外史伝45
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第十九章〜還らぬ日々・中編〜

 

 

 

  「・・・そうか。向こうも動き出しおったか。」

  王宮に一人、佇む人物がいる。誰に喋っている訳でもなく、端から見れば独り言のように思える。

  「うむ・・・、わしの言った通りにすれば良い。お主は・・・、まぁ好きに動いてくれればそれで

  構わん。」

  そして一通り喋り終えたのを見計らうように、影に身を潜めていた何かがそこから飛び出す。

  「頼んだぞ。」

  最後に一言を放つ。それに合わせるかのように、それはその場を離れる・・・。

  「・・・これでいい、ここまでは順調じゃ・・・。」

  そして今度は本当の独り言・・・。何かを背負っているような感じに言葉を紡ぐ。

  「わしの役目はまだ終わっておらん・・・。今のわしに出来る事は、与えられた役割を演じ切るのみ・・・。」

 

  「はぁああああああっ!!!」

  ブォウンッ!!!

  ザシュッ!!!

  「ッ!?!?」

  敵を薙ぎ払う雪蓮。そしてまた彼女の前に新たな敵が現れる。

  「相変わらず、きりがないわね!」

  愚痴を零しながらも、雪蓮は剣を振る事を止めない。そして彼女の目に映るは、建業の城。

 雪蓮を筆頭に他の武将、兵士達も街の中央を駆け抜けていくが、それを阻むべく前に立ち塞がる者達。

 幾度も苦戦を強いられて来た彼女達、呉軍・・・、だが今の彼女達は自分達の国を守る、その強い意志

 の元、その時以上の気概を見せつけていた。人は成長できる、その成長の向かう先が確かであるのならば。

 どんな困難が待ち受けようが、それを乗り越えようとする意思があるのならば・・・。 

  ガッゴォオオオッ!!!

  「・・・っ!?」

  雪蓮の目の前に突き刺さる一本の長槍・・・。そこにまた一つの影が降り立つ。それは何かに身を包ま

 れた、まるで継ぎ目だらけの繭の様なもの・・・。そしてその継ぎ目だらけの繭がゆっくりとほどかれていく。

 それは繭ではなく、無機質の六枚の鳥の羽であった。そしてそこから現れたものはその身を白銀の鎧に身を

 包む、体格からして女であった。女は目の前に突き刺さる長槍を手に取ると、地面から引き抜く。どうやら

 この女の得物らしい。

  「こいつね・・・、明命が言っていたのは!」

  明命が言っていた事を思い出す雪蓮。応竜の背中から生える羽達が雪蓮達の方に向かって伸びていく。

  「・・・っ!?」

  雪蓮は咄嗟にその羽を避ける。

  ザシュッ!!!

  「ぐぎゃああっ!?」

  ザシュッ!!!

  「ぶばはっ!!」

  ザシュッ!!!

  「がぁあああっ!?!」

  雪蓮をすり抜けて行った羽達は彼女の背後を付いて来ていた兵士六人を逃す事無く、その身を刺し貫いた。

 刺し貫かれた箇所から血が噴き出す。兵士の一人が手から得物である剣を落とすと、羽が引き抜かれ、応竜の

 背中へと戻っていく。と、それと合わせる様に雪蓮も戻る羽達と一緒に女に近づく。

  「・・・生憎、そんな芸当も見慣れているのよね!はぁあああっ!!!」

  ブォウンッ!!!

  ガギィイインッ!!!

  雪蓮の放った斬撃が応竜を捉える。が、その一撃も彼女の身に纏う白銀の鎧が弾き返し、雪蓮の腕を痺れ

 させた。

  「・・・確かに、これは厄介だわ。」

  雪蓮は痺れが残る右腕を左手で擦りながら呟く。そんな彼女に向かって、応竜は背中の一枚の羽を伸ばす。

  「ふっ・・・!」

  弓で放たれた矢のような速さで襲い掛かる羽の先を紙一重で避けると、背後の家の壁が羽によって、あっけ

 なく貫かれる。動きを止めた羽を叩き斬ろうと雪蓮は南海覇王を振り下ろすが、その異様な弾力をもつ羽、

 地面すれすれまで振り下ろされてもなお斬れる事無く、南海覇王を跳ね返す。反動はそのまま雪蓮の両腕に

 も伝わり、剣ごと背中まで押し返される。

  「・・・っ!?」

  思わぬ反動に体の体勢を崩す雪蓮。そこに容赦なく別の羽の先が襲いかかる。

  「はぁっ!!!」

  ガッゴォオオオッ!!!

  何処からともなく現れた思春によってその羽の先端がいなされ、機動が逸れる。

  「へやぁああああああっ!!!」

  ブオゥンッ!!!

  その隙を狙い、明命が応竜の背後を取ったが、それを察知した応竜は残りの羽で応戦する。

  ガギィイイイッ!!!

  「くっ・・・!」

  羽の軌道を読む事で、剣で薙ぎ払う明命。

  「貰ったぁあああっ!!!」

  ブォオウンッ!!!

  明命の脇をすり抜け、愛紗がさらに一撃を放つ。

  ガッゴォオオオッ!!!

  「ぐぐぅ・・・!!」

  だが、それも応竜の長槍によって防がれてしまい、愛紗はその長槍を強引に跳ね返し、距離を取った。

  「ふっ!」

  ビュンッ!!!ビュンッ!!!

  そしてその後方から紫苑が二本の矢を連続で放つが、応竜の羽によって防がれてしまう。

  「姉様!」

  「雪蓮!」

  「蓮華!冥琳!」

  雪蓮の元に蓮華と冥琳が駆け付ける。それを見た愛紗は雪蓮達に言い放つ。

  「雪蓮殿!ここは我々に任せ、あなた方は早く総大将、黄蓋殿の元へ!」

  「愛紗・・・!」

  「雪蓮、ここは彼女の言う通りにするべきだ!」

  「・・・分かったわ。行くわよ皆!」

  冥琳の言葉に従い、雪蓮は蓮華、冥琳、親衛隊を引き連れ、この先、祭がいる城へと急ぐ。

  「皆さん!この周辺の住民の避難は完了しましたぁ!」

  と、そこに住民の避難を進めていた穏が駆け付ける。完全ではないが、愛紗達がいる区域に住民はいない

 事を報告しに来たのだ。だが、それは逆にこの区域から応竜達を出してはいけないという警告でもあった。

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  「はぁっ!!」

  「へやぁっ!!」

  「でやあああっ!!!」

  ブゥオンッ!!!

  ブオゥンッ!!!

  ブゥオウンッ!!!

  思春、明命、愛紗の三人同時攻撃を応竜は六枚の羽で身を守る。無機質でありながら、そのゴムの様な

 弾力性を持った羽にその三人の一撃は吸収され、さらに三人の得物は跳ね返される。跳ね返した応竜は距離を

 取るように、六枚の羽をはばたかせ、上へと高く跳躍する。宙に舞い上がった応竜は六枚の羽を伸ばし、三人

 に攻撃を仕掛ける。

  「来るぞ!散れっ!!」

  愛紗の掛声と同時に一ヵ所に固まっていた三人は別方向へと散っていく。伸縮自在の羽達はそれぞれ二枚ず

 つ、一人一人を追撃する。思春は二枚の羽の動きを見極めながら、緩急ある動きで羽の先を回避する。屋根の上

 に登った明命はバク宙を加えながら、屋根から屋根へと飛び移る。その際、足甲の裏に手を忍ばせ、そこから

 苦無(くない)に似た小型の刃を二本取り出すと、応竜に目がけて飛ばす。二枚の羽はそちらを優先的に追跡

 し、叩き落とす。愛紗は他の二人の様に遠くへと下がらず、敢えて前へと突き進んでいく。当然、二枚の羽が

 愛紗に襲いかかる。

  ビュンッ!!!ビュンッ!!!

  その時、紫苑の放った二本の矢が愛紗の横を風を切りながら飛んでいく。二枚の羽は愛紗からその二本の矢

 へと軌道を変え、その矢二本を叩き落とした。そして愛紗はその二枚の羽の間を割って入る形でそのまま応竜

 の本体へと近づいた。

  「ふぅうっ!!!」

  ブォウンッ!!!

  応竜の胸の中央を貫く様に、青龍偃月刀を突き立てる。

  ガッゴォオオオッ!!!

  鈍い金属音が響き渡る。偃月刀の切っ先がその白銀の鎧とぶつかる。その一撃によって、鎧を砕く事は

 出来なかったが、応竜を後ろへと吹き飛ばす事は出来た。伸びていた羽達も応竜の元へと戻ってくる。

  ズザザザザザザザ・・・!!

  応竜は両足で地面を削りながら、その勢いを削り、愛紗との距離をかなり開けた所で停止する。

 そして、応竜の一つ眼が愛紗を捉えると、長槍を両手に持ち、構え始めた・・・。

  「・・・!そ、その構えは・・・!?」

  応竜の長槍の構えを見た愛紗は、その姿を別の人物と重ねる。一方で、その長槍の二つに別れた切っ先が

 先端からぐるぐると螺旋状に巻き付き、一刃の槍と変貌させる。そして六枚の羽が大きく開かれた・・・。

  「愛紗さん!」

  「・・・っ!?!?」

  紫苑の掛け声にはっと我に返る愛紗。それと同時に、応竜の羽達が力一杯に羽ばたいた。

  

  ブオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!

  

  応竜の背後で突風が発生する。その突風はその通りを駆け抜け、応竜に前方に向かって加速させる。

  「っ!!!」

  応竜の突進を寸前で回避した愛紗。だが、愛紗を打ち損ねた応竜は彼女の真横で停止、そこに遅れて

 突風が後ろからくる。応竜の突進によって生じた突風は、後方で戦っていた敵味方関係なく、上空へと舞い

 上がらせ、吹き飛ばした。愛紗は応竜から離れる。

  「・・・今の動き。私は知っている・・・。あれは・・・、まさか・・・!」

  愛紗の困惑など余所に、再び槍を構え直す応竜・・・。

  「星!お前・・・星ではないのか!?」

  愛紗は槍を構え直した応竜に向かって、そう叫ぶ。だが、応竜は愛紗の言葉に耳を傾ける事は無く、

 先程と同じくその長槍の二つに別れた切っ先が先端からぐるぐると螺旋状に巻き付く。

  「おい、星!私の顔を見忘れたか!!」

  必死に呼びかける愛紗。しかしそんな彼女など知らんと言わんばかりに、応竜は愛紗に襲いかかる。

  ビュンッ!!!

  「うわっ・・・!」

  今度は間髪入れない槍による連続攻撃が愛紗に襲いかかる。

  「おのれ・・・、一体どういう事なのだ!あれは間違いなく星だと言うに・・・!これも外史喰らいの

  仕業だというのか!?」

  「愛紗さん!」

  ビュンッ!!!

  愛紗を援護するべく、紫苑が矢を放つ。

  カチンッ!

  だが、その矢は背中の羽が矢を叩き落とし、さらに羽の先が紫苑へと襲いかかる。

  「きゃあっ!」

  「紫苑っ!?・・・星、貴様ぁあああああっ!!!」

  怒りを顔に露わにした愛紗は、青龍偃月刀を振りかざし、応竜に向かって飛び掛かる。

  ボウンッ!!!

  「がはっ・・・!」

  だが、それも自分の意思を持つ羽に払い除けられてしまう。そして家の壁に叩きつけられ、呼吸が困難に

 なる愛紗。

  「・・・・・・。」

  完全に動けない愛紗。しかし、応竜は彼女の方を見ておらず、とどめを刺す様子は無い。ただ上の方を

 見ている・・・。と、応竜は六本の羽を使って、空へと高く舞い上がった。

  屋根の上に降り立つ一人の男、そして彼の前に現れたのが応竜であった。応竜はこの影の存在に気付き、

 愛紗を放置し、空へと高く舞い上がったのだ。愛紗はいつでもやれると判断したのである。そして今、一番に

 倒すべき相手をこの者と断定したのであった。

  「朱染めの剣士、またお前か・・・。」

  屋根の上にて女と対峙している彼を見て、その場に戻って来た思春が零した。

  「あれがあの朱染めの剣士なのですか?」

  「わぁ・・・、本当に朱色に染まっている!」

  初めて朱染めの剣士を見た明命と小蓮の目は彼に釘付けであった。

  「あの・・・、今は戦闘中なのに・・・。」

  そんな二人を見て、亞紗は呆れていた・・・。

 朱色に染まった外套を身に纏った朱染めの剣士、右手には細身の片刃剣を握られている。

 そして、両手で握り直すと応竜に立ち向かって行くのであった。

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  一方で、先行する雪蓮、蓮華、冥琳達は城内に入っていた。

  「もう、城に入れたのはいいけど、何なのよ!あの敵の数は!?」

  「ここは敵の本陣・・・!何ら不思議な事では無いでしょう!」

  親衛隊を引き連れながら、後ろから追撃して来る自分達の倍以上の敵に愚痴を零す雪蓮と、その愚痴を

 受け流す蓮華。

  「・・・・・・。」

  そしてもう一人、冥琳は何かを考えている・・・。

  「周喩様、このままでは追いつかれてしまいます!」

  そこに後ろから付いてくる親衛隊の兵士が一人が叫ぶ。

 そして冥琳は一つの決心を付けた様に、親衛隊の兵士達に言った。

  「お前達、この私に命を預ける覚悟はあるか?」

  彼女の言葉に首を横に振る者はそこにはいなかった。彼女が言おうとする事を、彼等は理解していた。

 そして、親衛隊の兵士達は冥琳の合図に合わせ急な方向転換をして、後ろから追撃する敵達を迎撃態勢に

 入った。そこは王宮と目と鼻の先の石畳の廊下の所であった。

  「「冥琳っ!!」」

  冥琳の行動に、思わず立ち止まる雪蓮と蓮華。

  「二人は早く王宮に行きなさい!!ここは私達で食い止めて置きます!」

  「冥琳!?無茶言ってんじゃないわよ!あなた達だけであれだけの数を相手に出来るわけ・・・!!」

  「待って下さい、姉様!」

  雪蓮が言いきる前に口を出す蓮華。

  「蓮華・・・っ!?」

  そんな妹に目を丸くする姉。

  「奴等を倒した所で、すぐに増援が来るだけ。奴等を街から追い払うにはその総大将を・・・、祭を

  倒す以外に手は無いはず!ならば、ここは冥琳に任せ、一刻も早く祭を!」

  「蓮華様・・・。」

  いきり立つ姉を上手く説得させる蓮華を見て、何かを感じた冥琳。蓮華は冥琳の方に顔を向ける。

  「冥琳、ここはあなた達に任せていいのね?」

  今までに見た事も無い凛々しい姿の彼女がそこにはあった。それを見た冥琳は、一瞬嬉しそうな顔をして

 縦に頷く。そしてすぐにきりっとした軍師の顔に戻る。

  「行け、雪蓮!走るのです、蓮華様!」

  「ええ!行きましょう、姉様!」

  冥琳の言葉に従うように、その場を後にし、駆け出す蓮華。そんな妹と親友を交互に見ながら、

 どうしたらいいのか迷っている雪蓮。

  「・・・分かったわよ!行けばいいんでしょ行けば!冥琳、頼んだわよ!」

  やややけくそ気味に・・・、妹の後を追いかけるのであった。二人の背中を見送る冥琳。そして蓮華の

 背中を見ながら・・・、

  「・・・もしかすれば、蓮華様が王になる日は近いのかもしれないな。」

  何かを悟った様に、そう呟いた。

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  ガゴォオオオッ!!!ガゴォオオオッ!!!ガゴォオオオッ!!!

  応竜の背中に生える六枚の羽が朱染めの剣士に襲いかかる。

 剣士はそれをステップを踏むように、屋根の上を移動する。羽の先端は瓦を砕き、屋根を貫く。

  ボゥウンッ!!!

  今度は真っ直ぐに剣士の体に向かって襲いかかるが、剣士は後ろに捻りを加えた宙返りをして回避すると

 同時に下に降り、地面に倒れていた兵士の手から一本の剣を拾い上げた。

  ザシュウウウッ!!!

  その兵士の体を刺し貫く羽の先・・・、朱染めの剣士の上に飛び下りてくる応竜に、彼は身を屈めた体勢

 から地面を転がるように、その場を離れる。そして彼がいた場所を五枚の羽が刺し貫く。五枚の羽は女の背中

 へと戻っていくが、残りの兵士を刺し貫いた羽は、彼に向かってその死体を投げ放つが、朱染めの剣士は右に

 軽くかわす事で避けると、そこにしかさず、羽が襲いかかって来た。朱染めの剣士は先程拾った剣を逆手に

 持ち、自分に襲い掛かってくる一枚の羽をその場で待つ。

  ザシュッ!!!

  逆手に持った剣を振り降ろすと、剣の切っ先は地面ごとその羽を刺し貫いた。

  「・・・!?」

  羽を戻そうとする応竜だが、完全に固定され、戻す事が出来ない。そしてまた兵士の死体から剣を拾い

 上げる朱染めの剣士。そしてまた彼に向かって三枚の羽が襲いかかる。朱染めの剣士は家の壁を背後にして、

 三枚の羽を待ち構える。

  ザシュッ!!!

  そして今度は羽三枚一緒に、家の壁ごと刺し貫いた。朱染めの剣士はもう一本の剣、南海覇王を鞘から抜く

 と四枚の羽を固定されてしまった応竜に向かって行った。応竜は彼を迎撃するべく、残り二枚の羽を伸ばす。

 が、朱染めの剣士はそれを地面にたたき伏せ、一気に近づいた。

  「・・・!」

  ブォウンッ!!!

  ガッゴォオオッ!!!

  応竜は彼の放った斬撃を長槍で防ぐ。すると、今度は背中の羽の根元が固定された鎧の部分が開き、六枚の

 羽の根元が応竜の鎧から落ちる。

  「見て!あいつの羽が取れたよ!!」

  それを見た小蓮が大声を上げて皆に教える。

  ギイイイインッ!!!

  鈍い金属音と共に、二人は離れると応竜は長槍を両手に持ち、再び先程の構えを取る。

 そんな応竜の姿を見た朱染めの剣士も剣を構えた・・・。

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  バァアン・・・・・・ッ!!!

  その大きい扉を両手で開く雪蓮。そこは自分達が良く知る王宮・・・。王宮内は物音一つせず、静寂に

 包まれていた。雪蓮と蓮華は剣を構えながら、中へと慎重に入っていく。歩くたびに二人の足音が響き渡る。

 そして、二人は何事も無く、王座の間へと辿り着いた。二人は歩みを止める事で再び王宮内は静寂に包まれる。

  「・・・祭!ここに居るのは分かっているのよ!出て来なさい!」

  雪蓮の声が王宮内で何重になって響き渡る・・・。

  ビュンッ!!!ビュンッ!!!

  「「っ!?」」

  何処からともなく飛んできた二本の矢、雪蓮は咄嗟に剣で叩き落とし、蓮華は身をかわして避ける。

 そして今度は天井の上、闇の中から矢を放った張本人が王座の前に音も無く降り立った。

  「「祭っ!」」

  二人がその人物の真名を呼ぶ。以前、朱染めの剣士によって左腕を斬られたはずが何故かそこにあった。

  「ふむ・・・。思いのほか、来るのが早かったようですな。策殿、蓮華様。」

  「・・・あなたの事は、女渦から聞いたわ。と言っても、完全に理解してるわけではないけどね。」

  「ふはは・・・、まぁそれで良いのではなかろうか?わしとて全部を理解している訳ではないからのう。」

  「・・・でしょうね。そして、あなたがどうしてこんな真似をするのかも・・・ね。」

  「こんな真似・・・とは?わしの愛するこの国を襲った事を言っておるのですかな?」

  「分かっていて、そう言う事をしているのね。」

  「それが何か問題でも?」

  「祭!もう止めて!あなたはあの男に利用されているのよ!」

  「・・・でしょうな。」

  蓮華の叫びにも似た説得に抵抗する事無く肯定する祭。

  「え・・・?」

  「何・・・ですって?」

  そんな祭に面食らう二人・・・。

  「何をそんなに驚いておるのか?お二人の誤解が無いよう言っておきますが、わしは別にあの小僧に術で

  操られているわけではありませんぞ?わしは・・・、わし自身の意思で、女渦の手となり足となり、

  そして今ここにおる・・・、ただそれだけの事。」

  祭の言葉を聞いた蓮華の顔が一瞬にして青ざめる。

  「・・・嘘よ。そんなの、嘘よ!!ならどうして、どうしてあなたはこんなひどい事をするの!?

  誰よりもこの孫呉を愛していたあなたが、この国を!民達を!その想いを!どうしてそんな簡単に

  傷つけ、踏みにじる事が出来るというのっ!?」

  蓮華の両目から大粒の涙が零れ落ちる。それを見た祭は目を閉じ、そして軽く一息をついた。

  「うざいのぅ・・・、本当に。」

  「・・・・・・え?」

  その祭の思いがけない言葉に、蓮華は理解が出来ず、一瞬思考が止まる。そんな彼女を、祭は露骨に

 卑下する様な目で見ている。

  「甘ちゃん思考の小娘の言葉なぞ、聞いているだけでも反吐がでそうじゃよ。」

  そう言うと、祭は蓮華にピンと伸ばした一指し指の先を向ける。

  「そんなお主が、このわしの・・・一体何を知り、何を理解しておるというんじゃ!?

  自惚れるな・・・、孫仲謀!お前さん如きに語られる程に、わしは並み程に生きてなどおらぬわッ!!!」

  「ぅ・・・っ!」

  祭の持つその威圧感と発した言葉の重みに、蓮華怯み、一歩後ろへと引き下がってしまう。

  「この外史は女渦達・・・、外史喰らいによって跡形も無く消される事となる。これはもはや不動たる

  決定的な運命じゃ!お主達、駒風情がどう足掻こうとも!・・・ならばせめて、どうせ消えるのであれば、

  せめてこの孫呉だけは私の手で滅ぼすッ!!それが・・・、それこそが!この国に一生を捧げ、死してなお

  もここに存在する、わしに出来る唯一の愛情表現だと、何故にそれが分からんのじゃ!?」

  「・・・ふざけんじゃないわよっっっ!!」

  「ね、姉様!?」

  雪蓮の腹の奥底から吐き出された低音の怒声に、隣にいた蓮華はびくっと体が震えた。

  「聞いていれば勝手なことばかり・・・!!消されるなら、せめて自分の手で滅ぼす!?それが愛です

  って!?まさかあなたの口からそんな言葉が出るなんて思いもしなかったわ!!」

  「・・・・・・。」

  その雪蓮の怒りの込められた言葉が祭の全身に叩きつけられる。そして、雪連は祭を獣の様な目で睨みつける。

  「祭・・・、いえこの下朗!!私達の国は・・・、孫呉という国はそんな生半可なもので出来てなんて

  いないのよ!!!母様が・・・、そして今までに散っていった多くの英兵達の血と肉を礎にした、その上

  にこの孫呉という国は成っている!!」

  「そしてわしの血肉もまたその礎となった・・・。」

  そう言いながら祭は目を瞑り、感慨深く言う。その一方で、雪連の激昂はさらに高まる。

  祭の言葉に耳を

  「黙れ、この偽物風情が!!!」

  「下朗の次は偽物呼ばわりですか?」

  やれやれと首を横に振る祭。

  「はっきりと分かったわ・・・。あなたは、あなたは!私達が知っている『黄蓋公覆』でない!!

  私達の『敵』だって事がっ!!!」

  「・・・ならその敵であるわしをどうなさる気なのじゃ?」

  「決まっているわ・・・!これ以上、私達の『黄蓋公覆』の誇りを汚させないために、あなたを・・・

  斬る!!!」

  そして雪蓮は南海覇王の切っ先を祭に向けた。

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  羽をもがれた応竜と対峙する朱染めの剣士。

  「ようやく我等と同じ・・・となったか?」

  青龍偃月刀を杖代わりにして、腹を抱えながら立ち上がる愛紗。

 そこに容赦なく襲いかかってくる敵兵。

  ザシュッ!!!

  「ッ!?!?」

  だが、思春の背後からの一撃に切り捨てられる。

  「油断するな。敵はあれだけではないのだぞ!」

  「あぁ・・・、世話を掛けた・・・。」

  「とは言え、あの男の介入で戦況は大きく変わったと言ってもいいだろうが・・・。」

  そう言って、思春は朱染めの剣士の後ろ姿を見るのであった。

  「大丈夫、紫苑?」

  小蓮は負傷した紫苑の側で心配する。

  「えぇ、出血はひどいようだけど、傷は浅いからすぐに止まるわ。」

  心配そうに見ている小蓮に自分は大丈夫である事を伝える。

  ガッゴォオオオッ!!!

  再び動き出す応竜と朱染めの剣士。先に攻撃を仕掛けて来たのは応竜であった。6枚の羽を失ってなお、

 その突進力は健在であった。朱染めの剣士は応竜の突きをまず二つの剣にて受け流し、突進してくる応竜に

 自分からも交差気味に突っ込んでいく。

  ドガッ!!!

  槍の間合い、さらに剣の間合いの内側に入った朱染めの剣士は全体重を左足に傾け、応竜に当て身を放つ。

 白銀の鎧は如何な攻撃をも受け付けない。だが、衝撃までは受け止める事は出来ない。渾身の当て身を

 まともに喰らった応竜は後ろへと吹き飛ばされ、そのまま家の壁を破壊した。ぽっかりと開いた壁に近づ

 こうとした朱染めの剣士の前に愛紗が立ち塞がる。

  「待て、待ってくれ!奴を殺さないでくれ!」

  朱染めの剣士は足を止め、彼女の方を見る。

  「奴は・・・星、私の仲間なんだ。」

  「・・・そうだろうと、・・・関係、ない。」

  そう吐き捨てる様に言い、愛紗を自分の前から退かす。

  「・・・待て!」

  自分の横を過ぎ、応竜へと近づこうとする朱染めの剣士の右腕を咄嗟に握る。剣士は足を止め、彼女の方に

 顔を向けた。

  「頼む・・・、待って、くれ・・・。お願いだ・・・。」

  そこには誇り高い武人の関羽雲長ではなく、ただ一人のかけがえのない仲間を案じ、懇願する少女が上目で

 自分を見ていた。彼女には仲間を救うための術を知らない。だから、それを知るであろう唯一のものに頼るしか

 なかった。恥も屈辱も捨て、愛紗は朱染めの剣士に仲間である、星を助けて貰えるように・・・。

  「・・・・・・。」

  彼は何も言わず、ただ彼女を見ているのみ。そして、何かを思い返す様に上を見上げた。

  「・・・一つだけ、ある。彼女を救う方法が・・・。」

  その言葉に、曇った顔に光が指し込む。

  「っ!?本当か・・・!」

  「だが、そのためには時間が、必要だ。少しの間、奴の・・・、動きを封じて欲しい。」

  分かった、そう愛紗が言葉にしようとした。

  「何を好き勝手に話を進めておるのだ、貴様。」

  思春は何が気に喰わないのか、ひどく不愉快な顔で彼を睨み、愛紗の声を遮った。

  「し、思春殿!こんな時に喧嘩をしている場合では無いかと・・・!」

  喧嘩腰の思春を明命は思い止まらせようとするが、彼女は聞く耳を持たない。

  「勝手に現れ、勝手に戦い、勝手に去り、勝手な事を平然と言い、貴様は一体何様のつもりだ?」

  そして彼の首筋に鈴音の剣先をすれすれの所まで押し当てる。

  「そんな貴様の事だ・・・、お前がいた世界の蓮華様にもさぞかし苦労を掛けたのだろうな。違うか、

  北郷一刀・・・?」

  「・・・・・・ふっははは・・・。」

  自分の首筋に剣先が押し当てられているにも関わず、朱染めの剣士は声が掠れた感じに笑った。

  「っ!何が可笑しい!?」

  「・・・、俺が、知っている彼女も・・・、何かと因縁をつけ、よく俺の首に、剣先をつき付けていた・・・。」

  そして彼は思春の方を見る・・・。

  「君も・・・、全く同じ事をするんだな・・・、と思って、な。」

  「な・・・っ!」

  思わぬ彼の言葉に、思わず剣を引き、自分の表情が彼から見えないように隠す思春。

  「・・・全く、こんな時に何を言うのだ貴様は!!」

  怒っている様ではあるが、何処か照れ隠しのようにも映る・・・。気を直すと、後ろの明命を横目に見る。

  「幼平。」

  「は、はい!」

  「あれの動きを私達で封じる。」

  「・・・はい、分かりました!」

  「ならば・・・!」

  「行きます・・・!」

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  家の中から壊れた壁を押し返して外へと出てくる応竜。その真上には鈴音を応竜に振り落とす思春の姿。

  ブォウンッ!!!

  思春が振り下ろした斬撃を長槍で受け止め、彼女の体ごと弾き返すも思春は宙で体をひねり返す。

  ブオゥンッ!!!

  思春の斬撃を受け返した直後の応竜の右横に今度は明命が魂切で鎧と鎧の間、つまり関節の部分に横薙ぎを

 放つが、応竜は右足を右に90度回す事でその一撃をすり抜ける。そして今度は明命に反撃を返そうとする。

  ガチィイインッ!!!

  がその前に、思春が背後に一撃を叩きつける。その衝撃に前のめりになりながらも後ろの思春にすかさず

 反撃を与える。

  ボゥオンッ!!!

  ザシュッ!!!

  その長い槍の切っ先が回避したはずの思春の左太腿をかするも彼女は動じない。

  ガチィイインッ!!!

  今度は明命と思春が反対方向から入れ替わりながら同時に斬りかかる。鎧と剣がぶつかる時に鳴る金属音が

 二重に重なって響く。そして応竜に反撃の隙を与えまいと、立て続けに同時攻撃を重ねるていく。二人の連携

 に翻弄される応竜。そしていつの間にかその身体には鎖が幾重にも巻き付けられていた。応竜に攻撃する際に

 二人が巻き付けたのである。そしてその鎖を少し離れた所から力の限りに引く呉の精鋭達によって、応竜の

 動きが止まった。だが、応竜もまた必死に抵抗する・・・。

  ブゥオンッ!!!

  そこに、朱染めの剣士が応竜の体に触れそうで触れない、右拳による寸止めを放つ。応竜の動きが封じられ

 てから三秒後の出来事であった・・・。

  ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!

  一瞬の静寂を切り裂くその轟音と共に寸止めされた右拳の前から応竜に向かって青白い光が大量に放たれる。

 一瞬にして光に包みこまれる応竜。光はそのまま地面と平行に通りを駆け抜けながら、次第にその軌道を上方

 へと逸れ、雲を掻き消しながら、空の彼方へと進んでいった。

  応竜の鎧の下、肌に密着していた黒い膜状のものが次々と鎧の隙間から溶ける様に光の中へと消えていく。

 そんな中、応竜の背中に必死にしがみつく一つの影。その影こそ、応竜、もとい星を操っていた張本人で

 あった。その影から数本の触手が光の外を飛びだし、朱染めの剣士に襲いかかる。一方で朱染めの剣士は

 右腕に左手を乗せる。

  「終わりだ・・・。」

  そう言って、両腕に力が込められる。途端、光はさらに大きく、高速になっていく。影はそれに乗って、

 星の体から引きはがされて、光の進む方向へと流されていく。

  「・・・・・・・・ッッッ!?!?」

  彼に襲いかかろうとした触手はその影に引っ張られ、彼から遠ざかっていく。光の流れに乗る影は次第に

 小さくなっていき、そしてついには跡形も無く、光の中へと消えて行った・・・。空の彼方へと伸びて行った

 光の柱は次第に中心へと収束し、消滅した。

  「・・・・・・。」

  「・・・・・・。」

  「・・・・・・。」

  「・・・・・・。」

  「・・・・・・。」

  「・・・・・・。」

  そこに居合わせていた者達は揃って、口を開きながらも、声を発する事無く、唖然としていた。

 そして残ったのは、白銀の鎧を脱ぎ捨た、裸体の星だけ・・・。支えていたものを失くした彼女の体は

 そのまま地面へと崩れる様に倒れた。朱染めの剣士は、身に付けていた外套を脱ぐと、それを星の体に掛ける

 ・・・。

  「・・・星!!」

  自分の世界から戻って来た愛紗は星の元に駆け寄る。

  「ん・・・。」

  「星・・・、まだ息があるのだな。」

  まだ息がある事が確認できた愛紗は安著する。

  「私だけでなく、星も助けてくれるとは・・・、お主と北郷殿には助けられてばかりだな。

  一体どう礼をすれば・・・、ん・・・い、いない!?」

  朱染めの剣士の方に顔を向ける愛紗。しかし、当の本人はそこにはおらず・・・。愛紗は彼の姿を探すが、

 何処にも無かった。

  「あ、あれ・・・?今そこにいたはずですが・・・。」

  そう言いながら、明命も彼の姿を探す・・・。

  「全く・・・、人の話を聞かん男だ。」

  やれやれと呆れる思春・・・、そしてここからよく見える建業の城に目をやる。

  「蓮華様・・・。」

-8ページ-

 

  「がはっ・・・!」

  「姉様!」

  口から血を吐き出す雪蓮を支える蓮華。そして二人の前には祭が立っていた・・・。

  「・・・ふぅ。」

  祭は二人に聞こえるよう、わざと大きな溜息をつく。

  「失望しましたぞ、御二方。二人掛かりだというに、このわし程度に遅れを取るなどとは・・・。

  この二年の間に随分とふ抜けてしまったようですな。」

  「何、ですって・・・!?」

  肩で息しながら、声を出す雪蓮。

  「平和ボケし、戦を忘れた虎は自分の爪を研ぐ事を怠るもの・・・。今のお前達はまさにその虎じゃ!

  わしはこんなふ抜け共のために命を捨てたと思うと、歯痒くて仕方がないわっ!!」

  「・・・・・・。」

  「・・・・・・!」

  祭の罵声に言葉を失くす蓮華と下に俯く雪蓮・・・。

  そこに一人、朱染めの剣士がコツコツと音を立てながら、彼女達の後ろに現れた。

  「あなたは・・・!」

  蓮華は彼の姿を複雑な顔で見る。やはり来てくれたという喜び、何をしに来たという不快感が水と油の

 様に入り混じらない相反する感情のせいで・・・。一方で、純粋に喜ぶのは祭であった。

  「おぉ!やはりお主も来ていたのだな!丁度良い、ふ抜けた小娘達の剣戯に突き合うのも飽き飽きして

  いたのだ。お主なら、退屈せずに済むかものう・・・。」

  「・・・・・・。」

  朱染めの剣士は無言のまま腰に帯刀してあった剣の柄に手をかけ、ゆっくり歩み寄ろうとした。

  ビュンッ!

  が、彼の足が止まる。雪蓮の南海覇王の切っ先が彼の喉元に突きつけられているからである。

  「下がりなさい・・・!あれの相手は、私よ!勝手にやって来た揚句、勝手に横槍を入れんじゃないわよ!」

  「・・・。」

  朱染めの剣士は何も言わず、雪蓮の方を見る。

 数秒の沈黙の末、彼は柄から手を離し、数歩後ろへと下がっていく。雪蓮は蓮華から離れると、蓮華に彼が

 変な動きをしないように見ていないさいと言い残すと、祭の方を見る。

  「策殿・・・、お主はわしの命だけでなく、わしの愉しみまで奪うつもりなのか?」

  不機嫌な様子で喋る祭。雪蓮は口元の血を親指を拭うと、祭を睨みつける。

  「黙りなさい。あんたのお喋りにはもううんざりなのよ。死人に口無し・・・、私の手でもう一度

  あの世に送り返してやるわ!」

  「・・・ほう、言うてくれるでは無いか。じゃが、その研がれておらぬ爪でわしを切り裂く事は出来まい!」

  ビュンッ!!!ビュンッ!!!

  二本の矢を弓で同時に放つ祭。

  カチンッ!!!カチンッ!!!

  その矢二本を一振りで払い落とす雪蓮。

  「研がれていないですって?研がれていないか、あんたのその身を以て判断してみなさいよ!!」

  ブォウンッ!!!

  「ふんっ!」

  見え透いた斬撃を軽く横に動く事でかわす祭。

  ゴンッ!!!

  「・・・っ!」

  その際、雪蓮の顎に肘を叩き込む。雪蓮は飛んでくる肘と同じ方向に首をひねり、体もひねるとそのまま

 反撃に移る。

  ブゥオンッ!!!

  ガッゴォオオッ!!!

  だがその反撃も祭の弓によって防がれる。しかもその弓にはすでに矢が引かれていた。矢の先端が雪蓮の

 首筋を捉える。

  「姉様・・・っ!?」

  姉の危機に前に出ようとする蓮華を手で遮る朱染めの剣士。そして矢の尾を摘まんでいた祭の手が離れる。

  ビュンッ!!!

  「っ!!!」

  「・・・・・・。」

  「・・・っ!!」

  「・・・痛っ!」

  矢が雪蓮の左手を刺し貫き、そこから血が流れる・・・。その痛みに声を洩らす雪蓮。雪蓮は咄嗟に左手

 を前に出し、矢を受け止めたのであった。雪蓮は祭の弓を払い除けると、そこに斬撃を放つ。

  ブォウンッ!!!

  「ちぃっ!」

  祭は斬撃を避けるべく、後ろへと飛びずさる。再び矢を放とうとしたが、すでに雪蓮は前に飛び出し、

 間合いを詰めて来た。雪蓮の口には先程左手を貫いていた矢が咥えられており、ぺっと横に吐き出す。

  ブォウンッ!!!

  ガゴォオンッ!!!

  「んな・・・っ!?」

  両手で握られた南海覇王の一撃で弓が叩き折られる。そして雪蓮はその勢いに乗って、もう一度南海覇王

 を振り上げ、今度は祭の首筋に向かって、右横薙ぎを放った。

  「はあああああああああああああっ!!!」

  「っ!!」

  ブォウンッ!!!

  祭の手にあった壊れた弓が床に落ちる・・・。

 ・・・だが、雪蓮の放った一撃が祭の首筋を捉えなかった。

  「・・・何のつもりでしょうかな?」

  祭は雪蓮に問いかける。南海覇王は祭の首筋すれすれで止まっていた。

  「・・・やっぱり、私には・・・あなたを斬る事は出来ない。」

  雪蓮はそう答えると、南海覇王を下ろすと話を続けた。

  「あなたは私達の知っている祭とは違う・・・でも、それだけの事。やっぱりあなたは『黄蓋公覆』

  ・・・、『祭』なのよ。そして『祭』は孫呉のためならば、その命を、その誇りを地につける事だって

  厭(いと)わない人間である事を今、思いだしたわ。」

  「・・・何が仰りたいので?」

  「あなたがこの国を襲った本当の理由は、この国を女渦の手から守るため。あなたがあの男に従って

  いたのも、それを気取られないようにするためのものだった・・・。あいつ、かなりの変態のくせに、

  相手に隙を見せないし、相手の隙も見逃さない男だからね。」

  「・・・・・・。」

  「その証拠に、あなたは街の皆に危害を加えなかった。あいつ等にそうさせない様、あなたが抑えて

  いたのでしょう・・・?あなたは自ら私達の敵となる事で、私達を影ながらに守っていた・・・。」

  自分の推論を言い終えた雪蓮は、祭を見る。祭はそれから背けるように、体を横にずらす。

  「・・・まぁ、近からずも、遠からずと言った所でしょうか・・・。所々、違えど大方はわしの思惑を

  捉えている・・・。」

  「祭・・・。」

  「女渦は、この孫呉・・・、特に蓮華様に対して異常なまでの執着心を持っておった。当然、孫呉に奴の

  手が伸びるのは時間の問題であった。とはいえ、奴の酔狂によって再び生を与えられたばかりのわしが

  下手に動けば、奴の事だからのう、すぐにわしは不要とみなされ、処分される。奴は自分の気に入った物

  であれば、例えそれが自分に害をなすものであろうと、とことこん愛着心を示すが、自分に不要な物だと

  思えば、容赦なく消す。だからこそ、わしはまず奴の手となり足となって、奴の信頼を得る事にした。」

  そこで一息つくと、再び体を雪蓮の方に向ける。

  「わしの行動は結果として、奴の信頼を得る事となった。正直、わしもあの男を完全に理解しておるわけ

  では無いが・・・、奴が人の不幸を楽しむ悪癖を持っているのは、薄々を分かっておったからのう・・・。」

  「人の不幸・・・?」

  いま一つ理解出来ない蓮華。

  「・・・・・・・。」

  一方で、それを理解しているのか、顎に力が入る朱染めの剣士。

  「まぁ・・・、要するに人が人を憎しみ、妬み、恨み、悲しみ、それを見るのが奴の喜びとなる・・・。」

  「とことん変態ね・・・。」

  「そんな男の毒牙に、これ以上わしが愛した孫呉の民達が、策殿達が掛かる事になるのは我慢ならなか

  った。今までのわし達が為し得なかった事を、その不幸の連鎖をこの外史で断ち切りたかった。そして

  ようやくその機会を得る事が出来た。」

  「それがこの騒動ってわけなの?」

  「・・・成都での戦いにて致命傷を負った女渦は今、その傷を治している最中。わしはその間の時間稼ぎの

  ために、この街を襲った・・・。」

  「成程。奴を倒すなら今しかないって事ね?」

  祭はゆっくりと縦に頷く・・・。

  「されど、奴は、連中は策殿が思う以上に強大な存在・・・。力だけで言えば、その差は火を見るより

  明らかなもの。そのような輩を相手にする以上・・・、それに屈せぬ気概を失くしては勝機も、何より

  この国の将来を守る事などまかりならん・・・。だからこそ、わしは確かめねばならなかった、この目で

  お前さん達の力を・・・。」

  「で、あなたから見て私達はどうだったのかしら?」

  「・・・少なくとも、まだ希望が残っているかと。」

  「そう。」

  「そして何より、あ奴がおる・・・。」

  「・・・。」

  祭は朱染めの剣士の方を見る。

  「まぁ・・・、随分とぶっきら棒な男になってしもうたようだがのう・・・。」

  と言って、祭はけらけらと笑う・・・。

  「祭、教えて頂戴。奴は・・・女渦は何処にいるの?」

  雪蓮は祭に問うと、祭は笑うのを止める。

  「・・・奴は、傷の治療のため・・・」

  ピィイイイイイインッ!!!

  「ぐ、ぐぅうっ!?!」

  「「祭・・・!」」

  「・・・ッ!」

  祭の頭の中に弦を引っ張った様な音が鳴る。そして祭に頭に激痛が走り、両膝を折り、頭を抱え、苦しみ

 出す。

  『祭さん?もうそれ以上喋らなくていいよ。そう、妙だとは思ったけど・・・そういう思惑があったの。』

  祭の頭に女渦の声が響く。

  『祭さん・・・あなたは酷い人だぁ。僕はあなたの事を信頼していたんだよ?この僕の信頼を裏切る

  ような真似をしてくれちゃって・・・、残念だ。とても、残念だよ!!!』

  そんな事を言いながら嬉しそうに喋る・・・。

  『勝手な事をするあなたにもう用は無い・・・。せめて最後は僕のために散っておくれよッッ!!!』  

  「・・・・・・・・・っ!!!」

  力尽きた様に横に倒れる祭。

  「祭っ!?」

  彼女の元に駆け寄り、体を抱き起こす雪蓮。

  「祭、どうしたの!?しっかりして・・・!」

  「待て、その人から離れ・・・!」

  ドスッ!!!

  「な、ぁ・・・っ!?」

  朱染めの剣士が何かを言おうとした瞬間、雪蓮の下腹部を一本の矢が刺さる。雪蓮に抱きかかえられて

 いた祭が、雪蓮の腕を払い除けると、一人で立ち上がった。そして今度は雪蓮が力尽きた様に横に倒れる。

 彼女が握っていた南海覇王が床に落ちると、祭はそれを拾い上げる。

  「あ、あなた・・・、祭じゃ、ないわね・・・!」

  地べたを這いずるように、雪蓮は祭を見上げる。彼女の目に生気は無く、死んだ魚の様であった。

 祭はまるで操られているかの様に、ゆっくりと両手で逆手に握った南海覇王のその切っ先を雪蓮に向ける。

  「祭ーーーっ!!」

  祭の真名を叫ぶ蓮華。だが、その叫びは彼女に届かなかった。そして祭は雪蓮に南海覇王を落とした。

  

  ガギィイイインッ!!!

 

  雪蓮の南海覇王の切っ先を、朱染めの剣士の南海覇王の剣先が捉える。間一髪の所で、朱染めの剣士が

 祭による、雪蓮への止めを阻止したのであった。

-9ページ-

 

  「・・・これ以上、あなたの手を奴のために汚させる訳にはいかない!」

  そう言って、朱染めの剣士は雪蓮の南海覇王を跳ね返すと、祭は数歩後ろへと下がって行く。

 朱染めの剣士は祭の後を追いかて行くと、祭は南海覇王を片手で、剣術でいう下段の構えを取った。握った

 南海覇王の先を地面に向けたまま、ゆらゆらと揺らす・・・。

  「・・・・・・!」

  そんな彼女の姿を見た朱染めの剣士は、はっと驚く。祭は彼の攻撃を待っているのだ。

  「・・・。」

  朱染めの剣士は・・・、一刀は南海覇王を両手で構え直すと、祭との間合いを測りながら、足を前に

 進めていく・・・。

  ブゥオンッ!!!

  ガギィイインッ!!!

  南海覇王を握る手とは逆の肩口に向かって放った斬撃を祭は瞬間的に跳ね上げたその切っ先で受け止める。

 それを先に分かっていた様に、一刀は右手首を返しながら、今度は反対の肩口に向かって片手で斬撃を放つ。

  ブゥオンッ!!!

  ガッゴォオオッ!!!

  だが、それもまた祭は難なく受け止める。そして今度は祭が反撃に移る。

  ブゥオンッ!!!

  祭は一刀の腹部に横薙ぎを放つ。

  ガギィイインッ!!!

  それを南海覇王の腹の部分で受け止めると、そこから一気に祭に近づく。それを察知した祭は敢えて

 そこから動かず、タイミングを合わせる。一刀は剣を封じられた祭に当て身を放とうしたが、不発に終わる。

 祭が一刀に伸ばした左手が彼の胸倉を掴み、そのまま背負い投げる。宙に放り投げられた一刀は腰を捻り、

 祭と面等向かう様に着地する。そしてまた一刀が祭に向かって行く。

  ブゥオンッ!!!

  ガギィイインッ!!!

  ブゥオンッ!!!

  ガッゴォオオッ!!!

  ブゥオンッ!!!

  ガギィイインッ!!!

  ブゥオンッ!!!

  ガッゴォオオッ!!!

  互いに相手に斬撃を撃ち合い、それを受け止め、その隙を狙ってまた斬撃を放つ。

  ブゥオンッ!!!

  「ッ!!」

  ザシュッ!!!

  眉間に放たれた突きを寸前の所でかわす一刀。突きは一刀の顔の間横、こめかみすれすれをすり抜ける。

 その時、彼の長髪と彼の目もとに巻かれていた鉢巻が宙を舞う。鉢巻きによって隠れていた両目が露わに

 なるが、彼の左目はその中央を横断した深く抉られた傷跡と共に閉じられ、右目だけで見ている状態と

 なっていた。

  ブゥオンッ!!!

  それに構わず、反撃する一刀。

  ガギィイイインッ!!!

  だが、それも祭に受け止められてしまう。この時、一刀は一瞬南海覇王を握る祭の手首を見た。

 一旦距離を取り、構え直す一刀・・・。

  「・・・・・・。」

  改めて祭を見る。一刀はすでに理解していた。今の彼女は女渦によって操り人形と化してしまった事を。

 南海覇王を握る両手に力が入る。彼女を女渦から救う方法は・・・、一つしかない。

  「・・・ッ!!」

  ブォオンッ!!!

  ガッゴォォオオッ!!!

  一刀のさらに一歩前に深く踏み込んだ一撃を祭は受け止めるが、そこに全体重を南海覇王にかけ、強引に

 押し込む。しかし、祭は何のそのと言わんばかりに、一刀を南海覇王ごと跳ね退けたようと押し返した。

  ブゥオンッ!!!

  一刀は咄嗟に引き、再び振り下ろす。

  ガゴォオオッ!!!

  再び、剣と剣がぶつかる。祭は一刀の南海覇王を押し返そうとした。

  「・・・ッ!」

  だが、一刀は祭のその動きを見極めると、押し込まず逆に自ら引く。

  「・・・!?」

  押し返そうとした祭は肩透かしをされる形で、わずかに体勢が崩れる。

 一刀は引いた南海覇王にて祭の握る南海覇王を下からその手首に最も近い鍔付近に叩き上げた。

  キィイイインッ!!!

  一刀の下から叩き上げによって、祭は手から南海覇王を離してしまう。

 雪蓮の南海覇王はくるくると回転しながら、上へと跳ね飛ばされた。無防備の状態となった

 祭に、一刀は南海覇王をぎゅっと両手で握り締め直し、そして大きく振り上げた・・・。 

  この時、一瞬ではあったが、祭が笑っていた・・・。

 それに気づいたのか、気付かなかったのか、一刀は彼女にその一撃を振り落とした。

  「や、止めてっ―――!!!」

  とっさに蓮華が何かを言おうとした瞬間、

  ザシュウウウウウウウッッ!!!

  一刀は祭を斬っていた・・・。彼女の右肩から左横腹部にかけて、斬り降ろされた所から

 おびただしい鮮血が天に向かって溢れ出た・・・。そして束ねられていた髪がほどけた。

 南海覇王は祭の血に濡れ、またそれを握る一刀もまた彼女の血に濡れるのであった。

  「祭ーーーーーーっ!!!」

  思わず叫んでしまう雪蓮。

 先程まで殺し合っていたはずなのに、それにもかかわらず祭の姿を見た瞬間、何か大事なモノを

 失ってしまうような感覚が彼女を支配していた・・・。

  「ぁ・・・、ぁあっ・・・ぁあ。」

  祭はまだ死んではいなかった・・・。すでに多量出血で体から血が抜け出てしまったはずなのに・・・。

 それでも彼女は死んでいなかった・・・。祭は何かを探すように、両手を前に差し出した状態で前に数歩歩く。

 彼女の前に一刀が立っていた、全身を彼女の血で染めた北郷一刀が・・・。そして祭の両手が彼の両肩を掴む。

  「はぁ・・・、・・・はぁ・・・、・・・はぁ・・・。」

  肩で呼吸をするも、血が足りないせいか、彼女の顔がみるみると青く変貌していく。

 一刀はそんな彼女から目をそらす。それでも祭は、持てる力を振り絞るように口を開いた・・・。

  「・・・頼みが・・・ある。・・・この、わしを・・・黄公覆を、討ち取った・・・男の顔を・・・

  見せてくれぬか?」

  苦しそうに息継ぎをしながら喋る祭に答えるのように、一刀はゆっくりと彼女の目の前に自分の顔を差し

 出した。祭はその顔をしっかりと見ようと両手で、確かめる様に彼の顔の輪郭をなぞっていく。

 そして、祭の顔は苦しいながらも、嬉しそうに一刀の顔を見る。一刀はそんな祭の目をずっと見つめていた。

  「・・・ぉぉ、・・・ぉおお、これが・・・わしを討ち取った男の顔・・・なのか・・・何と・・・、何

  とこんなに、良い男に・・・なりおって・・・。」

  彼女の目はまるで、成長した自分の子供を見る親のような、そんな優しい目で一刀をみつめていた・・・。

  「・・・右も左も分からぬ・・・ひよっ子だったくせに、・・・こんなに立派になりおって・・・なぁ・・・。」

  その時、祭の頬に一筋の涙が流れた・・・。

  「祭・・・さん。」

  一刀が今、初めて彼女の真名を呼んだ。

 すると、祭の両手から力が消え、祭は一刀に抱きつく形に倒れる。一刀は彼女を優しく両手で抱き締めた・・・。

  「・・・ああ、北郷・・・。お前で・・・、本当に良かった・・・。後の事は・・・、任せても大丈夫

  じゃな・・・。た、のんだぞ・・・、さく、どのと・・・、れん、ふぁ・・・、さま・・・を・・・。」

  祭がゆっくりと目を閉じていく・・・。

  バアアアアアアアンッッッ!!!

  巨大風船が破裂したような音と共に、一刀に抱きしめられてた祭は跡形も無く、彼女の体は黒い文字の破片

 と姿を変え周囲に散らばっていった・・・。

 その文字達は宙に舞った火花のように宙に消えていった・・・。

-10ページ-

 

  ―――なれるかなぁ?

 

  ―――なってみせろ。そして、わしを使いこなしてみせるがいい。

 

  ―――俺が・・・祭さんを?

 

  ―――ああ。期待してるぞ。未来の大都督よ。

  

 

 

  ―――天の遣いであるお主が、都督として名を轟かせれば、まさしく神と崇められ、他国からは

    恐れられよう。さすれば我が国の将来は安泰じゃ。

 

  ―――国に返す、か・・・。

 

  ―――ん?何か言ったか?

 

  ―――ううん、何も。祭さんがそう言うなら、頑張ってみようかな。

 

  ―――ほう。頼もしい事を言ってくれるではないか。

 

  

  ・・・俺は頑張った、祭さんの期待に応えるために、祭さんに一人前の男として認められるために。

 そして俺は今・・・、祭さんに一人前の男として認められた。でも、彼女は・・・、もうそこにはいない。

 ・・・この手で彼女を殺したのだから・・・。

 

  そう・・・、俺は・・・、祭さんを殺した事で・・・、祭さんに・・・、一人前と認められた。

 

説明
 こんばんわ、アンドレカンドレです。
投稿が遅くなってすいませんでした。本分は昨日の内に書き上げたのですが、挿絵の方が上手く描けず、今日になってしまいました(今回は3枚分描いたので・・・)。しかも今回の内容もかなり多くなってしまい、テキストドキュメント40キロバイトッ!今までの中で一番文字数が多い第十九章・中編、どうか最後まで見て下さい!
 それでは。真・恋姫無双 魏・外史伝 第十九章〜還らぬ日々・中編〜をどうぞ!!
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コメント
何処の北斗の拳だww(IFZ)
スターダストさん、うーん・・・、調べてみると様ではなく、殿っていっていますね。でも報告感謝します!(アンドレカンドレ)
今さら何だが〜・・・・・・・6p「し、思春さん!」、明命はさんじゃなくて様だったと思うそ(スターダスト)
スターダストさん、報告感謝んします!今回は文字数が半端なかったせいか、誤字脱字も半端無かった・・・。これだけの間違いを見つけるとは感服します!(アンドレカンドレ)
一刀が勝った・・・星も助かった・・・なんでだ!・・・確かにそうしないと助けられないって事はなんとなく分かるけど・・・(;V;) くそ!・・・でも祭さんが最後嬉しそうだったのが唯一の救いだ(ーー、)(スターダスト)
2p「羽の動きを極めながら」「屋根の上を上った」「二枚の矢は愛紗からその」「打ち損ねた応竜の勢い彼女の真横で停止」 4p「軽く交わす事で」 5p「完全に理解してわけではないけどね」 6p「気を直すと、明命の方に横をやる」 8p「かなりの変態くせに」 9p「祭の一刀の腹部」「一刀のさら一歩前」「右も左分からぬ」(スターダスト)
EAGLEさん、やっぱり欝展開は堪えますね・・・。(アンドレカンドレ)
munimuniさん、jackryさん、祭さんのために泣いて頂けて感謝です!(アンドレカンドレ)
キラ・リョウさん、それが戦争なんだと思います・・・。(アンドレカンドレ)
仲間同士で戦うのは辛いなぁ・・・(キラ・リョウ)
乱さん、僕も書きながら泣きそうになりました・・・。(アンドレカンドレ)
……こんな…認められ方……辛すぎる…(乱)
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