桃香捕縛される
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桃園の夫婦の誓いと…ある意味伝説を経験した俺達は、予定通りに公孫?さんが太守をしている北平へと向かっている。結局、俺は真名を呼ばずに劉備さん、関羽さん、張飛ちゃんと呼んでいる。

彼女たちも、俺の気持ちを汲んでくれた?のか、無理やり真名を呼ばせようとはしないで、俺が呼んでくれるのを待っててくれてるみたいだ。

 

というか、この世界に及川が居たらすっごい喜びそう…。彼女を吹っ飛ばして、いきなり夫婦になるというのが、どうしても俺には合わないんだよね。後は真名を呼んだら彼女たちが暴走しそうで怖いってのもあるが…。

 

 

「そういえな、公孫?さんって太守なんでしょ?いくら知人とはいえ、簡単に会えるものなの?」

 

太守って現代でいう県知事みたいな役割だと思ってるけど、県知事が職務中に、昔の友人が訪ねてきたからといって、歓迎してくれると思わないんだが…。

 

「旦那様は心配性だって。ここは”正妻”の私に任せて」

 

「そ、そうか。それじゃあ、劉備さんに任せようかな…?」

 

「まっかーせーなーさーい」

 

凄い自信だなぁ…そんだけ自信あるなら、任せても大丈夫かな。旦那様と正妻は無視だ無視。俺が下手に何か言ったら余計にこじれると思うし。

 

 

そんな不安を抱えながら、数日後には公孫?さんが治めてる居城まで到着した。宿で一泊休息を取り、翌日に改めて謁見の申し込みを行った。長い間待たされる事を覚悟してたが、劉備さんが門番に渡した手紙が功を奏したのか、とんとん拍子で謁見の間へと案内された。

入った俺達を待っていたのは、公孫?さんと思われる人と、その背後に数十人の兵士達…兵士?いくら警備にしても多すぎないか?俺と同じ事を思ったのか、関羽さんと張飛ちゃんに緊張感が走る。

肝心の劉備さんというと…

 

「白蓮ちゃん!ひっさしぶりー!元気そうだね♪」

 

そんな緊張感を全く感じないのか、本当に久々に会った友人に対して凄いフレンドリーに話しかけてた。自分のペースを崩さない辺り、大物だよな…いい意味でも悪い意味でも。

 

 

 

「お前たち…劉備を捕らえろ!そして、そこの殿方をお救いすんだ!」

 

「なんでえええええ?!ちょ、ちょっと白蓮ちゃん。なんで私が捕まっちゃうの!横暴だよ、職権乱用だよ!無実の民を捕まえるなんて白蓮ちゃんじゃないよ!」

 

「横暴じゃない!桃香…いつかやるんじゃないかと思ってたが…なぜ、やんごとない生まれの方に手を出した!あれ程…あれ程私がむやみに手を出すのを辞めろと忠告したじゃないか!」

 

あれ?なんか罪を犯しての捕縛命令じゃなくて、俺と一緒に居るから捕まっちゃうのか?でも、関羽さんと張飛ちゃんはお咎め無しってどういう事だろ。

 

「えっと…公孫?さん、どういう事ですか」

 

劉備さんと言い争っていた公孫?さんは、突然俺が喋りかけた事に対してビクッとしつつも、為政者として毅然とした態度で俺に向き合い頭を下げてきた。

 

「ひとまず、謝罪させて欲しい。桃香がご迷惑をお掛けした。こいつと私は盧植先生の私塾に通っていたんだ。桃香の能力は郡を抜いていて、盧植先生からも将来を期待されてたんだ。だが、こいつには問題点もあってな…その…何度も素行を問題視されていて…」

 

「素行が悪くなんてないもーん」

 

「悪いだろうが!今回の件だって、真名を呼んで貰ったら婚姻して貰うもん♪とか手紙に書いたりしたじゃないか。男女で真名を呼び合うが婚姻に結びつかないと言ってるだろう」

 

「え…真名って呼んだら婚姻しないといけないものじゃないの?」

 

「なるわけないじゃないか。そんな事いったら、私と桃香は女同士だけど、夫婦にならないといけないって事じゃないか」

 

 

あ…言われれみると確かにそうだ。

女性だけでなく、男性にも真名があるなら、気軽に呼び合うなんて事出来ないな。

劉備さん達が真名で呼び合ってるのは、女同士で結婚しつつ、旦那として俺を迎えたのかと思ってたよ。現世と世界の理が違い過ぎて覚える事が多いな。この調子だと、まだまだ知らされてない部分もありそうだ。

あれ?ちょっと待て…この時代に馴染んでない俺みたいな存在はともかく、関羽さん達はこの世界の住人。ならひょっとして…

 

「関羽さん…張飛ちゃん…知ってて劉備さんに協力したね?」

 

俺の疑いの視線を受けて、サッと視線を逸らす2人。二人とも嘘付けない性格だなぁ…普通なら称賛される点なんだけど、今回はそれが裏目に出たね。公孫?さんもその結論に至ったのか、俺と顔を見合わせてコクリと頷いた。

 

 

「公孫?さん…お願いします」

 

「任された。おい、お前たち!捕縛した劉備と共に居るその2人も捕らえろ!」

 

「逃げるぞ、鈴々!」

 

「解ったなのだ!すたこらサッサ〜なのだ〜〜!」

 

「わ〜〜ん。置いていかないで〜〜!」

 

 

公孫?さんの号令と共に、動き出した衛兵と逃げ出した関羽さんと張飛ちゃん。城内で鬼ごっこが始まって、何事だ!ってなってるんだろうな。見た目は可愛くて美人な女の子を追う衛兵…うん、これ以上考えるのは辞めよう。

見捨てられた劉備さんはというと、縛られたまま正座にされて、太ももの上に石を乗っけての説教タイム中。

そんな光景を眺めていると、背後から誰かが近づいてくる気配を感じた。

 

「貴女は追わなくていいのですか?」

 

「追うのは兵士に任せておけばいいでしょう。それよりも、貴方の傍に居る方が面白そうですしな。伯珪殿は某に気が付いてない様子。どうであろう、暇つぶしの余興として、某の名前を当てて下さらぬか」

 

そう言いながら現れたのは、劉備さん達に負けず劣らずの美貌を持つ女性。本心を悟らせないように飄々とした態度を取りつつ、俺の事を見定めようと鋭い視線を向けている。

手に持っているのは彼女の獲物?と思われる特殊な形状をした槍を持っている。勿論、俺を害そうとしてる訳ではなく、自分の正体にたどり着くヒントを出してくれるんじゃないか…そんな気がしてくる。

公孫?さんの配下で槍とくれば、神槍と呼ばれた一騎当千の豪傑…趙雲子龍その人

 

「外れていたらすみませんが…趙雲さんですか」

 

「流石は”天の御使い殿”だ。私の事を知っているとは光栄ですな」

 

「趙雲さんこそ、よく俺が天の御使いだって解りましたね」

 

「私も伯珪殿の食客になるまで、大陸を旅しておりましたゆえ、管路の予言とやらも耳に入ってきましてな。そして見た事も無い衣服を身に纏った貴方が現れ、私の名を知っていた。それで確信したという事ですな。あと、私は”まだ”伯珪殿の幕下には加わっておらぬので、安心なされ」

 

 

俺の正体だけじゃなく、心のうちすら読んでるのか…全てを見通すような洞察力、見識の深さ、いつでも冷静沈着で己の心を見せない、大陸屈指の武力を持つ武人…これが趙雲子龍。

これ程の英傑ならば、どの勢力も喉から手が出る程欲しがるはず。味方ならば頼もしいが、敵に回したら厄介どこの話ではない。

だが、俺の心境を見抜いたうえでこう言ったのだ…

 

 

『”まだ”幕下には加わってないと』

 

 

俺の勘が正しければ、趙雲さんは自分が仕えるに値する君主を探してるんだろう。

ならば、趙雲さんが強大な敵になるか、右腕と頼む味方になるか…それはこれからの俺達の行動次第。

 

 

「そうだ、趙雲さんに聞きたい事があるんだけど、いいかな?」

 

「私の事は”星”でよろしい。私は貴方を気に入りました。あと、真名を預けたからといって、あの方達みたく、婚姻を迫ったりはしないのでご安心を」

 

「初対面の俺に大切な真名を預けてくれるのは凄く嬉しいけど…本当に大丈夫なんだよね」

 

「我が真名に誓って」

 

「解った…。喜んで君の真名…星を受け取るよ。俺の事も一刀と呼んで欲しい。俺には真名はないが、親から授かった一刀という名を星に受け取って欲しい」

 

「ふふ…一刀という名。しっかりと受け取らせて頂きましたぞ。さて、私に聞きたいという事はなんでござろうか」

 

「星に聞きたい事は、この大陸にいる男女の関係なんだけど…」

 

この地に来るまでの旅の日々で、改めて疑問を抱いたのが男女の関係性。男性は居ないとは言わないが、女性と比べたら出会った人数が少ない。男性は女性に怯え、女性は男性に無理矢理迫っては、兵士に連行されていく。そんな光景を見るのは少なくなかった。

中には、若い女と一緒に旅なんて無茶だと、俺に言ってきた人すら居たぐらいだ。この現象の目星を付けてるから、その確証が欲しい。

劉備さん等に聞くのが手っ取り早かったけど、後で教えてあげたから真名を呼んで♪とか言われるのが予想出来たから、聞くに聞けなかった…

 

星ならば大丈夫だろうと尋ねたところ、男の出生率が低く、常に男を得ようと女同士で争いが頻発する。それを重く見た漢王朝が、なんとか沈静化させる為に、男には最低3人の妻を持つようにという法もが制定したと教えてくれた。

 

そうなると、もし、元居た世界に戻れないならば、俺も最低3人は嫁を持たないといけないのか。漢王朝が無くなったとしても、世に根付いた価値観は一朝一夕で変わる事はないだろう。現代日本では1人の女性を愛し、複数と関係を持つ事は非難の対象。それと真逆の事を俺は受け入れていかないといかない…か。

 

「ところで、一刀殿。私からも一つ頼みがありましてな」

 

「ん、俺に?俺で出来る事ならいいんだけど」

 

「なーに、難しい事ではござらぬ。私と”夜を明かして”欲しいと思いましてな」

 

「…え、それって…どういう」

 

「おや。解っておいでながら、それがしに言わせようとするとは、一刀殿も中々やり手ですな。今夜”男女の関係”を結んで欲しい」

 

は、謀られた!ここまでの星とのやり取りで、俺は劉備さん達とは違って誠実な人だと思ってたのに!

確かに、夫婦の契りを迫る気はないと言ったけど、男女の関係を結ばないとは言ってない…完全な言葉遊びだけど、

 

 

「待て、それ以上の狼藉は見逃せん」

 

俺の窮地に駆けつけてくれたのは、衛兵たちから逃げていたはずの関羽さんだった。公孫?さんは相変わらず説教を続けてて、もうダメかと思ったけど、なんとか助かった。

 

「っち、関羽殿が相手では流石に面倒だ…ならば」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここは私と関羽殿と一刀殿…3人で一緒にはどうだろうか」

 

「悪くない…誰だか知らないが…その案乗ったぞ!」

 

 

 

 

前言撤回いいいいい!

関羽、趙雲から逃げるとか、人生何回送れば出来るようになるんだレベルだろ!

 

 

「一刀殿」

「旦那様」

 

 

 

狩る側と狩られる側

猛獣に迫られる小動物のような心境

ギラギラとした視線と乱れる呼吸音

 

俺の取った行動は逃亡…

勿論、逃がして貰えるはずもなく、あっさり捕まった俺は土下座でなんとか見逃して貰った…据え膳食わぬは男の恥と言うけど、それでも今はまだ無理なものは無理…

 

 

 

 

 

 

 

 

説明
貞操観念逆転外史3話目です

今回は勢いがイマイチかも…
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4610 4010 13
コメント
むしろ連行されないのが不思議なクソ女(鼻癒える)
初対面から食いついて来られても…という所でしょうか。しかし、この状況…及川だったら、あっさり受け入れてハーレムを築くのだろうか?(mokiti1976-2010)
据え膳食わぬはなんとやらだけど然るべき手順が必要と思うのも日本男児の思うところだわな(´・ω・`)(未奈兎)
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貞操観念逆転 北郷一刀  桃香 愛紗 鈴々 白蓮 恋姫 

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