英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜
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1月15日、同日PM10:20―――

 

 

アリサ達がグランセル城に宿泊する事になったその日の夜、エレボニア帝国の辺境にある町―――”アルスター”の裏手にある盆地―――”オスギリアス盆地”に潜んでいた全体的に黒い甲冑やヘルメットを纏った謎の武装集団が動きだし、武装集団は次々と町に火を放ち、それらによってアルスターは炎に包まれた!

 

 

〜エレボニア帝国領・ラマール州・”辺境の町”アルスター〜

 

「ティーリア、早く!」

「う、うん…………!」

町中が炎に包まれた事で住民たちが逃げ回っている中、内戦中の”とある出来事”でリィン達に加えてアルティナとも知り合い、また1年半前にエステル達と”とある事件”で知り合って助けられた事もある兄妹―――カイとティーリアも慌てた様子で屋根の部分についた火によって炎に包まれ始めた自分達の借家から出てきた。

「そんな…………私達の借家だけじゃなく、町全体が…………一体何が起こっているの…………?」

「わからないけど、とにかく今は非難して町のみんなと合流する事が最優先だ…………!町長達から教えてもらった”何か”あった時の避難場所に急ぐよ!」

信じられない表情で炎に包まれている町を見回しているティーリアの言葉に答えたカイはティーリアの手を引いてその場から避難しようとしたその時

 

「2名発見、これより殲滅を開始する。」

「グルルル…………」

謎の武装集団の一員である武装した男が二人と軍用犬が二人の前に立ちふさがった!

「…………ッ!?」

「その姿…………まさか”猟兵”!?という事はこの火事は貴方達によるものですか…………!どうして、”猟兵”が2度も辺境であるこの町を襲うんですか…………!?」

男達の登場にティーリアは息を呑み、男達の格好を見て男達が猟兵である事に気づいたカイは真剣な表情で男達に問いかけた。

「貴様らのようなガキ共相手に語る必要はない。」

「”今夜をもってアルスターは滅びなければならない。”自分達の不運さを女神に呪いながら、あの世に行くといい、アルスターの民達よ。」

カイの問いかけに答えた男達がカイ達に銃口を向けたその時!

 

「エイドスが今の言葉を聞けば、間違いなく怒ってアンタ達に”天罰”を降すでしょうね。ま、結果的とはいえ、あたし達がエイドスに代わってアンタ達に”天罰”を降す事になりそうだけど。」

「何…………っ!?」

「え…………」

「まずは連中を牽制して、テトリ!」

「はい!森よ、我が矢に邪を退ける力を―――大地の制圧射撃!!」

突如娘の声が聞こえ、声を聞いた男達が驚いて周囲を見回し、声に聞き覚えがあるティーリアが呆けた声を出すと、娘の声が再び聞こえた後カイ達の背後から飛んできた無数の矢が男達に襲い掛かった!

「うお…………っ!?」

「く…………っ!?」

「グル…………っ!?」

突然の奇襲に男達は怯んだ。そしてそこに栗色の髪の娘、漆黒の髪の青年、蜂蜜色のような金髪の娘がカイ達の背後から現れ―――

「ヨシュア!ミント!一気に決めるわよ!」

栗色の髪の娘―――”百日戦役”で活躍したリベール王国の英雄―――”剣聖”カシウス・ブライトの娘にして”空の女神”エイドスの子孫でもあるメンフィル帝国から”侯爵”と”ロード”の爵位と称号を授けられたゼムリア大陸史上初のSSランク正遊撃士――――”ブレイサーオブブレイサー”エステル・ファラ・サウリン・ブライトは漆黒の髪の青年――――かつて結社”身喰らう蛇”の執行者の一人であったA級正遊撃士”漆黒の牙”ヨシュア・ブライトと金髪の娘――――セレーネと同じ”パートナードラゴン”という竜族の娘にしてエステルと同じくメンフィル帝国から”伯爵”の爵位を授けられたゼムリア大陸全土で数名しか存在しないS級正遊撃士”黄金の百合”ミント・ルーハンス・ブライトに号令をかけた!

 

「―――ああ!」

「―――うん!」

エステルの号令にそれぞれ力強く頷いた二人はエステルと共に攻撃を開始した!

「そこだっ!!」

一番最初に攻撃を開始したヨシュアは一瞬で男達を攻撃した後下がり

「はぁぁぁぁぁ………!!」

ヨシュアが下がると次にエステルが棒で凄まじい連打を浴びせた後下がり

「えーいっ!!」

ミントは男達の目の前で長剣を地面に叩きつけ、凄まじい衝撃波を発生させて、男達を舞い上がらせた後エステルと共に跳躍し、エステルは鳳凰の姿に、ミントは竜の姿になり、そしてヨシュアは写し身を数体作った後、3人はそれぞれ同時に突撃した!

 

「「「究極奥義!太極烈波――――ッ!!」」」

 

「ぐああああ…………っ!?」

「があっ!?」

「ガ…………っ!?」

3人の協力攻撃によって一瞬で無力化された男達は壁に叩きつけられ、軍用犬はセピスを落として消滅した!

「バ、バカな…………このタイミングで遊撃士…………だと…………」

「一体どこから、襲撃の情報が…………もれた…………のだ…………」

壁に叩きつけられた男達はエステル達の服にそれぞれ付いている”支える籠手”の紋章を見て信じられない表情をした後気絶した。

 

 

「ふう………何とか間に合ったみたいね。さっきの牽制射撃は助かったわ、テトリ。」

「いえ、私はそれほど大した事はしていませんよ。」

男達を無力化したエステルは一息ついた後、自分達を追ってカイ達の背後から現れた木の妖精(ユイチリ)族の最上位妖精―――”ニルユイチリ”族のテトリにお礼を言い、お礼を言われたテトリは謙遜した様子で答えた。

「あ、貴方達は…………!」

「エステルさん…………!それにヨシュアさんとミントさんも…………!」

エステル達の登場にカイは驚き、ティーリアは明るい表情でエステル達を見つめて声を上げた。

 

「久しぶり、ティーリアちゃん!1年半ぶりくらいになるかしら?」

「カイ君も久しぶり!二人とも無事で何よりだよ。」

エステルとミントはそれぞれ懐かしそうな様子でカイとティーリアに声をかけ

「1年半前に続いてまた助けて頂き、本当にありがとうございます…………!」

「えっと………どうしてエステルさん達が再びアルスターに来てくれたんですか?」

声をかけられたカイは感謝の言葉を述べ、ティーリアはエステル達にある事を訊ねた。

 

「えっと………あたし達にとっての一応”知り合い?”から、”ニーズヘッグ”って名前の猟兵団―――要するにそこにのびている連中がアルスターを襲撃するって情報を聞いてあたし達は襲撃からアルスターの人達を護る為にここに来たのよ。」

ティーリアの質問にエステルは自分達に”アルスター襲撃”の情報を教えた”とある人物”を思い浮かべて疲れた表情を浮かべたがすぐに気を取り直して説明を続けた。

「そうだったんですか…………でも、どうして内戦も終結したばかりなのに辺境のアルスターがまた襲撃されたんでしょうか…………?」

「え、えっと………」

「……………………」

「ミントさん…………?エステルさん…………?」

カイの質問に対して、事情を知っているミントは気まずそうな表情で答えを濁し、エステルは複雑そうな表情で黙り込み、二人の様子が気になったティーリアは不思議そうな表情で首を傾げた。

 

「…………エステル、ミント。どうやら彼らは本当の意味で”ハーメルの悲劇をそっくりそのまま繰り返すつもりのようだよ。”」

するとその時男達―――猟兵達を調べていたヨシュアが猟兵達が持っていた銃を手に持ってエステル達に近づいて声をかけた。

「?それってどういう事、ヨシュア。」

(…………彼らが使っていた銃は”王国製の導力銃だ。”)

(あ、あんですってー!?)

(”王国製の導力銃”って事は、今回の襲撃はメンフィルやクロスベルのせいじゃなく、”ハーメル”の時のようにリベールのせいにされるって事だよね…………!?)

ヨシュアに小声で囁かれたエステルは厳しい表情を浮かべ、ミントは不安そうな表情で推測した。

 

(ああ………それを考えると、恐らくエレボニア帝国政府はメンフィル・クロスベル連合との戦争にリベールも巻き込むつもりなんだろうね。)

(何でエレボニアはリベールまで今回の戦争に巻き込もうとしているのよ!?女王様やクローゼ達がエレボニアの代わりに内戦の間にエレボニアに戦争を仕掛けようとしたメンフィルを2度も説得したのに!?)

(理由は色々と考えられるけど…………恐らく一番の理由はメンフィル・クロスベル連合との戦争に勝利する為に、異世界にあるメンフィル帝国の”本国”と繋がっている大使館を抑えるためにロレント―――リベールに攻め入る”大義名分”を作る為なんだと思う。メンフィル帝国の本国からの支援や援軍を抑える事ができれば、エレボニアにとって勝ち目のない今回の戦争に勝機が出てくる可能性も十分に考えられるし。)

(!!)

(今の所、異世界(ディル=リフィーナ)と行き来できるのはロレントの郊外にあるメンフィル帝国の大使館だけだものね…………)

ヨシュアの推測を聞いたエステルは目を見開き、ミントは複雑そうな表情で呟いた。

(リウイ達の事だから、もしエレボニアがリベールに宣戦布告をしたらすぐにエレボニアの狙いに気づいてロレントや大使館の守りを固めるわよ。――――それよりも、今はアルスターの人達を襲撃から護るわよ!難しい事を考えるのは後よ!)

(えへへ、それでこそママだよ!)

(いや、君達は”SS級”と”S級”なんだからもう少し色々と考えるべきなんじゃないかな?…………だけど遊撃士として…………そして人として、彼らを”第二のハーメル”の犠牲者にする事を絶対に食い止めるその意見には同意するよ。)

エステルの即決即断にミントは微笑み、ヨシュアは呆れた表情で指摘した後すぐに気を取り直した。

 

「えっと………?」

「っと、二人をほうってあたし達だけで話し込んじゃってごめんね。」

話し込んでいる自分達の様子を不思議そうな表情で見つめているティーリアにエステルは苦笑しながら答え

「僕達の仲間達がアルスターの人達を護る為の安全な避難場所を作ってそこを護っているから、君達をそこまで誘導させてもらうね。」

「移動している最中に猟兵の人達から襲撃を受けるかもしれないけど、絶対にミント達が二人を護るから安心してね!」

「は、はい…………!」

「お願いします…………!」

そしてヨシュアとミントの言葉に頷いたティーリアとカイはエステル達と共に避難場所へと向かい始めた。エステル達がティーリアとカイを護りながら避難場所へと向かっている中、エステル達の頼みに応じたセリカによってエステル達に加勢したセリカの仲間達もアルスターの様々な場所で活躍していた。

 

「く…………っ!ちょこまかと鬱陶しい…………!」

「何なんだあのメイドは…………!?」

「ふふ〜ん、そんな遅い弾、あたしに当たる訳ないでしょう?―――それぇっ!!」

猟兵達は縦横無尽に動き回るマリーニャ目掛けて銃撃したが、マリーニャには一切命中せず、反撃に投擲用の短剣を猟兵達目掛けて放った!

「ガハッ!?……バ、バカな……」

「グフッ!?……メイド如きに”ニーズヘッグ”の俺達が……」

投擲された短剣が喉元に命中した猟兵達は絶命して地面に倒れた。

 

「グルルル…………ッ!」

「ひぃぃぃぃ…………っ!誰かあの犬を何とかしてくれ―――ッ!」

(燃えよっ!)

「「グルッ!?」」

町人の一人が軍用犬達に追い回されていると俊敏な動きでどこからともなく現れたサエラブが町人の背後に降り立つと口から火炎球を連続で放ち、襲い掛かる火炎球に気づいた軍用犬達は回避行動をとった。

「オオオオオォォォォォ―――ッ!!」

そしてサエラブが咆哮をするとサエラブの咆哮で恐怖を感じた軍用犬達は地面に伏せて震え

「止めよ!!」

「「ガアッ!?」」

そこにニルが空から奇襲して連接剣を振るって軍用犬達を滅した!

「き、狐に天使…………?一体どうなっているんだ…………?」

「フフ、とりあえずニル達はあなた達を助ける為にここにいるから、安心していいわよ。」

(避難場所まで守ってやるから、さっさと我らについてくるがいい。)

自分達の登場に困惑している町人にニルは微笑み、サエラブは先を急ぐように促した。

 

「セリカ様、御力を―――蘇生の息吹。」

「う、うう〜ん…………?あ、あれ…………?俺、さっき撃たれたんじゃ…………?」

結界の中にいるシュリが重傷を負っている男性に蘇生魔術をかけると瀕死の状態であった男性の傷が完全に回復するとともに男性は目覚め

「!あ、あなた…………!」

「よかった…………目を覚ましてくれて…………!本当にありがとうございます…………!」

それを見て先程まで祈っていた男性の家族である男性の妻は明るい表情を浮かべ、その娘―――サンディはシュリに感謝の言葉を述べた。

「セリカ様、お願いします〜―――癒しの息吹〜!!」

「あ…………私の火傷が…………!」

「き、奇跡だ…………!」

一方シュリ同様結界の中にいたサリアは火傷を負った女性の傷を回復し、それを見た周囲の町人達は驚いていた。

「―――重傷を負っている方々はすぐに私に申し出てください!」

「火傷のような軽い傷はシュリ姉様の代わりにサリアが治しますので、大丈夫ですよ〜!」

それぞれ治療を終えたシュリとサリアは町人達に指示を出していた。

 

「グルルル…………!」

「く…………っ!なんなんだ、あのメイド共は!?」

「あのメイド共もそうだが、あんな強力な障壁を展開している女は一体何者なんだ!?」

「クソッ!こんな事なら、対戦車砲(パンツァーミサイル)も持ってくればよかった…………!」

「ふふふ、例え”兵器”を持ち出した所で、私の結界はそう簡単に破る事はできないと知った時の彼らの絶望した表情を見てみたいですね。」

一方結界の外から軍用犬達は何度も結界を攻撃し、猟兵達は銃を連射し続けていたが、結界はビクともせず、その事実に猟兵達は苛立ち、猟兵達の会話が聞こえていた結界を展開している張本人―――セリカの使い魔の一人である”精霊王女”リザイラは静かな笑みを浮かべていた。

 

「唸れ、猛りの風よ―――双竜の大竜巻!!」

「飛んでけ―――!大竜巻―――ッ!!」

「な――――――――」

「た、竜巻だと…………っ!?」

「うあああああああ…………っ!?」

するとそこに夜闇の空に隠れて魔術の詠唱をしていたパズモとセリカの使い魔の一人である風の中位精霊――――”ジルニー種”であるミルモが発動した魔術によって発生した竜巻が猟兵達に襲い掛かって猟兵達を空へと舞い上げ

「これで終わりだ―――ッ!メティの裁きを受けるがいい―――ッ!」

「ガフッ!?」

「ギャアアアアアアッ!?」

「ガアッ!?」

猟兵達が空へと舞い上がるとパズモ達の傍に待機していたメティサーナが猟兵達目掛けて飛行による突撃で自身の得物である大鎌を振るって猟兵達を切り裂いて止めを刺した!

 

「フフ、上手くいったわね。この調子で次も頼むわよ、二人とも。」

「はーい!」

「メティに任せるがいい!」

猟兵達の絶命を確認した後パズモは自分と共にシュリ達を護る役目についている二人に声をかけ、声をかけられた二人はそれぞれ力強い答えを返した。

 

「おい、教会にはまだ火がついていないぞ。」

「ったく、手筈通りだとこの辺りに火をつけるのはあいつらなのに、何やってんだ?」

多くの建物が燃えている中アルスターの七耀教会の聖堂が燃えていない事に気づいた猟兵達は聖堂を燃やす為に聖堂の裏手に近づくと、猟兵達は信じられないものを見つけた。

「なっ!?こいつらは聖堂を含めたこの周辺を担当している…………!」

「全員死んでいる…………一体誰の仕業だ!?」

聖堂の裏手近辺に倒れている自分達の仲間達の遺体を見つけると驚いた。

「ふふ…………それは私達ですよ。」

するとその時突如猟兵達の背後にリタが現れた!

 

「なっ!?い、いつの間に背後に…………!?」

「と、とにかく撃『メルカーナの轟炎』ぐぎゃあああああああっ!?」

仲間と共にリタの登場に驚いて振り向いた猟兵の一人はリタに銃口を向けたが、突如上位魔術による超高熱の炎に包まれて断末魔を上げ、焼死体となった猟兵の死体は地面に倒れた!

「なあっ!?お、おのれ…………!このクソガキ、今のは貴様の仕業か―――ッ!」

仲間の惨状に驚いた猟兵はリタに憎悪を向けて銃を連射したが、霊体であるリタには銃弾は一切通らなかった。

「じゅ、銃が効かない…………!?何なんだよ、貴様は!?」

幾ら撃っても全く傷つかないリタに不気味さを感じた猟兵は銃を撃ちながらリタに問いかけ

「クスクス、私は”幽霊”ですから、そんなものは効きませんよ?」

「ゆ、幽霊だとぉっ!?まさか他の連中が既に殺したガキが化けて出たってのか…………!?」

リタの答えを聞くと恐怖の表情を浮かべた。

 

「不正解です。そもそも”私はこの世界で死んでいませんよ?”」

「ぁ―――ガフッ!?ち、畜生…………何でこんな事に…………」

そしてリタはその場から完全に姿を消した後猟兵の背後に現れて自身の得物である聖槍で背後から猟兵の心臓を貫き、心臓を貫かれた猟兵は口から大量の血を吐いた後信じられない表情で呟いた後絶命して地面に倒れた。

「あ、後貴方達は私の事を”子供扱い”しましたけど、私はこう見えても貴方達よりもよっぽど長生きですから、私からすれば貴方達の方が”子供”ですよ?…………と言っても、もう聞こえていないでしょうけど。」

ある事を思い出したリタは猟兵達の遺体にある事を伝えたが、すぐに伝えても無意味である事に気づくと苦笑したその時

「”幽霊”のリタが…………”長生き”…………違う気が…………する…………?」

物陰に隠れて魔術を放った術者であるナベリウスが姿を現してリタに指摘した。

 

「確かに”幽霊”の私が”長生き”なんて言葉を使うのは、ちょっとおかしいよね。”長生き”じゃなかったら”長死に”なのかな?ま、そんな事を気にするよりも今はここをちゃんと守らないとね。」

「ん…………教会の中にいる人達…………護る…………」

ナベリウスの指摘に苦笑しながら同意した後首を傾げたリタだったがすぐに気を取り直し、リタの言葉にナベリウスは頷いた。

 

「行けっ!」

「左右から襲い掛かってあの女を殺せ!!」

「「グルルル…………ッ!」」

リタ達が聖堂の裏手を守っている一方、聖堂の正面を攻めている猟兵達は軍用犬達に聖堂を護るある人物へ襲い掛かるように指示をし、軍用犬達は左右に分かれて同時にある人物へと襲い掛かったが

「甘い!!」

「「ギャンッ!?」」

聖堂の正面出入口をたった一人で護る人物―――フェミリンスは神聖魔力を纏わせた神槍による薙ぎ払いで同時に襲い掛かって来た軍用犬達を一撃で一掃し

「く…………っ!」

「敵の武装は槍だ!近づかせるな!」

「無駄ですわ。―――裁きの炎よ、卑しき魂達に裁きを―――贖罪の聖炎!!」

それを見た猟兵達はフェミリンス目掛けて銃撃をしたがフェミリンスは片手で展開した結界で銃撃を防ぎながら、魔術を発動した!

「「ギャアアアアアアアア…………ッ!?」」

フェミリンスが発動した魔術での聖なる炎にその身を焼き尽くされた猟兵達は断末魔を上げた後、焼死体となって地面に倒れた!

 

「やれやれ…………こっちはフェミリンス達が護っているのじゃから、わざわざ妾が聖堂を結界で護る必要はないと思うんじゃがの。」

聖堂の中からもう一つの避難場所である七耀教会の聖堂を包み込むようにドーム型の結界を展開して聖堂自体を護っているレシェンテはフェミリンスの活躍を見て自分は暴れる事ができない事に不満げな表情を浮かべた。

「あの…………貴女達は一体…………?」

そこにアルスターの聖堂を任されている神父が避難してきたアルスターの人達の誰もが気になっている事をレシェンテに訊ねたが

「ふふん、妾達の正体は知らぬ方がお主達の為じゃぞ?」

レジェンドは自慢げに胸を張って答えを誤魔化し、その答えにその場にいる全員は冷や汗をかいた。

「全く…………異世界の神々である私とレシェンテ、更には”冥き途”の門番も兼ねている”聖霊”とはいえ”亡霊”のリタと”ソロモン72柱”の一柱の”魔神”が異世界の神を信仰している教会の聖堂を護るとか、どんな皮肉ですか…………まあ、少なくてもエイドスはその事について全く何も気にしないでしょうね…………」

フェミリンスは聖堂を護る面子や自分達が護る七耀教会が信仰しているエイドスを思い浮かべて苦笑したが、新手に気づくと表情を引き締めて神槍を構えなおした。

 

アルスターの様々な場所で戦いが起こっている中、オリヴァルト皇子の亡き母―――アリエル・レンハイムの慰霊碑がある場所の空間が突如歪み、空間からは鋭い目つきをして身体に独特の紋様がある青年、ノイのような妖精のような姿をした女性型の人形、”顔、姿共にユリーシャと瓜二つ”をした天使族の女性、圧倒的な気配を纏う髪、肌共に真っ白で大胆に肌のほとんどを晒して腰のあたりに漆黒の外套を纏った女性、天使とは異なる翼を背に生やした明るい雰囲気を纏った娘が現れた!

 

 

「あれれ?ここ、どこ?」

「…………それは俺達のセリフだ。状況を考えればここが俺達が飛び込んだあの白い”災怨”の中じゃないのか?」

「そもそも、”災怨”以前に”人”が暮らしている町にしか見えないのですが…………」

周囲を見回した娘の言葉に青年が指摘し、天使族の女性は困惑の表情で周囲を見回し

「え、えっと…………フルーレティさん、”災怨”の中にはこういった場所があるんですか?」

「さあ?そもそも私は自分以外の”災怨”なんて知らないもの。―――それよりも、”来るよ。”」

人形に問いかけられた圧倒的な気配を纏う女性は興味なさげな様子で答えた後青年達に忠告した。

 

「な、何だ貴様らは…………!?」

「状況から考えて、新手の遊撃士か…………!?」

「クソッ、今この町に一体どれだけ遊撃士がいるんだ…………!?」

すると猟兵達が青年たちに近づき、それぞれ武装を構えた。

「”遊撃士”?何それ??もしかして”抜闘士”みたいにグラセスタ特有の何かの存在なの?」

「い、いえ…………私も初めて聞く言葉です…………」

「…………とりあえず、俺と同じ”抜闘士”の類やグラセスタの関係者ではなさそうだな。―――おい、誰と勘違いしているか知らないが俺達は”遊撃士”とやらではない。用がすんだのなら、とっとと去れ。」

娘の疑問に人形が困惑の表情で答えると青年は静かな表情で呟いた後猟兵達にその場から去るように促した。

 

「な、舐めた口を…………!」

「例え遊撃士でなくても、この町にいる者達は”殲滅”する事が依頼内容だ。」

「何者かは知らないが、ここで死んでもらう…………!」

「え、えっと…………何やら物騒な言葉が聞こえてきたんですけど…………」

「―――少なくても、彼らは悪行を行っている事だけはわかりましたね。」

青年の指示に従わずそれぞれ殺気や怒気を纏った猟兵達の様子を見た娘は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ、天使族の女性は真剣な表情を浮かべた。

 

「―――状況はよくわからないが、まずは俺達の”敵”を殲滅してからだ。行くぞ、リリカ、ユリーシャ、フルーレティ、フィア!」

青年―――とある国に設けられている身分制度によって”自由民”と同等の身分である”抜闘士”の一人―――ジェダル・シュヴァルカは得物である身の丈程ある大剣を構えて自身の仲間達に号令をかけ

「はい…………!」

「能天使ユリーシャ、これより正義を執行致します!」

「ふふっ、何だか面白い事になりそうな予感…………まあ、まずは邪魔者を殺さないとね。」

「ううっ、私は逆に嫌な予感しかしないよ〜…………」

ジェダルの号令に人形――――――とある国の貴族の当主であり、ある事情によって”魔導操殻”という人形に魂を宿しているリリカ・ルシティーネは力強く頷き、天使族の女性――――――ジェダルの”守護天使”である天使ユリーシャは真剣な表情で宣言した後自身の得物である杖を構え、圧倒的な気配を纏う女性――――――ジェダル達と出会った当初は敵対していたが、”とある出来事”を切っ掛けにジェダル達の”盟友”になった魔神フルーレティは凶悪な笑みを浮かべて得物である鞭を構え、娘―――”とある事情”でジェダル達と行動を共にする事になった”縁結びの女神”フィアは疲れた表情で呟いた後自身の得物である弓矢を構え、ジェダル達は猟兵達との戦闘を開始した―――!

 

 

 

 

 

 

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という訳でついにエステル達登場で、初っ端から大暴れしていますwそして!魔導攻殻のヴァイス達以来になる新たなエウシュリー陣営であるグラセスタ陣営としてジェダル、リリカ、ユリーシャ(正史ルート+原作と違い、創刻のメヒーシャのように守護天使契約による昇格)、フルーレティが参戦、更に天結いキャッスルマイスターからフィアが特別参戦です!なお、今回のBGMは碧の”To be continued!”か空シリーズの”奪還”、ジェダル達登場からのBGMはグラセスタのOPである”Ancient Guardian”で戦闘BGMはグラセスタの”力こそが正義”だと思ってください♪

説明
外伝〜アルスター襲撃〜 前篇
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コメント
ジン様 扱える技はそうかもしれませんがパラメーターの点でいえば正史ユリーシャの方が強いです。なんせリィンの方のユリーシャはついこの間までは娼婦でしたので(オイッ!) 本郷 刃様 いつも間違い指摘ありがとうございます。ジェダルがここで強くなれば後にジェダル達が戦う事になる強敵達も楽勝になるでしょね(笑)(sorano)
ジェダルはここで経験積んでさらに強くなるんでしょうね〜……一つ訂正箇所ですがフルーレティはソロモン魔神ではないですよ、確かにソロモン魔神を従える立場にありますが彼女はあくまでも古神系の魔神(上位魔精霊)になります(本郷 刃)
リィンの守護天使のユリーシャとジュダルの守護天使のユリーシャが会ったらどんなことが起こるのか楽しみ半分怖さ半分ですね!まぁリィンのユリーシャの方が確実に強い気がするけど(ジン)
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