繰り返しながらも新たなる外史[旅]!?〜決意の章〜・第八話
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「曹操ちゃんが、我儘なのは分かっていたことじゃないかしらん?王として、そして少女して。両方を併せ持つ彼女よ?今さらだと思うけど…」

「…ふむ、流石は漢女か。漢でありながら、乙女の思考を持つ。それならば曹操の事も分かるかも知れんな」

見直したよ、と付け足した後、聖龍は言葉を続ける。

「貂蝉の言う通り、曹操は少女であり、王だ。そしてそれは北郷も知る所。だから消えてしまった」

「…良く分からんな。詳しく説明してくれんか」

「ま、だろうな?…いいだろう説明してやるよ。…あ、その前に聞きたいんだが、許子将の言葉を知っているか?」

「『大局の示すまま、流れに従い、逆らわぬように。さもなくば、待ちうけるのは身の破滅』でしょう?いくつか外史を廻った時に聞いているわん」

貂蝉が物知り顔で言う。

「そうだ。…じゃあ、どういう意味カハ知っているか?」

「己の知識で歴史を改変させるな。という意味だろう?」

これに答えたのは卑弥呼。

「正解だ。…だが、間違いでもある」

少しニヤけながら答える聖龍。

「…どういうこと?それが原因で魏に降り立ったご主人様は消えているのでしょう?」

「言っただろう?原因は曹操だと。そして、一刀にもある。なぜか?それは曹操が覇王であり、北郷が約束を守る男であり、…馬鹿だからさ」

ニヤけを止めずに続ける。

「曹操は言った。天の知識や技術は貴重だが、天の歴史は占いと変わらないから必要ないと。…この言葉が原因なんだよ」

「………もしてかして、大局とは曹操ちゃん?それをご主人様は…」

ハッと気づく貂蝉。

「…その通りさ。外史に降り立つとき、必ず『要』となる人物が存在する。それは魏であれば曹操。蜀ではれば劉備のようにな?」

説明しているうちに真面目な顔になっていく。

「『要』こそ大局、か。逆らわず、というのはその言葉に、ということか?」

「そうだ。更にこれには夏侯惇の言葉も関わってしまっている。夏侯惇は言った。曹操に従い逆らうな、という意味だろう、とな。それがすべての原因だった」

「…ご主人様は、許子将の言葉と曹操ちゃんの言葉を結びつけたのねん?」

「ふっ、察しがいいな。貂蝉の言う通りだ。二つの言葉は『制約』となった。だからこそ北郷は消えた」

「儂の知る限りでは、定軍山で夏侯淵と典韋を救い、東方…ではなく、赤壁をあまり燃えさせなかった。だったか?」

「他にもあるんだが、主な原因はそれだ。あいつはずっと『曹孟徳の覇道を見守りつつ、邪魔をしない』という『制約』を心に刻みつけていた。そしてあいつは戦が終わった時、役目を終え、約束を破った罰、という意味でこの外史から離れることを『自分』で選んだ」

「けど、ご主人様は外史とは…」

「切り離されぬ関係。…そう言いたいんだろう?」

貂蝉の言葉を遮り、言葉を紡ぐ聖龍。

「…ええ。ご主人様は外史で生きることを望んだ。ご主人様は現実世界に帰ったと言っていたけど…」

「帰っちゃいないさ。仮に帰ったとしたら外史は消えてしまうからな。…あいつはな、外史を作ったんだよ。…現実世界でもあり、外史でもある、な」

「………始めの外史!」

少しの思考の後、貂蝉が気付き声を上げる。

「そうだ。あいつは一番始めの外史で銅鏡に触れ、現実世界の外史を作った。その時は、そこからいくつも外史が生まれてしまった訳だが…。…まぁ、とにかくそれを北郷は銅鏡無しでやったんだ」

「…にわかには信じられんが、…あやつはそこまで特別なのか?」

卑弥呼が問う。

「…というより、この外史が特別なんだがな。始まりの外史のおかげで、外史を作ることが出来るようになってしまっているからな。それが原因だろう。で、やっと北郷をこの外史に呼び戻すことが出来た訳だ」

「…この外史がおかしい原因は?さっきの及川ちゃんや、テルちゃんまでいたそうよん?」

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「あ、名前出すのか?このまま正体不明ってのも面白かったのに」

「いや、それは流石にひどくないかしらん?」

呆れ顔で聖龍を責める貂蝉。

「及川は『否定派』の連中だろう。北郷に迷いを持たせてその北郷がいる外史を消そうとしたんだろう」

「シカト!?」

叫ぶ貂蝉。

「気にするな。で、だ。この外史に他の外史が混ざっている原因は俺と貂蝉にある」

「…あの男が可哀そうでは…。…まぁ、よいか。それでどんな原因だ?」

報われない及川。

「俺が貂蝉に会いたくなかったんだよ」

 

「「……………………………は?」」

同時に声を上げる漢女二人。

「いや、だからな?左慈からは相当な変態だ。って聞いてた訳よ。で、俺は記憶が無い訳だけど、こう、なんていうの?心?…いや、魂かな?…まぁ、それが貂蝉を拒否していたわけよ」

「ひどっ!流石に言いすぎじゃないかしらん!?」

少し涙目で抗議する貂蝉。

「いや、まあな?…それで、俺は貂蝉が同じ外史に来たら体に知らせるような術をかけていたわけよ。『反貂の印』っていうやつをな?そしたらさぁ、そしたらさぁ…」

口ごもり始める聖龍。

「…なんだ?」

卑弥呼が耐えきれずに聞く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失敗しちゃった♪なんと!貂蝉が同じ外史に来たら異常が起こるようになっちゃたんだよね♪」

 

 

 

 

 

「いやいやいやいやいや、可愛く言えば良いってもんじゃないわよねん!?ていうか、それわたしの所為じゃないわよねん!?ほとんどっていうか全部聖龍の所為じゃない!?」

流石に文句を言う貂蝉。

「はっはっはっはっはっは」

「いや、笑いごとじゃないわよん!?早く直さないと外史がおかしく…!」

「はっは。既になっているさ!」

胸を張り応える。

「自慢していいことじゃないでしょ!?治せないのん!?」

「いやー、それがさー、『逆縛の印』を自分につけちゃっててさー。『逆縛の印』の所為で解除の道術効かないんだよなー。はっはっは」

「…では、『反貂の印』の効果も無効ではないのか?」

「ばっか、『逆縛の印』の後につけたものだぜ?『逆縛の印』の効果が出ないように印をつけたんだよ」

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「「…………………………」」

言葉をなくす二人。

「いや、解除しようとしたんだけどさ、予想以上に『逆縛の印』が有効すぎて解除の縛道がうまくいかなくてさー、はは………」

「「…………………………」」

呆れの沈黙から、責めの沈黙へと変わり始める二人。

「……………………………………いや、そんな目で見んなって。『反貂の印』の応用で逆縛を無効化する、絶対解除の効果を持つ『絶解の縛道』を作ってるから、さ…」

悪いとは思っているらしくだんだん小さくなっていく聖龍。

「…それで、なにをすればいいのん?」

「先ほどの行動は、我らを呼んだのだろう?」

心底呆れているようだが、外史の危機となっていることは分かっているのでこれ以上は責めない漢女たち。

 

「…本当にすまん。理解が早くて助かるよ。…二人にやってほしいことはこれなんだ。」

謝りつつ、懐に入った『何か』を二人に投げ渡す。

「…これは」

「…銅鏡か?」

二人の掌に収まったのは、直径2p程の銅鏡。裏には『離』の文字。

「そうだ。それは始まりの外史で使われた銅鏡の一部を使いアレンジしたものだ。その銅鏡は、繋がってしまった外史を引きちぎる効果がある。さっき及川にやったみたいにな」

「…引きちぎるって。…元の外史に戻す、といことでいいのかしらん?」

「ああ。その銅鏡をつながった外史相手に、触れるなり、ひっぱたくなりで追い出せ」

「追い出せなり、引きちぎるなり、物騒な気がするが…」

「気にするな。…それと、これには一つ注意点がある」

人差し指を立てる。

「「注意点?」」

その言葉にオウム返しで答える漢女たち。

「ああ。それは北郷に見つかる前に消せってことだ」

「認識…いえ、容認するまえに?」

「正解」

立てていた人差し指を貂蝉に向ける。

「認めてしまうと外史の一部とされてしまうのねん。もしそれが続けば…」

「外史は許容量をオーバーする。そうすれば崩壊してしまうだろうな」

「話は分かったわん。それで貴方もこれをやっているの?」

「ああ、曹操達の目を盗んで、な」

 

「…?お主は曹操の所におるのか?」

「ん?ああ、3カ月程前から、消えてしまった北郷の振りをしてな」

「…手を出しているのかしらん?」

「おいおい、俺がそんな最低野郎だと思うか?」

肩をすくめる聖龍。

「…いえ、思わないわん。けれど、年頃の女の子たちよん?いくら貴方が手を出さなくても彼女たちが耐えきれるとは、思えないのだけれど…」

「…ああ、それか。それはまかせろ。俺は北郷が各地に残した残留思念ということにしてある。しかも天の力、と言ってな。原因は自分にも分からない。存在はしているが、一度でも寝てしまえば消えてしまう、とな」

「それを曹操ちゃんたちは信じたのん?」

「まぁ、半信半疑であったがな。なんどか試しているし、北郷の真似はうまいつもりだぞ?」

「それならいいのだけれど…」

「それで、俺は北郷を連れていこうかと思っていたんだけど…。…帰る気無いみたいだな?」

「ええ、五斗米道を教わりたいらしいわねん。…華佗ちゃんに断られたけど」

「…そういえば、だぁりんも少しおかしいようだったぞ?」

「おかしい?…話してみろ」

「む?…まぁ、よいか。実はな…」

先程廊下で会ったことを話す卑弥呼。

 

「…この外史特有かどうかは分からん。…ただ、魏の北郷だからこそ、かもしれないな」

一通り話を聞いた後、納得が言ったように答える聖龍。

「どういう意味だ?」

「己の失敗による悔しさ。そして、嫉妬。この二つが、北郷に対する華佗を作っているんだろう、と俺は思う」

「……よく意味が分からん」

渋い顔をする卑弥呼。

「分からなくて構わん。華佗に聞いてみろよ。悔しいのか?嫉妬か?ってな」

「……それだけで分かるのか?」

「ああ、それだけだ。…一応言っとくが俺の想像でしかないからな?それを忘れるなよ?」

「…分かった。覚えておこう」

渋々納得した様子。

「よし。それじゃそろそろ…」

「ご主人様を連れていくのかしらん?」

「ん?…いーや、やめとく。目的があるならしばらく放っておこう。夢に向かってあがくのは嫌いじゃないからな。…しばらく北郷の代わりに魏にいるさ」

「では、帰るのか?」

「もう少しこの外史の異常を治してからな?お前らも頼む。北郷にこの外史の『解れ』を他の外史と絡ませないでくれ」

「絡ませず、結べばいいのねん?」

「その通りだ。…それじゃ、また会おう」

 

ブンッ

 

そのまま聖龍は消え、結界も消失し人々が周りに現れる。

「…………どうにかならないかしらねん」

「…我らだけでは、な」

長い沈黙。二人が何を考えているのか。何のことを言っているのかは、二人にしか分からない。

「…それはゆっくり考えましょう。華佗ちゃんに話を聞かないと」

「そうじゃな。あやつの言っていた失敗と嫉妬とやらがなんなのかを、な」

その言葉と同時に二人は城へと歩きだした。

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二人は城に到着し、華佗を探し仮設病棟の前にさしかかると声が聞こえてきた。

「───!─!」

「…!……!…………!」

「騒がしいの?喧嘩か?」

「ここにいるってことは病人かしらねん?うふ、わたしの美貌で大人しくさせようかしらねん♪」

体をくねくねさせる。

「ぬぅう、それは私の役目!譲らんぞ!」

憤慨した様子で張り合う卑弥呼。

「あら、上等じゃない!じゃあ、勝負よ!」

なにをだ。

「よかろう!後悔するでないぞ!」

だから、なにを。

「うふふ、するもんですか!…いっせーので行くわよん!」

「応っ!」

気合いが入り過ぎな二人。

 

「「いっせーの」」

扉の両側に立ち、構える漢女達。

「何をしているのk《バキッ》……あら?」

そして、病棟に入ると、人を殴ったような音。

「殴り合いにまでなっておるのか?」

その音に、先程までとは違い真面目な顔でその音の発生源を探す。

 

 

 

そして探した視線の先には───

 

「歯ぁくいしばれよ!そんな考えを持つ医者なんか修正してやる!」

 

───息を荒げ、兵士に止められている北郷一刀と───

 

「これが若さか…」

 

───口から血を流す華佗の姿だった。

 

 

 

 

 

 

決意の章・完!

 

 

 

 

 

次回、韓浩の受難!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、俺ですか!?続き書きましょうよ!」

 

「…何を言っているのですか?韓浩様?」

 

「…さ、さぁ?俺にもよく分からん…」

 

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〜あとがき〜

 

はい、というわけで一刀さんが消えた原因を勝手に作ってみました。

気に入ろうが気に入るまいが、この設定を変えるつもりはないですよ?

 

てか、急いで書いてしまったためおかしい所があるかもしれません。

矛盾などがあったら、容赦なくいってください。

 

 

で、報告なのですが、韓浩の受難を書いたら、しばらく更新停止。というか、書かなくなるかも。

ネタ(妄想)は浮かぶのに文章に起こせないのですよ…。…調子が戻ったら書くと思います。

 

 

それではまた来週。

 

でわでわ〜

 

説明
すいません、月曜日って嘘つきました…。

ごゆっくり〜

誤字、脱字等ありましたら、ご指摘願います。

前話⇒http://www.tinami.com/view/99197
第一話⇒http://www.tinami.com/view/62158
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コメント
ネタと複線ですね。(ブックマン)
皆様>これは次で分かるとしか言えません。お楽しみに!(つよし)
なぜ取っ組み合い?(スターダスト)
一刀と華陀、なにしてるんだよ・・・(キラ・リョウ)
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