煩く付きまとう、ハエのモンスター。3対の脚は合わせるとカメラの機能を発揮し、映える、またはネタになる画像を好んで撮影。そのうち1対は昼間に太陽光を体に貯めフラッシュ機能も持つので夜間も対応可能。好奇心旺盛で、興味を持ったものや人をひたすら追い写真を撮りまくる、迷惑極まりない羽虫。インスタントという名の通り落書きのようなその体は実体はなく影のようなもの。たいして害が無いように見せかけているようで、実は執拗にターゲットの写真を撮り続ける不快害虫である。脳内に薄いカードのような機能を持ち、そこにデータとして写真を貯めている。人は誰でも見られたくない場面や行動を起こすもの。スキャンダルが大きな話題となる都会を好み、山や田畑のある場所では生きていけない。一般人の自分は無縁、そんな考えはこいつがいる限り意味をなさない。知られたくない秘密の写真をマスコミ、家族、知人友人に送信し、それが原因で芸能界を去った者、恥ずかしい思いをした者は数えきれない。頭が良く、送ったデータは消去。すぐに次の写真を記憶する。知った恋人からは婚約を破棄され、信頼されるべき父は娘から口もきいてもらえず、こいつに狙われた標的は死ぬまで肩身の狭い思いを背負わされるのだ。スキャンダルの渦中にいるタレントなどは何十匹もが取り囲み、周囲を気にしすぎてノイローゼになる件もあるが、当の本人は落書きなのでいつの間にか姿を消すので卑怯極まりない。嫌いな相手を陥れるために安価で動くこいつらを雇う派閥のある政治家やアイドルもいるのだとか。皮肉なことにその写真に対して「いいね!」と言われると興奮し分裂して数が増える。角度や明るさ、補正など承認欲求を満たすためあらゆる調整を普通ならば工夫するところ、逆光であろうが被写体にピントが合ってなかろうが関係なく、その一瞬を捉えることこそが彼らなりの芸術なのだ。 |