Vライバー 4姉妹の日常
[全9ページ]
-1ページ-

この日、日本球界に大きな旋風が巻き起ころうとしていた。球団オリックスとしては25年ぶり。2004年の近鉄バッファローズより生まれ変わってからは初優勝という快挙を成し遂げようとしていた。球場に埋まる1万8000人の観衆。現在世界中を大きくざわめかせている新型コロナウィルス問題にて、観客動員数は半数に制限されてしまったのだが、それでも球場の外では特設モニターが用意され、球場に入ることの出来なかったファンがテントを敷き、マットや茣蓙、飲食物を用意して、オリックス・バッファローズの優勝を待ち望んでいた。

対する相手のチームは、パシフィックリーグ(通称パリーグ)にて王者に君臨するボードバンクファルケズ。首位であるオリックスとのゲーム差は2と気を抜けばいつ抜かされても気は抜けない。

4対3でゲームは進んで舞台は9回表2アウトランナーをセカンドに残して抑えを引き受けるは((升井博俊|ますいひろとし))。2018年より日本ハムケンプファーズ移籍してきた10年以上の中堅選手だ。だからこそこの大一番を乗り切れる実力と精神を兼ね備えている者だと思い、この場を託した中島総監督の判断だ。

1打同点のピンチではあるが、しかしここを抑えればオリックスの優勝が決定するため、スタンドの観客の応援にも熱が入る。

観客の声援も「あと一人」コールに変わり、升井は振りかぶって最後になるであろうバッターに対し、ミット目掛けてボールを投げ込む。

気迫の篭った球にバッターはセカンドに打ち損じのゴロを溢してしまい、そのまま2塁主が掴んでファーストミットに投げ込んでアウト。

オリックスバファローズは、オリックスブルーウェーブ時代から数えて25年ぶりの優勝を決め、ドーム内や外のモニターから見ているファンの歓喜の歓声が飛び交い、歓喜のあまり泣いている者達もいる。

「わはーー、優勝だーー?オリホーー?」

そしてここにもオリックス優勝でその喜びをこれ以上ないくらいファンの女性がおり、メガホンは叩き過ぎで若干日々が入り、それでも叩くのを止めずにひたすら喜びのビートをかき鳴らし続ける。

-2ページ-

「Vライバー 4姉妹の日常」

-3ページ-

 朝目覚めると、何処かで打ち付けたのか首が痛く、腰や体も不規則な曲がり方をしており、世界も反転していた。

部屋の壁には何故か上下逆に飾られたポスター。時計のアラームが部屋中に響き渡り、反響して逆に耳から脳に不快感を与えている。

床に散乱された布団に、自ら着込んだ青紫色の薄着な寝間着が乱れていることを察するに、女性は、自らは就寝していた寝具より落ちた物だと覚醒していく意識の中で確信した。

けたたまし部屋に響き渡る時計のアラームを止め、捻った首を抑えながらも女性は体を起こして起床する。

彼女の名前は((城田|しろた)) ((青葉|あおば))。野球好きな一般OLであり、年齢は26歳。寝相にてすっかり乱れた腰まで蓄えられた長い黒髪を掻きむしりながらも、寝ぼけた表情で自分の部屋の扉を開けて洗面台に向かう。

「((桜|さくら))、朝だよ」

洗面台に向かうまでの間に、青葉は扉を開けて同居人に起床を呼びかける。起床を促された本人は「あと五分」と言いながらも、抱き枕片手に起きる気配は無し。

青葉は彼女の部屋のカーテンを目一杯に広げて、朝の光を彼女に浴びせる。

「う〜ん。青ちゃ〜ん、ちゃんと起きるよぉ」

そう言いながらも、女性は頭から布団を被り起床拒否の抵抗を見せるが、青葉はそのまま部屋を後にする。

彼女はある程度の日の光を浴びれば自然と目覚めることを知った上での行動であった。

青葉が起こしていた相手は、妹の桜。大学2回生であり、大学生活を満喫中であるのか、髪型は金髪のショートヘア―。普段は家の家事をほぼ一人でこなすしっかり者であるが、朝が弱いのが難点。

「((千雪|ちゆ))、朝だ......走りにいったか」

次に青葉が訪れた部屋は3女の千雪。17歳の高校生で、既に部屋のカーテンと窓は開けられ朝の換気が施されており、床には脱ぎ散らかされた桃色の寝間着。青葉はその寝間着を回収してそのまま部屋を後にする。

千雪の朝の日課はランニングであり、今日も朝5時半に起きては早朝ランニングに勤しむのであった。そんな彼女の所属する部活はコーラス部。コーラス部だけに肺活量が命と考える千雪はこの家に住まう誰よりも早く起き、こうして体力作りに励んでいる。

「次は......魔界か――」

そう言いながら青葉が扉を開けると、部屋中に散乱された機械の部品や、ゲームパッドなど足の踏み場など皆無であり、そこに住まう魔界の住人までたどり着くことが出来なかった。

「向日葵?また昨日遅くまで夜更かししていたでしょ?とっとと起きる?」

そう部屋に響き渡る程に声をあげて住人に呼びかけるが、一切の反応なし。

青葉は脱ぎ散らかされた下着などといった衣類を適当に持てるだけ回収し、部屋の扉を勢いよく閉めた。すると部屋の中より何か雪崩の様な音が聞こえて、それと同時に「ぎにゃー?」という声も聞こえた。

この魔界?の住人は末娘の向日葵。14歳の中学生であり、今朝も昨日の夜更かしの為に死んだ様に眠っており、先程の雪崩と声は、青葉が扉を閉めた時に起こった空気圧で出来た風で倒れた積み上げられた漫画であろう。その漫画が向日葵に雪崩を起こし、今彼女は違った眠りについてしまっている。

洗面台に着いた青葉は、腕一杯に抱えられた洗濯物を洗濯機に押し込んで、洗剤を入れて風呂の残り湯を用いて洗濯機をまわす。

自身も水で顔を洗い、歯磨き粉を歯ブラシにつけて歯の洗浄を開始する。5分程用いて歯磨きを終えると、つい先ほど歩いてきた廊下より扉の空く音が聞こえる。

すり足の音が青葉のいる洗面台の部屋に近づいてくると、そこ寝ぼけて目が半開きになった次女の姿が現れる。

「あ〜、青ちゃんだ〜」

未だに寝ぼけている次女・桜は青葉に抱き着いて来ようとするが、青葉はそれを片手で制止させ、抱擁を拒否する。

「ほらほら、洗面台空いたから顔洗って目を覚ましな」

抱擁を拒否された桜は、未だ半目のままそのままその場でへたり込み寝てしまいそうになってしまう。

「こんな所で寝るな?」

青葉は次女の脇を腕で抱えて無理やり立たせる。しかしその際に青葉の目には映ってはならない物が目に入ってしまう。

数年前より止まった成長ホルモンのせいで、自身の胸の成長も止まって涙を飲んでいたというのに、この抱きかかえた次女は未だに成長を遂げている。3年前の急成長の時期に胸と身長を抜かされてから苦々しく思っていた胸が、この次女は未だに成長を遂げており、バストサイズはDになるのでは?と思わせていた。

「ひぃやぁ〜〜〜」

青葉はまたふつふつと劣等感に苛まれ、未だ寝ぼけて目覚めぬ次女の顔面を洗面台に無理やり押し付けて冷水のシャワーを浴びせるのであった。

-4ページ-

「うぅ、青ちゃん酷いよぅ何も頭から水を被せなくても」

冷水を浴びせられた桜はすっかり目覚めたものの、頭からタオルを被った状態で髪を乾かしていた。

「.........寝ぼけてのしかかるからよ」

ほぼ劣等感に苛まれて行動した青葉は、視線を逸らしながら桜に問いを返した。

「今日の朝ごはんどうする?昨日のハムが残ってたから、スクランブルエッグでいい?」

「いいよぉ。私は干している洗濯物取り込んでおくね」

そういうと、長女と次女は朝の支度にとりかかる。

やがて玄関より扉の開く音が聞こえると、ランニングより帰ってきた3女が顔を出す。

「青ちゃん、桜ちゃんおはよう♪」

敬礼風に片手をあげて挨拶をする三女・千雪が現れると青葉は何時もの流れの様に千雪に汗を流してくるように諭す。

「あ、青ちゃん。私お肉多めでお願いね」

その言葉を残してそのまま風呂場に消えてゆく3女を、少しため息を置いて見送ると、青葉は昨日の余ったハムを全て取り出し、別のフライパンを用いて火を通すのであった。

 

 数分後、青葉と桜が朝食の準備を終える頃にシャワーを終えてスッキリさせた千雪がリビングの席に着く。

「あれ?青ちゃん、向日葵は?」

「さぁ、部屋で気絶してるんじゃない?」

「じゃあ、私起こしてくる!」

そういうと返事を待たずに千雪は魔界(4女の部屋)の部屋へと直行していく。

「ひまちゃんどうしたんだろうねぇ?昨日も夜の11時ぐらいまではしゃいでいたけれども?」

「そんなの知りゃあないさ。全く、幾ら学校が休校だからといってもはしゃぎすぎじゃないかい?」

「......青ちゃんがそれを言っちゃう?」

桜が含むように青葉に問いかけると、長女はソッポを向いたようにしてテレビのニュースを付け始めた。

「千雪にゃ〜ん、離してよぉ、我はまだ眠いよぉ〜」

「だ〜め。ご飯はみんな一緒で食べるから美味しいんだよ」

3女が未だ半夢見心地な末娘を引きずって来て、リビングの床に放り出す。

「むむむ......むにゃ――?」

へ垂れ込む態勢にて座る少女の前に落とされる影。影は少女に「おはよう」と呼びかける。

「.........!?ギャー――!胸無し八尺様???」

「誰がじゃ??」

全身の毛が逆立つが如くに驚く末娘が見た物は、仁王立ちにて目の前に立つ青葉であり、向日葵は長女に更に目が覚める拳骨を貰うのであった。

ちなみにこの長女の身長は、女性としてというよりは日本人として極めて稀な190p程の身長であり、実際の都市伝説の八尺様は240pだが、真下より見上げる向日葵には遠近法で200p以上あると錯覚しても仕方がない。

こうして城田家4姉妹が席に着くと、4人揃って手を合わせて朝食を開始する。

「千雪にゃん、朝から良く食べるね?」

向日葵の指摘通り、千雪の朝食の皿にはスクランブルエッグの他に、ホウレン草とハムで作られたバターソテーがあった。

「体を大きくする為には、一杯食べないとね。この前も中学生に間違われたし」

「いいじゃん。千雪にゃんはそれでも。我は小学生に間違われることあるんだよ」

「向日葵は寧ろもっと食べないとダメだよ。でもおかしいな、毎日牛乳も飲んで、お胸は大きくなるのに身長が伸びない」

そう言いながら千雪は自身の乳房を揉んで触れる。現在4姉妹の中で一番バストが大きいのは3女・千雪であり、先日もバストサイズを更新してEという判定が出た。

そんな彼女の乳房に対し長女は恨みを込めた視線で射貫こうとする。

毎日同じ朝食メニューを作っているにも関わらず、何故自身は必要以上に身長が伸びて、目の前の3女は胸が成長しているのか。

「お、プロ野球じゃん。確か昨日はオリックスとファルケズの試合だったねぇ?青ちゃん、結果は?」

「......ニュース見ればわかるんじゃない?」

「あっれぇ?その反応は、負けたの?ねぇ?今どんな気持ち?妹の推しの球団に自分の推しの球団が負ける。ねぇ?どんな気持t「ガシッ」」

末娘が長女を煽っていると、長女のアイアンクローが向日葵の頭蓋骨にめり込む。

「いいから黙って食え」

「あ、あああ、あい」

低音の威圧的な声で脅しと脳天をかける痛みのせいで、向日葵は曖昧な返事をしながら再び席についた。

やがてテレビでは昨日のプロ野球の結果が流れ出し、向日葵の予想通りオリックスはファルケズに2点差で負け、そのニュースを見た向日葵は目一杯に誇らしげな表情を青葉に向けて、再び手を出しかけた長女に次女・桜が馬を宥めるかの様にして青葉を引き留めた。

そして皆食事を終えて、個人毎にこれからの準備をし始める。青葉は髪にアイロンを当て軽く薄化粧をして会社に向かう準備。桜は、本日は授業が休講となった為に、洗濯物干しなどといった家の仕事をしていた。桜が通う大学は歯科大学。本来であれば今日は実習形式の講義の筈なのだが、近年のコロナ騒ぎの為に講義は見送りとなり、代わりにレポートの課題が出た為に家事が終われば自主勉強だ。

千雪は既に自宅を出て学校に向かった。千雪の高校は比較的コロナウィルスの影響は無かったようだ。

-5ページ-

「それじゃ私会社行ってくるね」

「青ちゃんいってらっしゃ〜い」

「......向日葵は?」

「部屋に戻ったよぉ」

恐らく再び夢の世界に向かった末娘に対し、朝から陰鬱なため息を吐いてしまった長女であった。

「あ、青ちゃん今日の配信どうする?」

「う〜ん、いつも通り夜の10:00ぐらいかな?」

「わかった。ご飯用意しておくね」

青葉は自宅から出ていく前に適当な飲み物を持って駅に向かうのであった。緑色のパッケージに黄色いキャップ、味は甘めなあったが、喉が潤うのであればと思い、青葉は特に気にしていなかった。

 電車に揺られて会社に向かう際、何度も道行く人に振り変えられてしまう青葉。仕事用にヒールも履いている為に、200pに見えてしまう。

「おはようございまーす」

職場についた青葉は上司や同僚に挨拶をして自らの席に着く。

「おはよう青葉ちゃん」

「桃子先輩、おはようございます」

青葉の隣に座る女性は((星津|ほしず)) ((桃子|ももこ))。

青葉の職場の2年先輩で、青葉が入社した時の教育係でもある。

「青葉ちゃん、オリックス昨日残念だったね」

「そういう先輩こそ、DNA......止めましょう、この話は」

二人して朝一から深いため息を吐いて仕事を始めるのであった。

青葉の推しの球団がパリーグのオリックス・バッファローズの様に、桃子の推しの球団はセリーグのDNAブラックスターズであった。互いに推しのリーグが違うこともあり、互いの推し同士球団での対戦で喧嘩することはあまりないのだが、しかし互いに推しの球団が負けてしまえば、朝一二人で職場に重い空間を作り出してしまい、皆昼過ぎまでは話しかけないのがお約束となっていた。

二人は黙って仕事を続け、昼になり昼食に外に出るのであった。

「青葉ちゃん、今日は何処に食べに行く?」

「あ、それでは私の行きつけの喫茶店がありますので、そこで」

そう言い二人は青葉の薦める駅前の喫茶店へと向かうのであった。

 喫茶店「浮夜」

絶品のオムライスやナポリタン、パフェを提供する店である。客層としては、朝は出勤前の仕事人が。昼は家事を一段落終えた主婦層が中心に。夕方は学生を中心に盛り上がりを見せる人気店である。

喫茶店ながらの扉を開けた時の鐘の音と共に、店員のお決まり出迎え掛け声である「いらっしゃいませ」が聞こえる。

「あ、青葉さん、いらっしゃいませ」

「あれ?((幸雅|ゆきまさ))君?学校は?」

「あ、今日は午前まででしたので。そっちの人は?」

常連である青葉の他にもう一人いることに気が付いて質問を投げかける。

「今日は先輩も連れてきたよ。桃子先輩、こちらは((雫|しずく))幸雅君で、アルバイトの好青年です」

「ちょっと、やめてくだよ青葉さん、照れるじゃないですか」

顔を赤く狼狽する男子に桃子は含み笑いを溢す。

「なかなか可愛い男の子じゃない。私も常連になろうかしら」

「あ、それは是非に。それでは席まで案内しますね」

そうして二人は窓際の外の景色が見えるテーブル席に案内される。

アルバイター幸雅は席に水を持ってくると、「ご注文が決まりましたら呼んで下さいね」と言って、周りの席の残された食器などを片付けに向かった。

「青葉ちゃん、ここのオススメは一体何?」

「この店はマスターお手製のオムライスが美味しいですよ。卵を割った時のフワフワのトロトロがたまらなくて――」

そんな自らのオススメの話をしている最中に、青葉の携帯(スマートフォン)

が鳴る。スマホの液晶画面には「((阿須義|あずき)) ((簾|れん))」と出ており、若干顔を引きつらせ桃子に席を外すことを伝えて外に出る。

「はい城田です」

「あ、こんにちは監督。今時間大丈夫ですか?」

電話で聞こえてくるのは20代ぐらいの男性の声。その男性が青葉のことを監督と呼ぶ。実は青葉はとあるサイトにて草野球チームを発足しており、現在では本当に草野球チーム「ブルー・クローバーズ」を創設してしまった。電話相手はそのメンバーの一人だ。

「次の試合日は来週の木曜で問題なかったですか?」

「そうですよ。『西河川敷グラウンド』でもう話もついています」

「了解しました。準備しておきますね」

相手より了承の返事が来ると、簾が「ところで」と言葉を続ける。

「捕手の件......どうなりました?」

それを聞くと、青葉は背中に悪寒を感じる。

「まさか......まだ確保「いや、出来ています出来ていますので?」......ヒムッ「やめて?大丈夫。大丈夫ですから?」......そうですか。それじゃまた来週の木曜に――」

-6ページ-

青葉のスマホより端的な機械音が帰ってくる。

青葉の電話相手の簾という男性は、ブルー・クローバーズの外野手で左(レフト)なのだが、控え捕手も兼任しており、捕手不足であった為ずっとマスクをかぶらされてフラストレーションが溜まっていたのだ。

そしてその溜まった矛先が監督である青葉に降りかかり、先日の飲み会の席にて「暴威」というバンドグループのボーカル・((日室|ひむろ))のモノマネを強要させられ、そこで駄々滑りしたことがトラウマとして残っている。

青葉が肩を落としながら店の中に戻って来ると、既に青葉と桃子の席にはオムライスが用意されていた。

「......どうしたの?青葉ちゃん」

「え、あぁ、ちょっとザイ…簾さんに――」

その言葉を聞くと、桃子と幸雅が全てを理解したように相槌をしながら頷く。

皆全てを忘れる様に、改めて自らが起こそうとしてた行動に戻る。

「そういえば、青ちゃん。今日配信はいつやるの?」

「そうですね。今日は試合も無いので夜の9時ぐらいからやろうと思っています」

「そうなの?なら私は10時ぐらいに始めようかな」

そう言いながら二人はオムライスを突きながら話し合う。

今朝より青葉が色んな人物に話している配信とは一体何であろうか。青葉達の言うところの配信というのは、スマートフォンのアプリの一種であり、内容としては、自分で用意したイラストが声に合わせて動くのだ。そして自らの分身に自身の生声を乗せて、視聴者はコメントでライバーとコンタクトを取って楽しむといった感じで、スマートフォン版Vライバー配信アプリと言えばしっくりくるであろうか。

城田家の4姉妹含め桃子はそのIRIAMの配信者であり、常日頃よりVライバーとして活動しており、青葉達のライバーネームとしては、

青葉⇒城夕青波 桜⇒わたあめふわり 千雪⇒ちゆにゃん 向日葵⇒夜明乃めいざ 桃子⇒星奈すもも

で活動している。

先程出てきたブルー・クローバーズが発足される要因となったとあるサイトとは、このIRIAM内での青葉の配信からで、所属選手は青葉の配信視聴者の面々で固められていた。

「あれ?どうしたんですか青葉さん。またザイガスさんに何か言われましたか?」

少なくなった水を幸雅が次に来ると、陰鬱な顔の青葉に声をかける。「ザイガス」とはIRIAM内における簾のアカウント名であり基本は視聴のみである。ちなみに幸雅も「あNコ」という名前で主に視聴メインであるが、時々配信もしている。

「......またヒムロックを振られそうになって」

※ヒムロックとはヒムロロックの略である。

「いやいや、青葉さんのアレはナカナカウマカッタデスヨウ」

「ちょっとぉ、何で片言なのよ?」

あからさまな片言になったお冷を注ぎに来た高校生に対し、大人気なく切れるOLの昼下がりであった。

 

青葉は本日も一日の仕事を終えて帰途に着いた。本日は自分推しの球団バッファローズの試合日。1分でも早く帰りテレビに噛り付きたい衝動に刈られ速足で帰ってきたのであるが、何故か青葉は玄関にて正座をさせられていた。

目の前には腕を組んで仁王立ちで立っている桜。青葉が自宅に着いた瞬間からこの状態の次女の前に、青葉の体は自然と膝を折って、そして自然な流れで正座をしていた。

桜はだいたいの事でここまで怒ることはない。だがそんな彼女に対しやってはいないことがある。それは――

「ねぇ、青ちゃん。私に何か言うことないかな?」

薄い笑みで長女に微笑みかける彼女だが、その視線は青葉の一挙手一投足に注いでいた。

声は穏やかな声であるが、背中からは何か黒い影が出てきており、青葉も背中を丸めており、自慢の長身もすっかり縮こまってしまった。

【一体、私は何をした?この前のあの件のことかな?、、、いや、先日のあの件!?】

「......青ちゃん?」

「は、はい?」

「一体額に汗を残してどうしたのかなぁ?なにか心あたりでもあるのかなぁ?」

下から顔を覗き込みながら聞いてくる桜に対し、自らに対し幾つか心覚えのある怒りを受け止める青葉は、狼狽しながら「わ、わかんないです」と答える。

桜が青葉の肩をそっと叩くと、額に血管を浮かべ青葉に問いかける。

「青ちゃん......私のプリンヨーグルト、飲んだでしょう?」

そう聞かれると青葉は頭の中で首を傾げてみる。プリンヨーグルトという商品名と飲む物と聞くと、甘い飲料水と想像してしまい、ここ最近自宅では甘い物は取った記憶も無い為、犯人は自分ではないと確信した。

「北海道限定販売の「姫様のプリンヨーグルト」。従来のプリンとは違い、苦みの効いたカラメルプリンと甘いヨーグルトを組み合わせた異色のハーモニー。久しぶりに甘いもの以外も挑戦してみようと思って楽しみに取っていた物を、青ちゃん?飲んだでしょう??」

突如として次女の気圧が上昇し、桜の金髪も逆立ち、何処かの某7つの球を集めるバトル漫画で出てくる戦闘民族の様になる。

-7ページ-

「ちょ、待て?待つんだ妹よ?」

青葉は後退りながら玄関の扉に徐々に追い詰められていく。

「ふふふ、大丈夫。痛いのは最初だけだから」

桜は両腕を拡げながらも、その両手には怒りで血管が浮き出て、時折指の関節を鳴らす音が聞こえて来る。

青葉は思わず玄関の扉を開けようとしたその瞬間だった。

「たっだいまー」

片手を高らかに挙げて挨拶をするセーラー服姿の千雪の姿が現れ、青葉は千雪に縋った。

「あれ?青ちゃんどうしたの?」

「ち、ちちち、千雪。お、お姉ちゃんを助けて?」

縋りつく長女の姿を確認して、そんな3女が顔を挙げると、そこには戦闘民族状態の次女。3女は含み笑いを小さく漏らし、優しく長女の手を取ってそっと放し、次女に向かいなおす。

その行動にて長女は何か3女には秘策があるのかと思いきや、3女は一つ掌に拳を置いて小さく叩いてみせたが――

「私、部室に忘れ物あったんだった。じゃ?」

「ち、千雪ぅぅぅぅぅぅぅっ?」

妹の裏切りにあい、再び青葉は追いつめられるのであった。

「大丈夫だよ青ちゃん。ちょっとハリケーンミキサーか十字架落としをするだけだから。青ちゃんバッファロー大好きだもんね」

「ちょ、ちょっとぉ?それバッファローはバッファローでも『バッ〇ァローマン』じゃない??」

「ふふふ、さて逝きましょうね青ちゃん」

「ま、待って?漢字が違う?」

桜が地面を2,3度鳴らし、そのまま腰を落としてタックルの体勢に入ろうとすると――。

「ばーん?青ちゃんお帰りぃ?」

魔空間?(向日葵の自室)より飛び出してくる向日葵が、青葉に近づいてくる。

「あ、青ちゃん。冷蔵庫にある『姫ヨーグルト』?頂いたよ♪なんかあんまり美味しくなかったよぉ」

後少しで雲の彼方に飛ばされそうになった青葉だが、その彼女に待ったがかかった。

「『姫ヨーグルト』?ひまちゃぁん、そのヨーグルトどんな感じだった?」

「苦みの効いた茶色い液体と、甘いヨーグルトが混じった飲み物だったよぉ」

「......ほほぉう」

桜が錆び付いた機械人形の様な音を鳴らしながら首を向日葵に向けると、向日葵が何かの危機を察したのか後退る。一瞬のうちに忍者の如く桜が消えたと思うと、いつの間にか彼女は向日葵を脇に抱えていた。

「......青ちゃん、少し晩御飯は遅くなるね」

「はっ、問題ありませんマイロード」

「ひまちゃん、ちょっと私の部屋でお話しようか」

桜は向日葵を脇に抱えて自室に連れていき、青葉は敬礼しながら((桜|マイロード))を見送る。

「え?何桜ちゃん。顔がすっごく恐いよ。ちょ、ちょっと?何なの、そのバールみたいな鈍器は?ちょ、ダメですって。それは死んじゃいますって.........にゃいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ」

桜の部屋から聞こえて来る断末魔?に、青葉は小さく合掌を贈るのであった。

 

 少し遅めの夕食時。ハンバーグやサラダにスープなどといった洋食物で構成された夕食となっているのだが、何故か向日葵のメニューだけは肉抜きのピーマン尽くし野菜の炒め物。人参とカボチャのミックスジュース。セロリやキュウリの野菜スティックなどといった彼女特別のメニューを用意されており、マヨネーズだけは許されていた為に、時々向日葵は嗚咽を漏らしながら嫌いな野菜を細々と食べている。

未だに桜は頬を膨らませて不機嫌な状態であり、文化部元気っ娘の千雪や夕方の食事時には必ず野球のナイターゲームを鑑賞する青葉は、一言も喋れなかった。

「......青ちゃん、さっきは疑ってごめんね?」

申し訳なさげに聞いてくる桜に対し、声をかけられたことで一瞬体が跳ね上がった青葉であったが、誤解が解けた事への安堵か、そのまま苦笑いで彼女の謝罪を受け入れる。

「良かった。あ、お茶が切れてるね。取って来る」

そう言い桜はキッチンに足を進め出し、青葉と千雪は互いに顔を合わせて笑いあったが――。

「あれ?おかしいな。確かにここに置いていた筈だけど......」

キッチンの方より聞こえて来るのは、お茶を取りに行った桜の疑問視の声。

「ねぇ青ちゃん。冷蔵庫に私が食後に飲もうと思っていたジュースあったのだけど、知らない?」

お茶の入ったボトルを抱えて、桜が青葉に質問する。

青葉も記憶に無い為に腕を組んで首を傾げる。

「緑色のカバーでキャップが黄色の抹茶オレだけなのけども」

そう聞くと、青葉は過去の冷蔵庫の利用の情報より、そんな物体があったものか思考するが思い当たらない.........と思いきや、一つ体を小さく揺らして、徐々に頭から血が引いていくのを感じた。

今朝出勤前に青葉は喉の潤しの為に、適当な飲み物片手にしていたのだが、その飲み物が甘かった記憶がある。

また自分が手に取った飲み物にも酷似していた。そう考えれば徐々に不安が頭に過って来ると、額に脂汗が浮き上がって来る。

-8ページ-

「.........青ちゃん?まさか――」

「いや、待て妹よ。違うんだ?話せばわかる?」

先程の戦闘民族が再び再燃し、気のせいか髪の毛が伸びて第2形態に進化している気がした

そんな桜の状況を察して、いつの間にやら千雪と向日葵はリビングから姿を消していた。

「え?ちょ、待って桜。その手に持つのは一体なに?え、ダメだよ。そ、そんなもの、わ、私(肉体的に)壊れちゃうよ?ちょ、だ、ダメだって。すb―――」

そうして青葉は意識を失い。最後の記憶では自宅に着いて崩した格好の仕事着だったが、いつの間にか風呂も終えて、幾つかある普段の青紫色の薄着な寝間着を着てベッドに横たわっていた。

「......うぅ、とんでもない目にあった」

何が起こったか自己防衛本能が働き、記憶の忘却も発生した為に覚えていることも曖昧だが、最終的に駅前のケーキ屋のショートケーキとモンブラン、チーズケーキを2個ずつで手を打った。

「も、もう10:30。随分遅れてしまった」

青葉は頬を叩いて気持ちを切り替え、スマホのアプリを起動させて、城田青葉からIRIAMのVライバー、((城夕青波|ぎゆうあおば))へとモードチェンジする。

 

「わはー、皆さん。今日も来てくれてありがとございまッス。こんばんワックス―」

 

-9ページ-

原作:4姉妹Vライバーの方々

執筆:ザイガス

挿絵:あNコ

 

説明
この作品は実際のIRIAMにて活動されている、城夕 青波・わたあめふわり・ちゆにゃん(名前)・夜明乃めいざの方々に許可を得ている作品であり、彼女らの活動の妨げになるような作品ではありません。 もし本人らの誰かよりIRIAM上にて私の作品が、本人らの活動の妨げになると判断され、投稿停止命が出た際は、即刻削除する予定でもありますので、ご了承の程よろしくお願いいたします。

また実際の存命中の方や、施設などや商品名などが小説内に出演してしまった場合は、漢字を変換させていただいております。

また下記より彼女達のツイッターも掲載しておりますので、フォローの程よろしくお願いします。
長女 城夕 青波(https://twitter.com/Aoba_giyuuBs)
次女 わたあめふわり(https://twitter.com/fuwari__wataame)
三女 ちゆにゃん(https://twitter.com/chiyunyann)
四女 夜明乃めいざ(https://twitter.com/YoakenoMeiza)

そしてよろしければ、私のツイッターもフォローしていただければ幸いです。
ザイガス(https://twitter.com/stdershatten)

また明後日は私の恋姫無双二次創作も投稿しますので、そちらもよろしくお願いします。
それではどうぞ。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
760 739 1
タグ
IRIAM 青波 ふわり ちゆ めいざ 

キマグレの駄文製作者『IFZ』さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。


携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com