真・恋姫†無双〜黒の御使いと鬼子の少女〜 89
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〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 

「…………っ!」

 

 俺は突然の殺気にはね起きて拳を構える。

 

「お〜っ! あれで起きたか。うんうん、成長してるじゃあないか」

「……師匠かよ」

 

 安堵のため息を吐いて俺は構えを解いたが、そこで激痛が襲う。

 

「がっ、つぅうう〜………!」

「ああ? てめぇまだそのぐらいしか治ってねぇのかよ。おっせぇなぁ」

「無茶言いやがって……!」

 

 正直、立ち上がって拳を構えただけでもだいぶあり得ない話だと思うのだが。それに、周りを見る限り、今の時間帯は早朝。という事は、俺が神鳴を受けてから半日程度経っていないはずだ。

 

「馬鹿言ってんじゃねぇ。あれから丸一日寝やがって。おかげで修行に遅れが出ただろうが」

「……丸一日?」

 

 言われて周囲を見れば、確かに見たことない山の中だ。何というか、空気が違う。

 

「……今、どこに向かってるんだ?」

「あ〜、なんつったっけ? ……忘れた。あとで小町の嬢ちゃんにでも聞きな」

 

 “そんなことより修行だ”と言って師匠は剣を取る。

 

「んじゃ、まずはてめぇがどれだけ伸びたか、実際にやり合うとしようぜ?」

「このくそ師匠……!」

 

 そんな俺の罵倒を意に介さず、師匠は心斬を放り投げてくる。しかし、この師匠が親切で刀を放り投げるなんてあり得ない。俺は左手で受け取ると同時に親指で鍔を弾いて刀身を表へ出し、右手で柄を掴み、刀を引き抜いてすぐさま返した刀で斬りかかるが、すでに師匠は間合いに入り込んで刀を抜く寸前だった。

 

「ちっ!」

 

 刀の進路を師匠の刀の進路に合わせて振り抜くと、甲高い金属音が山に響き渡る。

 

「おっ、やるじゃねぇか!」

 

 ギギギっとぶつかり合う刀。そこへ俺は鞘を叩き込んで、師匠の刀を弾き上げるとすかさず刀を返しながら振るう。対し、師匠はその一撃を後退することで躱し、刀を再び鞘に納める。

 

「ふむ、じゃあ次の段階へ行こうかねぇっ!」

 

 そう言って詰め寄って抜刀をしてくるが、刀が二つに分かれていく。

 

「なっ!」

 

 この動きはっ……!

 

(始終同迅!?)

 

 鍛練でこんなのぶっぱなすのかよっ! と憤る時間すら惜しい俺はすぐに鞘を捨て、刀を両手で持って師匠の剣戟の軌道を読み取る。

 

(縦横の十字切りっ!)

 

 ならば俺が振るうべき軌道は……!

 

(左と上に弾くっ!)

 

 イメージした通りに剣を振り抜くと、それは現実の軌道となって刀を弾く。

 

「ほっ! やるじゃねぇか!」

 

 “じゃあ、もう一段上げるか”と師匠は言うとさらに剣の速度が上がる。

 

「のっ!」

 

 こっちはまだ怪我人だっての、と愚痴ったところで“それが?”と素で返す師匠だ。俺は痛みを堪えながら必死に食らいつく。

 

「ほれほれほれ! だんだん甘くなってきたぞぉ!」

「ちぃ!」

 

 肌を掠り、滲み出てくる血。だが、そんなことを気にしていたらもっと重傷を負いかねない。

 

「くっそがぁああああああああああああああ!!!」

 

 守ってばっかではこれ以上はどうしようもない。俺は師匠の刀を弾いた一撃をそのまま攻撃へ転じさせる。

 

「おっ」

 

 だが、師匠は驚きを見せはしたものの、あっさりとそれを防ぐ。

 

(それならっ!)

 

 次の一撃は攻撃に転じることを前提で振る。すると、師匠の顔が笑顔へと変わる。

 

「いいねぇっ! そうだっ! そうやって工夫をしろっ! 攻めと守りを両立させろっ!」

 

 褒めはするが、攻撃はより一層激しさを増す。だが、それは俺の攻撃を防ぎ、反撃するという一手間が増えたからだ。要は、一段上がったのだ。

 

 さて、どうやって切り崩すか、刀を交えながら考えていると怒声が飛び込んできた。

 

「おいっ! 何やってんだよっ!」

 

 声の主は翠だった。青ざめた顔でこちらに駆け寄ってくる。師匠は舌打ち一つして刀を納めた。

 

「何って、修行だよ修行」

「修行って、玄輝は重傷だろうっ! 死にかけた人間に何やってんだよっ!」

 

 ……やっぱり、翠の考えの方が普通だよなぁ。だけどなぁ。

 

「あ〜、翠。この師匠に常識言っても無駄だぞ」

「って、何冷静に言ってるんだよ! 玄、輝……?」

 

 と、そこで彼女は俺の顔を見る。

 

「玄輝?」

「ああ」

「お前、怪我、目を、覚まして……っ!」

 

 言いながらも目には涙が溜まっていき、限界を超えて流れ始める。

 

「……玄輝っ!」

「って、うおっ!」

 

 突然飛びつかれてそのまま倒れる。

 

「お前、なに、何やってんだよっ! 目を覚ましたならなんで言わないんだよっ! 一日目を開けないでっ!」

 

 早口で心配していたことがすぐに分かる言葉をまくしたてるが、俺としてはそれどころじゃない。

 

「あが、いっつぅ……」

「玄輝?」

「翠、たの、む。早く、どいてくれ……」

 

 倒れた時の激痛に加え、体の下にある小石が翠の体重で食い込んできて、拷問かと思えるぐらいに痛い。

 

「あ、あたしが重いってのかよっ! 心配したのにっ!」

「ちがう、そうじゃ、な……」

 

 あ、駄目だこれ。

 

「玄輝? 玄きっ………」

 

 こうして俺はせっかく目が覚めたのにほんの数十分で再び意識を手放す羽目になったのであった。

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「…………」

 

 次に目を開けた時は、日が傾きかけていた。だが、近くからは人の話す声が聞こえる。

 

「うっ」

 

 痛みに耐えながら体をあげると、話していたのは涼州の兵たちだった。

 

(……どうしてここに?)

 

 と、そこへ筋肉ダルマのこまねぇが近づいてきたのが見えた。

 

「玄輝、よかったわぁん」

「…………いや、なんでその姿?」

「あの姿はあんまり見せられるものではないのよぉん」

 

 ……まぁ、それは分からなくはないけどさぁ。

 

「……正直、その姿だとこまねぇって呼びたくないんだけど」

「……この時は小町でいいわよん」

 

 とりあえず、本人の了承も得たところで状況について聞いた。

 

「なんでこんなところに涼州の皆が?」

「あの後すぐに曹操の兵がやってきたのよん。でも、皆白装束との戦いで疲れていてねん。なので、翠ちゃんたちがまとめ上げて逃げてるってわけよぉ」

「なるほどね。ん? 今、翠って言ったか?」

「言ったわよん。あ、言っとくけどちゃぁんと許可はもらってるわぁん」

 

 ……言っちゃなんだが、よく信頼出来たな。

 

「まぁ、いいや。で、今どの辺にいるんだ?」

「とりあえず、今は益州へ向かっているわよん」

「……益州? 徐州じゃなくてか?」

 

 正直、桃香たちのいる方へ逃げたほうが色々といいと思うのだが……

 

「翠ちゃんたちの情報だとぉん、今、益州は太守が無能で民心が離れているし、内乱が起こりかけてるからどこかの城に仕官できる可能性があるって話よん」

 

 成程。ならば尚更徐州行きを進言すべきだな。

 

「よっ」

 

 俺は近くにあった心斬を杖代わりにして立ち上がる。

 

「ちょ、ちょっとっ!」

「大丈夫だよ、これくらいなら」

 

 ちょいとふらつきはするが、杖代わりの物があれば問題はない。そも、ちょっと前まで修行したんだし。

 

「翠はどこにいるんだ?」

「……翠ちゃんは今、たんぽぽちゃんたちと情報整理してるわん」

「なら、そこへ案内してくれ」

 

 頼まれた小町は頷いて、先導してくれる。

 

 歩いている途中、涼州の皆がそれぞれ俺の体を気遣ってくれて有難かったし、生き残ってくれていることも嬉しかった。

 

 そして、話し合いの場に着くと翠とたんぽぽが立ち上がる。

 

「玄輝っ!」

「玄兄さま!」

「悪い、心配かけたな」

「大丈夫なのか……?」

 

 と、もう一度気絶する要因を作ったからなのか、申し訳なさそうに翠が体調を聞いてくる。

 

「ああ。まぁ、なんとかな」

 

 俺の返答に安心したのか、ホッと息を吐く。しかし、すぐに眉根が寄って皺を作る。

 

「たっく、そんな状態なのに修行なんてするなよな。心配するだろ」

「すまん。だが、あの師匠からしたらこんなの怪我のうちに入らないんだよ」

 

 実際、師匠が怪我だと認めたのは皮膚どころか肉まで切れて中身が見えたか飛び出た時ぐらいだ。

 

(……改めて思おうと、よく生きてたな俺)

 

 と、今は思い出に浸るときじゃない。俺は今後の話がどうなっているか聞いた。

 

「とりあえず、益州へ向かおうと思うんだ。あそこは色々キナ臭そうだしな」

「実は、そのことで提案があるんだ。良いか?」

「提案?」

「ああ。今更だとは思うんだが、徐州に行かないか?」

「徐州って言うと、劉備の所か?」

「あ、ああっ! 姉さまっ! 玄兄さまって元々劉備の所の人じゃん!」

 

 そのたんぽぽの一言でその場にいた翠を含めた隊長格全員が“ああ〜!!!!!!!”と大声を出して頭を抱えた。

 

「すっかり忘れてたぁあああああああああああああああああ!!!」

「……おいおい」

 

 若干呆れるが、まぁ、それだけ仲間だと思っていてくれたという事だ。それはそれで嬉しいのだが。ニヤニヤしそうになるのを抑えるのが大変なぐらいに。

 

「で、どうする? 桃、劉備であれば俺も口が利く。それに、お前さんらなら多分あそこの雰囲気になじめると思うぞ」

 

 俺の話を聞いたみんなは互いに顔を見合わせ頷いて翠の顔を見る。

 

「翠様、玄輝殿の提案は」

「言わなくてもいいよ。私もそう思うし」

「じゃあ」

「ああ。徐州に行こう。玄輝の仲間なら私たちも安心できる」

 

 翠の一言にみんな頷いている。

 

「……ありがとうな」

 

 つい、そんな言葉が口から漏れ出ていた。

 

「何言ってるんだよ。お礼を言うのは私たちの方だよ」

「……何となくそう思っただけだよ」

 

 こうして俺たちは徐州へ向かうことになった。ただ、その道のりは自分たちが考えていたものよりも遥かに険しいものになるなんて、この時は思いもよらなかったのだ。

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はいどうもおはこんばんにゃにゃにゃちわ。作者の風猫です。

 

ついに、ついに、ルーンファクトリー5発売まで一週間を切りましたっ……!!!

 

いやぁ、この日をどれだけ待っていたことか……

 

思わず「時間を早送りする、いや、いっそ時間を操る能力が欲しい」と中二病的な言葉を言ってしまうほどに待ち遠しいです……

 

まぁ、でも、嫁は相も変わらず決まってないんですがねっ!

 

もうやりながら決めますわっ!

 

と、宣言をしたところで今回はここまで。

 

何かしらミスがありましたら、いつものようにコメントにお願いします。

 

では、また次回っ!

説明
オリジナルキャラクターが蜀√に関わる話です。

大筋の話は本編とほぼ同じですが、そういったのがお嫌いな方はブラウザのバックボタンをお願いします。
































ちゃんとオリジナルの話もありますよ?(´・ω・)
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