真・プリキュアオールスターズ 最終章
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プリキュア達を前にフュージョンから放たれる殺気は増し、臆するどころか増大していく。

『プリキュア…! オ前ラ全テ、取リ込ンデヤル!』

その眼が血のように紅く輝き、鋭い光を放ち、それが身体全体を覆い、凄まじいオーラとなって満ち、回りにも飛び散る。

その放たれるオーラが衝撃波となり、大地に亀裂を走らせ、砕いて巻き上げていく。その破壊の渦が轟音を上げて襲い掛かり、逃げる間もなくプリキュア達はそれに巻き上げられ、吹き飛ばされる。

悲鳴を上げて吹き飛ぶ間にもフュージョンの発したオーラは巨大な柱となって天にまで伸び、その禍々しさを見せ付ける。

大地が鳴動するなか、自らのオーラのなかでフュージョンは蓄積されていた力を全て解放し、筋肉が膨張するように手足が収縮し、その質量を増していく。

己の存在を誇示するかのように上げる咆哮は掻き消すように響き、その身体が徐々に膨れ上がっていく。

吹き飛び、どうにか距離を取って堪えるプリキュア達は舞い上がる煙が晴れたその先に姿を見せた光景に呆然としていた顔を驚愕に染めた。

視界全てに拡がる紅のカーテン…それはまるで天から降り注ぐ血の豪雨のように見える。だが、それも一瞬――その奥から弾け飛ぶように拡がった衝撃波の突風が吹き荒れ、思わず屈み込み、視界を覆う。

歯噛みし、それが過ぎるとともに眼を向けると、眼前には巨大な影が山のように聳え、その天頂には真っ赤な禍々しい瞳が無機質に見下ろし、薄ら寒さを憶えた瞬間…その内側から光が放たれた。

怪しい輝きを放つ咆哮の光が視界に満ちた瞬間――プリキュア達は凄まじい衝撃に包まれた。それだけに留まらず、その閃光はみなとみらいの大地を穿ち、崩壊させていく。

朦々と爆煙が立ち込め、破壊の爪跡が無残に拡がる廃虚の上に悠然と…そしてどこか鎮座するかのごとく闇に全身を覆ったフュージョンという破壊神が存在していた。

その廃虚の上に倒れ伏すプリキュア達…今の攻撃のダメージが大きいのか、誰もが傷を庇い、そして痛みに耐えるように呻いていた。

「うう……」

なんとか立ち上がろうとするも、力が入らず、身体が動かない。

そんな様を嘲笑うように無慈悲な声が上から響く。

『…足掻イテモ無駄ダ……諦メロ……』

もはや力の差は歴然だった。この絶望に対する悲壮感に打ちのめされたかのごとく誰の顔にも苦悶が浮かぶ。そんななか、震えるように身を起こしたドリームが消え入りそうな声で呟く。

「諦め…られないよ……だってまだ、食べてないんだもん……」

俯いていた顔を上げ、その顔に精一杯の笑顔を浮かべて言い放つ。

「…タコカフェの…たこ焼き……!」

その言葉に反応したブラックとホワイトが互いを見合い、そして乾いた声で笑いながら呟く。

「ふふ…ありえない…くらい美味しいんだから…タコカフェの、たこ焼き…」

震える身体をゆっくりと起こし、ドリームを見やりながら笑顔を浮かべる。

「…え?」

意外だったのか、眼を白黒させるドリームの傍でレモネードが何かにハッとしたように眼を瞬いた。

「もしかして…お二人がなぎささんとほのかさん…?」

タコカフェで聞いた、顔も知らない―――何故か親近感を憶えた不思議な名…それが同じプリキュアだということに嬉しさがこみ上げてくる。

「「うん!」」

名を呼ばれたブラックとホワイトは微笑のままハッキリと頷き、ブラックが苦笑気味に空を仰ぐ。

「ああ…思い出したらお腹空いてきちゃった……」

こんな状況だというのに、大好物のたこ焼きを思い浮かべ、思わずお腹が鳴りそうになった。そんな様子に苦笑を浮かべ、ほのかも肩を振るわせる。

「パンパカパンのチョココロネ、食べ損ねたもんね……」

せっかく出向いて買ったのだが、事態が事態だっただけに、結局買ったチョココロネは戦いの余波でどこかへいってしまい、落胆した。

本当に残念そうに告げる二人に仰向けになっていたブルームが反動をつけて身を起こし、声を弾ませる。

「パンパカパン、ウチのお店なの! 来てくれたんだ!」

こうして出逢った同じプリキュアの仲間が自分の大切なお店に来てくれたことに喜びを隠せず、またその時に出逢えなかったのが残念であった。

「私達、ちょうどナッツハウスに行ってたから、逢えなかったのね…」

もし今回の事件が無ければ、そのまま出逢うことは無かったかもしれない――そう思うとこうして出逢えたことに不思議な気持ちが湧き上がってくる。

「ナッツハウス?」

だが、別の場所から上がった声に逆に驚かされた。

「知ってるの?」

身を乗り出さんばかりに問い掛けると、アクアやミント、ルージュがどこかおかしそうに笑う。

「知ってるもなにも…」

「りんさんとナッツさんが作ったアクセサリー、とってもステキなのよ…」

話を振られ、ルージュが照れたように頬を掻き、気恥ずかしそうに俯く。彼女があのブレスレットを作った人物であると知り、二人の顔が興奮気味に輝く。

思い掛けない擦れ違いと、そして繋がった絆――それが、今この瞬間の出逢いへと繋がっている。

「ステキなアクセサリーなら…私達も、ダンスコンテストでつけたいな……」

視線がその声の主へと集まり、ピーチ達がヨロヨロと…震える足で立ち上がっている。

「ダンスコンテスト…?」

「うん…まだ、あんまり上手くないけど……」

並んで立ち上がるピーチ達が振り向き、その顔に笑みを浮かべていく。

「皆にも観に来て…ほしいな……」

浮かぶ笑顔は太陽のように輝き、見る者を魅了するかのような優しさを秘め、彼女達の胸に温かく、そして強く響く。

それにつられ、プリキュアの少女達は誰もが笑顔を浮かべ、笑いあう。

知ることもなかった…そして、こうして出逢えたことが奇蹟なのかもしれない―――プリキュアの仲間達と……

話したいこと、やりたい事…この先にある楽しみなこと……その未来のために、戦う―――!

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刹那、プリキュアの少女達の瞳に強い意志の光が宿り、決然とした面持ちを浮かべ、震える足を大地に踏みしめ、立ち上がっていく。

『何…!?』

訝しげに眼を見張るフュージョンに対峙するようにプリキュア達は一人一人…静かに…そして、決して揺るがない意志を放っている。

『何故ダ? 何故立チ上ガル…!?』

理解ができないとでも言いたげに見下ろすフュージョンにドリームが何の躊躇いも迷いもない…澄んだ眼差しを向ける。

「自分達が好きなものや、大切に想っていることを伝えあうのがとっても楽しいの!」

それが輪をつくり、そして絆を深めていく。

「…それがとっても嬉しいの!」

ドリームの言葉を引き継ぐようにピーチが全員の想いをこめて叫ぶ。

「何故だかわかる? それは、皆それぞれ…違うから!」

真っ向から否定するように対峙するプリキュアに痺れを切らし、そして不快感を煽られるようにフュージョンが両手を握り締め、腕を振り被る。

『違ウカラ、ダトォ!?』

叩き潰すように両腕を渾身の力を込めて振り下ろし、それが大地を穿ち、崩壊のエネルギーを立ち昇らせる。

充満する爆煙のなかから飛び出すプリキュア達が真っ直ぐにフュージョン目掛けて突き進む。

「うん! そうだよ!」

ドリームを中心に拡がるプリキュア達は一斉に立ち向かう。

「それぞれの考え方も感じ方も違う!」

「そんな人達が出逢うから楽しいの!」

最初はただの他人だった…だけど、出逢い、そしてそれが新しい喜びを齎してくれる。

「人は自分と違うからこそ!」

「人に出逢うことで、自分も変わっていけるの!」

楽しいことだけではない…時には擦れ違い、そして傷つけあう―――だけど、それは新しい変化へのステップ。

『何…!?』

睨みつけるフュージョンに気圧されることもない…彼女達の想いは、決して揺るがない。

「違う皆が、それぞれの力を持ち寄るから…もっと大きな力になれる!」

一人一人は小さく弱いかもしれない…だが、それが一つになることで大きな力になり、無限の可能性を見せてくれる。

『ソンナモノハマヤカシデシカナイ!』

耳障りとでも言いたげに叫ぶフュージョンだが、彼女達は立ち止まらない。

「皆で力をあわせるからこそ…!」

「どんなことでも乗り越えられるの!」

「だから私達は、何度でも立ち上がれる!」

どんなに困難で苦しくても…どんなに挫けそうでも、『仲間』がいるからこそ、決して絶望はしない。心は決して折れない―――!

「一つになるっていうのはそういうことよ! アンタの言ってることなんかとじゃ全然! 違うんだからぁぁぁぁぁぁっ!」

あらん限りの声を張り上げて信じる『仲間』と共に―――!

一つになったプリキュア達は一斉にフュージョンに飛び掛かる。光が走り、フュージョンの身体を沿うように飛び、駆け抜ける。

その勢いに圧倒されたのか、その巨体をよろめかせるも、振り払うように拳を薙ぎ払い、それを回避し、腕を受け止める数人が力をあわせて殴りつけるように吹き飛ばす。

「ふっ!」

「はぁっ!」

「たぁっ!」

「でやぁっ!」

「てぇぇぃ!」

すかさず、逆方向へ吹き飛ぶ反動でよろめくフュージョン目掛けて空中に舞い上がるアクアがアローを、ミントがソーサーを、ルージュがシュートを、ブライトが光を、ウィンディが風を打ち放つ。

5つの光の輝きを放つ力がフュージョンに降り掛かり、小さな爆発を纏わせる。それを片腕で払いのけ、その奥から見えた口内に再び閃光が満ちる。

次の瞬間、解放されたエネルギーの奔流が空中で固まる5人に襲い掛かろうとするも、その間にルミナスが割り込み、両腕を拡げ、自身のなかの力を展開する。

それは強固な光の盾となって6人を包み込み、その咆哮のエネルギーを防御する。完全に周囲に霧散し、僅かに怯むフュージョン目掛けてブラックとホワイトが空中で回転し、遠心力をつけながら観覧車の鉄柱に着地し、ブルームとイーグレットが空中に舞い上がる。

4人が顔を見合わせ、一瞬の視線を交わし合い、頷くと同時に顔をキッと引き上げる。

「「だぁぁぁぁっっ!!」」

「「はぁぁぁぁっっ!!」」

身体に溜めた力を全開にして鉄柱を、空を蹴り、4人は弾丸のように飛ぶ。

ブルームとイーグレットの精霊の光が込められた拳がフュージョンの肩に打ち込まれ、大地に身を沈める。間髪入れず飛び込むブラックとホワイトの拳と蹴りがその肩へと連続で強く叩き込まれる。

周囲に木霊するかのような轟音ととともに穿たれた一撃がその身体を大きく歪ませ、その痛みに悶える。

「「でぇぇぇぇいい!!」」

そして、反対側の肩にベリーとパインの蹴りが空中から急降下する勢いを加えて叩き込まれ、大きく陥没する。

続けて喰らった両肩へのダメージに鈍るフュージョンに空中からパッションが降下してくる。肩が上がらず、顔を上げたフュージョンは再び口内からエネルギーを拡散させる。

先程までの一点集中ではなく網目のごとく放たれる光のなか、パッションは赤い閃光に包まれ、その姿を消す。

テレポートで空中を神出鬼没のように見え隠れしながら飛び、フュージョンの目測を翻弄させる。

そのまま一気に駆け寄り、フュージョンの頭部目掛けて飛び掛かる。だが、フュージョンの顔の闇のなかから黒い針が隆起し、パッションに伸びる。だが、パッションは怯むこともなく止まりもしない。

「たぁぁっ!」

横殴りに割り込んだダークドリームがその隆起した針を蹴り払い、軌道を逸らす。空いた空間を過ぎり、パッションの振り被った拳がフュージョンの身体に叩き込まれ、眼元が大きく歪む。

「はぁぁぁっ!」

そのパッションの背中から飛び出したピーチが空中で回転し、遠心力を加えて飛び込み、再度拳を叩きつけ、フュージョンの首が後方へと折れ曲がる。

離脱したピーチ達の後からブライトとウィンディが手を取り合い、掌を向ける。光と風の力が合わさった渦が放たれ、フュージョンの身体を圧迫し、背中を倒そうと押す。

その勢いに負けまいと踏み堪えるフュージョンと均衡するブライトとウィンディ…その光景を一瞥したローズがすかさず拳を握り締め、渾身の力を己の足元に向けて振り下ろす。

「たぁぁぁっ!」

叩きつけられた力は大地を穿ち、それがフュージョンの足元まで伸び、突如としてできた穴に足を取られ、堪えることができずにフュージョンは体勢を崩す。

均衡が崩れた瞬間、ブライトとウィンディが力を全開にし、放たれる渦の奔流がフュージョンの身体を大地へと押さえつける。

その後方へと飛ぶブルームとウィンディを抱えるブラックとホワイトが大きく振り被り、二人の身体を投げるように飛ばす。

二人の力による加速を得て、ブルームとイーグレットが精霊の光を集中し、掌に収束させていく。押されながらも、その首を動かし、三度口内にエネルギーを収束させていく。

それに気づいたレモネードが誰よりも早く動き、飛び掛かる。それに続くようにドリームとダークドリームも追い、飛び上がる。

「プリキュアプリズムチェーン!」

振り払う両手の鎖がフュージョンの顔を絡み取り、その動きを封じる。そこへブルームとイーグレットの光が解放される。

「「プリキュア! シューティングスター!!」」

それにあわせてドリームとダークドリームは手を取り合い、光を纏いながら一直線に加速する。

二つの光がフュージョンの身体に突き刺さり、エネルギーがその身体を穿つ。

絶え間なく浴びたプリキュアの攻撃のダメージがフュージョンの身体に変化を齎す。闇に覆われていたその身体が不規則に収縮し、膨張し、暴れている。

体組織も変化しているのか、痙攣する様に一瞬、プリキュア達の緊張が解ける。だが、痙攣していたフュージョンが無秩序に首を振り回し、その口を開いた瞬間、エネルギーの咆哮が迸り、咄嗟のことで反応の遅れたプリキュア達は再びそのエネルギーを浴び、大地は爆発の炎に包まれる。

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「プリキュア――!」

その光景に離れた位置にまで吹き飛ばされていたココ達妖精が駆け寄る。その安否を確認しようと眼を凝らし、煙の向こうから見えた光景に絶句し、息を呑む。

プリキュア達は確かに無事だったが、全員が膝をつき、ボロボロだ。その前には未だ悠然と聳えるように立つフュージョンの姿がある。

『マダ抗ウカ…! 全テヲ呑ミ込ム私ノ力ニハ、到底敵ワヌゾ…』

あれだけの攻撃を受けてもまだ余裕があるのか、フュージョンから放たれるオーラは未だに強大だった。吹き荒れる風に晒され、圧倒的な畏怖感を漂わせるフュージョンに歯噛みするプリキュア達。 

呑まれそうになる恐怖に必至に耐える姿にココ達も圧倒されそうになる。

「物凄い力だココ!」

「プリキュアにはもう、体力が残ってないロプ…」

消沈するように漏らすシロップの言うとおり、立て続けに受けたフュージョンの攻撃によるダメージと長時間の戦闘で彼女達も体力を著しく消耗している。対してあちらにはまだ余裕がある…どう考えても不利だった。

「ミラクルライトさえあれば…!」

「ミラクルライトムプ?」

「フプ?」

思わず悔しげに憤るナッツ。このような状況を打開できる唯一の手段…それが今、この手のなかにないことへの怒りだった。

「ミラクルライトがあれば、プリキュアに力を与えられるナツ…! でも……」

そのミラクルライトはフュージョンに襲われた時に落としてしまい、今は恐らく遠く離れたパルミエ王国だ。今から取りに戻る余裕もなければ、時間も無い。

完全に八方塞のなか、沈痛な面持ちを浮かべた刹那、突如頭上から眩いばかりの光が降り注ぐのに気づいた全員が一斉にその方角を見上げる。

まるで、太陽のように降り注ぐ光に見惚れ、フュージョンもまた訝しげに振り返り、見上げる。

『何ダ…?』

誰もが眼を凝らすようにその光が満ちる一点を見詰めた瞬間、光の中から楽しげな声が響く。

「キュア――」

光に包まれて浮かぶその姿に、ピーチ達の顔が綻ぶ。

「シフォン!」

ピーチだけでなく、ベリーやパイン、パッションもその無事な姿に痛みも忘れて安堵の声を上げる。

「シフォンや! よかったぁ、無事だったんや!」

その姿に感極まって涙ぐむタルト。だが、対照的にフュージョンは混乱する。

『何故ダ? 何故取リ込マレテイナイノダ!』

シフォンは確かに自身の一部が取り込む光景を垣間見た。遠く離れた位置に居たはずの分身の気配が途切れていることに気づき、さらに混乱に拍車が掛かる。

だが、ナッツはシフォンの手に握られているものを視認した瞬間、声を弾ませるように張り上げた。

「ナツ! ミラクルライトナツ! ミラクルライトがシフォンを護ったナツ!」

タルトの後を追ってパルミエ王国へと赴いたシフォンは破壊された会議場後でミラクルライトを拾い、その隙を衝いて取り込もうとしたフュージョンの一部に向けて無意識にライトを向けた。それから放たれた奇蹟の虹の光がその闇を浄化し、シフォンを護ったのだ。

そして今、この場に現われたシフォンはまるで導くように全身から光を煌かせ、それが幾条もの光となって地上へと伸び、妖精達の手元へと向かう。

その光が徐々に輪郭を帯び、何であるかを悟った瞬間、妖精達は一斉に手を上げ、吸い込まれるように収まった瞬間、それはミラクルライトへと姿を変える。

その光を掴もうとアイテムから変身したメップル達も跳び上がり、それを掴み取る。彼らの手に収まったものが厄介なものであると知ったフュージョンは獰猛な叫びを上げる。

『ヌオォォォォ! ソウハサセン! コイツヲ取リ込メバ〜〜!』

シフォンへと伸びる腕…迫る恐怖にシフォンが怯える。

「シフォン!」

悲痛な叫びを上げるピーチだが、身体が動けず、助けにいけない。

「プキュ〜〜!」

眼前にまで迫った瞬間、唐突に過ぎった影がシフォンを救う。間一髪で割り込んだのは、鳥の姿になったシロップだった。

「シロップ!」

ドリーム達が安堵の声を上げ、フュージョンは悔しげに歯噛みする。

『オノレェ…!』

そして、ココ達の許まで降り立った瞬間、ココがミラクルライトを握り締める。

「皆! ミラクルライトを使って、プリキュアを応援するココ! いくココ!」

握り締めるライトの先端が輝き、振り上げた瞬間、虹色の光が満ち、妖精達は一斉に振る。

「プリキュアに力を〜〜!」

 

―――メップルが…ミップルが……

―――フラッピが…チョッピが……

―――ポルンが、ルルンが…ムープが、フープが……

―――ココが…ナッツが…シロップが……

―――タルトが…シフォンが……

 

プリキュア達と心を一つにするかのように振るライトによって、倒れ伏していたプリキュア達は光に包まれていく。

その温かな光に安らぎと力が沸き上がる。

 

 

「プリキュアに力を〜〜!!」

 

 

振っていたライトの虹がやがて一つの光になり、空中で輝く。一際眩い虹色の光が周囲を包み込み、プリキュア達はその中に導かれていくように舞い上がっていく。

 

―――ドリーム、ピーチが……

 

―――ブラック、レモネード、イーグレット、ベリーが……

 

―――ブルーム、ルージュ、ブライト、パインが……

 

―――ホワイト、ミント、ウィンディ、ダークドリームが……

 

―――パッション、アクア、ローズ、ルミナスが……

 

互いの手を取り合い、天へと光のシャワーがプリキュア達の身に降り注ぎ、洗礼を施していく。

虹色の光の粒子が白金の輝きと翼をプリキュアへと施し、その姿を光で満たしていく。光り輝くドレスを身に装飾し、プリキュア達は手を取り合いながら一つの輪となる。

それは、彼女達を一つの奇蹟へと導いたもの…『仲間』との絆の証だった―――

「力が、溢れてくる……」

全身から溢れるこの温かい力――それが安らぎ、そして何にも負けない強さを与えてくれる。

これは、大切なもの…これを与えれくれた全てに感謝するように笑顔を浮かべた。

「皆! ありがとう!!」

やがて光が消え、その中から姿を見せたのは、ミラクルライトの力によって新たなる奇蹟の力を得た『スーパープリキュア』達だった。

 

 

「一つになった私達の力…受けてみなさい!」

 

 

凛と…そして雄々しく立つプリキュア―――今の彼女達に、畏れるものはなにもない…!

 

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『プリキュアァァ!!』

その輝きに初めて恐怖を抱いたのかもしれない。フュージョンの咆哮が轟くも、プリキュア達は怯まない。

飛来する光がブラックとホワイトの腕に装着され、それを振り払い、光の中から顕在化する『スパークルブレス』。

二人の呼吸が合い、身構えるとともにブレスが輝き、その後方に佇むルミナスが眩い光に包まれ、右手に『ハーティエルバトン』を構え、両手で掲げる。

刹那、ルミナスから虹色の粒子が放たれ、ブラックとホワイトはその力を背中で受け止め、キッと眼差しを浮かべる。

「みなぎる勇気!」

「あふれる希望!」

「光り輝く絆と共に!」

ルミナスの力を受けたブラックとホワイトが手を取り合い、全身の力を込める。

「エキストリーム…!」

「ルミナリオォォ!」

ブラックとホワイトの前に現われる虹色のハートの光…それに向かって手を突き出す。

「「マックスゥ―――!!」」

ブレスが回転し、二人の力を何倍にも高め、ハートの中から溢れるように飛び出す光の渦が解き放たれる。

ブライトとウィンディの胸元の精霊の証が輝き、ブルームとイーグレットの腰と腕に『スパイラルリング』が装着される。

ブルームとイーグレットが手を取り、ブライトとウィンディが横に並ぶ。

「精霊の光よ!」

「命の輝きよ!」

「希望へ導け!」

「すべての心!」

4人の意志に呼応し、大自然のなかに生きる全ての精霊達の力が4人のもとへと集う。それが最高潮に達した瞬間、ブルームとイーグレットの手が輝く。

「「プリキュア! スパイラルハート…!」」

刹那、4人は呼吸を合わせて振り被る。

「「「「スプラッシュスター――――!!」」」」

一斉に打ち出される精霊の力が4つの奔流を一つへと螺旋状に束ね、真っ直ぐに伸びる。

ドリーム達6人が剣状のキュアフルーレを取り出し、それぞれの気高さを込めるように刃を展開する。

「クリスタルフルーレ! 希望の光!」

「ファイヤーフルーレ! 情熱の光!」

「シャイニングフルーレ! はじける光!」

「プロテクトフルーレ! 安らぎの光!」

「トルネードフルーレ! 知性の光!」

「ダークネスフルーレ! 星の光!」

ドリーム、ダークドリーム、ルージュ、レモネード、ミント、アクアの6人が刃を合わせる。

「希望の…!」

「「「「「「赤い薔薇!!」」」」」」

掲げる6人の頭上に咲き誇る6つの赤い薔薇。それに続くようにローズがミルキィミラーを同じ剣状に変化させ、振り被る。

「奇蹟の青い薔薇!!」

切っ先を掲げた瞬間、その先に青い薔薇が咲き誇る。

7つの薔薇に向かって伸びる7つのフルーレ――薔薇の力が満ち、心を一つに纏める。

「「「「「「「伝説の力を今、一つに!!」」」」」」」

刹那、7本の薔薇は一つの大きな種に変わり、その内に溢れんばかりの光が圧縮される。

「「「「「「「プリキュア! ミルキィローズ! フローラルエクスプロージョン!!」」」」」」」

7人の想いと力を乗せ、打ち出される種が空中で割れ、その中から7色の輝きに彩られる巨大な薔薇が咲き誇り、その蔓を伸ばし、真っ直ぐに育つように走る。

ピーチ、ベリー、パインがリンクルンより『キュアスティック』を、パッションが『パッションハーブ』を取り出す。

「ピーチロッド!」

「ベリーソード!」

「パインフルート!」

「パッションハープ!」

4人の手に収まるアイテムを構え、メロディを響かせる。振るうスティック、そして鳴り響くハーブの中から生まれる4つの印が一つに集束する。

「「「「プリキュア! クローバーフレ―――ッシュッ!!」」」」

4人の呼吸を一つに打ち出される輝きが一つとなり、ハートの形を作り、真っ直ぐに加速する。

放たれる4つのプリキュアの必殺技が空中で並行し、寄り添い、やがて一つの大きな力に合わさり、輝きを増す。

真っ直ぐに迫るその光にフュージョンは真っ向から挑みかかる。

『ヌオォォォォォォォッ!!!』

両手の中に生成されるのは己の全てを込める相反する暗黒の輝きを凝縮させた光。赤紫に禍々しく輝くそのエネルギーの塊を、大きく振り被り、渾身の力を込めて解き放つ。

相対する二つのエネルギーが空中で激突し、そのぶつかり合うエネルギーが回りへと霧散し、大地を鳴動させ、光の粒子が飛び散る。

互いの中間で均衡するエネルギーの渦――フュージョンはその中にプリキュア一人一人の力を感じ取り、侮蔑するように言い放つ。

『ソンナバラバラナ力デ、本気デ私ニ敵ウト思ッテイルノカ!!』

無駄な足掻きと押し切ろうとするも、プリキュア達は決して臆せず、その感じられる仲間の存在を信じてなおも対峙せんと挑む。

「それぞれ皆、違うからこそ…!」

「一つになった時に、大きな力になるの!」

「私達の…皆の想いは……!」

「一つなんだから―――!」

18人の想いと意思――それらが一つになったような感覚が全身に満ち、放たれる光がより煌き、輝きを増す。

その勢いに徐々に押され始め、フュージョンが動揺する。

『!? ヌオ…っ!』

己の放つ光が徐々にプリキュアの光に呑まれ、それは留まらず己自身にまで迫ってくる。

『何ッ……!?』

フュージョンが怯んだ瞬間、その隙を逃さず、プリキュア達は全ての力を込めた。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」

 

その瞬間、均衡は完全に崩れ、フュージョンの身体はより巨大になったプリキュアの光のなかへと呑み込まれていく。

全身を光に包まれ、その中でフュージョンの身体は微塵に消滅していく。断末魔の悲鳴を上げ、その身体を粒子一つ残すことなく浄化され、フュージョンを形成していたプリキュアへの深い怨念の影は完全に消滅した。

フュージョンが完全に消え去り、光が霧散する。降り注ぐ粒子が空に虹をかけ、廃虚となった街並みを修復していく。

それは、彼女達の…プリキュアの勝利を祝福しているようであった。

その光景を誰もが満面の笑顔で見詰め、やがて全員が顔を見合わせ、弾けるように笑い合った。

 

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数時間後――

みなとみらいは先のフュージョンによる破壊すらまるで無かったかのごとく人々の明るい笑顔が満ちる場所へと戻っていた。

その一画…ダンスコンテンスの会場は、大勢の人で賑わい、大盛況を見せていた。その観客席には、ラブ達の披露するダンスを観ようとなぎさや咲、のぞみ達だけではなく、彼女達の友人や親達も訪れ、彼女達の入場を歓迎する拍手を上げている。

その奥の木の葉の中から同じように楽しみに待つ妖精達が顔を出し、楽しそうに見詰める。

やがて、ステージの司会の女性がラブ達の紹介を行い、促す。

「さあ、次はエントリーナンバー7番! ラブさん、美希さん、祈里さん、せつなさんの『クローバー』です! どうぞ!」

ステージの中央に姿を見せるラブ、美希、祈里、せつなの4人は眼前にて観賞する観客、そして友人達の見守る視線を感じ、完全に緊張を通り越して固まっていた。

ギクシャクと身体を動かし、頬も引き攣って乾いた笑みを浮かべている。やがて音楽が流れ始めるも、4人はガチガチのまま腕をぎこちなく動かすも、脚がおぼつかず、引っ掛かる。

「わ〜〜〜」

短く悲鳴を上げた瞬間、4人は前のめりにステージ上で倒れ伏した。その光景に失笑が漏れ、それを見守っていた少女達もやや残念そうに苦笑したが、やがて満面の笑みで拍手を送った。

それにつられて客席から拍手が降り注ぎ、それを浮けながら4人は倒れたまま苦笑した。

「あははは……」

「やっぱり練習不足ね…」

「でも、皆楽しんでくれたみたい」

「ダンスはバラバラだったけど…想いは一つだったよね!」

その言葉に客席の仲間達を見やり、強く頷く。

「うんっ」

それは、見る者を魅了する眩いばかりの笑顔だった。

彼女達はその後、みなとみらいを観光し、時間を経て交流を深めていく…それはまた、別の物語―――

 

 

 

 

――――みんな、友達だよっ!!

 

 

 

 

 

 

真・プリキュアオールスターズ 〜FIN〜

 

 

-6ページ-

 

 

後書き

 

遂に完結しました。

ちょっとした不満から書き始めただけに、いろいろ無理矢理や矛盾がでましたが、書き終えられて満足です。

 

春に公開されるDX2もどれだけパワーアップしているか楽しみは尽きないですね。

では、またどこかで。

 

 

 

説明
遂に完結しました。

ラストバトル、そして最後の合体技は頑張ってオリジナル要素を入れてみました。

3月公開のDX2も楽しみです。
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