恋姫無双 〜天帝の花〜 5話
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 窓から太陽の光が徐々に差し込み、外からは朝を知らせる鶏の響き渡り、古い建て付きの扉が開く音で目を覚ました。

「栄花様、おはようございます」

「律儀にいつも、すみませんね」

 それが私のお仕事ですから、と侍女のお手本のように返事をするのが毎朝のやり取りだった。

 

「それにしても気がつけば もぅ朝なんて本当に月日が経つのは早いですね」

「そうお考えになるのならば、布団の中でもう一度寝ようと気は起こさないで下さい。私の仕事が遅れてしまいますので」

「しかしですね、本当なら今日は休暇となっているのです。少しぐらいは――」

「………」

 何をそんな馬鹿みたいな事を言っておられるのですか? と蔑んだ目で見つめられ栄花でも居心地の悪さを感じ栄花は侍女に頭が上がらないようだ。

 

「それで皆さん達は起きているのですか?」

 寝台から起き上半身裸になり、いつものように服の袖に手を通しながら尋ねた。

「はい。それどころか、そろそろ皆様は集まりになられていると思っております」

 どうやら彼女はいつになっても現れない栄花を起こしに来た事が分かる。

 男の肌を見慣れているかどうかは、わからないが置物のように扉の横に立ち応えた。

 

「わかりました。着替え次第、向かいますので少々遅れると伝えて下さい」

「かしこまりました。それでは、失礼いたします」

 軽くお辞儀をし扉を閉め、カツカツと規則正しい音が段々と聞こえなくなっていく。

 部屋の主の栄花だけになり、光を浴びるすがたは野に咲く花のように綺麗だ。

 最後に布で髪を結び部屋を後にする。

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 大間に到着すればすでに、全員が集まり中央に伸びる赤い道を挟むように待機していた。

 左側には、昨日出会った彼女達の姿も見えた。

「遅いじゃないか栄花。お願いだから時間は守ってくれよ」

「申し訳ありません白蓮さん。休暇のつもりで夜遅くまで起きていましたので」

「私も夜遅くに連絡をしたのが悪かったからな。午後は自由にしていいからな」

「ありがとうございます。白蓮さんに恥を欠かせないよう精進します」

 や、やめてくれよそこまで考えなないでくれ。と白蓮は少し顔を赤くしながら両手を振っていた。

 

「こほん。星と栄花は知っているかもしれないが彼女が私の友である劉備だ」

 公孫讃の言葉に続き一歩前に出る劉備達。

「私が劉備だよ。白蓮ちゃんのお手伝いに来ました、皆さんよろしくね」

「桃香様が一の家臣にして第一の矛、関羽だ。よろしく頼む」

「鈴々は張飛なのだ! とっても強いのだ」

 三者それぞれに名乗り。

 

「戯志才と名乗っております」

「風は程立といいますー」

「二度目だが超雲だ」

「同じく栄花です」

 言葉は短いがお互いに思うところがあるのか、星と関羽は互いに視線が離れる事はなかった。 

 

「よし! お互いに紹介は終わったな。皆が集まる少し前に朝廷から命を承った」

 白蓮の手には一通の手紙が握り締められていた。

 

 −各地に広がり我が愛する民を絶望へと導く賊共(以後は黄布党)を討ち滅ぼせ−

 

「分かってはいましたが、目の当たりにすると何もいえませんね」

 眼鏡を拭きながら答える凛に賛同するかのように、それぞれに口を出す者がいれば頷く者もいた。

 

 半年以上も前から、敵の本拠地であろうところを割り出し少しずつ力を蓄えながら黄布党の討伐に遠征していた栄花達はため息を吐くかずにはいられなかった。

 しかし、重い腰をようやく上げた朝廷の動きにより大義名分を得る事により各諸侯達の動きは活発になり様子見をしている諸侯達も行動を起こす事に違いない。

 この事により、黄布党の乱の始りの鐘がなった。

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「よし! これからの動きについてだが、稟説明してやってくれ」

 公孫讃は、稟にこれからの事について説明を求める。

「まずは本体を狙う前に、敵の補給地であろう所を潰したいと思います」

 バサバサ、と丸台の上に地図を広げ台を中心に取り囲むように集まり、カチカチ、と稟は黒石を地図上に置き始める。

「ほぇ〜こんなにもいっぱいあるんだね」

「そうですね〜、小規模の所も含めると真黒黒巣家になりますよ」

 そうなの!? と敵の多さに劉備は驚愕し風は棒飴を、ぺろぺろ、と舐める。ハッカ味だ。

 

「公孫讃殿は、いつからこのような事をお考えになられていたのか」

「関羽よ、残念ながらこれは凛と風が考えた策だ」

 関羽は目の前に並べられている事に追い付いてこれなかった。所々には、重要と思われるところに赤く囲んであり偵察がすでに終わっている事を告げている。

 星は仲間の凄さを自分のように喜んでいた。白蓮については……残念。

 

「鈴々言葉だと分からないけど、こうやって書いてあるとわかりやすいのだ」

 これでしょう! と言いながら赤い丸を指し

「さすが凛さんの説明は分かりやすいです」

 栄花は頷いていた。

 当の本人は、ほんのりと頬に朱が差し込んでいた。

 

「以上が重要と思われるところです」

 その言葉で稟と風以外は、おぉー、と感心する。

「だがこれだけ多いと厄介だな。二重になっているのは、どういう意味だ?」

「はい。ここの場所を潰してしまえば、補給が止まるはずです」

 四つの場所を指差した。

「我々から一番近い場所となると……曹操の勢力に近いな」

「その通りです。ですから、迅速な行動を求められます」

 星の疑問に稟が答え、二人で会議が進んでいるようなものだった。白蓮は二人の言葉に耳を傾け、劉備は理解できないのか関羽に頼っていた。風と張飛は、栄花と一緒に雑談をしていた。

 そんなこんなで、午前の終了のお知らせが来た。

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「白蓮さん。では、お昼となりましたので私はここで失礼しますね」

「そうか、どんな事になっても怨むなよ」

 会議は終了していないが部屋を出ようとすると――

 

「栄花殿、少しお待ちください」

 丁寧な言葉だが態度を見るに怒りがあることを察する事ができる。

「関羽さん、なんでしょうか? 私はこれから街へと思っているのですか」

「私達に面倒ごとを押し付けて、自分だけは遊びに行くつもりですか?」

「心外ですね。私は休日にも関わらず、こうやって参加したのですから午後ぐらいは自由にさせて下さいよ」

 言葉に出しながら、前を歩くが関羽に行方を阻まれる。

 

「栄花殿は、将として公孫讃殿下にいるのにも関わらず放棄するおつもりか?」

「白蓮さんが許してくださったのですから、関係ありませんよ」

 栄花は笑顔で答え

「関係なくはない私は一人の将として聞いているのだ」

関羽は毅然とした態度で臨む。

 

「貴方少し目障りですよ」

 いつもの笑みはなく、すっと、目を細め無感情な青年の姿が存在した。

「えっ……」

 それは一体誰の声だったのかは分からない。

「あなたの言い分は正しい。しかし、それが通用しない相手への柔軟な思考も持ち合わせてほうがよろしい

ですよ」

 一言終わる前には既にいつもの、顔に戻っていた。

「しかし――」

 横を通り過ぎる彼に手を伸ばそうとするが、風によって阻まれる。

「お兄さん一つお聞きしたい事があります」

「……」

「無視され丈夫なほど風の繊細な心は強くありませんよ……お兄さんは戻られるのですか?」

「…っフフ」

 一度足を足を止め歩き出す彼の言葉が肯定なのか否定を表すのか……

 扉から吹き抜ける風が彼女達の横を抜けていった。

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 星はただ、事の顛末を見守っていた。

 普段の栄花から想像もできない、姿に驚きはしたがどこかで納得した自分自身がいた。

 脳に流れるのは生涯一に相当する、浅ましき行動。

 公孫讃と栄花の試合を楽しみにしていたのは私だ。共に旅を続け、名に負けないほどの花のような笑顔に惹かれていたのかもしれない。

 

 私は武人だ。

 万の言葉を並べられるよりも一合でも打ち合えば、大体感じる事ができる。

 だから、私は望んだ。私自身の気持ちと栄花の考えをただ知りたいという、好奇心だけで。

 結果は観客となってしまったが悔しくはない。

 

 武にはその人の魂が宿る。

 気持ちが高まる事が分かっていた。その時の私の顔は、子供のような無邪気な感じに違いないと思った。

 

 しかし、現実は違った。

 栄花には何もなかった。心も技術も魂(生命)さえ、感じられなかった。

 そこに在るのは笑顔が美しい青年。もしかしたらその笑顔さえなかったのかもしれない。

 私は恐怖した。そのような奴が"人間"であるはずがない。

 歩く事から呼吸、あまつさえ考えまでが寄せ集めの"作り物"が存在するはずがない。

 その時に私は試合を見なければ良かった。

 そうすれば、あんな間違いは起きなかったのかもしれない。

 だけど逃れる事はできなかった"知りたいという好奇心"には勝てなかった。

 

 目を開けばそこには、趙子龍が戦っていた。

 ひどく気分が悪かった、自身の存在が犯されている感じで不快だ。

 惹かれているのではなかった、危険視していたのではなかったのか。

 だからあの時私は、趙雲を――

 

 考えるのはよそう。

 それよりも今は栄花を理解者のように見送る風が羨ましくたまらなかった。

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 あとがき

 

 予定通りに、上げることにできました。

 時間ぎりぎりになってしまいましたが了承してください。

 

 なんと! 総閲覧数が5,000を超えました!!

 これも、皆様のおかげです。読んでくださる方やコメントや支援して下さる方には頭が上がりません。

 話しが全く進みませんが、長い目で読んでくださると幸いです。

 今回でやっと黄布の乱?に突入しました。

 ピチピチアイドルに出会う事ができるのか?! 全くそこらへんは考えておりませんがいつもどおりに思いつきで書いていきたいと思います。

 今回もわけが分からない、言い回しがありましたがご了承ください。

 

 次回の更新は、火曜日あたりにしたいと思っています。

 早くできればあげるつもりですが。

 

 それでは、またの機会にお会いいたしましょう。

 

 (最後の星が趙雲をというところですか、星の目には栄花は映っておらず自分自身がいた、という感じで良いと思います)

説明
予定通りに上げることができました。
作品を応援してくれる方々のためにも頑張っていきたいと思います。
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3298 2808 29
コメント
kyowa様:コメントありがとうございます! 次の話しで栄花の異端さを書ければ良いと思っています。凛と風の二人で軍師というところに注目すればわかると思います。(夜星)
星にはそう見えていたんですね。これが栄花の異端なるところということですか。風は何やら解答に辿り着いているみたい?(kyowa)
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恋姫無双 栄花 劉備 関羽 張飛    トゥロロ 

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