『舞い踊る季節の中で』 第61話
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真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-

   第61話 〜 三姉妹揃いし時、始まりの舞に人々は集う 〜

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性には危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術

 

  最近の悩み:某日、某宿内の一室にて

        吸い付くような柔らかな頬に、 長く細い睫毛の形を整え、 全体に薄く化粧を重ねて行

        く、必要以上の事はしない。 あくまで彼女らしさを、優しく強調するに留める。 それ

        が、一番彼女を輝かすからだ。 控えめだけど、野に咲くどの花よりも、優しく美しい花、

        そんな彼女に似合う装飾と化粧を施してゆく、 仕上げに、目元が明るく輝いて見えるよ

        うに、胡粉をほんの少し塗す。 そして、薄い色の紅を、彼女の瑞々しく柔らかな唇にひ

        く事で、俺は彼女に化粧を施すと言う作業を終え、一歩下がって、その出来を確認する事

        にする。

        

        「・・・・・・・・・・」

        

        化粧を終えた彼女は、閉じていた瞼を開き、 首をやや傾げて俺を見る彼女の姿は、とて

        も眩しく、俺をしばし呆然とさせた。 彼女の心優しい性格が滲み出るような優しい微笑

        みは、やや大きく開いた目は、幼さを感じさせるも、その瞳に宿る光は間違いなく大人で、

        女性としての艶を同時に感じさせる。 小さな唇は、まるで吸い込まれそうな感覚に襲わ

        れるも、まるで彼女の甘い香りが、其処から出ているように感じられる。

        ・・・・・・俺、一体どうしたんだろう。  「一刀君、終わりましたか?」そんな彼女の言葉

        が、思考を止めていた俺を、現実に引き戻す。 俺は首を振って、己のやる事を思い出し、

        彼女に、今回の化粧や装飾の趣旨を説明していく。 彼女は俺の説明を聞きながら、鏡に

        向かって、今の自分を確認していくが、その時の仕草が、表情が、とても眩しいくせに目

        が離す事が出来ない。 見慣れている彼女の顔が、別人のように見える事もあれば、逆に

        彼女をより強く感じる。 ・・・・可笑しいよな、こんな事、あっちの世界で何度もやってい

        たと言うのに、こんな事初めてだ。

        そんな中、彼女はどう見えるかを聞いてくるが、そんなもの決まっている。決まっている

        るのだが、何かそれが物凄く恥ずかしい事を言うようで、黙っていると、

        

        『 ふわっ 』

        

        そんな香水と彼女の自身の香りが織り成す甘い香りが、俺の鼻腔を、思考を麻痺させる。

        だけど、そんなものは、次の瞬間、更なる刺激で、更に麻痺させられた。 

        「きちんと、真っ直ぐ見てくれなければ、分からないですよ」 そう言って彼女は、俺の

        目の前というか、服が触れ合う所まで近づいてきたと思ったら、その手を俺の首にかけ、

        まるで、首にもたれ掛かる様に、その身体を俺に密着させて来た。 彼女の身体にこうし

        て触れ合った事は、何度か事故であった。 あの時も大変だったけど、今は、そんな問題、

        じゃない。 なにせ目の前に、彼女の顔が、化粧を施し、今まで以上に綺麗に見える彼女

        の顔が、下から覗き込む様に、俺を見詰めている。 その頬は、チーク施し過ぎた訳でも

        無いのに、薄く朱に染まり、その瞳は熱く潤んでいるように見える。 彼女の瞳に映る俺

        の顔は、彼女以上に顔を朱に染め、動揺しているのが分かる。 『バクッバクッ』心臓が、

        破裂すると思えるくらい大きく鼓動しているのが分かる。 そして、それと重なるように

        俺に圧し掛かる彼女の身体から、彼女の柔らかな感触と共に伝わる彼女の鼓動が、俺の鼓

        動と重なり、その事が、狼狽する俺の心とは裏腹に、とても安らかな気持ちにさせてくれ

        る。・・・・なんで彼女の鼓動を、こうも強く感じるのだろう・・・・そんな言葉が、頭を過ぎる。

        

  (今後順序公開)

 

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雪蓮視点:

 

 

広大の荒れ果てた大地に、一揆を引き起こした農民達を討伐するため、と言う名目で、出陣する事が出来た私達。 引き連れる兵は一万五千、後は・・・・・・、

 

「時間通り来たわね」

 

見渡す限りの荒地、

でも其処かしこにある小さな丘の向こう、

三方向から埃を巻き上げながら、多くの兵士を引き連れ此方に向かってくる。

幾つもそびえ立つ牙門旗の中、その先陣にあるのは、『孫』『甘』『孫』『呂』、

それらが、私達に協力してくれる多くの豪族達を引き連れて、姿を現す。

 

三人姉妹、久しぶりに顔合わせかぁ・・・・・・ふふっ、楽しみね

 

やがて、其処から二騎のみが此方に駆け寄り、

 

「お姉様、全て予定通り、事を運ぶ事が出来ました」

「ありがとう蓮華、でも、これからが本当の勝負よ。

 それとシャオ、元気だった? 勉強はちゃんとしてた?」

「もっちろん! 毎日が勉強だったわ」

 

数年ぶりの尚香は、誰に似たのか天真爛漫な笑顔で、私にそう答えてくれる。

 

「嘘をつけ。 子布から手紙で、何度か嘆かれたわ」

「ふ〜んだ、本当の智と言うのは、机上の本読みで会得できるものじゃないもんね。

 本当の智は、人と人の間にあるんだからね」

「おまえは、そんな事は、きちんと学んだ者が・・・・・・・・・・・」

 

蓮華の嘆く声に、尚香は、少しも悪ぶれもしず蓮華に言ってのけ、

それを聞いた蓮華が、尚香にお説教を始めているけど、全然聞く気がない様子、

・・・・・本当、誰に似たのかしら? 体の成長を見る限り、私じゃないのは確かよね。

まぁなんにしろ、張昭には、気の毒だったけど、よく尚香を守ってくれたわ。

そんな事を思っていると、

 

「雪蓮、姉妹の再会を喜ぶのは良いが、今はそれくらいにして貰えると助かる」

 

冥琳が苦笑気味に、姉妹の再会に水を差しに来た。

でもまぁ、冥琳の言う事も当然よね。

そう言えば、尚香に何か言っとかないといけない事が、在った様な気がするんだけど・・・・・何だったかしら?

 

「あっ、冥琳おっひさー、それと翡翠に、穏と明命元気だった? 祭はお酒飲み過ぎてない訳ないわよね」

「小蓮様も相変わらずのようで、」

「それと、あれ?」

 

冥琳の後ろから来た面子に、尚香が、次々と自慢の笑顔を振りまいて行くけど、最期の所で、首を捻る。

 

 

 

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尚香は何とか思い出そうとしているが、何せ面識が無いのだから、それは無理と言うもの。

それでも、首を捻っているのは、彼が皆に囲まれるように、当たり前に居るからでしょうね。

 

「シャオ、紹介するわ。 彼が、噂の天の御遣いよ」

「姓を北郷、名は一刀、字と真名は無いけど、胡散臭い肩書きだけど、どうかよろしくな」

 

私の簡単な紹介を引き継ぐように、一刀が簡単に自己紹介をする。

そんな一刀を、尚香は人差し指を顎に当てながら、しばらく眺めた後、

 

「うん、結構いい男ね。 気に入ったわ。

 私は尚香、真名は小蓮って言うの。 シャオって呼んでね」

 

がばっ

 

「え゛っ」「「な゛っ」」

 

尚香はそう言うなり、一刀の腕を取り、その腕に抱きつく、

そしてその光景を見て、声をあげる翡翠と明命・・・・・・・・・・まぁ、その反応は当然よね。

 

「えーーと、尚香、出来れば手を離し・」

「うふふっ、照れちゃって、可〜愛い♪ シャオって呼んで良いのよ。

 それに柔らかくて、気持ち良いでしょう?」

「な・・・なんの事か、と言うか・」

 

・・・・・・・・はぁ〜、

まったく、一刀も尚香の行動に驚いてないで、とっとと離れないと、二人の雷が落ちるわよ。

そう思っていたら、案の定、二人の視線が一刀に突き刺さり、それに気がついた尚香が、

 

「何よ二人ともそんな目をしちゃって、・・・・・・ふ〜〜ん、そう、そう言う事」

 

そんな二人を、面白げに見た後・・・・・・・・あっ、なんか嫌な予感が、

 

「でも駄目よ。

 一刀はシャオのって決めたんだから、翡翠と明命には、他に誰かお婿さんを見つけてあげるから・」

「馬鹿っ!」

 

私は、尚香が言わんとした事に気がつき、飛び出すと共に声を上げるが遅かった。

私の静止は間に合わず、尚香は言ってしまった。

一刀にとっての禁句を、

尚香にその気が無くても、二人を物扱いするように聞こえる言葉を、

尚香は、言ってしまった。

 

尚香に何か言っておかないといけない事、これだったんだ。

私は、自分の迂闊さを呪う。

でも、今はそれを後悔している場合じゃない。

幸いと言えるのか分からないけど、勘まかせで逸早く飛び出したおかげか、

一刀が反応する前に、尚香を力ずくで一刀の腕から引き剥がし、一足飛びに一刀から尚香共々離れる事が出来た。

 

 

 

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「えっ?」

 

腕の中から、尚香のそんな、間抜けな声が聞こえるけど、今はそれ処ではない。

今は少しでも、一刀との距離を取らないと、いけ・

 

(直ぐに、止まりなさいっ!)

 

そんな、私の奥からの叫び声に、私は足を直ちに止め、振り向いた私が見たものは、

相変わらず、笑みを浮かべながら、此方を眺めている一刀の姿だった。

 

ぞくりっ

 

一刀の目を見た瞬間、全身の皮膚が泡立った。

・・・・・・やばいわね。

そう、私の勘が、忠告を発する。

今の一刀の笑顔は、茶館の時と同じ、だけどあの目は普通じゃない。

凄んでいる訳でも、感情を出している訳でもない。

無論、迫力とか鬼気迫るものは何も無い。

 

ただ、湖面のように静かな瞳で、私を見詰めているだけ。

そう、静かで、そして何処までも澄んだ、綺麗な瞳、・・・・・・・・そう綺麗過ぎる。

まるで、その瞳に全てを吸い込まれ、全てを映し出すような瞳。

 

こんな目、あの時だってしてなかったじゃないっ、・・・・・・これが一刀の本気だと言うの?

とにかく状況は最悪、皆は一刀の向こうで、私と一刀の間には何も遮るようなものは無い。

翡翠と明命が、何とか一刀を落ち着かせようと、近づこうとしているけど、下手に一刀を刺激すれば、一刀を動かすだけだし、全員で立ち向かった所で、さして足止めにはならないでしょうね。

 

まって、・・・・・・・・・・動かすだけ?

そう、一刀は、まだ動いていないわ。

あの時は直ぐに動いたと言うのに、今は、私と尚香に対峙したまま、

・・・・・・違うわね、一刀は尚香を見ていない。

あの瞳を、私にだけ向けている。

 

 

・・・・・・そう、話は聞いてくれると言うのね。

 

 

 

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「一刀、尚香の言葉は謝らせてもらうわ。 出来れば、子供の言う事として流して欲しいのだけど」

「お姉ちゃんったら、いきなり何よ。 それにシャオは子供じゃないもん。 もう立派な大人の・むぐっ!」

 

貴女は黙ってなさいっ! 貴女と私の頸が掛かってるのよっ!

心の中で、尚香に文句を言いながら、尚香の口に手を当てて強引に黙らせる。

見れば、翡翠と明命が先程より大分近づいてきたけど、まだ遠いのも事実ね。

祭も前回の二の舞いなると、歯噛みしているし、他の娘達も動けないで居る。

・・・・・・・・まぁそれが正解よね。

翡翠と明命に、間に入ってもらうのが一番なのでしょうけど、

・・・・・・・・そう言う訳にはいかないわね。

これは私が招いた事、なら私が何とかするべきね。

私は、覚悟を決め、一度大きく息を吸ってから、

 

「別に、一刀との約束を忘れた訳でも、破るつもりも無いわ。

 今回の事は、私が尚香に伝えていなかったのと、まだ約束を公にするべき時期ではなかっただけ。

 だから、この娘には罪は無いわ。 罪があるとしたら、私が・」

「・・人・・・・丈夫・・か・・」

「「えっ」」

 

言葉の途中で、一刀の聞こえない言葉が、何故か私の話を途切れさせる。

そして、聞き取れなかった一刀の言葉に、後ろの二人が反応し、二人は一刀に近づくのを止める。

・・・・・・いったい、一刀は二人に何を言ったの?

そう思いながら、一刀の一挙一動を見逃すまいと、瞬き一つせず、注意していたけど、

やがて一刀は、その目を閉じ、大きく息を吐き出すと。

 

「いい加減、手を離さないと、その娘、窒息するよ」

 

そう、何時もの顔と瞳で、そう告げてきた。

一体何を?・・・・・・・・あっ、

 

「ぷはぁーーーっ、・・・・・・きゅぅっ・・・・・」

 

一刀の言葉の意味が分かり、私は慌てて、尚香の口と共に、鼻まで押さえていた手を離すと、

相当苦しかったのか、意識は在るものの、尚香は私の腕の中で「くてっ」と脱力してしまう。

そんな、尚香と私に、一刀は無造作に近づき(・・・・・・っ、一体何時の間に)

尚香の頭に軽く手を乗せ、

 

「尚香だったね。

 翡翠と明命は、俺にとって、とても大事な恩人なんだ。 だから、そう言う言い方はしないで欲しい。

 尚香が魅力的な女性なのは分かっているよ。 だから、立場を利用せずに、一人の人間として、物事に真

 っ直ぐ当たって欲しい。 大人の女性なら、 尚香なら、きっとそれが出来るはずだよ。 ね」

 

そう、尚香の目を真っ直ぐ見て、一刀はそう言う。

子供に諭すように言うのではなく、 一刀が言ったように、一人の人間として、尚香にそう語る。

そして、最後に、あの笑顔を、

暖かな、そしてとても安らぐ笑顔を、

尚香に、そして私の目の前で、してみせる。

やがて、

 

「・・・・・・・・・・・・うん・・・・・」

 

腕の中で尚香が、そう小さく頷くのが分かる。

 

 

 

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「ん? 孫策顔赤いけど、どうしたんだ?」

「うるさいわねっ、そう言うのは、翡翠に、聞くの禁止にされたんじゃなかったの」

「ああっ、そうだった」

 

一刀が不思議そうな顔で、相変わらず馬鹿な事を聞いてくるので、

私は思わず怒鳴り返すが、一刀は、相変わらず、分かっていない様子で、頬を掻いている。

私はとりあえず、腕の中で、まだ窒息しかけた事と、一刀の笑顔に放心している尚香を、穏を呼んで、事情を説明するようにお願いする。

 

「シャオ様〜、聞こえてますか〜〜?」

「・・・・・・・・うん・・・・・・」

「あらら、駄目ですねこれは」

 

そんな穏の声が、遠くなっていくのを確認してから、

 

「一刀、ごめんなさい」

 

私は一刀に心から謝る。 兵が遠くからとはいえ見ている以上、頭は下げる事は出来ないけど、

それ以上の気持ちを籠めて、私は一刀に謝罪する。 そして、尚香を許してくれた事に感謝する。

 

「いいよ、孫策が嘘をついている訳じゃないって分かったし、事情も理解できる」

 

そう、小さく苦笑しながら、何でも無いように言ってくれる。

そして、

 

「でも、良くあそこで立ち止まったね」

「ん? 私の堪がね、そうしろって言ったのよ」

「そっか、勘か、・・・・まぁ此方も乱暴な手を使わずに済んだんだから、ちょうど良かったんだけど」

「へ?」

 

一刀は、私の疑問の声に足元を指差し、その先を追うと・・・・・・・・其処には、かすかに見える糸のようなものが、私の足に絡まっていた。・・・・・・・・一体何時の間に?

 

「まったく油断なら無いわね。 あれ以上行っていたら、糸に引っ張られて、すっ転んでいたって訳ね」

「まぁそんな所かな」

 

一刀はそう苦笑しながら、軽く手を振ると、糸は、私の足から離れ、一刀の手元にその姿を消していく

相変わらず得体の知れない一刀の能力に、私は呆れるように溜息を吐いてから、

 

「でも、こう言う事聞くのもなんだけど、やけにあっさり許したわね。

 もしかして、尚香みたいな娘が、好みだったの?」

「何でそうなるのっ!?」

「だって、私の時とは大分態度が違うから、やっぱり気になるじゃない」

「まぁ、そうかもな、あの時より余裕があるのかもしれないし、孫策で慣れただけなのかもしれないな」

 

・・・・そう、最後のはともかく、そう思えるって言う事は良い事よ。

それはきっと、一刀がこの世界の多くの人間と関わって、この世界の人間に近づいた証し、

一刀の心が強くなってきている証し、・・・・・・でも、相変わらず二人の事になると、あの調子では、まだまだなのかもしれないわね。 きっと、尚香が本気で、私が一刀との約束を違えていたら、今頃頸が飛んでいたかもしれないわね。

でも、一刀の大切なものを深く傷つけた事には違いないわ。 そして、それでも許してくれた。

 

「・・・・・・一刀、ありがとう」

「ん? なにが?」

「何でもないわよっ」

 

小さく呟くように言った言葉が、しっかり一刀に聞こえていた事に、私は気恥ずかしさも在って、ついそう答えてしまう。・・・・・・・・まったく、相変わらずよね。

 

 

 

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とにかく、姉妹の再会も、寿命が縮むような思いはしたものの、無事に終える事が出来たわね。

その原因の一人である尚香は、穏に説明を受けている最中だし、一刀は、二人に捕まってお説教を受けている、・・・・まぁ本音は、先程尚香に言った言葉について、問いただしたい所なのでしょうね。

そう言えば、もう一人来るはずだったけど、

 

「蓮華、そう言えば、もう一人いるんじゃなかったのかしら?」

「はい、今、思春と共に部隊に再編成の指示を出していますので、

 それが終わり次第・・・・・・どうやら来たようです」

 

蓮華の視線の先には、二騎の騎馬が此方に向かって駆けて来ている姿があった。

やがて、

 

「お・おお・お初目に、おお、お目に掛かります。

 こ・此度は、そ・孫策様には、此度取り上げて頂き・きまして、あ・有り難くお・思ってお・おります」

 

・・・・・まぁ緊張するのは分かるけど、少し行き過ぎじゃない?

 

「ねぇ、蓮華、この娘大丈夫なの?」

「ええ、私も最初は苦笑しましたが、直ぐに慣れます。

 それに、幾つか話して、彼女が聡明なのも分かりました」

 

ふーん、まぁ翡翠が推挙し、蓮華が気に入ったのなら、私としては文句はないけど。

・・・・・・・・とても、手に負えないと言われた娘には見えないわね。

 

「そう、名前を教えてくれるかしら」

「も・申し訳ございません・ 姓は呂、名は蒙、字は子明、真名は亞莎と言います」

「そう、今回の一揆騒ぎの案、最初の発起人は貴女なんですってね。

 少し此方の都合で、計画を変更させてもらったけど、よく実行してくれたわ。・・・・ありがとう。

 そのお礼の意味も籠めて、私も真名を貴女に預けておくわ。

 これから、蓮華をしっかり助けてあげて頂戴」

 

緊張している亞莎に、少しでも解れるように、そう告げながら微笑んであげる。

一刀程ではないけど、それなりに自信のある笑みに、彼女は

 

「は、はひっ、 この亞莎、雪蓮様の真名を預かるに、恥じぬよう努力いたします」

 

・・・・・・まだ堅いけど、少し解れたのは確か見たいね。

 

 

 

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そんな時、やっと、二人から解放された一刀が、

 

「あれ? 君は確かあの時の」

「こ・この声、そしてその輪郭はっ

 も・も・もしかして、あ、あ・あ・あ・あ・貴方様は、ご・ご・ご・無沙汰しておりま・ま・ま・ます」

 

一刀の姿と声に、亞莎は驚きの声を上げるのだけど・・・・・・・何か私の時より緊張していない?

そして、私の横にまで近づいてきた一刀に、

 

「知り合い?」

「いや、名前も知らない仲だよ。

 丹陽に居た時に、性質の悪い連中に付け狙われていた彼女に、少し力を貸しただけだよ」

「あ・あ・あ・あ・あの時は、な・な・な・名前も告げず。 も・も申し訳・あ・あ・ありませんでした」

「落ち着いて、もう少し普通に話してくれていいから、ね」

 

一刀は、私の時以上に緊張している彼女に、そう言いながら微笑みかけ、

 

「・・・・は、はひっ・・・・」

 

亞莎は、一刀に目の前で微笑まれて、やや放心した表情で、そう頷く・・・・・・まぁ、余分な堅さは無くなったのは確かね。

 

「あらためて、俺は北郷一刀、字も真名も無いけど、これからよろしく」

「せ・せ・姓は呂、名は蒙、字は子明、ま・真名は亞莎と言います。

 ほ・北郷様、こ・此方こそ、よ・よろしくお願いいたします」

「一刀でいいよ。 それに様付けされる程、立派な人間じゃないから」

「違いますっ! 一刀様は立派ですっ!

 私に、本当の私のまま生きて良いって言ってくれました。

 私に、広い視野を下さいました。

 私は、一刀様の言葉で、本当の私を見つける事が出来ました」

 

一刀の言葉に、亞莎は、先程とは別人のように、はっきりと一刀の言葉を否定し、自分の想いを熱心に語る。

・・・・・・・・一刀、いったいこの娘に何をしたのよ。

一刀自身は、そんな亞莎に

 

「そんなたいした事言ったっけ?」

 

なんて、頬をかきながら、亞莎の態度に戸惑っている。

いい加減、一刀は、自分が他人に及ぼす影響、と言うものを自覚しておくべきよね。

でないと、

 

「「亞莎(ちゃん)、ちょっとお話がありますから、来てください」」

「「ひっ!」」

 

・・・・思ったとおりじゃない。 ・・・・翡翠だけでなく、明命まで、ああなっちゃうなんて、一刀も罪作りよね。

まぁ一刀じゃなく亞莎と言うのは、一刀だとのらりくらりと、はぐらかされると思ったのかもしれないけど。

・・・・だけど亞莎、今の二人を怖がって、ぷるぷる 震えるのは分かるけど、一刀の背中に隠れるのは逆効果よ。

まぁ、私が言うのもなんだけど、仲間内で揉め事を起こしている時ではないわ。

 

「二人とも、気持ちは分かるけど、そんな事は全て終わってからにしなさい」

「「はい・・・・・」」

「「ほっ・・・・」」

 

私の言葉に、項垂れる二人と、安堵の息を吐く二人。

まぁ、こんな時でなかったら、良い酒の肴になったのだけど仕方ないわね。

 

 

 

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私は、気を引き締め、前に出る。

私は、私達に、孫呉に力を貸してくれる豪族達、兵士一人一人を確認するように、ゆっくりと見回す。

 

長かった。

此処に来るまで、どれだけ同胞の血が流れた事だろう。

どれだけの一族が、離反せざる得なかっただろう。

だけど、その想いは引き継がれ、此処に集結している。

その魂は、英霊となり、我等を加護している。

 

 

「 孫呉の民よ! 呉の同胞たちよ! 待ちに待った時は来た!

 

 栄光に満ちた呉の歴史を、 懐かしき呉の大地を! 再びこの手に取り戻すのだ!

 

 敵は揚州にあり! 雌伏の時を経た今、我等の力を見せつけようでは無いか!   」

 

 

「「「「「「 おおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーっ! 」」」」」」

 

 

「これより孫呉の大号令を発す! 呉の兵たちよ! その命を燃やし尽くし、呉のために死ね!

 

 全軍、誇りと共に前進せよ! 宿敵、袁家を打ち倒し、我等の土地を取り戻すのだ!    」

 

 

「「「「「「 うおおおおおぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーっ! 」」」」」」

 

 

母さん、見ている?

 

母さんが始めた孫呉が、

 

母さんが孫呉を作った想いが、

 

多くの人の中に生き、

 

多くの人の想いを背負って、

 

こうして、此処に集結しているわ。

 

私達を守ってなんて、甘えた事は言わない。

 

そんな事を言えば、母さんの事だから、

 

甘えるなって、足腰立たなくなるまで、扱くんでしょ?

 

でも、孫呉に関係ない子を巻き込んでいるの。

 

とても優しい子、きっと母さんも気に入ると思うわ。

 

だから、その子だけでもいいから、守ってあげて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

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あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

 第61話 〜 三姉妹揃いし時、始まりの舞に人々は集う 〜 を此処にお送りしました。

 

前回の最期に引き続き、雪蓮視点のお話になりました。

そして今回から、とうとう出てきました、小蓮と亞莎、そして、小蓮はやっちゃいましたねぇ・・・・・・さすが姉妹と言うべきか、まぁ彼女としては、そう悪意が在った訳ではなく、政略結婚が当たり前の世の中に置いて、天の御遣いと紹介された際、ごく当たり前に孫呉の姫として、天の血を孫呉に血をいれる事と、どうせ政略結婚させられるならば、少しでも気に入った相手が良いと計算した上の事だったのですが・・・・・・・結果は、ご覧のとおりです(汗 

前回の翡翠達に怒られた事や反省もあって、暴走一歩手前で冷静さを取り戻し、雪蓮を見極め直す事で、事無きを得ました。 そう考えると、一刀は、孫呉とって諸刃の剣なのでしょうね。

 

亞莎においては、今回は本当に出てきただけです。 丹陽の街で何があったのか、それは、・・・・・・・・要望が多ければ、今後、寿春編が終わってから回想シーンで入れても良いですが、大体皆様が予想した通りだと思います。 ちなみに、現在の亞莎は、一刀に恋していると言うより、崇敬の対象に近い状態です。 ・・・・が、それがどうなるかは、今後のお楽しみと言う事で(w

 

さて、とうとう、孫呉独立を宣言した雪蓮達、三倍もの敵をどう対応するのか、次回から複数の視点を通して、物語を語って行きたいと思います。 孫呉、袁家、その中心にいる一刀はどのような舞いを舞うのでしょうか、お互いが踊り、踊らされる中、最期まで舞う事が出来るのは、・・・・・・・・どうかこの一幕、最後までお付き合いの程下さい。

 

ちなみに文中、雪蓮が言っていた 張昭 は、御存知のように呉の政治家の一人で、この外史でも、小蓮の世話役になっています。 でも、残念ながら出る予定は、今の所ありません。

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

 

 

PS:気がつけば60話を超えていました。 この話が終わったら、恋&ねね√で書きたいと思っているのですが、当分先になりそうだと自覚しながらも、プロットだけは少しづつ暖まって行っています。

説明
『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

ついに、孫後独立のために、孫家の三姉妹が揃う。
末妹の孫尚香は、天の御遣いとして紹介された一刀を気に入り、早速猛攻を掛ける。
だけど、それを二人が黙っている訳がなく、
そんな二人に、孫尚香は事情を知らないまま、彼女達に・・・・・・・・・・。

拙い文ですが、面白いと思ってくれた方、一言でもコメントをいただけたら僥倖です。
※登場人物の口調が可笑しい所が在る事を御了承ください。
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コメント
七詩名様、その発想はなかったですねぇ。どちらかというと、水面に水滴が墜ちた波紋が広がってゆくイメージを想像して描きました。(うたまる)
今回の一刀はH×H、しかも某暗殺一家の方ですか!?と思わせる感じでしたねwマンガだったら真っ黒の背景の中で笑顔一刀…ゾクリ(七詩名)
SempeR様、霞の時、そして祭の時、そして明命が見た夜中の舞の練習で、その辺りは一刀の意志一つで自在です。 このとき一刀がどういうつもりだったかは、一刀しかわかりませんと言っておきます(うたまる)
天魔様、雪蓮の対応が間違っていたら、・・・・・それは一刀の苦笑が意味しています(うたまる)
musou様、一番の理由は、怒りより、二人が悲しむ事を考える余裕が出来た一刀の成長です。 二番目くらいに雪蓮への信頼ですね。 ただ、信じたいがための「あの状態」だったわけです。 真名に関しては秘密です♪(うたまる)
睦月 ひとし様、 そう言っていただけてとても嬉しく思います。 次回はちょっと袁術軍内のお話になります。(うたまる)
jackry様、 もうね、シャオだから許されるようなイベントが(おっと(うたまる)
かもくん様、はい、やっちゃいました。 元々、此のイベントは雪蓮の時にはすでに決まっていたのですが、亞莎のイベントとどう両立させるかが課題でした(うたまる)
ヒトヤ様、 突っ込んで欲しかった事に突っ込んでいただき、嬉しく思います♪ でもきっと皆さん心の中で思っていたでしょうねぇ。 間に挟まった蓮華・・・・そりゃ硬くなっちゃいますよね。『私がしっかりせねば』とか言って(うたまる)
ジョージ王様、とりあえずは、独立のための数話を楽しめていただけたらと思っています(うたまる)
suisei様、そのときは、きっと雪蓮も終わっていたでしょうね(汗(うたまる)
hokuhin様、小蓮、一刀の心の成長もありますが、外見の幼さで助かったのも確かなんですよねぇ。・・・・ちなみに、此処で最初の場面はありえないでしょうね。 雪蓮が言わない訳ありませんから(汗(うたまる)
320i様、亞莎のお話・・・・・これで二票ですね。 他の人の要望が多数あれば、折を見て書いてみます(うたまる)
leddragon様、誤字報告ありがとうございます。 素で感じ登録が間違っていました。 早速修正いたしました(うたまる)
よーぜふ様、一刀無意識、無自覚に手が早いから、本当に性質悪いですよねぇ(汗 (うたまる)
砂のお城さま、そう言って頂き、とても嬉しく思います。 でも少し緊張支えすぎたかなぁと、反省もしているんですよね。(うたまる)
ほわちゃーなマリア様、もう一刀君、翡翠の魅力にダジダジ状態です(w ちなみに、ま・だ・押し倒されていませんから(w(うたまる)
ついに独立へ向けての決戦ですね。つか、雪蓮が退きすぎてたら、糸で足が切れてたんじゃ…。(SempeR)
すっ転ぶ・・・すっ転ぶ?・・・「あの状態」の一刀がやる攻撃で・・・?(天魔)
更新お疲れ様です。シャオが禁句を言った時どうなるかと思いましたが一刀が自生して事なきを得てよかったです。だんだんと雪蓮を信用してきているということでしょうか?そろそろ真名で呼ぶ日も近いのかな?次回からいよいよ袁術軍との戦いが始まりますね。うたまるさんがどのように袁術軍との戦いを書いていくかとても楽しみにしています。次回も期待しています。(musou)
今回も楽しく読ませてもらいました。次回も楽しみにしています。(睦月 ひとし)
シャオややっちゃたな ww(かもくん)
孫策・・・シャオは誰に似たんだろうと言っていたがいきなり地雷を踏んだ所を見るにやっぱ孫策に似たんだと思うよ(ヒトヤ)
おぅ・・・・小蓮さんそれ禁句。そして陥落。何と言う事でしょうwwwww はてさて、やっと孫呉メンバー勢ぞろいですねぇ・・・・独立、そしてその後が非常に楽しみですね。次の更新も心待ちにしてます!!(峠崎丈二)
この話で一刀の成長が伺えますね。 しかし、シャオは雪蓮がいなかったら終わってたな・・・   にしても亜莎かわいいですねww(suisei)
なんだこの可愛い亞莎・・・  そしてシャオ、君も禁句を言っちゃったのはしょうがないけど、雪蓮によく感謝するように(もし最初の禁句がここだったらいもごろ呉は全滅かも・・・)(hokuhin)
いつも楽しく拝見させて頂いています。1点気になりましたので指摘を 『アーシェ』の亞が亜になってるのは仕様でしょうか?確認して見てください。(leddragon)
シャオ、地雷踏み、そしてシャオ、即陥落。 手が早いなぁほんとにw  ぷるぷるふるえる小動物系亞莎はかわいいですw さて、どのようにOHANASHIされるのでしょうか?ww(よーぜふ)
ついに悪戯を行う翡翠に、一刀君は心臓バクバク。なるほど、その時の一刀はこんな事を思っていたのか・・・さて、次はいよいよ押し倒されるところですよね。その時はウェと思うようなことになるんでしょうねw(ほわちゃーなマリア)
紫電様、小蓮が一刀に真名で呼んで貰える日が来るのか、 小蓮の復活劇をお楽しみ下さい・・・・あればですが(ぉw(うたまる)
GLIDE様、はいこれで主要な孫呉の人物は出し終えました。太史慈とか他の呉の重臣を出す予定は今の所ありませんので、じっくりと次の更新をお待ち下さい(うたまる)
血染めの黒猫様、以前の翡翠と祭の会話で、そう想像されていた方は結構居られると思います。 こんな状態で、美羽達を助けたら、二人はすごい事になりそうですよね・・・・(汗(うたまる)
samidare様、そのように言っていただくとは嬉しい限り、感謝感激です。 実際何話まで行くかは、本当に不明と言った所です。下手すると此方より低速度更新の、もう一つの方が早く終わるかもしれません(汗(うたまる)
コレで一通り呉軍はでたか。さてこれからどうなるかなw(GLIDE)
nanashi様、はい、間違いなく二人の気苦労が増えました(w ですが、あとがきに書いたように、現時点では亜莎の想いは崇敬に近いものです。 その後どうなるかは、今は秘密です♪(うたまる)
eni_meel様、一刀が強くなっているのは確かです。 ですが強さとは必ず良いものとは限りません。 なぜかは、今後の展開をお待ち下さい(うたまる)
更新お疲れ様です。亜莎に一刀が会っていたというのは、なんとなく予想してましたがもう陥落さしてましたか、これから修羅場がどんどんありそうですね。(血染めの黒猫)
小蓮やっちゃいましたねwwそれと亞莎の回想シーン欲しいですね。美羽と七乃が気になります!!絶・対・救・済!!   それと、前にも言ったけどやっぱり100話いくんでしょうか?まあそれ以上でも全然構いませんし、むしろずっと続いていって欲しいです。今、私の中では一番好きな作品ですから。(samidare)
はじめまして。当然のように亞莎も陥落させていたのか!翡翠と明命の苦労がまた増えた…(nanashi)
地雷を踏んだ小蓮だったわけですが、一刀の成長が垣間見えました。しかし、修羅場要素が増えたのは・・・・・。さて決戦のときですね。続きが気になります。(eni_meel)
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