『舞い踊る季節の中で』 第65話
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真・恋姫無双 二次創作小説 明命√

『 舞い踊る季節の中で 』 -寿春城編-

   第65話 〜 籠の鳥は、何を想い舞う 〜

 

 

(はじめに)

 キャラ崩壊や、セリフ間違いや、設定の違い、誤字脱字があると思いますが、温かい目で読んで下さると助

 かります。

 この話の一刀はチート性能です。 オリキャラがあります。 どうぞよろしくお願いします。

 

北郷一刀:

     姓 :北郷    名 :一刀   字 :なし    真名:なし(敢えて言うなら"一刀")

     武器:鉄扇(二つの鉄扇には、それぞれ"虚空"、"無風"と書かれている) & 普通の扇

       :鋼線(特殊繊維製)と対刃手袋

     得意:家事全般、舞踊(裏舞踊含む)、意匠を凝らした服の制作、天使の微笑み(本人は無自覚)

        気配り(乙女心以外)、超鈍感(乙女心に対してのみ)

        神の手のマッサージ(若い女性には危険です)、メイクアップアーティスト並みの化粧技術

  (今後順次公開)

 

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七乃視点:

 

 

紀霊さん達が、やっと出撃したと聞いたのは、一刻程前、

きっと紀霊さんの事ですから、

 

『 儂の有難さを、今回を機に国中に、そして袁家の老人に知らしめてくれるわ 』

 

なんて、自意識過剰な勘違いをされているんでしょうね。

そんな事で、あの人達が、感謝する訳ないと言うのに、おめでたい人です。

きっとある意味、幸せな人ですよねぇ〜。

その間、私はあの人達の追及と嫌味を右から左へと、はいはいと頷きながら、我慢していたと言うのに、

えーい、この、おちゃめさん 、孫策さんに サクッ とやられちゃってほしいです。

 

でも、やっと紀霊さんが出撃してくれたおかげで、戦やその後始末の事で考える事があるからと、

あの人達を何とか追い返す事が出来ました。

呑気なあの人達は、勝つ事に少しも疑いを持っていません。

確かに、平野においての戦で、一番ものを言うのは兵数です。

多少の策など、圧倒的な兵力の差には、大した意味は無くなります。

ですが、今回孫策さんの軍と、私達の軍の兵数差は約三倍です。

五倍とか言うならともかく、一定の条件が揃えば覆らない数ではありません。

 

見せ札とは言え、一揆を起こした十五万の農民達に遠くから見つめられる。

……これは、現場に立つ兵士達にとって、かなりの精神的脅迫を受けるはずです。

それに、見ているだけとは限りませんからねぇ。

あの人達には、それが分からないようです。

まぁ無理もありません。

あの人達にとって、農民さんは、自分を潤すための奴隷としか、思っていないでしょうね。

 

それに、我が軍の兵士と、絶えず最前線で鍛えてきた孫策さんの所の兵士を、一緒に考えるのは間違いです。

我が軍は、税金と餓えから逃れるために兵士になった者が多く、孫策さんの所とはその志から違います。

それに、あの人達の贅沢のため、調練などの金の掛る事は、最低限に抑えられています。

これが二倍の兵数差くらいだったら、真正面からでも負けてしまうでしょうね。

だから、客将に身を落とした孫策さんに対して、あの人達もそれを懸念していました。

 

 

 

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ですから数千を残して、江東の各地に、睨みを利かせるという名目で、旧臣達を散り散りにしました。

無暗に取り上げれば、取り上げた兵が反逆しても大変ですし、少数に分けて利用した方が良いと、あの人達を納得させました。

むろん、そんな事で諦める孫策さん達ではありません。

あの人達の監視を掻い潜って、力をため機会を待ちます。

幸いな事に、跋扈する野盗、そして黄巾の騒ぎと反董卓連合、

あの人達を納得させるだけの好機を得て、孫策さん達に少しづつ力を取り戻させる事が出来ました。

 

そこへ、曹操からの張遼を引き取りたいと言う申し出、

優秀な人材を、身分問わず欲しがると言う曹操なら、そう言ってくると思い。

あの人達の目を逸らさせるための狙いもあり、張遼さんを引き取りました。

あの取引内容には、さすがに驚きましたが、私は逆に好機と思いました。

 

まだ、一大勢力とは言えない曹操さんの所にとって、その兵数は明らかに痛手。

なら、送り込んでくるのは、兵とは名ばかりの人達、

美羽様は、当初教えておいた台詞の中で、あの人達をより油断させるための物を選択しました。

ここまで数が多いとは思わなかったため、張遼さんを残すという選択は、時間が経てば孫策さん達にとって不利に働きますが、直ぐ動くならば、何の調練も受けていない二万と言う兵士は、こちらにとって厄介以外の何者でもありません。

 

そして、孫策さんがこの機会を逃す訳がありません。

なら私達は、その後押しをしてあげるだけです。

幸い、そのための下地は出来ていますし、

口実は、あの人達の更なる多額の請求があります。

もう、時間がありませんし、私達にとってもこれが最後の機会でしょう。

私と美羽様は、全てを掛ける事にしました。

 

そして、思惑は今の所上手くいっています。

孫策さんは、狙い通り軍を上げ蜂起し、

そしてあの人達は、三倍という数に、安心しきっています。

紀霊さん、張遼さん、二人とも化け物じみた武をお持ちですが、

それは、孫策さん達も同じです。

三倍と言う数には、かなりの苦戦はするでしょうが、

足手纏いもいますし、優秀な将が二人だけと言う我が軍では、

孫策さん達の軍相手では、結果は見えています。

数日で、決着はつくでしょう。

その時こそ、私達の悲願を達成させる時です。

 

……長かった。。

 

その感慨深い想いは、目を瞑れば、

私に、ここまでの道のりを、脳裏に浮かび上がらせてくれます。

 

 

 

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十●年前

 

 

悲鳴、

 

怒声、

 

嘆きと、絶望、

 

燃え盛る火の中、

 

父と母のまだ温もりの残る亡骸は、小さな私の体を、この家を襲った盗賊から隠していました。

でも、そんな両親の最後の想いも空しく、

息ある者をを、彼らの痕跡ごと消し去ろうと、

盗賊達は、屋敷に火をかけてゆきました。

私は小さいながらも、もう自分が助からない事を理解しました。

なら、このまま両親に抱かれて死ぬのも悪くないと、目を瞑ります。

 

目を瞑った私は、周りの音が、より鮮明に聞こえてきます。

火が燃え盛る音、屋敷が軋む音、

そして彼等が、この部屋から立ち去る前まで聞こえていた、怒声と悲鳴が聞こえます。

何やら固い金属が打ち合うような音が聞こえます。

でも、不思議です。

家の者達は、殆ど彼等に殺されてしまいました。

なら、今聞こえる音は?

……まだ、死にきれずに、その魂が、最後の瞬間を繰り返しているのかもしれません。

 

どがっ!

ばきっ!

 

激しい音が、この部屋に響きます。

とうとう私に、両親の迎えが来たのかもしれません。

そう思いました。

だけど、聞こえたのは、

 

「くっ、手遅れだったか……ん?」

 

そんな声と共に、両親の重みが無くなり、目の前が明るくなります。

そこには、火の粉の舞う屋敷の中、輝く黄金の髪をなびかせながら、

まるでお伽話に出てきそうな輝きを持った女性が、

優しい笑みを浮かべ、

 

「せめて我が子だけでもと言う訳か……、

 その想い、妾がしかと引き継ごう。 安心して逝くがよい」

 

そう、私の両親に言うと、私をその腕に抱きあげます。

嫌っ。 この人は私を両親から離そうとしている。

両親を、私から取り上げようとしている。

そう思い、必死にこの人から逃げようとしましたが、

私の体は幼く、その力は小さくて、何の役にも立ちません。

そんな私の抵抗など、この女性はお構いなしに、私を両親から引き剥がし、

この燃え盛る部屋から、走り去ります。

 

がっ

 

「う゛っ」

 

途中そんな音と、声が聞こえましたが、泣きわめく私には、それが何なのか、

その時は分かりませんでした。

 

 

 

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時は流れ、私はあの時の女性の下で暮らしていました。

女性は性を袁、名を逢、真名を美音(みおん)、

両親の親友と言うか、両親の主であられる方でした。

普段は隠されていますが、美音様の左腕には、

あの時落ちてきた火の柱から、私を守るために出来た火傷が、醜く残っています。

私と美音様を繋ぐ絆とも言えるものです。

 

美音様は、あの時亡き両親と約束した通り、私を自分の子供のように育ててくれました。

自分の子供となんら、変わりない優しさで、抱きしめてくれました。

多くを教え、それが出来れば褒め、悪さをすれば、叱ってくれる。

そんな本当に両親と変わらない態度で接してくれました。

もっとも、たいてい怒られる時は、空羽(くう)様、

美音様の実娘である、袁基様の悪戯に巻き込まれた場合でしたけどね。

 

空羽様とは、齢が同じ事もあって、すぐに打ち解けあい。

本当の姉妹のように育ちました。

そのうち、まだ赤子だった美羽様も、よちよち歩きを始め、

私はこの恩を、空羽様と美羽様をお助けして行く事で帰して行こうと誓いました。

そのために、必死に学びました。

多くのモノを身に付けようと努力しました。

 

ですが、私に武の才はなく、褒められたのは、気配を読む力くらいなものでした。

学の方も、秀でたものはありませんでしたが、それでも筋は悪くないと言われたので、

自分の身に付けれるものを、努力し続けました。

 

そんな私を、美音様と空羽様は、時折外に連れ出し、

私を困らせながらも、私に笑顔をくれました。

そんな二人に釣られる様に、いつの間にか私も笑顔になっていました。

それを見た二人は、

 

「勉強に励むのも構わぬが、せっかくじゃ、楽しまなければ損じゃぞ」

「七乃は、笑っていた方が絶対に合うと思うんだけどな」

 

そう、私に笑顔でいる事を進めます。

美音様など、

 

「無理でもにこにこ笑っとれ、お前は、それが一番の才能じゃ」

 

等と、笑いながら言うんですよ。

まったく酷い事を言います。

でも、今思えば、それが美音様のこの地に住む人達への、心からの想いだったのでしょう。

 

 

 

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更に時は流れ、

成人の儀を済ませた頃には、地道に努力し続けてきた事が、それなりに力になりはじめ、

美音様の力になれるようになり、全てが上手くいっていました。

 

『 民に苦しくても、笑顔を作れるだけの世の中を 』

 

それが、美音様の願いでした。

そして、その願いと努力が実り、街には少しづつ笑顔が増えて行きました。

美羽様も大きくなり、拙いながらも、その歌声で、偶の休みの美音様の心と体を癒やします。

興が乗れば、四人で合奏を楽しむ事もありました。

美音様が仕事を放り出して、四人で祭りに出かける事もありました。

そんな幸せな時が、ずっと続くと思っていました。

 

ですが、ある時を境に美音様は体を崩され、回復する事無く、その生涯を閉ざしてしまわれました。

過労で体が弱った所に、流行病が襲ったのだろうと言う事でしたが、私にとって、そんな理由より、恩を返すべき相手が突然いなくなってしまった事に、…二度目の親の死に、私は悲しみ、無気力に日々を過ごしていました。……ですが、そんな私を叱り、そして励ましてくれたのが、空羽様と美羽様の御二人のお嬢様でした。

母様の想いを無駄にする気なのかと、

姉様を助けて欲しいと、

あの御二方らしい、呆れるような、そして賑やかなやり方で、

部屋に閉じ籠る私を、引っ張り出してくれました。

私は本当にこの人達に、助けられてばかりだと思い知らされました。

 

美音様、お嬢様方はとても優しく、そして強い方です。

それに比べ私は、弱いです。

ですが、そんな弱い自分とは、今日で別れを告げます。

美音様は、言っていましたね。

苦しくても笑える強さを身に付けなさいと、

笑顔が周りの者を力付けると、

笑顔が周りの者を安心させると、

なら私は、そうして見せます。

その上で、御二方をお守りする力をつけてみせます。

この掛け替えのない家族を守るために、

 

 

 

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ですが、そんな私達の想いとは逆に、民からは笑顔が少しづつ消えて行きます。

不作続きなのは分かりますが、それだけではないようです。

私と空羽様は、理由を捜しているのですが、上手くいきません。

それに、妙な気配も気のせいかと思うほど多く感じます。

 

幾つかの方策を考えるのですが、どれも上手く言っていないようです。

方策が現状とあっていない?

そう思い至り、私と空羽様は、視察を小まめに繰り返す事にしました。

そして、いくつかの村や荘園を見回った結果、私達の行ったはずの方策が、

ほとんど行われていない事に気が付きました。

やはり、方策に問題があるのかも?

それとも何か他に理由が?

 

そう思っていた時でした。

空羽様が荘園へ視察した帰り道、崖崩れに巻き込まれ、亡くなられました。

その最後の姿は、とても美羽様にお見せできるものではなく、美羽様は姉である空羽様の最期の顔を見る事無く、見送る事になってしまいました。

 

私は、片腕をもがれた様な失意に落とされながらも、

美音様と空羽様の意志を無駄にしないためにも、まだ幼い美羽様の代わりに執務に励みました。

他の高官の方も、特に異議を出す事は無く、私の良い様にさせてくれました。

そして、空羽様が亡くなられて二か月が経った頃でしょう。

美羽様が、泣きながら執務室に駆け込まれてきました。

そして、

 

「えぐっ・七乃…七乃…うぐっ…、こっち来てたもれ…」

 

私の袖を引っ張りながら、庭の真ん中まで連れ出します。

涙を堪えるものの、堪えきれず、

それでも、なんとか我慢しようと、頑張りながら、

小さな手で、私を引っ張っていきます。

 

そして、聞かされました。

美音様と空羽様の死が、作為的であった事を、 …それが、御二人の民を想う政策が、己の私腹を肥やす邪魔になる袁家の老人と呼ばれる、高官達の仕業である事を、

そして、私達の政策が上手くいかない理由も、庭の真ん中に連れ出された理由も、

美羽様は、酔っぱらって、面白げに口を滑らせた高官の話を立ち聞きした事を、

泣いてしまえば大声が出てしまうから、涙を必死に堪え、

悔しげに、小さな嗚咽交じりに、私に話して聞かせてくれました。

 

私は信じられない思いで、目を瞑り考えます。

あの人の好い笑顔を浮かべる人達が、本当にそんな事をするのか?

美羽様の代わりに、政を任せてくれたあの人達が、なぜそう言う事を?

私腹を肥やすならば、自ら政をした方が、私腹を肥やしやすいはずです。

ですが、もしあの人達が、美羽様の言うとおりの方であったならば、

方策が上手くいかない理由も、

民から笑顔が消えた理由も、

頻繁に感じる気配も、

そしてお二人の突然の死も、

全て辻褄が合います。

 

なら、調べる必要があります。

美羽様の言葉を疑う訳ではありませんが、

もしその通りだとしたら、迂闊に動く訳には行かないからです。

だから私は、まだ涙を浮かべる美羽様の顔をお拭きしながら、

 

「美羽様、この事は、この七乃に暫く任せてください。

 美羽様は、くれぐれも、知った事をあの人達や、他の者に悟られないようにしてください」

「ぐすっ、わ・分かったのじゃ」

 

 

美羽様に、

遺された最後の家族に、

そうお願いします。

 

 

 

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それから、私は半年かけて調べ上げました。

此処まで時間がかかったのは、時折感じた気配の正体に気が付いたからです。

あの人達の事を調べるのには、何も気が付いていない振りをしていた方が、邪魔をされないと思ったからです。

そして、美羽様の言う事が本当である事が分かりました。

それどころか、この袁家がすでに彼等の手で支配されていた事を、

私に政を任せていた理由も、自分達が楽をするためと言う、呆れるばかりの下らない理由でした。

更に厄介なのが、味方となりえる人間が誰もいないと言う事でした。

私と美羽様は、袁家と言う鳥籠に飼われた哀れな鳥だと言う事を……、

 

許せません。

 

己の私腹を肥やしたいがため、

己の欲望を満たしたいがために、

民から笑みを奪い、

美音様を、

空羽様を、

私達の家族を奪った、あの人達が許せませんでした。

そして、その想いは美羽様も同じでした。

何としても、この人達に復讐する。

それが遺された私達二人の生き甲斐になりました。

 

 

 

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ですが、籠の中の鳥である私達には、何もできません。

なら、恭順を示して見せ、あの人達が油断して、鳥を籠の外で遊ばせるようにするまでです。

そのためには、私はまず美羽様に、仮面を被る事を徹底させました。

無邪気で、我儘なれど、暗愚で操りやすい君主の仮面を、

 

そして、私は持てる能力を磨きつつ、あの人達に近づきます。

あの人達が望むような、都合の良い女になって見せます。

そして、空羽様が亡くなって一年、私も仕事を全て覚えた頃だろうと見計らったように、

あの人達は、その本性を出してきました。

 

私に政を任せていたのは、楽をするためだけではなく、

私に自分達の私腹を肥やすための金を捻出させる事、

自分達の都合の良いように、政を持って行かせるため、

そして、何か大きな問題があれば、私と美羽様に全てを押し付けるためでした。

私を育てる事で、何もしなくても、自分達の思い通りに行く様にするためでした。

 

その醜悪な考えには、反吐が出そうでしたが、

今は、それに従うしかありません。

あの人達は、いざとなったら、美羽様すら廃し、

正当な血筋は無くても遠縁の者を擁立するつもりでしょう。

それが何を意味するのかを、彼等は深く考えずに、

己の都合の良い者と言う条件で、選定するに違いありません。

 

なら、私はあの人達の思惑に乗って見せます。

あの人達の言う通り都合の良い女に、

美羽様のためなら、何でもする馬鹿な女を演じて見せます。

(まぁ実際、美羽様のためなら、何でもしますが)

そして、機会を伺い、攻勢に出て見せます。

 

 

 

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そうして数年が経ちました。

ですが、思い知ったのは、あの人達の愚劣さと卑怯さでした。

袁家と言う名の巨象の前に、私達二人では何も出来ない事でした。

それでも、死に物狂いで磨いた気配を読む能力は、

せめて少しでも民を苦しめまいと、寝る間も惜しんで築き上げた政治能力は、

あの人達の油断と信頼を得る事は出来ました。

ただ、意外だったのが、あれだけ欲望に忠実なあの人達が、私を手籠めにしようとしなかった事です。

どうやら、その事が原因で、今の快適な生活が壊れる事の方を恐れたようです。

正直、あの人達の信頼を得るためなら、肌を重ねる事すら覚悟していましたが、

相手にその気がないのなら態々、こちらから誘うまでもないでしょう。

それこそ何かあるのでは、と疑われる原因になりかねません。

 

自分達の力の無さに絶望しながらも、なんとかならないかと模索する日々を過ごす中、

いつかあの人達の指示で、兵糧を止めた孫堅さんが、あの時受けた傷が元で、力を失い。

挙句に豪雨の中、崖崩れに巻き込まれて亡くなられ、その跡を継いだ孫策さんが、広げた領土と豪族の離反から、追い詰められている事を知りました。

そこで、私達は孫策さんを利用する事を思いつきました。

 

目的をあの人達への復讐ではなく、

あの人達のような愚劣な人達を生んだ袁家を、

もうどうしようもなく腐ってしまった、袁家そのものを滅ぼす事を決意しました。

むろん、その中には、私と美羽様も含まれています。

ここ数年で、心を擦り減らしていた私と美羽様は、そこまで、思いつめるようになっていました。

 

美音様と空羽様が今の私達を見たら、きっと怒り嘆かれるでしょう。

ですが、今のまま生きていても、お二人が望んだような世の中を作る事は出来ません。

そして、孫堅さんは、私達が望んだような国を目指していましたし、

きっとその娘さんの孫策さんなら、同じ志でしょう。

なら、私達は彼女達にその志を継いで貰います。

私と美羽様は、袁家の、この地に澱む穢れた人達を全てを引き連れて、

地獄に落ちる事で、民に笑顔を取り戻させるための礎になります。

それが力無い私達が出来る、せめてもの方法です。

 

ただ気になるのが、美羽様です。

あの泣いて私の部屋に飛び込んできた日より、

美羽様の体は成長されておりません。

心も、仮面を被り続けてきた影響か、

もうどちらが自分なのか曖昧になって来ているようです。

あと一年もすれば、美羽様は成人の儀を迎えられますが、

とても、そうは見えませんし、月のモノも今だ来られていません。

きっと、美羽様にとって、御二方の死の真相が、それだけ衝撃だったのでしょう。

 

なら、ある意味、これは幸いかもしれません。

あと何年掛るか分かりませんが、これを理由に、あの方達の御子息との婚儀を伸ばせるからです。

婚儀を澄ませば、私と美羽様は引き離され、事が運びにくくなってしまいますし、最悪機会を永久に失ってしまう可能性が高いからです。

それに、上手くいけば私も美羽様も、穢れずに地獄に旅立つ事が出来ます。

もう私達の手は、直接ではありませんが、血に汚れています。

でも、願えるのならば、この身体が穢れる事無く、あの世に旅立ちたいですし、

私も美羽様も、共に地獄に旅立つことを決めた今、今更あの人達等に穢されたくはありません。

 

 

 

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孫策さん、

 

馬鹿な願いで、

 

身勝手な事だとは分かっています。

 

でも、

 

私達には、今の状態を何とかする力は無く、

 

残された時間はあと僅かです。

 

機会は何とかして作ります。

 

だから、早く私達を殺しに来てください。

 

あの人達諸共、袁家と言う巨大な醜悪な存在を、

 

この世から消し去ってください。

 

 

 

代価は、貴女達の危機を救う事と、力を取り戻させる事。

 

そして、私達の命です。

 

足りない事は承知の上です。

 

それでも、それが私達に払える全てです。

 

そしてそれで、この地に住まう人達に、

 

笑顔を取り戻してください。

 

苦しくても、なんとか笑っていられるような、

 

生きる希望のある国に、

 

 

 

それが、私と美羽様の、私達家族の、最後の願いです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく

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あとがき みたいなもの

 

 

こんにちは、うたまるです。

 第65話 〜 籠の鳥は、何を想い舞う 〜  を此処にお送りしました。

 

世の中、なかなか儘成らないものです。

今回の話は、当初もう少し先まで書く予定でしたが、

七乃達の過去だけで、話しを区切った方が、キリが良いので、二話に分ける事にしました。

 

さて、今回のお話で、彼女達の願いが明らかにされました。

二人の願いに関しては、きっと多くの人が予想されていた事でしょう。

ですが、こうして文章でその想いを表わし、そして、そう言う二人の想いを分かったうえで、

前回の最期の台詞を読み返すと、一味違った意味に見えると思います。

 

さて、次回はいよいよ、この戦に本当の意味で決着がつきます。

読者の皆様には、気になる事が、まだまだ残っておられるでしょうが、次回の更新をお待ちください。

 

では、頑張って書きますので、どうか最期までお付き合いの程、お願いいたします。

説明
『真・恋姫無双』明命√の二次創作のSSです。

紀霊の出撃にの報に、やっと袁家の老人達から解放された七乃、
一人考える時間が出来た七乃は、悲願の時が近い事を実感し、
その想いを過去へと向ける。

拙い文ですが、面白いと思ってくれた方、一言でもコメントをいただけたら僥倖です。
※登場人物の口調が可笑しい所が在る事を御了承ください。
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コメント
この外史の袁家は(と言うより袁紹と袁術)他とは大分違う感じですね。袁紹もどうやら無能ではないようですし(華琳も認めてますし)、袁術達もいい娘達ばかり……しかしそれでも、他の高官達はどうしようもなく腐敗しているんですね……どうしようもない膿とは、ここまで非情ですか……(フェイト)
深緑様、二人の疲れ乾ききった心が癒やされれ場とは思います。 そして、原作と大分離れてしまった二人の設定ですが、快く受け入れて下さり嬉しく思います。(うたまる)
どこにでも勘違いし澱み濁った輩はいるってことですか。今どこで何をしてるかきになりますね。 七乃や美羽達と孫家の目指す所は同じはずが、一部の歪みによってこうも交わったかもしれない道が変えられてしまうのはつらいですね。しかし、死を望む程疲れ・絶望してしまったとしても、この二人には新しい道を見つけ歩んでいって欲しいですね・・・。(深緑)
アボリア様、自分としては、そんなにシリアスに書いていくつもりはないのですが、書いていくうちにこうなってしまいました(w(うたまる)
リアルG様、一刀の舞は既に元ネタからは大きくかけ離れていますが、何せ古い漫画ですから……私も漫喫で知ったくらいです(汗 リアル世代は此処の住人に居るのかなぁ…(うたまる)
ルルーシュ様、私のような作品を待っていただけるとは嬉しい限りです(うたまる)
大変興味深く拝見させていただきました シリアスな展開で物凄く続きが気になります 今後も執筆頑張ってください(アボリア)
ここまで一気に読んでしまいました ベースは千○流裏舞踊なのかな あまりに懐かしくて楽しくなってしまいました(リアルG)
う〜、続きが早く見たい!!(ルルーシュ)
sin様、何時も読んでいただきありがとうございます。 一刀がこれからどう成長してゆくのか、そして一刀に触れた人達がどう変ってゆくのか、これからも温かい目で見守りながら応援してくだされば嬉しく思います。(うたまる)
いつも楽しく読ませていただいています。一刀の成長が楽しみな作品です。(sin)
リョウ流様、袁家の老人達へのお怒りはごもっともだと思いますが、あんな連中のために、一刀の手を直接汚させて、一刀の心をこれ以上傷つける事を明命や翡翠はもちろん、雪蓮達も望まないと思います。 彼らには彼らに相応しい末路がきっと待っていると思いますので、それまで御怒りをお鎮め下さい。(うたまる)
musou様、一刀は全てを知っているわけでは在りません。 ですが、美羽の日記に書かれた事、そして、二人の行ってきた政策の記録から、確信を持って予測したに過ぎません。 そして、自分のやれる事を全てやって、その権利を持つ孫策に判断を委ねたのです。その一刀の想いを組んだ上で孫策が出す結論を信じて・・・・・・その結果は次回明らかにされます(うたまる)
jackry様、美羽と七乃の生い立ちと境遇に涙して下さり作者としても嬉しく思います。 そんな二人がどんな最期を迎えるのか、それとも願いが叶わず生き残ってしまうのか、どうか見守りください(うたまる)
睦月 ひとし様、美羽と七乃の想いが叶うのか、それとも叶わないのか、どのような運命が彼女達に待ち構えるにしろ、温かい目で彼女達の決断を見守りください(うたまる)
suisei様、二人の覚悟、その思いに孫策はどう答えるのか、どのような結果が待つにしろ、温かな目で見守ってくださればと思います(うたまる)
紫電 様、二人の過去と思いに共感していただき嬉しく思います。 そして、そんな思いを何とかしたいと一刀は動いたのですが、いったいどうなってゆくのか・・・・次回をお待ち下さい(うたまる)
はりまえ様、もうそんな手しか思いつかないほど、彼女達は追い詰められ、心を磨耗させていったのだと思います。 この先どうなるのか、次回をお待ち下さい(うたまる)
弌式様、はい、あの二人にも、孫策達に負けないくらい辛い過去と想いがあるのだと言う話にしてみました。 そんな彼女達がどうなってゆくのか見守りください(うたまる)
ジョージ様、あの人達へのお怒りはごもっともですが、きっと天は彼等をそれ相応に罰してくれるはずです(うたまる)
更新お疲れ様です。二人にこんな過去があったなんて驚きました!一刀はこんな二人の気持ちを感じ取っていたんですね。こんなに民のことを思っている二人がこのまま雪蓮に斬られてしまうのか?次回も楽しみにしています。(musou)
なるほど、不審に感じた理由がこれでとけました。現時点では七乃の策のままに動いているというわけですね。さて、どのように決着がつくか、次回を楽しみにしています。(睦月 ひとし)
そんな過去があったなんてな・・・  個人的には助かってほしいが、ここまで覚悟を決めているならもはや何も言うまい・・・  次回も楽しみにしています^^(suisei)
過去はかえられないから精算という方法しかなかったんだろうな。(黄昏☆ハリマエ)
過去に色々あったんだ・・・と思える様な話でしたねー(弌式)
ただただ、怒髪天。殲滅あるのみ。さぁ・・・・ショータイムだ。ケケケケケケケケケケケケケ♪(峠崎丈二)
samidare様、老人達の運命は、まぁここで助けて今まで通りの生活をさせたら、かなり顰蹙を食うでしょうねぇ。その気もありませんが(w 二人の運命を今握っているのはは、一刀でも、作者でもありません、彼女ならば、きっとやってくれるはずです。彼女を信じて、次回の更新をお待ちください(うたまる)
320i様、外史ですので、かなりオリジナル設定を持ち込んでおりますが、なるべく恋姫の世界観は壊したくないとも思っています。 その辺りの試みが上手く言っているかどうかはわかりませんが、温かい目で、見守りください(うたまる)
nanashi様、その辺りも含め次回の更新をお待ちください。 きっと、彼女ならやってくれます(うたまる)
hokuhin様、さすが、hokuhin様、よい所に気が付かれましたねぇ。 これはこれで、あの老人達らしいことになっていますので、次回の更新をお待ちください(うたまる)
血染めの黒猫様、今まで辛い日々を過ごしてきたからこそ、二人には幸せになってほしいとは思います。 ですがそんな日が来るのか、・・・・・次回をお待ちください(うたまる)
よーぜふ様、きっと、よーぜふ様と同じ色かと思います(ぉ 七乃も美羽も、読者の皆様の温かい声援のおかげで安らかな眠りを(マテ ちなみに、その前に肝打ちされた私への損害賠償は?(w とりあえずあの一打で倒れなかったようなので、次の話をフィニッシュブローにして、よーぜふ様をマットに沈めて見せましょう(ぉ(うたまる)
砂のお城様、孫策達と美羽達、共に求めるものは同じでありながら、境遇が違うためにこうなってしまった。 そして、文中でも述べましたが、七乃達の家族はそんな事は望んではいないでしょう。それでもこの道を選ばなければいけなかった二人の苦悩、これがこの話の一番言いたいことなのかもしれません(うたまる)
村主様、おっしゃる通り、この外史での美羽たちの設定は、あの底の読めない七乃と美羽に、その理由をつけたらと言う事から始まりました。 勝手な妄想譚ですが、楽しまれてくださったのならばうれしく思います(うたまる)
eni_meel様、原作でも忠義の士だと思いますよー。主をからかって遊んではいますが(w(うたまる)
GLIDE様、袁家全てが悪いと言う訳ではありません、ですが、一部の良識あるものだけでは、どうしようもないところまで来ているのは確かですね。 少なくとも袁術に縁のある者達はそうでしょうね。(うたまる)
弐異吐様、そういう意味では、恋姫ヒロインの殆どが波乱万丈の人生送っていると思います(うたまる)
美羽と七乃を助けてください!老人のクソどもは地獄送りだ!(samidare)
死にたがりをヤっても喜ばせるだけだからなんとかして生存ルートに送って欲しい 命乞いする事確実のゴミ供は全員地獄送りにしてしまえ(nanashi)
七乃達の願いが自分達を含む、袁家の滅亡だったとは・・・ここで雪蓮に殺されても半分策は成立しますが、まだ老人達を発見してないのが気にかかります。(hokuhin)
美羽と七乃の願いが袁家を潰すことというのは驚きました。二人は死ぬ覚悟をしていますが、できれば生きて幸せになって欲しいです。(血染めの黒猫)
おまえらの血は何色だー! といいたくなりました、はい。 七乃お疲れ様…もういい意味で楽になっていいと思います。 とりあえずうたまるさま様に殴られた損害賠償ということで、早く続きお願いします。(よーぜふ)
いやはやそこまで深い思慮があったとは・・・ 七乃さんは底の読めない人というのはゲーム本編でもちらほらと出てましたが、うたまるさんの人物描写には驚かされるばかりです そして次回いよいよ決着が・・・楽しみです(村主7)
これを見ると七乃はまさしく忠義の士ですね。救済があることを祈るばかりです。(eni_meel)
袁家腐ってんなぁw次の視点はだれかな?ww(GLIDE)
七乃の人生波乱だな(弐異吐)
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