真・恋姫†無双  星と共に 第25章
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真・恋姫†無双  星と共に  第25章

 

 

孫権を打ち負かし、その砦を前線基地とした。そんなある時…。

何者かが魏の前線基地に正面から兵達を破ってきたのだ。

一刀と星はその事態を聞いて、すぐにその侵入者と思われる者のところに向かう。

そこでは既に霞と真桜が戦っていたが、二人ともばらばらに戦っていたため二人とも返り討ちにあった。

その侵入者は少々年がいってる女性と諸葛亮と同じ年くらいの少女とその年の少しいった女性と同じくらいの年の男の三人組みで、霞と真桜は年のいった女性にやられたようだ。

 

「さて、次は貴公が来るか? それともそちらの優男か? 女か?」

「あんた達は一体……」

 

一刀と星は戦闘態勢を取ろうとすると華琳がやってきた。

 

「このざまは何?」

「申し訳ありません」

「そちらは呉の宿将、黄蓋ね? それにそちらの男は韓当ね。私は魏の曹操。この者達の無礼、主として詫びさせてもらうわ」

(この者は黄蓋と言うのか)

(そして韓当。この二人も、前の世界にいなかったな)

 

一刀と星は何故か妙に納得した。

 

(この前の凌統と言い、今回の黄蓋。これから起こりそうなのは……)

(赤壁の戦いですな……)

 

凌統の事は華琳には黙っていたが、星にはこっそりと少しだが教えたのだ。

 

(ああ。そことなく華琳に伝えておいた方が良いな)

「ほほぅ。主君はそれなりに話の分かる者ではないか。少々見直したぞ」

「うむ。まったく最近の若者は人の話を聞こうとする者がおらなすぎる」

「それは失礼したわね」

 

そして黄蓋と韓当は席を作って欲しいと言い、緊急で作った。その目的は魏に降る事であった。

その理由は話によるとどうやら今の呉はかつての戦友、孫堅と共に目指したものは無いとして、揉めて体を痛めつけられ、ならば自分の手で終止符を打つとの事で魏に降りに来たという。

韓当はそんな黄蓋を見て、自分も黄蓋の意見に賛同し、一緒に来たとのことであった。

華琳はその話を聞いて、黄蓋と韓当に降る事を許し軍勢に入れることにした。

その時の一刀と星は……。

 

(どうやら本当にやるみたいですな)

(ああ……)

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その次の日、兵や将全員に船の上を体験させたが、そのほとんどが船酔いを起こしていた。

その日の夜、一刀と星は華琳の所に来て、華琳に大事な話をしたいとして華琳の天幕に行った。

そして一刀は重大なことを口にし、華琳はそれを聞く。

 

「そう、黄蓋はやはり裏切るのね」

「ああ。船団を鎖で繋ぎ合わせて、そこに火を放ってくるはずだ」

「韓当はその

「そんな事をされては、船での戦いに慣れていない私達に勝ち目は無いわね…」

「そうだな。魏が大陸制覇の決定力を失うことになるのは……ぐっ!」

 

突然一刀の頭が痛みだす。

 

「どうしたの?」

「わからん。まあすぐに治るよ」

「そう」

 

一刀と星が一番大事な話を終えた時、黄蓋が鳳雛と言う少女をつれて一刀達の言っていたことどおりの事を言ってきた。

もしも魏に自分達がいなかったら、魏は負けていたと一刀と星は考える。

黄蓋達は言いたいことを言って出て行って、しばらくして流琉から召集を受けた秋蘭、桂花、風、稟を連れて来た。

一応、詠とねねもいるのだがあの二人は少々ドジなところがあるため、下手したら情報を漏らす可能性があるとして敢えて呼ばなかったそうだ。

一刀と星はやってきた五人に華琳に言ったのと同じ事を話した。

そして会議の結果、黄蓋達にだまされた振りをして黄蓋達を倒すことになり、鎖は真桜に頼み、翌日の朝には特注のものが出来た。

その鎖には「触るな」と丁寧に注意の張り紙まで張ってある。

一刀と星は今回の戦いでいつもの都にいる直轄の兵だけでなくそれ以外の街でも召集していた兵達がいると聞いていたが、凪と沙和が鎧は都の直轄のものなのに、全員見たこと無い顔がある部隊があることに気づき、一刀は驚いた。

 

「よくわかったな」

「全員、手塩にかけて育てた大事な教え子ですから…」

「誰かいるの」

 

三人がその誰かを確認すると、それは黄蓋と韓当であった。そうあの見慣れない部隊は韓当がこっそり忍ばせた自分の兵達だったのだ。

一刀は凪に黄蓋達に気づかれないよう、華琳の所に報告させ、一刀と沙和は気づかなかった振りをしてその場を後にした。

そして夜になった。一刀は華琳の元を訪れていた。

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「あら、一刀。どうしたの?」

「どうも眠れなくて…」

「昼間からあんなに寝てるからよ」

「あれは寝てるじゃなくて、寝込んでるだな」

「どうしたの? この間といい、疲れて倒れるほどの仕事はさせていないはずよ?」

「さあな…」

「………」

 

二人の間に沈黙が続く。

 

「黙ってられると困るけどな…」

「静かにして」

「……」

「風向きが変わったわね」

 

華琳は風の音を聞いていたのだ。

 

「東南の風が吹いたって事は…!」

「なるほど。黄蓋はこれを狙っていたのか。

一刀、天幕に戻るわよ。倒れてもいいけれど、そちらについてからになさい」

「そんな余裕はないな!」

 

一刀と華琳が外に出る。

外に出てみると自分達の船が燃えている様子があった。

 

「華琳!」

 

霞が華琳の所に来た。

 

「黄蓋が火を放ったわね?」

「沙和達が怪しいと言うた連中が、予想通りの動きをしおったで。いま風と桂花が真桜達連れて、消火と迎撃に向かっとる。

あと、呉の船団も近づいてきとる。明かりがなかったから気付くんが遅れたって」

「じゃあ俺は……」

「「一刀(殿)!!」」

 

一刀の所に星と澪がやってくる。

 

「星、澪」

「大変よ。韓当が爆薬を大量に持って船を燃やして行ってるわ!」

「何だと?」

「かなりの年のように見えるが、元気にはしゃぎまわる子供のように暴れておりますぞ」

「とんでもないじいさん……って所か。華琳、悪いが……」

「ええ、あなた達三人は韓当の撃退と黄蓋を押さえなさい!」

「分かったわ」

「うむ」

「よし、行くぞ!」

 

一刀と星と澪は、船から船と跳んでいった。

 

「他の皆は?」

「春蘭と秋蘭も、稟たちと合流してボチボチ呉の連中と接触する頃や。ウチは指示がなかったから、さしあたり華琳の直衛に来た」

「風と桂花に伝令を出して、風向きが変わったことだけ伝えてちょうだい。私の軍は?」

「とっくに準備完了や! 出られるで!」

「ならば我々も呉の本隊を迎え撃つわよ!」

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一刀が出て行く少し前、船の上で元気に飛び回る韓当は……。

 

「どぉおおおおりゃあああああああ!!」

 

韓当は火薬爆弾を魏軍の船に思いっきり投げて船を燃やしていた。

 

「はあああああ!!」

 

錫が爆弾の目の前に出て来て、棍棒で爆弾を撃ち返し、爆弾は海の中に落ちた。

 

「ほぉ〜、やりおるな」

「最近の若者を甘く見ないことね」

「そうだのぅ……」

 

韓当は爆弾を適当にしまい、拳法の構えを取る。

 

(……凪と同じ拳法使い……。構えは全然違うけど……)

「このわしの拳、かわし切れるか!?」

 

そう言うと韓当は突然錫に向かって突撃してくる。

 

「早い!」

「そぉいっ!」

 

韓当は裏拳で錫を攻撃しようとするも、錫は何とか棍棒でその拳を防ぐ。

 

「ほぉ、最初の一撃を防げた人間はそうはおらんぞ。だが……ふんっ!」

 

拳を一つ防がれた状態で、もう片方の空いている手を広げ、錫の腹部に当てる。

 

「ぐっ!」

 

錫は後方に吹き飛ばされる。

 

「ふっ!」

 

錫は何とか棍棒を船の上に落として、自身も受け身を取って体勢を立て直す。

 

「まだ立てるとは最近の若者を少し侮りすぎたかな……。だが、わしの役目の大半は既に終わっている。後は炎が他の船に燃え上がるのを待つ……」

「そうはいかないな」

 

そこにようやく一刀と星と澪が来た。

 

「一刀……」

「大丈夫か、錫」

「何とか……」

「お主、そうはいかないとはどういうことだ?」

「こう言うことだ」

 

一刀は破偉派をホルスターから抜いて、自分達の乗っている船とは別の船の鎖部分に向かって、弾を撃つ。

しかも今回は鎖をすぐに破壊できるように実弾を詰めていた。

真桜の鎖はからくりであり、ボタンを押すだけで簡単に外れるようにしていたのだ。

今のはそのボタンに向かって弾を撃ったのだ。

 

「ほう〜。だが、そんなことでは炎は消せまい」

「確かにな……。だけど……」

 

一刀がある方を見る。

そこには凪の気の爆発で火事を消したりして、被害が次々に抑えられていった。

 

「何と、氣の爆発で火を消し止めるとは……」

「よく街の火事とかをあんな方法で消してるからな」

「さすがだな……」

「韓当!」

 

そこに少し傷ついた黄蓋が来た。

 

「祭! その怪我はどうした!?」

「曹操達にしてやられたさ。同じ鎧をつけた相手を迷いなく攻められてな……」

「何と!? お主ら、一体どんな方法を使った!」

 

韓当が一刀達の方を見る。

 

「これが何かおわかりかしら?」

 

澪がどこからか布を取り出す。

その布は黄色かった。

 

「その布……まさか!」

「そのまさかよ」

 

錫が言い、韓当達が周りにいる魏軍の兵士を見る。

その兵士達は黄色の布をどこかしらに巻いていたのだ。

 

「そう言うことか……」

「何とも嫌な識別の仕方をするものだ」

 

それから韓当と黄蓋は少し顔を伏せるが、すぐに顔を上にあげるが……。

 

「「くっ……く、くくく……ははははははっ!」」

「何がおかしい!?」

「何、ここまでしてやられるとは思わなかっただけだ」

「だがわしらはまだ終わっておらんよ」

「これより我らは、曹操に最後の一撃を叩き込む!」

「そうは……」

「させんぞ!」

 

一刀と星が前に出る。

 

「澪、お前は錫を頼む」

「私と一刀殿で二人を抑える」

「出来るか? お主ら二人に……」

「我らを抑えることを!」

 

韓当と黄蓋からものすごい気迫が放たれる。

 

「くっ!」

「なかなかやるな……」

「まだまだお主らには負けんぞ」

「……星」

「うむ」

「「!!」」

 

一刀と星からも韓当と黄蓋に負けない気迫が放たれる。

 

「ほう……」

「面白い……」

 

韓当と黄蓋は戦闘態勢を取り、一刀と星も戦闘態勢を取る。

 

「行くぞ!」

「応っ!」

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韓当と星が突撃していく。

 

「でゃあ!」

 

韓当が拳を目の前に突き出し、星はそれを避け、自分の槍を韓当に向けて突き刺そうとするが……。

 

「ふん!」

 

韓当は何と星に向けて背を向けた。

しかし韓当は自分の脇に星の槍の刃の根元付近を挟み込んだ。

 

「ぬっ!」

「祭!」

「うむ!」

「させるか!」

 

黄蓋が星に向かって矢を放とうとするが、矢が放たれる前に一刀が黒を抜いて、黄蓋が弓にセットした矢を撃つ。

 

「むっ!」

「はああああああ!!」

 

一刀が白も抜いて早撃ちで黒と白から氣弾を発射して、黄蓋に当てる。

 

「ぐっ! ぬあっ!」

「うぉおおおおおおおおおお!!!」

 

一刀は早撃ちの特訓もしていたためその早さはかなりのものであった。

 

「祭……」

「よそ見はさせんぞ!」

 

韓当が黄蓋の方を見ようとすると、星は槍を掴まれながらも槍を何とか振るおうとし、韓当を大きく持ち上げた。

 

「なんと! これだけの力があるとは!?」

「私を甘く見たようだな。ふん!」

 

星はなんと槍をそのまま上に放り投げたのだ。

 

「はあああああ!」

 

星は槍を壁蹴りのようにして軽く蹴り、槍の先端にいた韓当に向かって拳を当てようとする。

 

「甘いわ!」

 

韓当はすぐさま、脇から槍を放し、星の拳を掌で受け止めるが……。

 

「それを待っていた!」

 

星はそう言うと下に落ちそうになる槍を何とか拳を止められた手とは別の手で拾いあげ、槍の柄で韓当を叩きつける。

 

「がはっ!」

 

韓当は勢いよく、船の上に叩きつけられる。

 

「韓当!」

 

一刀の氣弾の連射をくらいながらも黄蓋は倒れた韓当の所に駆け寄る。

一刀はその姿を見て撃つのをやめた。

 

「黄蓋……」

「もはや、これまでか…!」

「大人しく降参なさい。あなたほどの名将、ここで散らせるのは惜しいわ」

 

一刀達が戦っている間に華琳もやってきていた。

 

「これ以上、俺達は無用な殺生はしたくない……」

「ぬかせ! 我が身命のすべてはこの江東、この孫呉、そして孫家の娘たちのためにある!」

「貴様らになど、我らが髪の毛一房たりとも遺したりするものか!」

「……そうか……」

 

その間に孫策達が来たが時既に遅しであった。

 

「「祭! 韓当!!」」

 

孫尚香と孫権が黄蓋と韓当の身を案じる。

身を案じられた二人は叫ぶ。

 

「聞けぃ! 愛しき孫呉の若者たちよ! 聞け! そしてその目にしかと焼き付けよ!」

「我らが身、我らが血、我らが魂魄! その全てを我らが愛する孫呉の為に捧げよう!」

「この老躯、孫呉の礎となろう! 我が人生に、何の後悔があろうか!

呉を背負う若者たちよ! 孫文台の建てた時代の呉は、わしらの死で終わる!」

「じゃが、これからはお主らの望む呉を築いていくのだ! 思うがままに、皆の力で!

しかし決して忘れるな! お主らの足元には、呉の礎となった無双の英霊達が眠っていることを!」

「そしてお主らを常に見守っていることを! 我も今より、その英霊の末席を穢すことになる!」

「………」

 

一刀達はそれをずっと黙って聞いていた。

 

「わしらを殺せ!」

「そしてわしらの愚かな失策を、戦場で死んだという誉れで雪いでくれ!」

 

一刀は銃をしまう。

 

「言ったはずだ。俺は無用な殺生はしたく……」

 

一刀が全部を言い終えないうちに後ろから二つの氣弾が飛んできて、一刀の横を通りすぎ、韓当と黄蓋を撃ち抜いた。

黄蓋と韓当は最後の力を振り絞ったように呉の将達に言う。

 

「皆のものさらばだ…」

「わしらは…お前達をいつでも見ているぞ!」

「祭ーーーーーーーー!!」

「韓当ーーーーーーーー!!」

 

そして二人はそのまま海へと落ちっていった。

 

「貴様ぁぁぁぁ!!」

 

甘寧が怒りを顕わにする。

甘寧が怒りを向けたのは一刀の後ろにいた澪であった。

 

「武人としての頼みを聞いたまでよ。後悔することはないはずよ……」

「貴様! 言うに事欠いて……!」

「皆! 祭と韓当の死を無駄にはしないわよ!」

「はっ! 総員突撃用意! 祭様達の仇討ちだ!」

「公覆殿達の死に様を倣え! 我らが身、我らが血、我らが魂魄! 孫呉の誇りのすべてを賭けて、魏の兵どもをこの江東から叩き出してやれ!」

 

その時、蜀軍も来て、蜀と呉の両軍が襲いかかる!

 

「澪」

「何を言っても構わないわ」

「武人の誇りを雪いだこと、どう叱れというの?」

「………」

「まだまだこの戦いは続く。その力、私の下で存分に発揮しなさい」

「……分かったわ……」

 

そして魏兵達と一緒に一刀達は突撃した。

その戦いはかなりの熾烈を極め、戦いは辛くも魏の勝利で終わり、呉と蜀の部隊は撤退した。

 

「なんとかなったな……」

「そうですな……」

「だが……」

 

一刀は澪に撃たれた韓当と黄蓋の事を思う。

 

「大丈夫よ」

 

少し物思いにふける一刀の所に澪が来る。

 

「大丈夫って」

「どういうことなのだ?」

 

星が澪に尋ねる。

 

「確かに私はいつもよりも氣を溜めて撃ったわ。でも撃った場所は急所のやや上よ」

「それって……」

「一時的に気を失うけど、死んではいないわ」

「そうなのか」

「ええ。ただ、うまく陸に上がれるかはまた別問題よ」

「そうか……」

「でも私はあの二人なら無事にたどり着けると信じて撃った。その事は頭に入れて……」

 

澪は少し寂しそうな声で言う。

 

「ああ」

 

一刀も少し寂しそうな声で答えた。

その後、魏軍は陸路で呉軍を追うことになった。

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建業では魏軍が来ることで戦闘準備をしていたが、それ以上に火計などの計略を完全にばれていたことに不審を抱いた。

しかし今はそれを考えても意味はないとして呉軍は魏軍の迎撃に向かった。

その頃魏軍は…

 

「やはり陸路は良いな! 二本の足歩けるというのは良い! とても良いものだ!」

「そうですねー! ゆらゆらしない地面がこんなに良いものだって、初めて知りました!」

 

春蘭と季衣ははしゃぎながら進んでいた。

 

「船の上じゃ、青い顔しとったもんなぁ…」

「なにおぅ! お前だって!」

「ウチは平気やもん!」

「まあ何にせよ、これを機に大地に対しての感謝でもするんだな」

「つーか、ゆらゆら揺れるなら馬の上かて似たようなもんやろ?」

 

まあそうこうじゃれているうちに偵察隊が戻ってきて、呉は平地で布陣しており、総力戦で挑むつもりであるとの報告が入った。

春蘭はそれを聞いて全軍を停止させる。どうやら春蘭は今の呉の気持ちがわかるようだ。だがどこか感傷的だと一刀は感じる。

 

「まあ、陸上戦でも気を抜かないことだな」

 

そう言いつつも、一刀は霞を自分のところに近づける。

 

「……なんや」

「頼みたいことがある」

「自分なぁ。こういう緊迫した時に、そういう変態さんなことはやめときや?」

「おい!」

 

一刀は思わずツッコミを入れた。

それから少しして、春蘭達の動きはすぐに呉の方にも捉えられたが、孫策は何か罠がある可能性もあるとして、襲撃を止めた矢先、周泰から春蘭の周りに小部隊が居る事を知らせる。

実はその小部隊とは霞の部隊であり、一刀が霞に頼んだのはこのことであった。

さらに少し経ち、後続の華琳達本隊が春蘭達に合流したら…。

 

「よくもまあ、こんな所にいて無事だったわね」

 

これは華琳が春蘭に言った最初の言葉であった。

 

「孫策も最後の決戦を挑む気でしょうから。先遣部隊を全力で叩き潰すような真似はしないかと」

「逆になりふり構わず……という考えもあるわよ」

「お……?」

「………考えていなかったのね」

(絶対考えてない……)

 

後から来た永琳や光琳達もそう思った。

 

「も……申し訳ありません」

「まあ無事だったのなら良いわ。この失態は、この後の決戦で返上して頂戴」

「それは無論です! お任せ下さい!」

 

そこに黒美が来る。

 

「華琳様。部隊の布陣が完了しました。いつでも出られますよ」

「そう。……今日は寄せ手なのだから、こちらから挨拶に出向くのが礼儀でしょうね」

「は。お気をつけて!」

 

そして華琳は孫策に会いに行った。

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華琳と孫策の舌戦が始まる。

 

「こうして顔を合わせるのは久しいわね」

「そうね。先刻の戦いは黄蓋と韓当の奇襲で、それどころでは無かったから……反董卓連合以来かしら?」

「もうそんなになるのね……。あの時は夏侯惇にしか会ってなかったからそうなるわね」

 

実は官渡の戦いの時に春蘭は袁術と行動を共にしていた孫策と会っていた。

その時に孫策が袁術に対して自由に動けるようにと言う事で春蘭は孫策を助ける形で動いていたのだ。

 

「あの時、我が方の将が少し多めに貸してしまったようだから……その分を返してもらいに来たわ」

「その件については感謝してもしきれないけれど、それでこの江東全てというのは、いくらなんでも暴利過ぎるわね」

「あら。格安よ。……まぁこのまま私に降ってくれれば、あなた達の命は助けてあげても良いと思っているけれど?」

「残念ながら、その取立てに応じるわけにはいかないわね。

この江東は我が孫呉の父祖より伝わる大事な聖地。命惜しさに差し出したとなれば、我が母孫堅、太祖孫武に合わせる顔が無いわ」

「けれど、こちらにもこちらの都合があるの。大陸を一つに統べ、民に本当の平安を与えるため……あなた達の国、討ち滅ぼさせてもらうわ」

「そんな暴論を掲げて大陸全土に戦火を広げる事が、本当の大義かしら?

北方を燃やし、涼州を滅ぼし、果ては神聖な決戦の前に、自軍の勇将を囮に使うような卑劣な輩に……屈するわけにはいかないわね」

「……(そういうことね……)そう。囮と見破れる程度の判断力はあったようね。いいでしょう、そのまま叩き潰そうかとも思ったけれど、この曹孟徳と覇を競うに相応しい相手だと認めてあげましょう」

「それはどうも。ならば我が勇気、我が知謀、我が誇りの全てを賭けて、あなた達を退けてみせるわ」

「ならば、我ら曹魏も全力をもって孫呉を制圧してみせましょう。江東にその名を轟かせる小覇王と周公謹の戦いぶり、愉しませてもらうわ」

「孫呉の勇者達よ! この戦、呉の運命を決める大決戦となる! ここで元凶曹魏を打ち破り、大陸に本当の平和をもたらすのだ!」

「曹魏の勇士達よ! この戦、我らが覇業の大きな前進のための戦となる! その血と命をもって、大陸の真の平安の礎とせよ!」

「「全軍!! 突撃!!」」

 

そして、戦闘が始まる!

 

「来たか……」

「一刀殿……」

「例え相手が知り合いだろうと俺は逃げない。戦ってやるさ」

 

一刀の目には闘志が燃え上がっていた。

 

「一刀殿……分かりました。この趙子龍も手助けしよう」

「助かる」

 

一刀と星はためらいも無く敵兵を倒していく。

 

(蓮華や凌統の事も少しは気になるが、それは今、考えることじゃない。それはあちらも分かってるはずだ)

 

一刀は満月と新月を振るいながらもそう考えていた。

 

(全てが終わった後、きちんと考えれば良い。それだけの時間はあるはずだ!)

 

一刀は黒と白と破偉派も抜いて容赦なく敵を撃つ。とはいっても氣弾である。

魏兵の強さ、将の強さ、そして一刀達の強さにより呉兵達を破った!

そして建業の退路を断たれたことにより、孫策達はひとまず蜀まで逃げようとし、蜀まで逃げていった。

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「華琳様ー。先行していた秋蘭ちゃんと沙和ちゃんが、建業に取り付いたとの事です」

 

風が華琳に報告をしに来た。

 

「そう。孫策達の包囲は?」

「……申し訳ありません。突破されたと永琳様から報告が。霞ちゃんと凪ちゃんと光琳ちゃんが追撃に入ってますが、沼で馬の機動力も生かせませんし、追いつくのは厳しいと思いますー」

「撤退戦に関しては、地の利のあるほうが圧倒的に有利か。まあ、追いつければ儲け物ね」

「蜀か……」

 

一刀はふと考えた。

 

(俺は前の世界では自分が建てた国を滅ぼすのか……。この世界では劉備だが……)

 

一刀はある意味では自分が建てた国を自分の手で終止符を打つという、なんとも言えないものを感じていた。

 

「でしょうね。それより、一刀……」

「何だ?」

 

一刀は突然華琳に平手打ちを喰らわされた。

 

「覚えはない?」

「……悪いが、ないな」

「戦いの前、春蘭の周りに兵を潜ませたでしょう」

「霞に頼んだが……何故それを?」

「先ほど孫策に言われたのよ。おかげで孫策に卑怯者呼ばわりされたわ。これは、そのぶんよ」

「そうか……。次からは気をつけよう」

「……」

「他には?」

「後は……」

「?」

「……ありがとう。一刀が霞を動かしたお陰で、春蘭が孫策に攻められずに済んだわ」

「…どうだろうな? あのままでも案外、孫策は動かなかったかもしれないぞ」

「孫策がその点を突いて私を責めたと言う事は、春蘭にひと当てしようと思っていたからだもの。だから、その点に関しては褒めてあげる」

「怒ったり、褒めたり忙しいな」

「信賞必罰は政事の基本よ」

(華琳が言うとツンデレの基本にしか聞こえないな……)

 

一刀は心の中で笑った。

 

そして一刀は思った。

 

(次で最後になるのだろうか……)

 

一刀には少しばかり不安があったのだ。

それはやはり白装束の存在であった。

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おまけ

 

作者「第25章だ!」

一刀「また翌日か」

作者「しかしやはりクロスものよりもオリジナルの方が閲覧率がいいな。といっても俺はクロスものが好きだからクロスものを書くけどな」

一刀「そこは好きにすればいいさ」

作者「どうも今は書くことが思いつかん。思いついたから追記するかもしれん。

それでは!」

説明
この作品は真・恋姫†無双が前作(PS2)の続編だったらという過程で作られた作品です。
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コメント
いい感じになってきましたね。これからも頑張ってくださいね(samidare)
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真・恋姫†無双 一刀 真・恋姫無双  恋姫†夢想 第25章 

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